TS転生系Vtuber、時々ダークヒーロー【第一部完結】 作:ムーンフォックス
今から二年前。太陽系第三惑星の片隅で人類の敵が出現した。
それは特撮の怪人のような姿の異形の集団だった。突然異形は現れ、数多の人々を殺めていった。意志疎通も不可能で、突然現れては殺していくその様は天災という言葉が相応しい。
異形はやがて『怪人』と呼ばれるようになった。各国は怪人を色々な方法で倒すものの、あと半年もすれば戦力は疲弊し、敗北するだろうと言われている。
突発的に発生する災害に打ち勝つ術はない。
地震も、津波も、台風も、今まで人は防げたことがあるだろうか? 否、無い。
依然として各国は怪人への有効的な対処方法を模索中で、民衆は怪人に勝てないと悟り、何時訪れるかわからない怪人に怯えながら過ごしていたある日、世界を変えるほどの大きな変遷が起きた。それは、やがては世界を揺るがすほどに。
変遷から一年。それは怪人によって死亡した人数が全世界の0.1%を超えた日のことであった。
20XX/都内某所
快晴の蒼穹、そこは人々の悲鳴と怒号が響き渡っていた。怪人が現れたからだった。災害に予兆がないように、怪人も出現に予兆はない。
すでにとあるVtuberの配信を見てた若者を初めとして、10人程度が怪人に殺されている。
ジリリリリリリリリ!!!
一拍遅れ、誰が通報したのか、怪人出現を知らせるアラームが鳴り響く。
さて、そんなシェルターに避難する群衆に対し、人波に抗う少女が一人。
一見すれば華奢に見えるその少女はしかし、注意深く見れば無駄のない鍛え方をしているのが理解できた。
荒波のような大衆が逃げる方向とは逆に走る彼女はやがて人混みを抜け、怪人がいる場所にたどり着いた。
「
彩月と名乗った少女は耳にある小型通信機に向けて話した。
『確認しました。近くに人の姿はありません。ではお願いします』
「了解」
通信を切ると、彩月は怪人の方を向いた。羊の頭に牛の体、腹が裂けており、そこから腐乱臭と共に内臓がダラリと垂れている。醜悪な怪人だった。
彩月は青年の死体を発見すると、手を合わせできる限りの追悼をする。
「ごめんなさい……もっと早くついていればこんなことには……本当にごめんなさい……」
やがて謝罪と後悔の言葉も終わり覚悟を決めた表情で、彩月は腕に巻かれてある腕時計のボタンを押した。
紅の閃光が辺りを包む。
機械音と共に彩月の姿が変わる。髪は黒から赤へ、腕に付けられる籠手とブーツ。服もパーカーではなく赤いフリルドレスになっていた。
「――」
怪人出現から半年、その変遷の日。
不思議なことに、ヒーローが現れた。
怪人ではなく人の姿でありながらも、頼まれたわけでも利益のためでもなく世界を守る――可愛い少女達が。
これが『ヒーロー』として一般社会に浸透しているのも周知の事実である。
誰が呼ぶわけでもなく颯爽と現れ敵をドンドンとなぎ倒していくその雄姿とは反する可憐な容姿。人々にはじめて確認されてからトレンド入りを果たすほどに拡散されたのはいうまでもない。
その勇敢な姿はやがて政府の目にも映り、どこで運命は狂いだしたのか、ソレは結成された。
ヒーローのみで構成されたたった三人の特別部隊。
つまるところ、リアルスーパー戦隊である。そしてそのリーダーであるのが――。
「レッドガラン、行きますッ!!」
レッドガランこと、赤羽彩月である。
言うが早いがレッドガランは走った。100mを3秒を走る脚力は一瞬で怪人に肉薄し、蹴りを叩き込み撃破する。
だが――
「…数が――」
数が多い。怪人達はベルリンの壁のように立ち、各々が体勢を作る。
その総数、優に20を越す。
絶望的な戦況。
それでも、レッドガランは構えを解かない。彼女にはこの力を使う者としての責務があるからだ。
無念に死んだ被害者達、大事な人を失った者達の嘆き。その罪を償えるのはそれを守れる人――即ち、ヒーローのみだ。
ここで敗れれば、被害はさらに拡大する。
「……そんなこと、させない」
20を越えるからなんだと言うのだ。一人だからなんだと言うのだ。
どんな状況でも決して諦めない。ヒーローとはそういうものなのだ。
