GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境   作:混沌の魔法使い

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その19

GS芦蛍外伝平安大魔境 その19

 

~横島視点~

 

蛍に看病されて1日寝ていたら感じていた寒さも頭痛も完全に無くなっていて、絶好調とまでは言わないけど、それでも十分に動けるレベルにまで回復していた。ただ……月神族との戦いの記憶が途中からすっぱり抜け落ちているのがどうしても気になったが、心眼に美神さん達に助けられたと聞いて、美神さん達もそうだと言えば俺はそれ以上聞くことも出来ず、むしろそれよりも輝夜ちゃんともこちゃん達が無事に逃げ切れたのか、そればっかりを心配していた。

 

「……ふしゃああッ!」

 

「いや、横島君。その子何とかしてよ」

 

「すいません、無理です」

 

俺の膝の上に陣取っている茨木ちゃんは美神さんが近づくとそれは凄まじいほどに威嚇する。猫の化身かと思うレベルだ、輝夜ちゃん達がいるときも凄かったけど、あの2人がいなくなってからは輪に掛けて猫っぽい。

 

「みむー」

 

「む、そうかそうか、ほれ」

 

「みむうー♪」

 

ただチビ達が近づくと威嚇をしない。穏やかに笑って、自分の膝の上に乗せている。どうも茨木ちゃんはアリスちゃん達同様チビ達と会話が出来るようだ。

 

「蛍ちゃんは威嚇されないのよね?」

 

「そうみたいですね」

 

蛍が近づいても威嚇しない、茨木ちゃんが威嚇するのは美神さんやヒャクメと言った感じだ。一体美神さん達と蛍に何の違いがあるのか、そこが不思議で仕方ない。

 

「……もうすぐ昼食だから離れろ」

 

「ふしゃあッ……ん、んんん?」

 

シズクが近づいてきても一瞬威嚇したが、茨木ちゃんは不思議そうにシズクの顔を見つめる。

 

「酒呑に似てる」

 

「……八岐大蛇の系譜だからな」

 

「酒呑の妹か?姉か?」

 

「……別にそう言うわけじゃないんだが……」

 

「じゃあ従姉妹?」

 

「……なんでも良いが、とりあえず昼食だ」

 

「判った!」

 

なんかシズクには凄く懐いたようだ。その理由が全然判らないけれど……あんまり威嚇とかを繰り返されるよりもよっぽど良いだろう。

 

「美味いな!」

 

「そっか、良かった良かった」

 

ただし、昼食の場所でも茨木ちゃんは俺の膝の上からは退いてくれませんでした。だけど、アリスちゃんや紫ちゃんも似たような物なので、あんまり気にせず。

 

「口にお米付いてる」

 

「む?そうか?」

 

アリスちゃん達にやるように、茨木ちゃんを世話をしていると何故か心休まるものを俺は感じずにはいられないのだった……。

 

 

 

 

~蛍視点~

 

茨木童子……「大江山」の鬼の首魁にして、鬼の中で1・2を争うほどに有名な鬼だ。そんな鬼が何をしているかと言うと……。

 

「「すやあ……」」

 

なんで横島と一緒にうりぼーに背中を預けて寝ているのか。私達が知らない間に横島にどれだけ懐いてしまったのか……それが謎で仕方ない。しかも話を聞けば、輝夜姫も藤原の姫もこんな感じだったと言う……。

 

「なんか横島が悪い意味で凄くパワーアップしていると思うんです」

 

「私もなのよね……」

 

「……まぁ横島は人外に好かれるし」

 

「それに何よりも子供にも好かれますしね」

 

「横島さんらしいのね~」

 

横島らしいって言ってもなんにしても何事も限度って物があると私は思う。

 

「これ付いてくるって言ったらどうするんですか?」

 

「……琉璃に丸投げするわ」

 

「琉璃さん泣きますよ?」

 

普通の妖怪ならまだしも……いや普通の妖怪だってこれだけ面倒を見ていれば泣きそうな物なのに、そこに鬼の代名詞見たいな茨木童子までくれば琉璃さんが泣き崩れる未来しか見えない。

 

「と言うか、なんでシズクには友好的なんですかね?」

 

「……酒呑童子は、八岐大蛇の息子とされる鬼だ。だからだろう、ただ茨木の話を聞く限りでは……歴史と違うようだが」

 

茨木童子は酒呑童子の部下のはずで、酒呑童子を怖がっていると思っていたんだけど、どうも違うようだ。

 

【酒呑の奴はあっちこっちうろうろしてて、茨木の奴が鬼らしい酒呑に惚れこんで、食客として招いたんだよ】

 

