GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境 作:混沌の魔法使い
GS芦蛍外伝平安大魔境 その12
~横島視点~
【お前は本当に考えなしだ。この馬鹿、馬鹿者がッ!】
「はい、はい……すいません」
心眼先生の説教を俺は甘んじて受けるしかなかった。狂神石に取り込まれている頼光を眼魂にして、使おうとした俺は完全にダウンしていた。ジャンヌさんの眼魂を使った時のような身体のだるさと重さ。今も布団に横になっているが、起き上がれる気がまるでしない。
「大丈夫?」
「うん。もう少し横になってれば大丈夫だと思う」
「1人で無茶をしたら駄目だよ?」
「うん。ごめん」
輝夜ちゃん達に駄目だよと注意されると罪悪感が凄い……心配されているのも判るし、何よりもこの不安そうな顔を見ると罪悪感に押しつぶされそうになる。
「みむーみみーむう!」
【ノブ!ノブブウーッ!】
ぺちぺちと俺を叩くチビとチビノブにも叱られ、罪悪感で本当に押しつぶ……
「へぶうっ!!」
「!!!」
うりぼーが子供モードで箪笥の上からダイブしてきた。やばい……めっちゃ痛い、と言うか本当に実際に押しつぶされてしまった。
「うりぼーが女の子になった!?」
「!……!?」
驚いている輝夜ちゃんと言葉もないもこちゃん。そして喋れないうりぼーはぽこぽこと胸を叩いてくるので、本当に罪悪感が……。
「大分絞られたみたいだな」
「西郷さん……はい、すいません」
「全く私の警告を聞かないからだ。独断専行の癖でもあるのか?」
怒りながら俺の額に札を貼った西郷さんはそのまま指で印を結ぶ。
「あれ、大分体が楽に……」
「霊力の乱れを整えただけだ。後は安静にしている事だ、3日後に帝がお前の師と謁見を認めてくださる。それまでに体調を整えておくんだな」
美神さん達に会えると聞いて判りましたと返事を返す。皆無事だと良いんだけど……本当に心配だったからな。
「「……」」
しかし俺は美神さん達に会えると聞いて完全に浮かれていて、無表情で俺を見つめる輝夜ちゃん達に最後まで気付けなかった。
「少しだけ散歩してくるね」
「あんまりうろつかないほうが良いんじゃないかしら?」
「大丈夫。すぐ帰るから」
あれから更に2日後。明日美神さん達に会う前に少しだけ身体を動かしておこうと思い、うりぼー達を連れて散歩に出る。
「全然人がいないな」
「みむ」
「ぷぎゅ」
昼間だというのに人が全然いない。もしかして結界?と思ったが心眼が何も言わないので結界ではないのだろう。そんなことを考えながら輝夜ちゃんの屋敷の周りを歩いて曲がり角を曲がった所で俺は目を見開いた。
「シズク?清姫ちゃん?……じゃない?えっとぉ?」
シズクと清姫ちゃんの姿を見て駆け寄りかけたが、気配が微妙に違う気がして踏み止まった。
「……シズクではあるが、私はお前の知るシズクとは違うだろうな」
「私もですわね」
もしかして平安時代の2人だと気付いた。もしかして美神さん達からの伝言でも聞いて来てくれたのだろうかと考えていると2人は俺を見つめて、何か納得したように頷いた。
「……あいつの転生者と言うのは間違い無いようだな」
「でも、愛くるしいですわ。ちょっとこの幼い感じが良いですわね」
……なんだろう。2人とも知っているはずなのに、目つきが違うからかとてもじゃないけどシズクと清姫ちゃんに思えなかった。
「……警戒心もまずまず、悪くない。まぁ良い、元気なのは確認した。明日また会いに来る」
「まぁ帝がいるので思うように話は出来ないと思いますけどね。ではでは、またお会いしましょう」
2人はそう笑うとゆっくりと歩いていく、俺はその姿を無言で見送り、その姿が見えなくなってからその場に座り込んだ。
「みむう……」
【ノブウ……】
「ぴぎー……」
「ああ、怖かったな……あれが本当のシズクと清姫ちゃんって事なのかな」
神魔として龍族としての2人はあんなにも怖いんだなと初めて理解した。元の時代だと親しいからこそ、神魔の恐ろしさって言うのがハッキリと判った。
【お前の時代の2人は既に神魔とは縁を切っている。だから自由に生きているって事さ】
「まだ役職があるってことなのかな……」
小竜姫様が妙神山の管理をしているようなものかなと思い、肝を冷やしたのもあり輝夜ちゃんの屋敷に戻ろうとしたその時。
「ひゃあああーーッ!?」
足を血塗れの手が掴んできて思わず悲鳴をあげて後ずさった。茂みから伸びている血塗れの手の主が俺が下がったことで姿を見せる。
