TS転生系Vtuber、時々ダークヒーロー【第一部完結】 作:ムーンフォックス
──いよ」
「死黒暗澹」
突然の黒の斬撃が、セラストの溜めていたエネルギーの塊を真っ二つに切断した。爆発の衝撃で彼の身体が後方へと吹き飛はさせる。
「なっ……なんで……」
「どうして……」
突然の出来事に彼も、そして彩月でさえも混乱が隠せない。
彼女はついさっきまで失神して、何もできなかったはずではないか。
だからあり得るわけが無いのだ、彼女が、ヴァントガゼルが再び立つなどと言う事態は。
「まぁ良いさ、どんなトリックを使ったのか知らないけど、さっきまでフラフラだった君に、できることなんて──ッ!?」
そこで初めてセラストは異変に気付いた。
自身の身体にあった筈の力の大半が失われている。
今の彼は先ほどの二割の実力すら引き出すことはできないだろう。
だが一体何故──疑問に思う彼を襲うのは、とある一つの感覚。
まるで、この感覚は、まるで中で誰かが暴れているような……。
「あっ、あのクソやろ──」
だから、レッドガランの背後の攻撃にも気づけない。
「なっ、お前──」
彼がこの事態に混乱している時間でレッドガランは自らの体力を僅かながら回復させることに成功した、だからこれはその体力の全てを使い放つ正真正銘の最後の必殺技。
奇襲とも呼べる火球の一撃が彼を焦がしながら、とある一つの方向へと向かわせる。
「影己断立」
二人に分かたれた、ヴァントガゼルの方へと。
炎に焼かれ、数多の斬撃がセラストへ容赦も無く降りかかる。斬撃はそれだけでない、塔の外壁を、塔の天井を、その全てを削り、燃やし、切り刻み、焼失させ、消失させていた。
「なんで……ッ!! 僕はっ、僕はァッ!!」
「どうでも良い……!! その体をさっさと返せッ!!」
「うああああァァぁぁあぁッッッ!!!!!??」
そして、斬撃音が止んで、静かになって──
中から姿を現したのは、セラストの体となっていた女性だった。腕が先の戦闘で切断されていた筈だが外傷は見当たらない。どうやらあの懐中時計の言った言葉は本当だったらしいと、ヴァントガゼルが安堵のため息を一つ吐いた。
だが物理法則には逆らえない、彼女の体が下へと落ちて行き──それを受け止めたのは、レッドガランであった。
変身可能時間も残り僅かだったらしく、その直後に変身は解除された。
「う、あ、わ、私……」
「大丈夫ですか!? すぐに病院に連れていきますから!」
「あ、はい……なんとか……」
「良かった……」
彩月が不安げに呼びかけるが、彼女の返答は明瞭で、意識ははっきりとしているようだった。どうやら命に別状は無いらしい。
遅れてヴァントガゼルが地面に着地する──瞬間だった。
「なに──!?」
「これは──ッ!!」
突然、塔が唸り声をあげるかのような音をたてながら揺れ動いた、塔のあちこちが崩れていく。戸惑うヴァントガゼルに応えるように、懐中時計が光を瞬かせる。
『核となる怪人の消失により、塔が崩壊を開始。今はまだ軽度な振動に留まっているが、完全崩壊までの猶予は皆無。速やかな退避を推奨する』
「……レッドガラン、このままだと塔が崩れる。今のうちに早く脱出を──」
『ッ! 後方より怪人反応ッ! この反応は──!』
「あのままで死ねるかよぉぉぉッッ!?」
そこに襲いかかる怪人──セラスト・ペスシクルの姿。ヴァントガゼルは思い出した、万が一彼女の身体が傷つくことを考慮し、威力を抑えて必殺技を発動していたことを。
「せめてこのクソヒーローは道連れだぁぁぁぁッッ!!?」
どうやらそれが裏目に出たらしい、身体のおおよそが損失して、もはや残ったのは傷だらけの右腕と頭部と、それを辛うじて接続してる胴体のみ、風前の灯火な命はしかし、だからこそ動きを機敏な物へと昇華させ、ヴァントガゼルの対応を遅らせた。
標的は一人──変身の解除された赤羽彩月。
(間に合わない──ッ!!)
「死ねえぇぇぇえええぇぇッッ!?」
「ダメッ!! 赤羽さ──ッ!!!」
そう。全てが何もかも円満に解決して、終わるなどと、そんなことはあり得ない。
そんな出来事が起こせるのは画面の中のヒーロー──
「水尽切利」
──或いは、かつては英雄とすら謳われていた、本物のヒーローくらいなものであろう。
セラストの身体が飛来してきた水に切断される。
「ギャッ!?──」
『……怪人の撃破を確認』
あっけなく、セラストはその最期を迎えた。
その死体が塵と化すよりも早く、最上層へと登ってきた
ヴァントガゼルの脳裏に浮かぶ、先ほどの『こいつ』の言葉。
言葉通りに彼女がやってきた。
あ
あ
あ
青の英雄、ブルーネヴィルが。
「せっ、青藍先輩……」
「お待たせぇ。彩月ちゃ〜ん! ちょっと下にいる怪人全滅させるのに時間がかかっちゃってぇェ」
ヴァントガゼルはまるで眼中にないかのように、ブルーネヴィルは彩月と彼女が背負っている女性の二人に話している。
「外に佐藤さんと救急隊が待機してるからぁ〜、あなたたちは彼女達と合流してぇ。もう道中に怪人はいないから安心して良いわよぉ〜」
「すみません、ありがとうございます……!」
「……青藍先輩は?」
「まだ
「怪人って……まさか青藍先輩──」
「行きなさい」
彩月の問いに、ブルーネヴィルの雰囲気が変わる。少しだけ彼女はヴァントガゼルとブルーネヴィルへ交互に目を寄せたが、一般人を優先し背を向け、出口の方へと歩いていった。
「……青藍先輩」
「なぁに?」
去り際に、彩月は問うた。
「許すことって、できないんでしょうか?」
「ダメよ、許さない」
「ッ……でも」
「さっさと行きなさい、あなたとその人を巻き込みたくない」
「……わかりました」
下層へと降りていく二人。
ブルーネヴィルがそれを見届けて、そして意を決したかのように、彼女は向かい合った。
ヴァントガゼルと。
自らの行ってきた、過ちと。
「……ブルーネヴィル、このままだと塔が崩れる。ここで戦えば崩壊に巻き込まれて二人共死ぬ、今は早く脱出を──」
「良いじゃない。最悪あなたを道連れにできるわ」
「…………」
「……えぇそうよ、私は許さない」
『ウェポン』
「あの日私の両親を助けなかったあなたを、決して許さない」
刀を、そして向ける。それは明確な『
「あなたを殺すまで、私の復讐は終わらない」
『構えろ、ヴァントガゼル』
「始めるわ」
『来るぞ』
「死ね」
そう。全てが何もかも円満に解決して、終わるなどと、そんなことはあり得ない。
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紅蓮廻天・襲連天照
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燃え尽きること無き復讐者