眼魂から出てきた金時が茨木童子と酒呑童子の関係性を教えてくれた。

 

【自由奔放で楽しければ何でも良いって奴だったけどよ、案外義理固くて面倒見もいい奴だったんだよ。だから茨木の奴も随分と懐いてたみたいだぜ】

 

「と言うか随分詳しいわね?」

 

まるで見てきたかのような喋りっぷりだ。坂田金時と言えば、源頼光四天王だ。何度も戦ったから知っているのかと思いきや、坂田金時は頬を掻きながら。

 

【幼馴染なんだよ……】

 

「誰と誰が?」

 

【俺と酒呑……】

 

……いやいや、え、ええッ!?なにこの複雑な人間関係。しかもこの反応を見れば、明らかに金時が酒呑を意識しているように思える。

 

【もう少し俺ッチが早ければ、あいつに会えたのによ……茨木を庇って死んじまったらしいぜ】

 

あ、これ決まりですね。坂田金時は酒呑童子に恋してた……あの複雑な表情を見れば嫌でも色々感じ取ってしまう。牛若丸と信長が女性だったのも驚きだけど、それ以上に坂田金時と酒呑童子が幼馴染だった、しかも坂田金時が、ううん。もしかすると酒呑童子も意識していたかもしれないとか、ここ数年で1番の驚きかもしれない。

 

「そ、そうなのね。それで貴方から見て茨木童子はどうかしら?」

 

【随分と横島に懐いているみたいだから大丈夫だと思うぜ。ただ……横島が死んだり、傷ついたりするとやべえかもな】

 

「……何故そこで私を見る」

 

「何でそこで私を見ます?」

 

「「「ううん別に?」」」

 

私も美神さんもヒャクメもきっと同じ考えだろう。横島護り隊(ガチ)が増えると、横島が傷付けられた時の暴れっぷりを考えると、本当になんでこうも厄介な人物ばかり集めてくるのか、横島が不思議でしょうがない。

 

【ただよ、酒呑の奴はすげえしぶといんだ。だからもしかすると……】

 

「生きているかも……しれない?」

 

【可能性はあるぜ、あいつが操られて敵に回ってたら、相当やべぇ。そこの所も少し調べたほうがいいかもな】

 

道真公とアスモデウスでも厄介なのに、もしかしたら酒呑童子も敵に回っているかもしれない。坂田金時の言葉に私達に緊張が走った……今はまだ可能性の段階だが、もしもそれが本当の事だったら相当不味い事になると思う。

 

「まぁ色々と話を聞かせてくれてありがとう」

 

【またなんか聞きたい話があれば呼んでくれ、酒呑の気配は俺が覚えてる。近くに居れば判るから、それも気配を感じたら伝えるぜ】

 

眼魂の中に消えていく金時を見送り、私達は話し合いを再開する。

 

「確実にまた鬼道はちょっかいを掛けて来るわね」

 

「一番最悪の展開は道真公が絡んでくる場合ですね」

 

「……そうだな、雷神の道真は私とも相性が悪い」

 

「火力の問題でも相性が悪いですわね」

 

問題はここにいる全員が道真公とは相性が悪いという事、そして第二にアスモデウスが出張ってくる可能性もある。そして坂田金時から聞いた酒呑童子生存説……もしもその通りになったとなれば、今の戦力で勝つ事は不可能に近い。美神さんもそれを理解しているのか、険しい顔で口を開いた。

 

「最悪の場合、文珠で雷を起して現代に逃げるしかないわね」

 

「……成功するんですか?」

 

「……判らないわ、ヒャクメ。そこのところどうかしら?」

 

「う、うーん。そうなのねー、美神さんは完全に時間移動を使いこなしている訳じゃないから……人数が増えれば増えるほど失敗するリスクは増すのね~私がコントロールできればいいんだけど……」

 

「……お前が出てきたら真っ先に狙われるな」

 

ヒャクメは神魔としての能力は低いが、その反面、魂の分析は神魔でも随一と言われる。そんな相手が出てきたとなれば、アスモデウスは嬉々としてヒャクメを狙うだろう。

 

「厄介ね」

 

「本当ですね」

 

真っ向勝負では勝てない相手が2人、そしてそれに加えてこっちの足元をすくおうとする相手もいる。こんな状況で道真公、そしてアスモデウスと戦わなければならないという事に私達は頭を抱えるしかないのだった……。

 

 

 

 

~茨木童子視点~

 

輝夜ともこがいなくなったのは吾としても寂しかったが、まさかまさか酒呑と似た気配を持つ竜神が横島の知り合いにいるとは驚きだ。

「むー」

 

「はいはい、暴れないなー」

 

今は横島に髪を梳かせているのだが、妙に子ども扱いされているような気がして面白くない。

 

「なー、横島。お前は何故人間側にいるのだ?」

 

「俺は人間だけど?」

 

横島はまだ自分を人間だと思っているのか……その本質はもう人間から遠く離れていると言うのに……それを教えてやれば、横島は吾と一緒にいてくれるだろうか?

