GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境 作:混沌の魔法使い
GS芦蛍外伝平安大魔境 その13
~横島視点~
帝に言われた美神さん達との再会を禁じると言う言葉と、まさかの輝夜ちゃんかもこちゃんとのこ、婚姻とか……もう訳が判らなかった。溜め息を吐きながら釜戸の上に乗せた鍋の中身をかき混ぜる。なんかこうでもして無いと、考えが纏まらず混乱しっぱなしになってしまう。
【危惧していた通りになってしまったな……】
「心眼はこうなるって判ってのか?」
帝に呼ばれる前に保護した鬼の女の子の為におかゆを作っているのだが、心眼の言葉に嘘だろと思いながら尋ねると心眼は詳しく説明してくれた。
【流石に妹紅と輝夜が引き合いに出るのは想定していなかったが……ありえない話ではないと思っていた】
「マジかよ……」
心眼は予想していたと言うが、俺はそんな話は1度も聞いていなかった……もし判っていたなら、覚悟を決める為にもその話は聞いておきたかった。
【だがまさか帝も懇意にしている輝夜をお前に宛がおうとしているのは想定外だ、それなりに地位のある姫くらいは想定していたんだがな……】
平安時代でも指折りの名家である藤原の姫のもこちゃん、そして竹取物語の姫である輝夜ちゃんとの婚姻の話なんて考えても居なかった。
【……正直、お前はどう思っているんだ】
「どうって……?」
【あの2人の事だよ】
「言ってる意味が判らないんだけど……」
心眼の問いかけの意味が本当に判らなかった。何故急に、しかもそんな話を持ち出したのかがだ。
【形だけでも婚姻を結べば、帝もそれを喜ぶだろう。そうすれば自由に歩けるようになるぞ】
「心眼……ッ」
【冗談だ。お前にはそう言うことが出来ないって判っているさ……そう言う腹芸が出来るなら、最初からさせている】
むしろ俺がそう言う事を言い出さなくて安心したと言う心眼。確かにもこちゃんや輝夜ちゃんの事は嫌いじゃない、嫌いじゃないがそれはあくまでアリスちゃん達に似た物だ。
「こう、妹が大切みたいな……そんな感じなんだよな。俺にとっては……さ」
まぁおこがましいかもしれないけど……俺にとっては本当にそんな感じなのだ。
【アリス達がどう思っているのかは判らないがな】
「……ん?」
【いや、なんでもないさ、それより鍋が噴くぞ】
「おっとととぉッ!?」
お粥が焦げるなんて冗談じゃない。慌ててタオルを腕に巻きつけて、俺はお粥を机の上に乗せて、小皿に移し変えて台所を後にした。
「「……」」
柱の影から俺を見ている輝夜ちゃんともこちゃんの姿には最後まで気付かないままで俺は気付けないのだった……
~蛍視点~
想定外の事やイレギュラーには相当強くなっていると思っていたけど、文字通り思っていただけだったと思い知らされた気分だ。
「いちち……あーくそ、流石最上級神魔……化け物だな」
化け物だなと嘆いているけど、十分高島も化け物だと思う。帝へのアスモデウスの攻撃を肩代わりしてぴんぴんしてるとか、正直信じられない。
「……あまり無茶をするなよ。身体よりも魂が危ないのだからな」
「判ってる。だけどまあ、呪とか掛けられないだけマシだ」
常人なら即死していてもおかしくない一撃だった。現に何人もの陰陽師が目が合うだけで殺されているのだ、良く生きていてくれたと思う。
「……あたしから一個提案なんだけどさ」
メフィストが神妙な顔をして私達を見つめながら口を開いた。
「あんた達には悪いけど、弟子は諦めたほうが良いと思う。アスモデウスに目を付けられてるんだよ? 人間でどうこう出来る問題じゃないよ」
メフィストに言われなくてもそれは十分理解している。正直戦力も、装備も足りない今。アスモデウスと戦うのは正気の沙汰ではない……逃げるのが間違いなく正解なのも判っている。
「駄目よ、私は横島君を諦めないわ」
「私もよ」
「……必要なら水の中からでも横島は連れ出す」
「と言う訳で、横島様を諦めると言う選択肢は無いのであしからず」
私達の言葉に高島は深く深く溜め息を吐いた。
「そうかいそうかい、それに対しては俺は別に反対しない。そっちの好きにしてくれっていうさ……だけど、連れ出すのは並大抵じゃないぞ。輝夜様の屋敷は厳戒態勢、その中に横島もいるんだ。横島が自分から出てくるのも無理、侵入するのもまた無理、更に言えば陰陽師がたむろしているから結界の中もぐりこむのも神魔としても不可能、正直言って今帝の屋敷の次くらいに輝夜様の屋敷は護られてる」
それは私達も判っている。京の中にある規格外の結界はここからでも十分見えている。
「正直そこまでするとは私も思ってなかったわ」
「私もですね、帝があそこまで横島に固執するのが誤算でしたね」
「そうね、結構あっさり返して貰えると思っていたんだけどね」