「さぁッ、来なさいッ!」
レッドガランは怪人と対峙し――異変に気づいた。
怪人が襲ってこない。怪人は人を見つけると襲ってくるのが普通、しかし、怪人は一歩も踏み出そうとしないのだ。
よく見ると、怪人はある一点を見据えているように見えた。
見たことのない反応に、レッドガランも異変を感じ、動けないでいたが、不意に思い出す。
怪人は殺しに順番をつける、危険度が高い相手ほど優先して殺すのだ。
レッドガランを狙わないということは、つまり誰かが近くにいて、しかもその誰かはレッドガランよりも強いということ。
それに該当する人物を、レッドガランは一人しか知らない。
背後に現れた別の殺気をレッドガランは感じとり、振り向いた。
此方へ向かい、歩いてくるのが一人いる。
その正体をレッドガランは知っている。顔は深紅のバイザーで隠されており、漆黒のスーツは殺し屋を意識させる。中でも目を引くものはやはり、その手に持つ巨大な鎌だろう。
その名をレッドガランは知っている。淡々と歩いてくるその存在
思わず口にした。
「――ヴァントガゼル」
『ヴァントガゼル』。ヒーローが現れるよりも遥か前、二年前から現れ活動する謎の
怪人28号として登録され以降、ヴァントガゼルは度々怪人が出現すると現れ倒していく存在として知られている。中には怪人認定を取り消そうとデモ活動を起こす人がいるほど。
その正体は何なのか。なぜ怪人でありながらもヒーローのように活動してるのか。なぜヴァントガゼルという名前なのか。
一切が不明。
登場から二年――今日もヴァントガゼルは認められぬヒーローとして、怪人との戦いに明け暮れている。
尤も、それを本人の意思とするかとなると微妙ではあるが。
つまるところ―――
TS転生系Vtuberという俺の話より先に、この世界のことを説明しなくてはならない。
この世界には悪事を行う怪人がいて、それと戦う美少女ヒーローが存在する。メンバーは以下の三名。
「レッドガラン」
本名、
「ブルーネヴィル」
本名、
「イエローメイズ」
本名、
後ついでに第三勢力として、正体不明のダークヒーローがいる。
「ヴァントガゼル」
本名、
さて、俺の話に移ろう。俺の名前は
………いやいやいやいや待て、設定が多すぎるだろ。
目を覚ませば赤ん坊でオギャアオギャア、頭の中には前世の俺の姿がある。赤ん坊の未熟な頭脳ながらも気づいた。
そうか、これがTS転生か(黄金の理解力)。
そうなると話は早い。転生したのが異世界ではなく現代なのは少しばかり残念だったが、この才色兼備秀外恵中唯我独尊焼肉定食な俺は奇跡的に端麗な容姿を持っていた。
おめぇ…、容姿、性格、そして属性。全て三拍子揃ってるぜ ……。そうともなれば話は早い。
そうだ! 配信者だ! Vtuberだ! 俺はVtuberになった!
Vtuberになれば仲間ができて安全に出世してディスコでキャッキャウフフできて第二の青春を楽しめる!!
楽しめる!!
……はずなのに。
「何故だぁぁぁぁァァァァッッ!!!」
何が悲しくて、俺はこの臓物垂れ流してる怪人なんぞと戦わねば行かんのだァァァッッ!!! 俺が戦うべきは怪人じゃなくてアンチコメントなのにィ!
と思ってるうちに俺の鎌が怪人にクリームヒット! 一刀両断ンンンッッ!!! ざまあみやがれ!
でも怪人はまだ20体もいる。ちょっと大家族すぎんよ~~。そして全員まんべんなく俺に向かって来やがる? これが怪人じゃなく視聴者ならどんな良かったことか。でも怪人だねぇ! 残念だねぇ! 畜生!
そして俺は一応敵であるレッドガランを守りながら戦ってるわけだが………べっ別に、あんたが心配で守ってるんじゃないんだからねっ!!(ツンデレ) あなたは生きて欲しいの!(あふれでる光)
ああ~^^ レッドガランちゃん可愛いマジ戦場に咲く一輪の花。死体しかない中で美少女に会えて幸せなんじゃあ~。
お父さんお母さんそして妹、私は心も体もボロボロだけど、私は今日も美少女ヒーローから力をもらって戦っています。
困った人を助けるのは、当然だよね!() 人助けって最高! お前も人助け最高と叫びなさい!