 

「……茨木。あまり横島を困らせるな」

 

「そうですわよ?全く、髪を梳いてもらうなんて羨ましい」

 

「そうなの?じゃあ、髪梳いてあげようか?」

 

「い、良いんですか!?お、お願いしますッ!!」

 

「……はぁ、頭が痛くなるな……」

 

竜神2人に睨まれてしまった。だがあの2人も気付いているだろうに……もう横島はこちら側に足を踏み入れていると……。

 

「んふふふ」

 

「へんな風に笑ってどうした?」

 

「んー別に、ありがとうな。チビ、うりぼー、遊ぶぞー!」

 

横島が連れている子鬼と猪に声を掛けて横島の前から跳ね起きる。

 

「みーむうー」

 

「ぷぎいー」

 

「ぬあッ!」

 

蹴鞠で遊ぶが、思ったよりもチビとうりぼーの動きが早い。だがそれでこそ遊びがいがあると言うものだ。

 

「は、はわわわ……」

 

「だ、大丈夫?凄い揺れてるけど」

 

「だ、だだだだだだッ!」

 

「……ポンコツめ」

 

横島にじゃれ付いている竜神2人を見て思う、横島は人間ではない吾らの心を掴んで離さない。あの無色の魂に惹かれるのは当然だ、あの白い魂をどんな色に染め上げるかと思うと愉悦を感じずにはいられない。

 

(だがまぁ……それはそれでつまらんのかもしれん)

 

横島のあの危うい感じがあるからこそ、その不安定さが吾らを引きつけて離さないのかもしれない。

 

(酒呑が見たら気に入りそうだ……酒呑……生きておるよな?)

 

あの牛女に襲われた時に吾を逃がした酒呑。吾は死ぬ所を見ていない、だから生きていると信じたい。

 

「はい、綺麗になった」

 

「ああ、あああ……ありがとうございます」

 

髪を翻しかけていく竜神の娘、ああ見ると本当に生娘か何かにしか見えんな。

 

(いや、むしろ横島が凄いのか?)

 

竜神である娘を生娘のようにしてしまう、横島の魅力が凄いのかと吾は割りと真剣に悩んだ。そしてその答えは割りとすぐに出た。

 

「……ん」

 

「あれ、シズクも?」

 

「……清姫が良くて私は駄目なのか?」

 

「いや、そう言うわけじゃないけど、珍しいなと思ってさ」

 

「……そう言う気分のときもある」

 

横島に髪を梳かしているシズクを見ていると、酷く上機嫌の時の酒呑と同じ気配を感じるから好きだ。そしてそれと同時に横島が凄いのだと吾は認識するのだった。

 

「む。蛍か?」

 

そんなことを考えていると蛍が吾の隣に座るので、蹴鞠をチビ達の方の転がしてから蛍の隣に腰掛けた。

 

「うん、茨木は調子はどう?」

 

「勿論、元気一杯だ」

 

蛍も魔の気配が嫌いではない、ただあの美神という女は駄目だ。確かに魔の気配を感じるのだが、どことなく母上に似ているような気がして、人間である横島に慣れている自分を見られると怒られるという気がして、苦手と言う感覚がどうしても消えない。

 

「この後はどうするのだ?」

 

「そうね、私達をこの時代に送った相手を倒す事を考えるわ」

 

「勝てるのか?」

 

「……わかんない、でも最初から負けるつもりではないつもりよ、帰らないといけない場所もあるからね」

 

横島達は今よりも先の未来から来たと言う、輝夜ともこは未来で会う事を夢見て一時横島から離れた。

 

「どうしたの?」

 

「ん、別に」

 

並んで座っていた蛍に何でもないと言って、シズクの髪を梳き終えた横島の背中にぶつかるように抱きつく。

 

「っと、どうした?」

 

「……吾とチビ達を構え!退屈だ!」

 

「みむう!」

 

「ぴぎいいッ!」

 

チビとうりぼーの声を聞いて遊ぼうかと言って立ち上がる横島。自然に吾の手を取る横島を見て、輝夜やもこのように先を夢見て待つのか、それとも無理を言ってでも、横島のいる時代に一緒に行こうと願うのか……吾は自分でも上手く制御出来ない、己の心に頭を悩ませるのだった……。

