TS転生系Vtuber、時々ダークヒーロー【第一部完結】   作:ムーンフォックス

11 / 19
えっ今日はハーメルンの機能である特殊タグを使うことで文字の背景色を変えるだけじゃなくLINEやXと言った様々な画面を再現していいのか!?
チラシの裏から「特殊タグ練習」って検索すれば有志の方がある程度のテンプレを作ってくれているからそれを使ってお手軽に自分の好きな画面を再現もいいぞ!
うめ うめ


11 認められぬ英雄、或いは

 

 

 

 1:53 

 

 

 

『……ヴァントガゼル、怪人が出た』

 

 草木も眠る丑三つ時、お化けはいないが『こいつ』はいる。懐中時計からの声に少しばかりの嫌気が指し、次に仮にもヒーローとしての責務が湧いて来た。

 

「りょーかい。場所はどこ?」

   区の   だ。詳しい位置は移動中に教える』

「……   区? 警報聞こえないけど?」

 

    区は自分のいる区のすぐ隣にある。であるならば警報が聞こえてもおかしくはない筈なのだ。

 だが、耳をすましても聞こえるのは静寂のみ。それに違和感を覚え聞き返す。

 

『これまでとは異なるタイプの怪人粒子が発生している。だから警報器もそれを認識できていない』

「そんなことこれまであったっけ……?」

『いや、これは過去2年間から見ても初めての出来事だ』

 

 急いでパジャマを脱ぎ捨て動きやすい服に着替える。スヤスヤと眠る妹に気づかれないようそーっと慎重に外に出て、懐中時計のスイッチを押す。

 

変身(トランスチェンジ)

 

 黒い夜空に溶けるように姿が変わる。ダークヒーローヴァントガゼルのお出ましだ。

 

『……これは言うべきか判断に迷ったが、この座標地点には覚えがある』

「何?」

『この座標は、つい先程までコラボしていた配信者が住む住所と合致している』

 

 

 

 

 

─────────────

 

 

─────────────

 

─────────────

─────────────

 

死駆シク破黒ハコク

 

 

!!!!!!!!!!

なんでそれを早く

!!言わねぇんだ!!

!!!このゴミ!!!

!!!!!!!!!!

 

 体の負担を一切気にすることなく技を発動し爆速で駆け抜ける。

 『こいつ』への憤りの感情は今そこに無い。

 

 しじみさんのことがただ心配でしかなかった。

 

 

 


 

 

 

 抜かりは無かった。

 怪人粒子の発生には対策をした、監視カメラに自分の姿は写さなかった、あの配信者に通報をさせる隙は与えなかった。ヴァントガゼルは彼女の住所を知らなかった。

 

 だからありえない筈なのだ。助けての一言からたった一分で、ヴァントガゼルがここに来れる等という事態は。

 

「なんで来れるかなぁ……ヴァントガゼル!」

 

 苛立ちを覚えながらも、セラストの思考は冷静に逃げの一手を選択する。ここで戦闘になり他のヒーローまで来られる──そんな状況は避けなければならない。

 

 

 

 

──────────────────────

 ───────────────

 

死黒シッコク暗澹アンタン

 

 

 

 窓の外へ跳ぼうとした脚が切断され、駆けようと伸ばした腕が無くなったのに気づいたのは、それから一瞬のことである。

 

「なッ……!」

 

 だが次の瞬間に、動けない筈の体は夜空を舞っていた、照明は淡い月に変わり、逃れえぬ重力がセラストを支配し、浮遊感を味あわせた。

 

 何が起きた? 混乱を続けその答えを導こうとする。

 目の前に理由が現れた、ヴァントガゼルだ。なんてことは無い、彼女がセラストの首を掴みここまで投擲した、それだけのことだ。

 

「ふざけ──!」

「影己断立」

 

 

 ────────────

 

影己エイコ断立ダンリツ

 

 

 

 セラストの眼はヴァントガゼルの体が二つあるかのように錯覚した。だがそれは錯覚ではない、彼女は今確かに二つへと分身しその姿を保っている。

 互いに持つ思いは同じ──こいつを殺す、ただそれだけ。

 

 

必殺(Certain KILL)

「必殺」

「必殺」

 

 

 最大限の憎悪を以て、この奥義を使う。

 今まで誰にもこの技は見せなかった、見せれなかった。あまりにも危険で、あまりにもおぞましいからだ。

 

 ()()をヴァントガゼルは迷いなく使った。

 

 

「襲連廻天」

「襲連廻天」

 

 

 

──────────────────────

 ───────────────

 

襲連シュウレン廻天カイテン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──瞬間、セラストの体には切断が繰り返されていた。