横島はこの時代では言えば根無し草に加えて平民の陰陽師。そんな相手に帝がそこまで固執するなんて思っていなかったのが誤算だと話していると高島に違うぞと言われた。
「確かに帝も横島に固執していると思うが、それ以上に藤原の姫と輝夜様が横島に執着しているように思える」
「「え?」」
まさかの言葉にどういうことだと、高島に説明を求める。
「藤原の姫は白子と言われてな。雪のように白い肌と髪、そして紅い瞳をしている。それゆえに忌み子として疎まれていた」
白い髪……赤い目……アルビノと言うことだろうか、平安時代にアルビノが居たことにも驚いたが、高島が何を言おうとしているのか、このタイミングで理解した。
(いやいや、なんでこうなるのかな)
忌み子として嫌われ、恐れられていた子が普通に接してくる年上の青年が居たらどうなるか? そんなの考えるまでも無い。
「……それに輝夜も美しいとかその外見だけで相当言い寄られていて辟易していたしな」
「そうですわよね、同じ女としては同情しますわ」
内面ではなく外見だけで言い寄られていたのが、全くそう言うのに触れず普通に接してくれる相手が現れたらどうなるか……。
「ちなみにさ、2人ってどれくらいの年齢なのかしら?」
「ん?蛍より少し年下って事かな」
「「大体判った、横島君のせいね」」
帝が悪いのではない、2人のお姫様が悪いのではない。横島の年下に優しい事、そして妖怪や神魔と接しているので外見を殆ど気にしないこと、それらが噛み合った結果が今の横島の状況なのだと判り、私も美神さんも大きく溜め息を吐いた。
「……まぁ横島は明らかに人間より、こっちよりだしな」
「……一目で判った。高島よりも人外に好かれるな」
「そらまたどうして?」
「人外を殺した気配が無いからですわ」
「横島様は人間と人外、神魔が手を取り合える世界を作りたいと考えていますからね」
「あーそうなれば確かに人外には好かれるわな……」
職業柄妖怪や神魔を調伏しないといけない高島と最初から人外と手を取り合おうとする横島。そのタイプは少し異なっているが、大本は似ている。となると後は殺した気配があるかどうかで……。
「横島君が好かれる理由が判った気がする」
「私もですね」
……結論横島も相当な人たらし、それが横島が帝と2人の姫に執着される理由なのだと判り、私達はどうやって横島を連れ出すかに頭を悩ませるのだった……。
~????視点~
痛む身体に顔を顰めながら目を開くと木の天井と柔らかい布団の中に居る事に驚いた。
「吾は何故ここに……」
どうしてここに居るのか、それが判らず頭を傾げていると襖が開いた。
「ああ、良かった、目が覚めたんだ」
そこに居たのは人間だった。何故人間がと混乱していると意識を失う寸前の事を思い出した……
【逃げ、あの牛女には今は勝てんわ】
そう笑い、吾を弾き飛ばした愛する同胞の事を思い出し、目に涙が浮かんだ。だが人間に涙を見せるわけには行かず、それをぐっと堪える。
「倒れてたから、連れてきたんだ。でもここは安全だから大丈夫だよ」
にへらと警戒心もまるで無い顔で笑う人間。一瞬でその首をへし折れそうだが、身体が痛くて腕も禄に上がらず、虫のように蠢く事に留まる。
「何故助けた?吾が鬼であることが判らない訳ではあるまい」
今は変化する力も無い、視線だけで部屋を確認すると結界を張られている。それはこの中に吾を閉じ込める物であるのと同時に、外からの気配を遮断する物だと判った。何故鬼にそこまですると問いかけると額に赤い布を巻いた男は首を傾げて、不思議そうな顔をした。
「困っている人を助けるのに理由がいるのか?」
「は?」
「いや、だから困ってる相手を助けるのに何か理由がいるの?」
「いやいや、吾は鬼ぞ!そして汝は人間だ」
「うん、そうだな」
「じゃあ何で助ける!?」
「助けたかったから?」
「何故そこで不思議そうな……いちち」
「ああ。もう、怪我人なんだから無理をしない」
布団から身体を起こそうとした時に走った痛みに顔を歪めると、男に再び布団の上に戻された。
「お前……馬鹿か?」
「よく言われる」
「言われてどうする……」
なんだこいつ……馬鹿なのか?霊力は凄まじい物を秘めている、少なくとも並の霊能者ではないだろう。そんな男が鬼である吾を助ける、その理由が本当に判らなかった。
「ああ、まあ良いや。お粥を作ってきたんだけど食べれる?」
お粥を差し出された時。脳裏を過ぎったのは人間に毒殺された記憶……お粥を振り払うと床にお粥が広がった。正直空腹だったから食べたいと思ったが、人間から与えられる物なんて……そう考えていると頬を張られた。
「貴様ッ!」
やはり人間など信用出来ないと男に手を伸ばそうとした時。思わず手が止まった……怒っている表情に威圧された訳ではない……ただ、そうただ、母上に似ていたのだ。
「食べ物を何だと思ってる!勿体無いだろう!」
「……ッ!」
その一喝に思わず身を小さくした。本当に母上に良く似ていたのだ、男はお粥を片付け、御盆の上に乗せて吾をジッと見つめている。
「……」
何も言わず見つめてくるので、目を逸らそうとするがそれは手で防がれた。
「悪い事をしたら?」
「え?」
「悪い事をしたらどうする」
「……ご、ごめんなさい」
その威圧感に負けて謝ると男はまたほわっとした笑みを浮かべた。
「ちゃんと謝れたな。偉い偉い」
「なでるなッ!」
頭を撫でる男の手を振り払おうとするが、それよりも早く男の手は吾の頭の上から退かされていた。
「またすぐ持ってくるから」
呼び止める間もなく、部屋を出て行き、すぐ戻って来た男の手の中には湯気を放つお粥がある。
「はい、あーん」
「吾は子供かッ!?」
口を開けという男に怒鳴るが、匙は口元に向けられていて食べるしかなく小さく口を開けて頬張る。
「美味い……」
空腹なのを差し引いても美味かった。霊力が体の中から回復していくのが判る……。
「それは良かった、はい、あーん」
「待て、それ全部やるつもりか!?」
「そうだけど?はい、あーん」
また匙を向けられ、吾は子供のように最後まで男によって食事をさせられるのだった。
「ご馳走様でした」
「はい、お粗末様でした」
「待て、お前名前は?」
そう笑って立ち上がる男を呼び止める、すると男はまたにへらと力の抜ける笑みを浮かべた。
「横島、横島忠夫って言うんだ」
「邪だな。覚えた、吾は茨木童子だ」
これだけ邪気の無い男なのに、邪とは変わった名前だと思いながら礼儀として自分の名を名乗る。
「多分勘違いしてると思うけどなあ……まぁ良いや、茨木ちゃんね……覚えておくよ、じゃあ、ゆっくり休んでてくれよ」
またにへらと笑い歩いていく邪の背中を吾はぼんやりと見つめているのだった……これがまさかこの後何年にも及ぶ横島との腐れ縁の始まりになるとは、吾は想像もしないのだった……。
~アシュタロス(現在)視点~
いや、横島君。君本当に良い加減にしてくれないかな……私の娘が好きじゃないのかい?と面を見て言いたくなった。
藤原妹紅 3.2
輝夜 2.8
……なんで藤原の姫とかぐや姫の名前がトトカルチョに刻まれているんだい?君は平安時代で一体何をしているんだい?
【アシュタロス様、どうかしましたか?】
「ああ、うん。大丈夫、なんでもないよ」
そしてアスモデウスに部下として押し付けられた道真公にも正直辟易している。
(根が根だからなあ)
生真面目な学者だから、道真公の目を掻い潜って横島君達の支援をするのも難しい……。
(信用されていないのか、それとも信用されているからか……)
私を疑って道真公を送りつけてきたのか……。
それとも私の働きを見て応援として送りつけてきたのか……。
あるいはその両方か……少なくとも言えるのは、横島君達には接触出来なくなったと言う所だろう。
「そうだ、道真公。君にこれを預けよう」
何故か持っていた大きな眼魂、それを道真公に預ける。自分で動けないのならば、横島君達に出会う確率の高い者に預けるのは当然の事だ。
【これは?】
「霊力を溜め込んでおける道具だ。既に私の霊力と魔力を込めてある、上手く使えばより有利に戦えるだろう」
【おお、ありがとうございます。必ずやご期待に応えて見せましょう】
着物の中に眼魂を入れる道真公を見つめ、心の中でため息を吐いた。
(私が出来るのはこれくらいか……後は横島君達に賭けるしかあるまい)
自分に出来るのはここまでだ。後は、横島君達の頑張りに賭けるしかない。
「もうすぐに出るのかな?」
【いいえ、すぐに戦に出るは愚の骨頂、戦況そして相手の戦力を見極めてから仕掛けますとも、どうかご安心くだされ】
……やっぱり彼もこういうタイプか、力を持っても、それに溺れる事無く、冷静に戦力を見極め策を練る。
(ガープとの戦いの前の訓練にはなるといいけれど……)
完全に道真公とガープの戦いのスタイルは同じだ、この道真公との戦いでガープとの戦いの切り抜け方を学んでくれればと私は祈りながら、使い魔を飛ばし、情報収集に余念のない道真公を見て、戦力、策略共に不利な横島君達がどこまで喰らい付けるか……を考えた。
(やはり早いうちに合流出来れば良いんだけど)
分断されたままでは勝ち目はない、難しいとは判っているが蛍達と横島君が合流出来る事を祈らずには居られないのだった……。
GS芦蛍外伝平安大魔境 その14へ続く
次回は現代を絡めての話になります。道真公は慎重になっていますしね、そして2人の姫+鬼娘×横島とかも面白い感じで書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。