 

横島達が輝夜の屋敷で身体を休めている頃、高島の屋敷には1通の手紙が届けられていた。そしてそれに目を通した高島はその文を力いっぱい握り締めた。

 

「……どうした?」

 

「問題ごとですか?」

 

シズクと清姫の問いかけにも暫く高島は答えず、その場にしゃがみこんで頭を押さえて深く深く溜め息を吐いた。

 

「陰陽寮の馬鹿共が、横島が月神族と共謀したかもしれないと言っているそうだ」

 

「……本当に馬鹿だな」

 

「愚か者、ここに極まれりですね」

 

月神族の襲来で陰陽寮も武闘派の陰陽師を失い、既に陰陽寮としての体裁は崩れている。

 

「もしも本当に月神族を退けるだけの力があったというのならば、それを見せてみろと言っている……帝の印は無い、陰陽寮の一部の暴走か……ったく、傍めんどくさい事をしてくれる」

 

頭をかきむしりながら立ち上がる。

 

「何処へ行くんですか?」

 

「躑躅院と六道、それと西郷。後帝にも声を掛けてくる、こうなったら御前試合って言う体裁にするしかないだろう」

 

陰陽寮でやれば確実に乱入者が出てくるのが高島にわかりきっていた。今横島は帝の命を救い、そして月神族の狂気から翁夫妻と輝夜を逃がした陰陽師だ。そんな話が出て、陰陽寮が大人しくしている筈が無い。

 

「それに恐らく焚きつけたのは鬼道だ」

 

車持皇子が鬼道を軟禁から開放したと言う話を高島は聞いていた。今弱りきった陰陽寮が行き成りこんな暴挙に出るわけが無い、確実に先導したものが居ると考えていた。

 

「御前試合にすれば、帝の前で非道をする訳にも行きませんし」

 

「……助けやすいというのもあるな」

 

「そう言うことだ。向こうの好きにはさせない」

 

陰陽寮の暴走、それによって横島達を死なせる訳には行かない。そう考えた高島は陰陽寮から届けられた文を片手に屋敷を出ようとして、足を止めた。

 

「どうしましたか?」

 

「……見張られてるな。シズク、すまないが俺を運んでくれ」

 

「……判った、これは相当厄介ごとだな」

 

神魔である清姫とシズクの感覚を人間がすり抜けられるわけが無い。恐らくはアスモデウス一派だと高島は考えていた。

 

「これは少しの厄介事じゃないな」

 

「……そのようだな」

 

自分達の屋敷を監視している神魔の存在に陰陽寮は既にアスモデウスの手に落ちた。もしくはそれに操られている者が指揮をとっている……。

 

「気配が無くなりましたね」

 

「……何を考えているんだ?」

 

「判らない、判らないが俺達が気付いたからと言うわけではないだろうな」

 

屋敷を監視している神魔の気配が消えたのを確認し、シズクに水で運ばれる方法を止め、高島はシズクと清姫に護られながら屋敷を後にするのだった……。

 

「ふん、想像以上に愚か」

 

屋敷から移動する高島達を見つめながらアスモデウスは吐き捨てるように呟いた。

 

【いかが為さいましょう?鬼道を処理しますか?】

 

道真公の言葉にアスモデウスは首を振り、その視線を陰陽寮へと向けた。

 

「愚か過ぎる道化の狂った劇を見るのも悪くない、暫し様子見だ」

 

高島の屋敷周辺にいたのは監視などではなく、狂神石を与えた鬼道がどんな行動をするのか見ていたアスモデウスと道真公だった。だが余りに程度の低い行動に出たことにアスモデウスは落胆し、興味を殆ど失っていた。

 

「横島に投与された狂神石の様子も見たい、それに鬼道に与えた鬼がどう動くのかも見るのも良かろう、だが」

 

【存じております。向こうの暴走が酷ければ、乱入させて頂きます】

 

横島を殺させる訳にはいかないアスモデウスは道真公にそう命じた。横島達が負けることはないと思うが、万が一と言うことがある。人間の愚かさと醜さを知るが故にアスモデウスは1つの安全策を講じることにしたのだ。

 

「任せるぞ、道真」

 

陰陽寮による横島への挑戦状。それがどのような展開を迎えるのか、それを見届ける事を道真に命じアスモデウスは漆黒の炎の中へと消えていくのだった……。

 

 

 

GS芦蛍外伝平安大魔境 その20へ続く

 

 




次回は横島の陰陽術強化イベントをやりたいと思います。外道の鬼道はこういうイベントで使いやすくていいですね。次回からはまたシリアスメインで書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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