GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境 作:混沌の魔法使い
GS芦蛍外伝平安大魔境 その20
~美神視点~
夜遅くに尋ねて来た高島の言葉に私も、シズクも清姫も憤りを隠せないでいた。それこそ、今すぐにでも陰陽寮に向かって、陰陽寮を焼き払いかねないレベルで怒りを露にしていた。
「一応もう1度聞くわ何だって?」
「……陰陽寮の馬鹿共が、横島が月神族と結託したと言っている。本当に神魔を退けるほどの陰陽師ならばその実力を見せてみろと、決闘の申し込みが出ている」
高島が頭を抱えながら言うと、黙って聞いていたシズクと清姫が額に井形を浮かべて歩き出す。でも正直私もそうしたかった、言う事かいて、よりにもよってそれ、横島君の気持を考えていないにも程がある。
「ちょい待ち、何するつもり?」
「……全員凍らせればいいだろ?殺しはしない」
「ええ、ちょっと呪いをばら撒いてくるだけですわ」
「止めてくれ、それだと俺まで飛び火するだろ……」
「……そこで殺しに行かない当たり、丸くなってるな」
「私なら骨も残さず燃やしますわね」
過激派龍族は命を賭けても止めなければならない……横島君に対して非常に過保護な龍族2人がとんでもなくやばい。
「でも、高島さんがこうやって来たって事は何か良い考えがあるんですよね?」
「ああ、帝に上申書を出してある。陰陽寮の連中は今回の事何も出来てない、役立たずと言われる前に実力を示したい。となると、あいつらの手の内は大体読めてくる」
心底嫌そうな顔をしている高島を見れば、大体私も予測がついた。
「正式な形の決闘ではないって事ね?」
「俺も経験済みだがあいつらはそれこそ何でもしてくる。1対1の決闘なんて絶対にありえないから、帝も巻き込んで御前試合にする。そうれば向こうの手段をある程度絞り込める。そうすれば後はこっちで護れば良い」
伏兵や、霊力の巡回の妨害、外からの陰陽術のキャンセルと言った妨害工作ならば、同じく外から妨害出来る。
「だけど、高島。横島君の陰陽術はまだ未熟よ?本職に勝てるとは思えないわ」
横島君の陰陽術は未完成で、未来で一定の成績を出せているのは陰陽術が使える相手が少ないからだ。いかに実力が落ちているとはいえ、本職の陰陽師との陰陽術での真っ向勝負では余りにも分が悪い。
「そこは帝の御前試合にすることが出来たら、俺と西郷で指導する。正直付け焼刃に過ぎないと思うが……」
「ある程度の対抗策になるって事ですね?」
「ああ、横島の霊力はそれこそ桁違いに大きい、初歩的なものでも良いそれらを習得出来れば、後は霊力の差で押し潰せる」
相手が蛇口から水を引っ張ってきているのに対して、横島君がダムから膨大な水を引きこんでいると考えれば、その霊力の差は明らか、高島の言う通り初歩的な陰陽師でも勝てる可能性は十分にあるだろう。だけど、問題はそこではない。
「それでヒャクメ、陰陽術は使わせても大丈夫かしら?」
「……ん、んー横島さんの様子を見ながらじゃないと何にも言えないのね~」
狂神石によって暴走した横島君、あの時は何とか食い止める事が出来たけど、2回目も上手くいくとは限らない。
「不安要素はありますわね」
「……無視して逃げるという手もあるが……」
「それだと面倒事になる可能性もありますよね」
正直に言えば私達に陰陽寮との決闘を受ける利点なんて何処にも無い。だけど、決闘から逃げて月神族と共謀し、陰陽師と兵士を殺したなんていちゃもんをつけられて、追っ手を放たれる可能性を考えれば、何の旨みもないけれどその決闘の申し出を受けないわけには行かない。
「帝の御前試合に出来るのよね?」
「ああ、なんとしても御前試合に持ち込む」
陰陽寮での決闘なら受けるつもりは無いが、御前試合となれば話は違う。帝が見ているので余計な茶々を入れる事も出来ず、そして帝が正式に勝敗をつけるのでいちゃもんをつける余地も無いほどに完璧な形で勝敗をつける事が出来る。
