「縺薙m縺吶o縺悶」
『ッ!? ヴァントガゼル!!』
声に反応するかのように、俺の動作は一瞬だった。必殺技には必殺技でしか対応できない。懐中時計から電子音を響かせる。
『必殺』
迷っている暇は無い。エネルギーを纏わせた鎌を以てしての全力の抵抗。
ヴァントガゼルの必殺技
『死黒暗澹』は
ブルーネヴィルの
『青嵐水波』と
拮抗する程の力を持つ
これまで彼女が戦った
怪人の中で、この技を
受けて生存した者は0──
──何だ、この威力は。
このまま真正面から受けるのは危険だと一瞬で理解する。受けるだけでは──死ぬ。判断は早い。攻撃を受け流す。
衝撃は背後のあった高層ビルを襲い、一瞬でただのコンクリートの破片群に変貌させる。
「ありゃ、生き延びちゃったか」
正面から聞こえる怪人──確かセラストと言ったか──の呑気な声、あの威力の必殺技を出したというのに、疲弊の様子をまったく見せていない。
背後で倒れている赤羽彩月の言葉を噛みしめるように反芻する。
こいつ──
強い──
「うん、それじゃ出力あげるから。頑張って耐えてね」
──は?
「縺薙m縺吶o縺悶」
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質量重力
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黒雲飛亡──いやこの火力では煙ごとかき消される──ならば真正面から──いや無茶言うなよ
考えろ、俺。ここで生き延びる方法を。
残された少ない
猶予の中で、
ヴァントガゼルは
生き延びる方法を
必死で模索した
──赤羽彩月を捨てて、逃げる。
とっとと逃げるべきだ、俺だけならまだ間に合う。
赤羽彩月は死ぬけどしょうがない。これは俺にできる範疇を超えてる。
「カモメちゃんが私に生きる
意味を与えてくれたから」
さあ逃げるぞ、よし逃げるぞ。後は頼んだぞヒーロー諸君。
…………。
午後1時6分。
セラスト・ペスシクルによる
『質量重力』、着弾
子供の頃、俺は画面の中のヒーローをずっと偽物だと信じていた。何故ならそのヒーローは俺を救ってくれないからだ。
そのヒーローが救ってくれるのは大抵が俺より悲惨な目にあってる奴だったり、敵幹部に誘惑されて悪にうっかり落ちてしまった奴ら──そんな画面の中にしかいないだろう存在だけ。俺みたいに両親とくだらないことで喧嘩したり、赤信号渡ったり宿題やり忘れたみたいなちょっと悪いことを沢山してしまった時も、ついぞヒーローは俺の前に現れてくれなかった。
本物のヒーローならば、俺を救ってくれるのだろうか。
でも悲しいことに、俺はその本物のヒーローでは無いようだ。俺を救ってくれなかったテレビの中の偽物ヒーローみたいにはなるまいと意気込んでいたが所詮はダークヒーロー。青藍葵の両親のように、俺では救えない命が確かにある。
どこまでも現実は残酷で、俺がずっと偽物だと思っていたヒーローは正真正銘の本物のヒーローらしくて、そんなヒーローは俺を助けてくれないし、俺みたいなダークヒーローは全員を助けられない。
──目の前に、あの怪人の放った巨大なエネルギーの塊がある。死を覚悟してまた目を閉じ数十秒が経過する……再び目を開ける、だがその塊は依然としてそこにあって、動いていないように見えた。
時間でも止まったのかと錯覚する程に、一向に攻撃が着弾しない。
「……なるほどね」
だがやがて嗚呼と、納得する。これは俺の脳が引き起こした走馬灯未満のもの、言うならば運命の選択ってわけだ。
この距離ならまだ間に合う。
離脱することができる。
レッドガランを見捨てることができる。
──ああそうだよ。俺はヒーローなんかじゃないから、逃げれば良い。前世のように、押しつけられることもない。
そうだった。前世の俺はとにかく利用される人間だった。誰かに知らない道を知られるために利用されたし、誰もやろうとしない面倒なことを、俺の心中なんて聞かずに押し付けられるなんてのは良くあることだ。でも今は違う。もうそんな嫌なことはまっぴらごめんだ。自由に生きる。自由にVtuberをやっている。
──だったらなんで、俺は今ヒーローなんていう人助けをしなきゃいけない面倒なことをやっている?