 左右からの斬撃に対応するために、なにより生きるために必死になって体を再生させる。

 だがそれは原状回復に過ぎない、再生すればその先からどんどん切断が繰り返される。だがそれでも必死に再生を繰り返す、この自分の力が許す限りまで。この攻撃が終わるまでを必死に耐えるしか無い。

 

「チクショウッッッッ!!!!!チクショおぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!!!!」

 

 声に鳴らない呪詛を叫ぶ、声帯が切れるその瞬間まで、己の怒りが続くその瞬間まで。

 この攻撃はいつになれば終わる? 終わってくれる? 疑問はもはや願望へと変わり、それは懇願に近しいものへと変わり果てている。体の再生は未だに続く、そしてこの切断は、それ以上に続いている。

 

「人間のクセに! 人間のクセに!! 僕らに殺されるだけの存在のクセに!!! なんで! なんでこの僕が!!」

 

 返答は来ない、返ってくることを期待していない、脳内で浮かぶだけの言葉を目の前の存在に吐き捨てる。

 セラストは恐れた。眼前の存在を。

 アレは──アレはヒーローなどでは無い。こんな恐ろしいことを平然と実行できるあの存在をヒーローなどと判断できることなどできない。人間に扮装した怪人であると見違えたほどだ。

 

 どうすれば良い? どうすればここから抜け出せる? 逃げ出せる? 生き延びれる? 死神から遠ざかれる?

 再生を繰り返していく中で、セラストは必死に考える、考えに考えて考え抜いて、模索し続けて───

 そこで斬撃の速度が自らの再生速度を上回ったことに気づいた。

 

「おいっ! 嘘だろ!?」

 

 体の再生に使用していた自分の力が枯渇しかけている。セラストは静かにその現実を受け止めた。だがそれは死を受け止めたということではない。

 

「僕が、お前なんかの人間如きに……」

 

 もはやこれが最後になるだろう。だからこそ、防御に回らない。やらなければいけないのは──攻撃。

 

「負ける筈が無いんだぁぁぁぁぁあああァァァァッッッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 ──瞬間、セラストの体には切断が繰り返されていた。

 左右からの斬撃に対応するために、なにより生きるために必死になって体を再生させる。

 だがそれは原状回復に過ぎない、再生すればその先からどんどん切断が繰り返される。だがそれでも必死に再生を繰り返す、この自分の力が許す限りまで。この攻撃が終わるまでを必死に耐えるしか無い。

 

「チクショウッッッッ!!!!!チクショおぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!!!!」

 

 声に鳴らない呪詛を叫ぶ、声帯が切れるその瞬間まで、己の怒りが続くその瞬間まで。

 この攻撃はいつになれば終わる? 終わってくれる? 疑問はもはや願望へと変わり、それは懇願に近しいものへと変わり果てている。体の再生は未だに続く、そしてこの切断は、それ以上に続いている。

 

「人間のクセに! 人間のクセに!! 僕らに殺されるだけの存在のクセに!!! なんで! なんでこの僕が!!」

 

 返答は来ない、返ってくることを期待していない、脳内で浮かぶだけの言葉を目の前の存在に吐き捨てる。

 セラストは恐れた。眼前の存在を。

 アレは──アレはヒーローなどでは無い。こんな恐ろしいことを平然と実行できるあの存在をヒーローなどと判断できることなどできない。人間に扮装した怪人であると見違えたほどだ。

 

 どうすれば良い? どうすればここから抜け出せる? 逃げ出せる? 生き延びれる? 死神から遠ざかれる?

 再生を繰り返していく中で、セラストは必死に考える、考えに考えて考え抜いて、模索し続けて───

 そこで斬撃の速度が自らの再生速度を上回ったことに気づいた。

 

「おいっ! 嘘だろ!?」

 

 体の再生に使用していた自分の力が枯渇しかけている。セラストは静かにその現実を受け止めた。だがそれは死を受け止めたということではない。

 

「僕が、お前なんかの人間如きに……」

 

 もはやこれが最後になるだろう。だからこそ、防御に回らない。やらなければいけないのは──攻撃。

 

「負ける筈が無いんだぁぁぁぁぁあああァァァァッッッッ!!!!!!」

 

全 出 力

◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢

量重MASS·GRAVITY

◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢◤◢

放 出 使 用

 

 放ったのは渾身の一撃、全ての力を以て放たれたそれは無数の斬撃を受けても尚消えることが無い。

 

「やったぞっ!! 喰らえ!!! お前はこの技の前に無様に死にやがれ───」

 

「「影己断立」」

 放ったのは渾身の一撃、全ての力を以て放たれたそれは無数の斬撃を受けても尚消えることが無い。

 

「やったぞっ!! 喰らえ!!! お前はこの技の前に無様に死にやがれ───」

 

「「影己断立」」

 

 

─────────────

 

影己エイコ断立ダンリツ

 

 

──────

 

影己エイコ断立ダンリツ

 

 

 

 ──ヴァントガゼルが、四体に増えた。

 

「……なんだよ、それ」

 

 

必殺(Certain KILL)

「「「「必殺」」」」

 

 

「なんなんだよぉぉぉっッ!! それ──」

 ──ヴァントガゼルが、四体に増えた。

 

「……なんだよ、それ」

 

 

必殺(Certain KILL)

「「「「必殺」」」」

 

 

「なんなんだよぉぉぉっッ!! それ──」

 

 

 

──────────────────────

 ───────────────

 

襲連シュウレン廻天カイテン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

「しじみさんッ!」

 

 もはや肉片すら見えなくなったあの怪人のことはどうでも良かった。今危惧するべきはしじみさんの安否だ。割れた窓を後で弁償しなければと思いつつ、真っ先に彼女の脈を確認する。

 

 首元に痣こそ残り呼吸こそ浅くはあるが──それ以外に何かをされたような跡があるようには見えない。

 

「良かった……無事だ……」

「……ヴァントガゼル……いや、カモメちゃんか……」

「えっ? なんでそのこと……じゃなくて救急車……!」

 

 絶え絶えとなりながらも返された返答に動揺を隠せない。変身中はボイスチェンジャーを使っている、少なくとも声でバレることは無い筈なのだ。

 

「その反応……やっぱりそうやったんか……あの怪人が……言うとったわ……」

「そのことは後で詳しく話します。とにかく今は安静にして──」

『──ヴァントガゼル、新たな怪人粒子を検出した』

 

 救急車を呼ぼうとした瞬間に、脳に『こいつ』の声が響く。だが今はそれよりも救急車を呼ぶ方が先だ。すぐにこっちを済ませ──。

 

 

 ジリリリリリリリリ!!! 

 

//// ENEMY APPEARED!! //// ENEMY  APPEARED!! //// //// ENEMY  APPEARED!! //// //// ENEMY  APPEARED!! ////

 

怪人が現れました

 

//// ENEMY APPEARED!! //// ENEMY  APPEARED!! //// //// ENEMY  APPEARED!! //// //// ENEMY  APPEARED!! ////

 

 

 ──怪人発生を表す警報がこの区に住む全員の耳に聞こえるように大きく鳴り響いた。どこからだと思い、次にふと気づいたのは苦しそうに呻くしじみさんと、その首元にある痣であった。

 

「うがっ、ああああああっっっ!?」

「ッ!? 大丈夫ですか!? しじみさ───」

 

 

q

q

q

q

 

 

 

 

 

 

 

 痣に隠れるようにして紋章らしき物がある。それが、燃えるように光っている。

 疑問に答えるように、『こいつ』の声が脳に響いた。

 

『粒子が検出された座標は──ちょうど今、ここだ』

 

 は? などと俺が言い終わる間も無く───

 それは異様な光景だった。

 

 

 紋章が光り、しじみさんが形容できない叫び声をあげる。その全身を覆うように、靄がかった黒い煙のようなナニカがしじみさんを覆いかぶさらんと集合していく。

 

 体に当たらないように鎌を振るう、だがその一撃は虚しくも煙の間をすり抜けていく。風──ダメ元で鎌で仰いでみたが、影響があるようには見えない。

 

「たっ、助けてッ! カモメちゃ──」

 

 やがて煙が口を覆い、声すらも聴こえなくなる。煙でもはや彼女の全身すら視認できなくなった。

 

「…………」

「し、しじみさん?」

 

 やがて()()が立ち上がる。沈黙を貫いたままで、何かを発する様子は無い。

 だがやがて煙が溶けるように消えていく。

 

 現れたのは、一匹の怪人。

 首元にある紋章が、眩しく光っていた。

 

 

 


 

 

 

 夜更かしに良いことは無い。脳が休まらない、勉強に身が入らない、何より愛すべき人のために時間を割けない。

 だから赤羽彩月は夜更かしをしない。深夜に怪人が発生することは珍しいことでは無いが、その場合対処に当たっていたのは大抵は青藍葵か、もう一人のヒーローの筈だった。それは二人が率先してそれを望んでいたからこその上が下した判断でもある。

 

 しかし今は状況が違う。一人は病院、もう一人は──まあともかく、今怪人の対処に当たれるのは彼女しかいないのが現状であった。

 何よりも次の金曜日、彼女には外せない大事な予定がある。それこそ、入念な準備と十全の対策を重ねなければいけないほどの予定であった。

 

