GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境 作:混沌の魔法使い
GS芦蛍外伝平安大魔境 その11
~高島視点~
京で噂になっている横島と言う若い陰陽師が英霊を撃破したと言う話。正直眉唾物程度に思っていたが、西郷も加わり、帝、そして輝夜様……忌み子といわれている藤原の姫まで動けばそれは紛れも無い事実。
(……ちと不味い事になったか)
ここまで大々的にするという事は帝自身も相当横島を気に入っている。あの人は悪い人ではないんだが、権力などに揉まれて育ったからか、信用出来る人間は何をしても自分抱えにしようとする癖がある。
(横島が取り込まれちまうわな)
五貴族と言う盆暗が輝夜様に婚姻を申し込んでいるが本人がその条件として宝を持ってきたらと言った。だがそれは帝が口を挟んでいないからだ。ここで帝が横島と言えば五貴族の申し出は全て却下されるだろう。
「悪いけど、清姫とシズク。横島とやらに接触してきてくれるか?」
「……それは構わないが、英霊はどうする?」
「多分お前達はいない方が良い」
シズクと清姫の力は京でも有名だ。そんな2人が討伐に加わったとなれば、いらぬやっかみを受けるだろう。そうなると帝のお気に入りの横島と美神達を面会させるというのは難しくなる。危険は承知だが、俺の時代のシズクと清姫は参加しないほうが良いだろう。
「まぁ、1000年後の私もいますし、大丈夫でしょう。ではでは私は高島様の転生者とやらを見に行くとしましょうか」
「……そうだな、気にはなっているしな」
本気で2人が動けば陰陽師の結界なんて何の問題も無い。それに英霊討伐の実績の問題でやっかみを受けるかもしれないから、その護衛位にはなってくれるだろう。
「高島様~やすまなくて大丈夫~?」
「いや、今から休むよ。幸華」
そう笑い掛けて目の前を通り過ぎようとすると着物を掴まれた。
「気をつけてくださいね。私は出来る限りの準備をしました。でも……それでも相手は強い」
「ああ。判ってる、ありがとう。心配してくれて」
幸華に礼を言って宛がわれた自室へ向かう。
「呼んでおいていないとか悪いと思わないの?」
「はは、すまないな。打ち合わせをしていた」
頬を膨らませているメフィストに悪い悪いと謝罪の言葉を口にし、六道の屋敷にいる間に用意していた特注の陰陽札を渡す。
「英霊との戦いはお前が切り札だ。札を切る所を間違えないでくれよ」
「責任重大ね、でも任されたわ」
俺でも用意出来たのはたったの2枚。これを外せば、俺達にあの化け物を倒す手立ては無い。正真正銘の切り札だが、これを使えるのはメフィストしかいない。神妙な顔で特製の陰陽札をメフィストへと託すのだった……。
~シズク視点~
六道幸華、そして高島忠助と平安時代でも指折りの陰陽師の作り出した術式の中に英霊「長尾景虎」を追い込むというのが1番の難関であると私達は考えていた、だが目の前の光景に呆気に取られながらも、英霊の誇り高さを私は見た……。
【ギリィ……ッ!!】
歯が砕けるほどに噛み締め、拳からは血が滴らせながら長尾景虎は陣の真ん中にいた。
【……コレガ……ワタシに出来る……サイゴ……】
血涙を流し私達を見つめる長尾景虎。最早これ以上アスモデウスの支配に抗うのは不可能と言うのが目に見えて判った。
「ここまでやってもらって、出来ませんでしたじゃないわね」
「……そう、ですね」
正直自我を失った所で長尾景虎と言う英霊は桁違いに強い、陣の中でどれだけ弱体かさせれるかも未知数だ。だが自分から不利になる場所に踏み込み、そして待っていたと言う長尾景虎の意志に報いなければならない。
「俺と幸華の作った陣は月が昇るほどに効果を発揮する。最初は無理せず行くぞ、特にメフィストな」
「……判ってるってッ!!」
月は今登り始めたばかり、最大の効果を発揮するまでは相当の時間が掛かるだろう。それに焦れて突貫するなよと高島がメフィストに注意する。
「……お前も考えなしで突っ込むなよ」
「判ってますわよ、私は死にませんわ。横島様に再会するまでッ!」
こいつは殺しても死にそうに無いなと苦笑し、地面に手を当てる。
【小賢しい真似をッ!】
「……人間と戦うんだ。知恵を使うのは当然だ」
前回は突発的な戦いだったので何の準備も出来ていなかった。だが今は違う、大量の水を吸収してきているので戦場を自分達に戦いやすいように整えるのが私の役目だった。
「スケートの要領よ、大丈夫ねッ!」
「は、はい!大丈夫です!」
美神と蛍は氷を最大限に生かす戦法……スケートの要領で氷の上を滑り徹底して援護に回る、言ったら悪いが美神と蛍の攻撃力では英霊にはダメージを与える事が出来ない。それならばダメージを与えるのは無理と割り切り、妨害に回ってもらった方が有効だ。