「女の子?」
【違う、鬼だ】
鬼……確かに頭には立派な角がある。でもその黄色い着物は真紅に染まり、呼吸も虫の息だ。
【連れて行くのか?】
「こんなのを見てほっておけないだろ」
血塗れの少女を背中に背負い、慌てて輝夜ちゃんの屋敷へと走った。
「おかえ……ちょ、ちょっとどうしたの!?血塗れじゃない!?」
「怪我人を見つけて、どこかで横にさせれないかな?」
「……離れなら良いと思うわ。こっちよ」
最初は驚いた輝夜ちゃんだったけど、休ませたいと言うと離れへと案内してくれた。その後俺達は濡れたタオルなどで少女の血塗れの腕や顔を拭いて、服を着替えさせて……勿論俺は席を外してだ。離れの布団の中に彼女を横にさせるのだった……。
~蛍視点~
やっと横島に会える……そう思っていたんだけど、実際は私の期待したものではなかった。横島は上座で、西条さんに良く似た陰陽師にがっりちと動きを封じられていて、高島も上座に上がったけど私達は下座に座らせていた。
「暴走した英霊の討伐。真に見事であった。褒美を取らそう」
「ありがたき幸せにございます」
高島が褒美を受け取るのと私達は頭を下げてみているしかない。横島がおろおろしているのが判る、横島自身もこんなのを望んでいないというのが良く判る。
「民間の巫覡と聞くが実に良い腕をしている。望むのならば、私の配下として迎え入れよう」
「お言葉は大変ありがたいですが、私達にはやらねばならぬこともあります。つきましては、私の弟子をお返し願いたい」
「……ふむ。なるほど、確かに弟子ならば師に返すが道理」
帝の声質はすっと胸の中にしみこんでくるような声だ。だがその声が危険だというのは私も十分に把握していた。
「輝夜も藤原の姫も横島を気に入っている。弟子として連れまわすよりも、その幸福をと思うのが師としてやらねばならぬことではないか?」
歯を噛み締める、横島は能力を見せすぎた。それを見て帝が惜しいと思い、横島を自分の懐に取り入れようとしている。
「お、俺は「今、お前に発言の許可は無い」……うっく……」
西条さんに似た陰陽師に動きを封じられ発言すら横島は出来ないでいる。これは完全に横島が人質と言う立場であると言う事を示していた。
「どうだろうか?お前の許可さえあれば、横島の婚姻をと私は考えている」
「……それは出来ません」
「ほう?帝たる我に逆らうか?」
護衛達の気配が鋭くなり、帝自身の目付きも鋭くなった。
「私の弟子はその親御より預かった大切な子であります。師として親の元に帰すのが第一です」
「ほほ、それならば親御もこの場に呼んでも良いぞ?」
「ご冗談を、それに輝夜様と言えば五貴族より求婚を受けているとお聞きします。こういうのはなんですが、私の弟子は平民の出、貴族との婚姻しかも、輝夜様と、藤原の姫との婚姻など恐れ多い」
帝の意思に刃向かうかと言う怒声が飛び交うが、それは帝の拍手で抑えられた。
「ふふふ、私にここまで意見するとは面白い。お前のような者が、陰陽寮にいればまた京も発達するであろう」
楽しそうに笑った帝だが、手にしていた扇子を閉じる。すると私達の周りにいた衛士が私達に棒を向ける。
「帝!それは余りにも非道が過ぎると思います」
「高島、おぬしの気持ちも判る。じゃが、横島は余りに優秀、手放すには惜しい。故に、お前達に返す事は出来ぬ」
「話が違う!」
「政治と言うものじゃ、西郷。横島を連れてゆけ」
「御意」
「ちょっ!?本当に話が……「御免」うっ」
「「横島ッ!」」
「動くなッ!」
横島が倒れこみ、西郷がそれを抱えて運び出していく、それを見て美神さんと同時に腰を浮かせかけたが、棒によって肩を抑えられその場に拘束される。
「望むだけ金子を渡そう、横島の事は忘れるが良かろう」
「……いいえ、忘れません。弟子は返してもらいます。今は……引きますが」
「はっは、それくらい豪胆でなければ巫覡など出来ないか、取り返せるものならば取り返せばよかろう。出来るものならな?高島、下がれ」
「……御意」
高島が拳を握り締め私達に戻るぞと声を掛ける。屋敷の奥に姿を消した横島と衛士に追い立てられるように屋敷を出ようとした私達の耳にこの場に似つかわしくない声が響いた。
「愚か、実に愚かなり。比翼連理の翼を奪えば、飛び立つことは叶わず、籠の中の鳥となれば鳥は生きてはおられぬ」
冷酷な響きを伴った声と共に帝の屋敷の庭に火柱が上がる。その中を悠々と歩く赤髪の優男……
(違う……人間じゃない!)