なんでって……なんでだろうか。
ぽまいら、私の雑談を聞け
24 人が視聴中..5 時間前 ...その他
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.果喪鳴 404
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眼前に一つの配信の枠が浮かんでくる。俺はそれを知っている。当然だ、一年前のまだ登録者がまだ少ない頃、同説が百人を超えることがまだ夢のまた夢だった頃の俺のチャンネルだ。
「ちゃうねん、私はナメクジみたいにって言ったのは…お、初見さんいらっしゃーい」
「急にシリアスな話題ぶち込んでくるじゃん」
| あんな可愛い女の子が怪人の相手してるとかもう終わりだよこの国 |
「憂いてんねー」
懐かしい光景だ。当時の世間は台頭したヒーロー達に対しかなりの猜疑心を持っていた。彼女らへのバッシングや誹謗中傷も少なくは無かったことを覚えている。
「どうって…大丈夫? これ荒れない? まあ後でアーカイブ消せば良いか…」
あの時の俺は、あの時の俺はなんて言っただろうか。アーカイブは消してしまった。まだヴァントガゼルになったばかりだった未熟な頃の俺は、なんと言ったのだろうか。
「まあ…ヒーローなんて銘打っているけどさ、ここは現実だからきっとテレビで映るヒーローのようにうまくいかないことがいっぱいあると思う。それで色々と苦悩すると思う」
「でもね、私は言いたい。例えいくら力を持とうとヒーローはしょせんまだ年端のいかない女の子なんだって、嫌になったら逃げ出しても良いんだって。たかが女の子がこの国の平和のために戦えますかっちゅー話よ。無理でしょ」
「怪人なんてアイツに任せとけばいいじゃん! ほら、ヴァントガゼルに。でももしその責任を背負うことを決意したのなら…その時は戦ってほしい、全力で」
──そうか
前世の頃からずっと、他人に押し付けられるのが、他人に利用されるのが嫌だった。
だがなんということだ。
俺は、俺自身に押し付けたのか。ヒーローの責務を、怪人を殲滅するということを。
俺は結局、自分が嫌っていたことと同じことをしていた。
それに気づいた時、俺の意識が急速に呼び起こされる感覚があった。決意の時間は終了したということだ。あの攻撃から逃げるか? 逃げないのか?
どんな選択をするかは自分でも驚くほどあっさりと決まっていた。
「……うん、まあこんなもんか」
舞い上がる土煙を手で払いながら、セラストはため息をついた。
この国を守るヒーローと名乗る存在。仲間の怪人達が次々とその存在にやられていく。だからどんなものかと期待し挑んでみれば呆気ないほどの勝利。なんともまあ肩透かしを食らったような気分であった。
帰ろうかとセラストが背を向けた時──異変に気づく。
土煙が収まっていく。
ヴァントガゼルが、そこに立っていた。
「なんで庇ったの? 君ならそいつを置いて逃げれた筈だけど?」
確かに驚きはしたが、良く見れば彼女の生々しい傷跡が至る所にあり、足取りも覚束ない。限界が近いことは火を見るより明らかだった。故にこの場のセラストは問いかける。
「……思い出した、からだ」
返ってくる答えはセラストを困惑させる。あの一瞬の間に何を思い出す暇があった? 思い出したとは何を? 様々な疑念を浮かべるが、ヴァントガゼルの続く言葉がその思考を打ち切る。
「いつも、他人から求められていたのを。それが嫌だと思いながら、それに甘えてた自分のことを」
「……うんーっと?」
「これが俺にとって当たり前で、いつも通りだということを」
ため息、これまで自身がしてきた中で一番大きいとセラストが確信するほどの、長いため息が辺りに響く。この場において彼が強者であるのは絶対であった。
「うん、じゃあ死んでよ。そこいらの死体共のように、僕に負けるのが当たり前だと思いながら」
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質量重力
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故に強者は気付かない。
「青嵐水波」
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質量重力
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この場に彼以上の強者が乱入したことに。
セラストの必殺技が両断される。あまりにも突然すぎる出来事の中、初めに声を発したのはセラストだった。
「……誰かな?」
「通りすがりのヒーローよぉ」
の
青
「青の英雄、なんて呼ぶ子もいるけどねぇ」
雄
英
――荒巻し水縹
ブルーネヴィル
BLUENEVILLE
本名・青藍葵
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今回使用した特殊タグである漫画風ナレーションは自作のものとなります。
ここから特殊タグを自由に使用することが可能です。他にも様々な特殊タグを作成していますので、興味があれば積極的に使っていだけると嬉しいです。
また本文中のようつべの特殊タグはアネモネ様の
「特殊タグ詰め合わせ」を参考にさせていただきました。
アネモネ様にこの場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございます。