GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境   作:混沌の魔法使い

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その18

GS芦蛍外伝平安大魔境 その18

 

~横島視点~

 

ひたすらに冷たく寒い……それだけが俺が認識出来る全てだった。

 

何でこんなにも寒いのか……。

 

何でこんなにも悲しいのか……。

 

何でこんなにも暗いのか……。

 

何もかもが判らない、ただ歩みを止めてはいけない、それだけしか判らず。

 

光なんて何一つ見えない闇の中をひたすらに進み続ける。

 

【どこへ行こうというんだ?】

 

耳元に聞こえた声と共に肩を誰かに掴まれた。つかまれた場所から、氷水を掛けられた様に全身が冷えていく……。

 

【もう逃げられない】

 

【お前の中に生まれた俺はお前を逃がさない】

 

囁くように聞こえる声に嫌悪感と恐怖が俺を埋め尽くしていく、振り返ってはいけない……そう判っていたのに、俺は思わず反射的に振り返っていた。

 

「お……俺!?」

 

【そうだ、お前は俺で、俺はお前だ】

 

そこにいたのはバンダナを巻いていない俺自身の姿だった。にやりと邪悪そうに笑った、俺と同じ顔をしているのにその顔には恐怖しか感じなかった。

 

【お前は思った壊したいと】

 

「ち、違うッ!?」

 

【いいや、違わない、お前は壊したいと殺したいと願った筈だ】

 

「違うッ!!!俺は……俺はッ!!!」

 

【何を恐れる、何を恐怖する?守ると言う事は敵対する者を壊すと言う事だ。恐れることも、嫌悪することも無かろう?】

 

「違う……違う……」

 

【違わないさ、殺すことでお前は守りたい者を守った。それを恐れる事も無い、嫌悪する事も無い】

 

俺を諭すような声に俺は恐怖しか感じなかった。闇が俺を覆いつくすようなそんな恐怖を感じ、その場から走り出すが、俺の声は俺の側から離れない。

 

【その手を見ろ、お前はもう逃げられない】

 

「……あ、ああ……ッ」

 

鮮血に染まった両手を見て、走っていた足が止まる。

 

「お、俺……俺は……」

 

【そうだ。お前が殺した、お前が壊したんだ】

 

囁く声に恐怖して、自分の手が紅く染まっている事が恐ろしくてその場に膝を付いて俺は動けなくなった。だが、闇の中に光が差し込んだ時、俺は上に引き上げられるような感覚を感じた。

 

【もう、お前は逃げられない。お前はまたここに来るよ】

 

引き上げられていく中もずっとぴったりと付いてくる声は、決して俺から離れる事は無いのだった……。

 

「はっ……はっ……」

 

寝かされていた布団から飛び起きる。何が怖かったのか、何が恐ろしかったのか……それは俺の記憶から抜け落ちていたが、酷く冷たく寒かったという事は覚えていた。

 

「横島!?」

 

「蛍……蛍ッ!」

 

俺の名を呼ぶ蛍の声に気付き、俺は反射的に蛍の身体を抱き締めていた。

 

「横島。大丈夫、大丈夫よ」

 

背中を撫でられ、乱れていた呼吸がゆっくりと落ち着いてくるのが判る。蛍の体温で安心したのか、俺は再び眠りに落ちていくのだった……。

 

 

 

 

~蛍視点~

 

 

魘されるように跳ね起きた横島は何かに怯えるような様子だった。私を見つけて抱きついて来た横島の背中を撫でて上げると落ち着いたのか、再び眠りに落ちる。だがその顔は今だ、恐怖に怯えている。

 

「心眼。横島は大丈夫?」

 

【……完全に大丈夫とは言えん。やはり狂神石の影響が色濃く出ている】

 

高島が封印したが、やはり完全ではなかったのだろう。桶の中に布巾を入れて、絞って横島の額に乗せる。

 

「それで貴女は?誰なの?」

 

「……ぷいッ」

 

部屋の隅で胡坐をかいて横島を見つめている童女。だがその額には赤い角が生えているから鬼だと思うんだけど……餓鬼や都に出る鬼とは明らかに格が違う。

 

(英霊なのね)

 

どういう原理かは不明だが、完全に現界している英霊なのだろう。あの金髪の英霊……「坂田金時」と親しげとまでは言わないけど知り合うって言う様子だったから恐らく「酒呑童子」か「茨木童子」だと私も美神さんも予想している。

 

「みむー?」

 

「う、ううーむ。だがな?」

 

「ぷぎー、ぴっぐう?」

 

「いや、吾は確かに横島が心配だ。だけど人間は好きじゃない」

 

【ノブーブ?】

 

「いや、確かに横島は人間だけど……」

 

……チビ達を会話が出来るみたいね。横島は好きだけど、人間は好きじゃない。だから私がいるから警戒していると……へんな言い方だけど猫みたいな鬼ね。

 

「……何?」

 

「混ざり物か?」

 

「……失礼ね。まぁ。そうだけど……」

 

混ざり物って言われ方は好きではないけれど、まぁ魔族の血が入っているからか混ざり物って言うのは間違いではない。

 

「そうかそうか、汝は何だ?鬼か?」

 

「いや、西洋の悪魔かな?」

 

「そうなのか?鬼ではないのか?」

 

……なんか凄い急にフレンドリーになったんだけど……、まぁでもうん。私達が知らない横島の話を聞けるかもしれない。

 

「私は蛍っていうの、貴女は?」

 

「茨木、茨木童子だ」

 

……物凄いビッグネームね。しかもこれ絶対、横島の家に住み着くわ……私はそんな確信を得ていた。

 

「輝夜様達と横島は何してたの?」

 

「ん?もこと輝夜とは横島の取り合いをしていた。途中で何度か横島が失神してな、慌てたぞ」

 

……一体横島はこの屋敷の中で何をしていたのだろうか。そして何故お姫様2人と鬼で取り合いになっていたのか……。

 

「そしてチビ達も仲良くなった」

 

「みーむう♪」

 

茨木の膝の上でよいよいと踊っているチビ。そっと手を伸ばすが、手を弾かれた。

 

「汝嫌われているのか?」

 

「……そうなのかしら?」

 

なんで付き合いの長い私は駄目で、茨木がOKなのかチビ達のアウトとセーフの境界が今だ判らない。

 

「横島は優しくて面白い。早く起きて欲しい」

 

「私も早く起きて欲しいけど、無理はさせれないわ」

 

もう水分が蒸発してしまっている布巾を横島の額から取り、再び水の入った桶で冷やして額に乗せてから再び、茨木に向き直る。

 

「お話しましょう。貴女が何を見ていたのか、それを私に教えて欲しいわ」

 

「う、うーむ。うん、良いぞ!まずな、横島が御粥をくれた。最初は引っくり返したが、怒られてな……」

 

いや、私が聞きたいのはそう言う話じゃないんだけど……いや、この話の中に何かヒントがあるかもしれない。私は前向きにそう考え、茨木の話に耳を傾けるのだった……。だがその話の大半は如何に横島が優しいかと言うもので、私の求めていた話は殆ど無いのだった……。

 

 

 

~美神視点~

 

悪夢のような夜を終えた私は高島と共に、輝夜の屋敷に訪れた帝と向き合っていた。

 

「……そうか、すまぬ事をした……」

 

月神族によって殺された陰陽師と兵士の数は100人では効かない。輝夜姫に地上に留まって欲った代償はとんでもなく大きかった。

 

「この手紙には横島のお陰で逃げれると、横島に深い感謝とそして師の元に帰して欲しいと言う輝夜と妹紅の言葉がある。遅きになったが、横島は返そう。申し訳無い事をした」

 

かなり気落ちした様子だけど、私とすれば横島君を返してくれるのならば文句は無い。

 

「そして恥を承知で頼みたい、怨霊とかした道真公を止めるのを協力してくれまいか?」

 

「……それに関してはすぐ返事をすることは出来ません。暫くの猶予を」

 

「そうだな。すまぬ、高島よ。屋敷まで付き添いを頼めるか?」

 

「判りました。すぐに」

 

「すまぬな」

 

酷く肩を落とした様子で席を立つ帝に付き添って高島も屋敷を出て行く。その姿を見送り、私は深く溜め息を吐いた。

 

「あれどうするつもりなのかしらね」

 

「……捨てるだろうよ。アレにそこまでの価値は無い」

 

シズクが床の隙間から姿を見せて溜め息を吐いた。手紙と共に残された蓬莱の薬――それ持ち帰った帝だが、シズクの言う通り、私もあの薬を帝が使うとは思えなかった。

 

「横島殿の師の方ですね。本当にありがとうございました」

 

「横島殿がいらっしゃってからは、あの子も本当に幸せそうで……私達もとても楽しい時間を過ごさせてもらいました」

 

「いえ、そんな……」

 

私は何もしていないのだから感謝の言葉を告げられても困る。だけど、翁夫妻は穏やかに微笑んだ。

 

「私共の屋敷をどうかお使いください、あの子がいないととても寂しくて」

 

「ご迷惑なのは承知ですが、お願いできないでしょうか?」

 

「……そう言うことでしたら、お世話になります」

 

私がそう返事を返すと翁夫妻は嬉しそうに微笑み、もう1度あの子を助けてくれてありがとうと頭を下げて部屋を出て行った。

 

「救えたのかしらね……」

 

「……少なくとも、あの夫婦にとってはそうなのだろう。それよりもだ……私達にはやらないといけないことが残っている」

 

「そうね。坂田金時……あの英霊に話を聞かないとね」

 

私達がいない間、横島君に何があったのか、そして何故狂神石を吸収してしまったのかそれを知らないといけない。だけど私は1つ気がかりになっていた事があった。

 

「藤原の姫が一緒に逃げちゃったけどこれどうなるの?」

 

「……判らない、少なくとも妹紅はこの場に残っていた。だが……現にいない」

 

「横島君のせいかしらね?」

 

「……恐らくそうだろう」

 

ガープは横島君を特異点。歴史を改変する鍵だと言った、そして現にそれを私は見ている。輝夜姫と共に藤原の姫が姿を消した……これはかなり大きな影響があると見て間違いない。

 

「高島の処刑ってどうなるの?」

 

「……判らない。だが……高島が生きていれば、横島に影響を与えるかもしれない」

 

「そうね……」

 

高島が変身出来たのは横島君の影響だろう、そして高島が生きていれば横島君にも影響があるかもしれない。なんにせよ、これからはアスモデウスの動向に加えて、高島の事も見ている必要があるだろう。

 

「ごめんね。随分と待たせたみたいで、それで何があったのか教えてくれるかしら?」

 

【……おう。つうか、正直今回の件は正直俺ッチもかなり堪えてる。横島にもお前達にも申し訳ねえ事をした……先に謝っとくぜ、すまねえ】

 

深く頭を下げる坂田金時は暫く頭を下げ続け、それからゆっくりと顔を上げて、今回の件……正確には横島君が何故狂神石を取り込んでしまったのかということの顛末を話し始めた。

 

「……牛頭天王を封印したのか」

 

【ああ。横島が眼魂って奴に封じ込めたんだが……その時に大将は狂神石に呑まれていた】

 

つまり源頼光を眼魂に変えたことで、源頼光を蝕んでいた狂神石が横島君にも伝染したわけだ。

 

「その眼魂は?」

 

【……すまねえ、それもどっかに消えちまった……】

 

高島に封印されたシェイド眼魂と同じく監視していたのに消えたと言う眼魂。何処に消えたのかと考えるよりも先に、酷い胸騒ぎを私は感じずにはいられないのだった……。

 

 

 

 

~清姫(現代視点)~

 

横島様が心配でしたが、私はそれよりも気になることがあって独自で行動しておりました。

 

(これはどうなるのですか)

 

私の記憶では藤原の姫に手を出したと言う事で、高島様は処刑されました。しかし、その肝心の藤原の姫がいなければ高島様の処刑は無くなるのか、それとも別の要因で処刑されるのか……私はそれがどうしても気がかりでした。

 

「ええい!あの役立たずめッ!我が妻となる輝夜姫を護り切れなかったとは!」

 

やはり予想通り、車持皇子は荒れ狂っていた。表面上は穏やかだが、その激情の凄まじさを私は知っている。

 

「忌み子とは言え、好き者に宛がう予定もあったというのに!なんと言う役立たずかッ!」

 

怒り狂う車持皇子を見ていると逆に頭が冷えてくる。だが、その次の言葉に頭に血が上るのを感じた。

 

「あの役立たずを殺せ、高島と似ているのも腹立たしい!その為にお前を解放したのだ鬼道!精々働け!」

 

「……御意」

 

……鬼道まで引っ張り出したか。しかし、聞き捨てならないのは横島様を殺せと言うその言葉……。

 

(これは最悪の展開かもしれません)

 

高島様の変わりに横島様が処刑されるかもしれない。私はその事を伝える為に、気配を消したまま車持皇子の屋敷から脱出するのだった。

 

「……なるほど、あの狐め、そんなことを考えているか」

 

「でもそれってかなり不味いわよね」

 

「はい、ただでさえこの状況ですしね」

 

道真公の怨霊に加え、輝夜姫を失った事で気落ちした帝……今の平安京の状況は決して良くない。

 

「歴史の修正力って問題もあるわよね?」

 

「そうなのねー、もしも高島が死ぬ事が運命で定められていたのなら~」

 

「……生贄がいる」

 

「横島様か高島様かって事ですね?」

 

考えたくない事だが、もしも、もしも高島様が死に。私が怒り狂い平安京を焼き払う事が歴史に、運命に刻まれた因果と言うのならば……そう遠くない内に、横島様か高島様が命を落とさなければならないという事だ。

 

「私は、横島君を護るわよ。高島よりも、私は横島君のほうが大事。蛍ちゃんは言うまでもないだろうしね」

 

今横島様の看病をしている蛍も言うまでも無く、横島様と高島様を秤に掛けるのならば横島様を選ぶだろう。だがそれは私も同じ……だけど……。

 

「……この時代の私達は……」

 

「高島様を選ぶでしょうね……」

 

この時代の私達は横島様を知らない、むしろ逆に考えれば高島様が生きていれば横島様は現代でも生きていると言うことになる。そうなれば、横島様が死んでも問題ないという結論を出すかもしれない。

 

「……争うことになるかもしれないな」

 

「そうですわね。でもそれは防ぐ事が出来るかもしれません」

 

「鬼道ね」

 

あの余計なことしかしない、鬼道家。それを防ぐ事が出来れば、もしかすれば、横島様も高島様も生きたままと言う可能性は出てくる。

 

「でも今は~動かないほうが良いのね~」

 

「……口惜しいがな」

 

「本当ですね」

 

鬼道はなんだかんだ言っても、帝の護衛を任せられるほどに優秀な陰陽師だ。そして権力もある、そんな相手が車持皇子と手を組めば、どんな厄介な手を打って来るか判らない。下手をすれば、今まで協力し合っていた高島様と決別する可能性もある。

 

「向こうが動いてくるまで待つしかないって事ね」

 

「どうせ待つなら横島が回復するまで動いてこないと良いんですけどね……」

 

権力に呑まれた相手がどんな手を打って来るのかが判らない。更に言うと、高島様の評価も決して高くない、情報操作などで高島様や横島様が追詰められる可能性もある。

 

「何時の時代も厄介なのは人間ですね」

 

「そうなるわね、本当に……」

 

権力、地位、金。それらの欲によって暴走する人間は多い。その中でも鬼道はそれら全てを欲する……その欲は確実に悪魔に狙われる。面倒な事になると言う事を、私も、シズクもそして美神達も口にする事は無いがそれを感じ取っているのだった……。

 

そしてシズク達の予想は当たっており、使用人もいない、護衛もいない、ほぼ無人の静寂と闇に包まれた鬼道の屋敷の中では狂笑が響き続けていた。

 

「へ、ふへへ……ひゃは。ひひっ!ひゃはははははーーーッ!!」

 

「人間の業は深い、神魔よりもよっぽどな……」

 

杯に赤黒い液体を注ぎ、狂ったように笑いながら呑み続ける鬼道を蔑んだ瞳で見つめているアスモデウスの姿があるのだった……。

 

GS芦蛍外伝平安大魔境 その19へ続く

 

 




次回はちょっぴりほのぼのの話を書いて行こうと思います。その後はまたシリアス展開になりますけどね、高島の死、そして高島と瓜二つの横島が高島の変わりに死の運命に囚われるのか、平安編はまだまだ続いていく予定です。ここで必要な最終章へのフラグを可能な限り準備するつもりなので、これからどんな展開になるのかを楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


それとエイプリルフールには間に合いませんが、4月4日の更新でエイプリルフールの特別企画をやりたいと思っております。

それに伴い活動報告にアンケートをおいてありますので、そちらも1度目を通していただけると幸いです。
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