息をすることも出来ない圧倒的な威圧感。全てを支配するような圧倒的な気配……間違いなく神魔……しかも最上級の神魔だ。
「美神令子、芦蛍……そして横島忠夫……は気絶しているか、いさかか残念だが……それも良かろう。ふふふ、初めまして、やっと合間見えることが出来たな。ソロモン72柱序列32位と言えば判るか?」
「「アスモデウスッ!?」」
神魔への反逆者達の頭領であるアスモデウスの登場。平安京にいるとは判っていたが、こうして姿を見せるとは思ってなどいなかった。最悪の場面でのアスモデウスの出現に私達は息を飲むのだった……。
~美神視点~
想定していた範囲内だが、正直まさかと思っていた部分もある。しかし今回の件で横島君がかなり……いや、相当に帝のお気に入りになってしまった、ここは1度身を引いて打ち合わせをして横島君を連れ出そうと思っていたのに、まさかのアスモデウスの出現に冷や汗が流れる。
「神魔よ、何ようか?」
「ほう、我を前にして気丈に振舞うか、愚かではあるがその胆力は認めよう」
「貴様帝に……「黙ってろ、耳障りだ」あがッ!う、うがあああッ!?」
アスモデウスに一瞥された衛士が火達磨になって庭を転がりまわる。だがその炎は消えず、骨すら……魂すら残さずその衛士は燃え尽きた。
「「「ひッ!」」」
「凡弱、見るに耐えぬ」
「「「あ、うわあああああーーーッ!!!」」」
帝の護衛と思わしき陰陽師が次々と発火し、火達磨になって死んでいった。視線を向けるだけで人をこうも容易く殺す……これがアスモデウスの力。
(駄目だ、死ぬ)
帝との謁見と言う事で装備も何も無い、このまま何の抵抗も出来ず死ぬ。その逃れる事の出来ない死を私は見た……
「比翼連理の翼を引き裂く愚か者。美神があり、横島であり、横島があり、美神と蛍である。引き裂けば、その力は何の意味も無くなるだろう」
「……何が言いたい」
「別に、ただ……愚かな王として死ね。このような状態の美神達を倒しても何の意味も無い、愚かな飾り者は去ね」
アスモデウスが指を帝に向けた瞬間。帝ではなく、高島が吹き飛んだ。
「ほう?」
「つうっ……ったく半端じゃねえなあ」
「今の一瞬で移し身を使ったか、なるほど良き術師のようだ。ふん、良い部下に恵まれたな。その事に感謝するが良い」
アスモデウスから殺意が消え、この場に似つかわしくないスーツのポケットに両手を入れて背中を向ける。
「今日は顔見せよ。我が友の計画を何度も潰してくれた人間を見に来たに過ぎん。しかし、しかしだ」
アスモデウスの視線が私を射抜いた。その圧倒的な威圧感に息が出来なくなった。
「確かに時の権力者に逆らうは得策ではない、だが、抗え。でなければ態々表に出た意味が無い、我を精々楽しませるんだな。なぁ?道真」
黒い稲妻と共に黒い導師服の男がアスモデウスの隣に現れた。
「道真公……何故」
【無論憎いからよ。貴様らが憎くて憎くて仕方ないからよッ!!はははっ!我が主君により再び我は生を受けた。恐怖せよ、我が怒りッ!我が恨みッ!その身を持って知るが良いッ!!】
鳴り響く雷鳴、あちこちから聞こえてくる悲鳴。
「貴様!」
「これは貴様が背負うべき業。比翼連理の翼を己の浅ましき欲で穢そうとした罪よ。精々悔いるが良い、くっくくっ!はーッははははっッ!!!」
アスモデウスは高笑いしながら、道真公を連れてその場を後にした。残されたのは骨すらも残さず焼き尽くされた衛士と陰陽師の亡骸。そして少数の官僚と帝……私達だけなのだった。
「……我が意は変えぬ。高島、下がれ」
「……帝、後悔しますよ」
「……だとしてもだ。私は引かぬ、横島は輝夜をこの世に繋ぎとめるのに必要なのだ」
足を引きずる高島に手を貸して、私達は帝の屋敷を後にした。
「これ絶対何か裏があるわね」
「そうですよね」
「ああ、帝は決して馬鹿じゃない、最後の一言……それが鍵を握る筈だ」
輝夜……なよ竹の輝夜姫……彼女を現世に繋ぎとめる……それが意味するのは1つ。