「急急如意令ッ!風精招来ッ!」
【くっくっくく……ッ!?】
そしてそれは高島も同じ事だが、高島は陰陽術による攻撃で妨害と僅かに攻撃を兼ねている。
(……分析の結果は間違いじゃない)
確かに長尾景虎は恐ろしく強い部類に入る英霊だ。だがその根底は毘沙門天の化身と言う事に帰結する。そんな長尾景虎から毘沙門天の事を忘れさせたらどうなるか?答えは簡単だ。今の長尾景虎はただ身体能力の高い英霊にまで落ち込んでいる。
「……しくじるなよ」
「言われなくてもッ!」
そしてダメージを与えるのは私と清姫の2人。神魔であり、龍族である私達とメフィストだけが長尾景虎に有効打を与える事が出来る。
【神魔には興味が無いとッ!】
「そんなにつれないことを言わなくても良いんじゃないッ!!」
【ッ!】
捕縛ロープで腕を狙う美神。それは手首に巻きつき、長尾景虎の注意をそちらに逸らす。これは本来ならばありえない隙と言っても良い、人間を殺せという命令に従い、それに過剰に反応してしまっている。そしてその過剰な隙は私達にとっては非常に大きな隙だ。
「せいっ!!!」
「隙だらけよッ!!」
清姫の薙刀の一閃とメフィストの魔力弾が炸裂し、長尾景虎を大きく弾き飛ばす。だが即座に水の腕を伸ばして足を掴んで引き寄せる。
「「せーのッ!!!」」
【ぐっ! 人間があッ!】
引き寄せた所を蛍と美神の両サイドからの神通棍の一撃を叩き込む。激昂した長尾景虎が刃を振るうが、それは氷で防いだ。
【これは……思った以上に厄介なッ!】
「……人間を舐めるからこうなる。人間は時に神魔よりも悪辣だぞ」
そこまで言う?と美神が呟いたが、私の中ではお前は神魔よりも悪辣だぞと返事を返す。確かに今は優勢だが、ダメージは殆ど通っていない。
(……想像以上に厄介かもしれないな)
戦闘の流れを取ることが出来ても、ダメージを与えれないのでは意味が無い。こうなると高島の用意した陰陽札だけが倒せる好機かもしれない……こうなるとほんの僅かなミスも命取りになる。私は背中に冷たい汗が流れるのを感じるのだった……。
~蛍視点~
戦況は有利……と言いたかったが、既に有利性は徐々に失われ始めていた。いや、そもそも有利性なんて私達にはなかったのかもしれない。
【滑ると言うのなら蹴り砕くまでッ!】
分厚い氷を蹴り砕き、自分の思い通りに景虎が動き出した段階で私と美神さんは逃げに回らなければならなかった。
「ちいっ!見目は良いのに化け物かッ!」
【遅いッ!】
「舐めんなッ!!」
光にしか見えない景虎の太刀筋を剣指で防ぐという規格外の芸当を見せる高島だが、即座に腹に蹴りを叩き込まれその身体が宙に舞う。
「シズク!清姫!頼んだわよッ!」
美神さんがシズク達にフォローを頼み吹き飛んできた高島を受け止める。
「大丈夫!?」
「げほっ……何とかな。くそ、特製の防御札が一発でお釈迦かよ」
高島が作った札でも景虎の攻撃は防ぎきれなかった。月はもうすぐ頂点を指し示そうとしている……それなのに何故。
【……ここら辺で一献いただきますよ】
流れるような素振りで景虎がその手に取り出した杯、その中身が赤黒い液体だったのを見てシズクと清姫が即座に動いた。
「させませんッ!」
「……させるかッ!」
私達の目では捕えることが出来ない神速の一撃だった、だが吹き飛んでいたのはシズクと清姫のほうだった。
「「え?」」
【あはッ!あはははははっは!!!!!】
液状の狂神石を飲んだ景虎の全身から赤黒い魔力が放たれ、呆然としていた私と美神さんもボールのように弾き飛ばされ壁に背中から叩きつけられる。
「げほっ!げほっ!おえっ!!」
「ごほっごほっ!!こ、これはやばいわね」
たたきつけられた衝撃で肺から酸素を押し出され、必死に呼吸をしようとするがどうしても息が吸えず嗚咽が零れる。
「くっ!ちょっとこれ以上は無理よッ!」
「駄目だッ!メフィスト!早すぎるッ!」
高島の制止を振り切り、メフィストが陰陽札を切り、増大させた雷を放った。だが景虎はそれを見てにやりと笑うと腰に納めた刀を勢い良く抜刀した。
【シッ!!】
鋭い斬撃音と共に雷は断ち切られ、刀の切っ先から飛んだ赤い刃で視界が真紅に染められた。
「……間に合えッ!」
シズクの珍しい焦った声……それがこの戦いで私が覚えている最後の事なのだった……。
~美神視点~
メフィストの強化された電撃を自分の魔力で巻き込んで弾き返すと言う荒業で反撃して見せた景虎。その一撃で私達は壊滅寸前に追い込まれてしまった……。
(あんな芸当が出来るなんて……ッ!)