ヴァントガゼルの恐ろしさはその全てにある。どんな相手だろうと怯まず、その攻撃は素早い。『鎌』という扱いが難しい武器を軽々と操り、正確に相手を切り取る技術力。そして何より、人間が潜在的に恐れる『殺害』を
ヒーローであるはずのレッドガランは成り行きを見守ることしかできなかった。声をかけようとした。危ないから下がってください と。
声が出なかった。言葉を失った。ヴァントガゼルの異様なまでのその憎悪に。
「何故だぁぁぁぁァァァァッッ!!!」
不意にヴァントガゼルは叫んだ。この世に存在するどんな言葉よりも恐ろしい叫びだった。悲哀或いは憤激にも聞こえる声。
そしてヴァントガゼルは一匹の怪人へ駆けた。
ヴァントガゼルは鎌を構えた。臓物を垂らす怪人のパンチをギリギリのところで跳躍し、かわす。見失った敵を探すため怪人は空を見上げるが……だが……。
不意に、怪人の首が切断された、切断したのはいつの間にか地面にいたヴァントガゼルだ。
最初から空を飛んでなどいなかった。跳躍で怪人の背後に移動しただけだった。
レッドガランは戦慄する。彼女の目にもヴァントガゼルの動きが見えなかったのだ。
地に伏した怪人にヴァントガゼルは近づき、鎌を叩きつけた。
グチュリ、グチュリと、何度も何度も叩きつける。そこに感じられるのは圧倒的な憎悪。
鉄のように強く、鉄のように冷たく、ただ怪人を殺し、殺し、殺す。
「ヴァントガゼル……貴方はどれ程の憎しみを……」
なぜそれほどまでに怒りに狂うというのか、それは怪人に向けた怒りなのか? もしあの怒りが自分に向けられた時、果たして自分は正気を保てるのか? 考えるだけでも怖じ気づく内容だが、無いと願いたい。今までヴァントガゼルが敵対したという出来事はない。
それは裏を返せば彼女と人類は話しあうことができるのだ。だから――
「――私は貴方と話をしたい。一体貴方が何のために戦うのか。もしそれが私にも解決できるなら……私も手伝いたい」
考えてみよう、バタフライエフェクトを。
蝶の羽ばたきはいずれ大きな竜巻を起こせるまでに至る。とるに足らない小さな虫すらそんな偉業を起こせるのだ。
ならば、人間にはそんな竜巻よりも更に大きなことができるに決まってるじゃないか。
背後から襲いかかった怪人を切断する。最初は足を、最後に頭を。眼前の小型の怪人を拳が穿つ。ボタリと垂れる血の雫一つ一つが、漆黒のヴァントガゼルをほのかに赤へと変えていく。
怪人を全員片付たところへ、大型の怪人が現れた。
怪人が野太い咆哮を挙げる。威嚇だろうか、常人なら恐れるだろうその怪人に、ヴァントガゼルは容赦なくジャンプし近づき、顔のすぐそばに迫る。
それが怪人が最後に聞いた声だった。
放たれた攻撃は、必殺技と呼ぶにはあまりにも印象が薄く、
されど、普通の攻撃と呼ぶにはあまりにも、威力が高すぎた。
最後の力を振り絞り、しばらくの間は抵抗していた怪人。しかし、その巨躯はやがて力尽き、惨めにも、その身体は闇に呑み込まれた。
その直後に発生する大規模な爆発。それを背景に、ヴァントガゼルはレッドガランの方を向く。
レッドガランはそれに声をかけようとした。話したいことがたくさんあった。声を聞かせて欲しい、顔を見せて欲しい。好きな食べ物は? 俳優は? 映画は? そして――なぜそこまで怪人に怒るのか?
「―――」
口を開こうするが、言葉が出てこない。
ヴァントガゼルが鎌を振り上げる。まずい、それはヴァントガゼルが逃げる時の動作だった。
伝えられる言葉は一つのみ、なにを伝える?
「―――あのっ!
助けてくれて! ありがとうございます!」
ヴァントガゼルは鎌を振り下ろした。土煙が舞い、それが止むと、そこにいたのはレッドガラン一人だった。
変身を解除し、彩月は笑みを浮かべる。伝わったかはわからない、しかし救われた以上 礼を言わないのは彼女のポリシーに反していた。
だが、いつか正体を探ってみせる。彼女の素顔を知りたい。
いつかその日が来るまで――赤羽彩月は追い続ける。
「……あ! カモメちゃんの配信来てる!」
俺は…必ず葦名を守る
. SEIKIROを初見にてクリアしてやんよ
チャンネル登録者数 6.4万人
「どおしてだよぉぉぉッッ!!!」
『迷えば敗れるぞ』
『ざっこ』
『下手すぎ、香川県民か?』
『明日仕事あるから寝るわ。じゃあな下手くそ』
『初見です!この敵には傘が有効です!試してみてください』
『↑指示すんなgm』
ど゛お゛し゛て゛勝てないのォオア゛ア゛ア゛ッッ!!!(発狂)
4・8・時間! やってるのに! 俺はダークヒーローだから我慢できたけど一般人なら我慢できなかったぞ! 畜生! できらぁ!!
今日も配信! 頑 張 る ぞ い !! (迫真)。
面白かったという方は下のボタンからお気に入り、高評価、感想、またXでの読了ポスト等、行っていただけると幸いです。
今話にて良かった思った特殊タグをお答えください
-
BISHOJO!イヤッホォオウッ!!!
-
何故だぁァッ!(フォントが変わってる方)
-
配信している画面全体
-
「死」の死亡表示画面