 だからこそ彼女は欠伸を堪え、全速力で怪人粒子が検出されたであろう地点に向かっているのだ。

 

「どうか間に合って……!」

 

 決死の思いでマンションに辿りつき跳躍、ヒーローともなれば目標の階へ着くのにエレベーターは必要無い。

 一室についたレッドガランは目撃した。怪人と、ダークヒーローの姿を。

 

「んなっ……!? ヴァントガゼル……?」

 

 怪人粒子が検出されずにどうやってここへ──少しだけ浮かんだ疑問はしかし、彼女の異様な様子によって打ち消された。

 これまでのレッドガランにとってヴァントガゼルは冷徹な認められぬ英雄、遭遇した怪人は皆殺しにし、後には何も残すことは無い。

 

 だが今の彼女は鎌を振るうことも無く、怪人に攻撃を加えようとも、増して殺そうという気配すら無かった。必死で怪人を抑えようとしているのは、これまでの彼女からは想像すらできなかった光景であった。

 

 違和感が拭えないような光景であったが、今は怪人を倒すことが優先である。

 

 

 

紅蓮天照

 

 

 

 

紅蓮天照

 

 

あ.グレンあ.アマテラス

 

紅蓮天照

 

 

「ハァッ!」

 

 

 握る拳に巨大な十字の極光が宿り、激しい明滅を繰り返す。現在の彼女にできる精一杯の必殺技。白く燃えあがる火は熱く、周囲の物をチリチリと焦がしてしまうほどである。

 それを纏わせ、構え、怪人に放つ──。

 

 

 

 

 

─────────────

─────────────

─────────────

────────

 

斬黒ザンコク層断ソウダン

 

 

 

「なっ……!?」

「…………」

 

 光る拳を漆黒の壁が阻む、しかしどうやらそれでは足りなかったらしい。拳が壁を貫き、その衝撃でヴァントガゼルが吹き飛ばされた。

 初めてのことだった。レッドガランが押し勝つなどということは。

 

 だが予断を許さぬ状況であったのを怪人が認識したのであろう。割れた窓から飛び立ち、翼を展開し去ろうとする。

 

「させな──ッ!?」

 

 飛び去る怪人を墜落させんと構えるレッドガランを一振りの斬撃が襲う。咄嗟に姿勢を低くしそれを躱す、出どころなど探る必要が無い、ヴァントガゼルのものだ。

 

 怪人が、もはや夜の闇に溶け込み消えていく。逃がしてしまったのだ。目の前のダークヒーローに。

 いや

 

「……何故なんですッ! ヴァントガゼルッ!!」

 

 怪人に、だろうか。

 

「…………」

 

 返答は無い、期待もしていない。鎌を振り下ろす、逃げる際の動作──!

 一歩踏み出し懐に入り、降ろされた鎌を根元から握り、それを阻止する。

 

「逃がすと思ったんですか?」

「……あの怪人は、人から出来ている」

「は……?」

 

 変声した声から告げられる衝撃の事実は、レッドガランの動揺を誘うには十分な材料であった。そしてその晒す隙は、決して相手に許してはいけない物であるということに気づくのには、少しばかり遅かった。

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

黒雲コクウン飛亡ヒボウ

 

 

 

「待っ……!」

 

 ヴァントガゼルが黒い霧へ沈んでいく。

 レッドガランが手を伸ばす。それは空を切った。

 霧が晴れ、部屋には何も残らない。

 

「……まだ何も、話せていないのに……」

 

 ただ一人、苦悩する少女を除いて。




「そういえばなんで俺が変身した時に怪人粒子は出なかったんだ?」
『先ほど検出されたセラストの怪人粒子を解析し、こちら側で独自の検知されない怪人粒子を作り出した。これ以降はどこで変身してもその出どころが特定されることは無いだろう』
「なにその技術力……」


 面白かったという方は下のボタンからお気に入り、高評価、感想、またXでの読了ポスト等、行っていただけると幸いです。

お気に入り


評価


読了ポスト



 今回使用した特殊タグは自作のものとなります。
テンプレ表には無いですがここから他の特殊タグを自由に使用することが可能です。他にも様々な特殊タグを作成していますので、興味があれば積極的に使っていだけると嬉しいです。
 また本文中のようつべの特殊タグはアネモネ様の「特殊タグ詰め合わせ」を参考にさせていただきました。
アネモネ様にこの場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございます。

今話にて良かった思った特殊タグをお答えください

  • なんでそれを早く言わねぇんだ!
  • ヴァントガゼル特別必殺技演出(襲連廻天)
  • 襲連廻天の無数の斬撃演出
  • 紋章
  • レッドガラン必殺技演出(紅蓮天照)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。