他人の魔力に自分の魔力を上乗せして跳ね返す。そんな芸当が出来ると判っていればメフィストの霊波砲を増幅して叩き込むなんて真似はしなかった。
(これが……英霊ッ!)
英霊とは横島君が何度も戦っていた。そして何度も勝利していた、だから勝てないわけではない……横島君の戦いを基本的に見ていることしか出来なかったのにそう考えたのが私達の根本的な所のミスだった。
「……最悪撤退するぞ」
「これは状況が悪いにも程がありますわ」
相手の戦力を見誤っていたのは最大の失敗だ。だが確かに最初は私達が優勢だった。イニシアチブも取っていたと思う、計算外だったのは液体の狂神石を景虎が飲み干した事だった。
「ごめん、私のせいだわ。なんとか足止めはするから離脱する方向で考えて」
今回の討伐作戦は失敗だった。最早これ以上戦いを続けても勝機は無い……逃げるのが最善の一手だと判っている……だけどここで逃げたら残るのは完全に狂神石に飲まれた英霊だ。もう2度とこのようなチャンスは訪れる事は無いだろう……。
「高島!蛍ちゃんをお願いッ!」
「おい!そんな事言ってる場合じゃないだろ!今回は失敗だ。逃げるべきだッ!」
思いっきり頭からたたきつけられていた。今もぐったりとして意識の無い蛍ちゃんを高島に預けて、匍匐前進で無理に移動する。高島の言う通り逃げるのが1番の正解だとわかっている。だけど私達には確実に次は存在しないのだ。
(無理でもここでしとめないと……)
とは言え放出系ではまた反射されるのがオチだ。手首につけた隕石落としの時の使った擬似神具を起動させ、弓矢を構える。ただ。立ち上がることが出来ないので、上半身を起して構えているだけなので照準がぶれてしょうがない。
【はははは、あははははははッ!!!】
「……がっ!?」
「シズク!さっさと体を繋げなさいッ!」
両断されたシズクを清姫が庇いながら前に出る。だが薙刀の一撃は簡単に受け流され、返す刀が頭に向かう。
「させないッ!げごっ!?」
【はははははッ!邪魔ですよッ!】
景虎の回し蹴りで吹き飛んだメフィストの懐から札が落ちる。それは何の偶然か、夜風に乗って私の手元まで飛んできた。
(こうなりゃ自棄よッ!)
弓にその札を貼り付けて、力を込めて矢を引いた。跳ね返すというのなら跳ね返せないまで圧縮した霊力で貫通させる。
(幸いにもチャンスはある)
完全に狂神石に飲まれ暴走している。最早私にも警戒する素振りを見せていない、だからこそ、これが最初で最後のチャンス。
「……こっちだ!」
「ふっ!!」
シズク達が私が何をしようとしているのか理解し、足場に氷をばら撒き、そして清姫の炎が景虎の視界を防いだ瞬間。私は矢を放った、ギリギリまで消耗しているのもあり、放った瞬間に霊力が枯渇し、意識を失ったが……
【あ……】
驚くほどに静かな声が聞こえてきたので、命中したと私は確信しながら意識を失うのだった……。
~アスモデウス視点~
「やられた……か。まぁ良かろう」
景虎と頼光がやられたが、そこまで重要視はしていなかったので、これも当然と言うべき結果か……。
「やはりガープでないと駄目だな」
我も精神操作は出来るが、やはり歴史に名を刻まれた英霊だと我程度の精神操作では抗われるか。
「しかし、自ら当たりに行くか。誇りばかりが高くて困るな」
美神の放った攻撃は明後日の方向だったが、まさかそれに景虎が当たりに行くとは想定外だ。だがそれとは別に判った事もある。
「やはり警戒するべきは横島だけか」
美神達は確かに稀有な霊能力や知識を持っているが、所詮は人間の枠の中に留まっている。今回も景虎自身が抗わなければ美神達は勝てなかった。
「特出した物は無い」
あくまで人間として優秀なだけだ。我から見れば横島の激情を駆り立てる存在でしかない、つまり戦う上では何も警戒に値する相手ではないと言う判断に辿り着いた。
「さてと、ではそろそろ我も挨拶くらいはしておくか」
【伴を致しましょう】
「ああ、来い。配下無き王など笑い話にもならん」
あれだけ何度も我が友の計画を防いで来たのだ、それなりに我を楽しませてくれるだろう。我はそう判断し、道真を連れて拠点を後にする……今まで映像越しで見ていたが、さてさて我らの計画を幾度も無く邪魔してくれた者達の実力がどんな物なのか、この身を持って体感するのも悪くない。
GS芦蛍外伝平安大魔境 その12へ続く
今回は少し短めでした、やっぱり横島がいないと英霊クラスが相手だと上手く決着まで持っていけませんね。これは要精進ですね反省します。次回は美神と横島達の再会を書きますが、やっぱりまた分断及び別行動になると思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。