(月神族……か)
神魔の中でも月に移住した少数の神がいると言う話は知っている。恐らく月の使者が現れると言う話が出ているのだろう……いや、それが無くても帝は横島君を手放すのに難色を示しただろうが、ここまで強硬に出る事は無かった筈だ。
「少し調べるわよ、蛍ちゃん。大丈夫、横島君は何としても取り戻すわ」
「……はい」
あそこまで帝が強硬姿勢を崩さないのならば、こちらも考えがある。本当は嫌だが、ここは1度引くしかない。アスモデウス、そして道真と言う規格外の神魔が出現したのだ、私達が排除される事は無いだろう。その間に横島君を取り返す機会を伺えば良い……私はそう考えこの場は引くことを決めた。
(それに聞かないといけないことがある)
シズクと清姫からアスモデウスと道真の名は聞かなかった。これがもしも歴史改変の影響だと言うのならば、私達の行動で歴史が変わるかもしれない。それを考えてある程度は慎重に動かなければならない……。
(面倒ね)
戦うだけでも厄介なのに、行動自身では私達も消えてしまう可能性がある。そんな状況で、勝ち目の無いアスモデウスを何とかして退けなければならない……。
「最悪だわ」
「そうですね……本当。最悪です」
状況はどんどん悪化する。せめて神魔の支援を得る事が出来ればと思わずにはいられないのだった……。
~くえす視点~
バンっと机を叩く音が高島の屋敷の中に響いた。それは言うまでも無く、私が机を叩いた音だった。
「アスモデウスが出てくるのに、神魔の支援もなしに戦えと!?」
【うむ。そうなるの……とは言え、本格的な戦いになるわけではない、それに助かる機会はある】
「だとしても、危険が高すぎる!」
「くえす、落ち着きなさい」
「……ッ。判ってますわッ!」
琉璃の言葉に吐き捨てるように言うが、こんな話を聞いて冷静でいられるわけが無い。
「道真公。どうやって横島さん達はその戦いを切り抜けるのですか?」
【1度、美神が現代に戻ってくる。この場所にだ、その時に共に平安時代に小竜姫様、そしてビュレト様、貴方方御2人が向かいます。それによりアスモデウスは抑えることが出来るでしょう……正し、非常に大きな選択を迫られる事になる】
神妙な顔をする道真公は小さく息を吐いてから、私達が到底受け入れることが出来ない言葉を口にした。
【横島殿は狂神石に飲まれ、狂気への道を歩む。そのきっかけは平安時代にて生まれる】
その声はとても小さく、そして一瞬何を言われたのか理解出来なかった。だが私は気が付けば、道真公に馬乗りになっていた。
「どういうことだ貴様ッ!お前は何を知っている!答えろッ!」
「くえす!!」
「離せッ!答えろッ!!!」
私を琉璃が羽交い絞めにするが、それを振りほどき道真公の顔に拳を叩きつける。
【……戦いの末だ。横島殿は既に神通力、魔力、妖力、竜気……その全てをその身体に宿している、故に狂神石に飲まれるだけの素質は既に出来てしまっている】
「私達ね……」
「む、そうでござるな」
タマモやシロ、そして私の魔力に、シズク達と言う規格外の神魔と暮らしていれば、その力は確実に横島を蝕んでいる。
「それが関係しているのか?」
【私が見たとき、既に横島殿は狂神石に飲まれ、黒き姿へと変わっていた】
これは最早変えられぬ結末だ、それをどうするかは私達次第と言われた。それは危険人物として横島を処理するのか、それとも何時狂神石に飲まれるかも判らない横島とこれから過ごすと言う事を示していて、たとえ平安時代から戻ってきても今まで通りに過ごす事が出来なくなるかもしれないと言う事を道真公から告げられた私達は脱力し、その場にへたり込んでしまうのだった……。
GS芦蛍外伝平安大魔境 その13へ続く
不穏なフラグをばら撒いていくスタイルです、次回は少しほのぼのを入れますが、基本的にシリアスメインでお送りします。
後17話くらいは外伝は続いていく予定ですので、もう暫くお付き合いの程をよろしくお願いします。