「御前試合に出来るならやるわ」
「すまん、こんなことをしている場合じゃないのにな」
アスモデウスと道真公への対策をしたいのに、こんな馬鹿馬鹿しい権力闘争に巻き込まれる事になった事に頭を抱えるしかない。
「仮に負けたとしても、向こうの言い分は何一つ通させるつもりはないぜ」
「そこは高島と帝に任せるわ。本当お願いよ?」
「ああ、任せておいてくれ、清姫、シズク行こうか」
横島君が負けて、犯人として処刑なんて流れにもなりかねないが、そこは高島と帝に何とかしてもらおうと思う、まぁ本当に最悪の場合は逃げて、陰陽寮と兵士に追われる事を覚悟しなければならないだろう。
「面倒な事になっちゃいましたね」
「……本当ね、考えられる限り最悪の展開よ」
「……本当に陰陽寮は余計な事しかしない連中しかいないな」
「まぁ、最悪の場合は焼き払いますので大丈夫ですわ」
「大丈夫なのね~?今の清姫様に罪を押し付けるんじゃ~」
「大丈夫ですわ、同じ私ですもの」
もしかして平安京を焼き払ったのって私達の時代の清姫なんじゃと言う考えが頭を過ぎったが、平安京を焼き払った犯人を特定するよりも、明日の朝なんて横島君に説明すればいいのか、そっちの方に私達は頭を悩ませるのだった……。
~高島視点~
明朝1番に俺は帝の屋敷に呼ばれた。そしてそこには当たり前だが、陰陽寮の頭領の姿もあった。
「さて、高島の屋敷に届いたと言う陰陽寮からの決闘の申し出、これに異論は無いな?」
開口一番の帝の言葉に顔を歪める頭領。俺を睨みつけているが、俺はその殺気の込められた視線を無視する。
「どうした?まさか以前のように決闘と言う名目で処刑を行うつもりか?」
「め、滅相もありません。これは正式な決闘の申し出になります」
陰陽寮には前科がある。それは俺と同じく、平民上がりの術師に陰陽術の指導と言う名目で何人も再起不能にしている。帝もそれを懸念しているからこそ、俺の申し出を2つ返事で了承してくれた。
「では後日、私の前で御前試合と言う形で決闘を行ってもらおう。立会人は高島と西郷で良いな?」
「私は異論はありません」
殺気だった目で俺を睨む頭領を無視して了承する。これで頭領もまた了承するしかない。
「わ、私も異論はございません」
「ならば、決闘ではなく御前試合とする。更にだ、高島の屋敷に送られた文にある月神族との横島の共謀は無かった、彼は私の命に従い、
命懸けで輝夜姫を逃がしてくれた。この御前試合の勝敗に関係なく、彼らに危害を加えることを禁ずる」
「帝、し、しかしそれでは殺された我が陰陽寮の術師はどうなるのですか!?」
「では逆に聞くが、何故陰陽師が殺された責任を横島に求める?彼は私の命に従った、そして死んだ陰陽師には申し訳無い事をしたと思っているが、それは全て私の指示。異論があるのならば、私に申してみよ」
「……ッ……いえ、何もございません……」
子供の喧嘩に親を引っ張り出してきたような気がして、気分は良くないが腐敗しきっている陰陽寮が何をしてくるか判らない以上対策は必要以上に取りたいと思う。
「ああ、後聞いておきたいのだが、鬼道が逃走した。まさか陰陽寮に匿ってなどおらぬな?」
「ま、まさか……反逆者を匿う等と……我らはしておりませぬ。では私はこれで」
冷や汗を流しながら足早に帝の屋敷を出て行く頭領。その姿を見れば、今の発言が嘘であると言うことは明らかだ。
「高島よ、こっちへ来い」
「失礼します」
帝に呼ばれてから御屋敷に足を踏み入れる。帝は門から出て行く頭領を鋭い視線で見つめながら俺に問いかける。
「高島お前はどう見る?」
「鬼道を匿っているのは確実かと……」
「で、あろうな。不服ではあるが、鬼道の家には私の家の血が混じっている。帝の地位を奪おうとしていると見て間違いなかろう」
「しかし、それは遠縁では?」
「うむ。だが、血縁であると言うことに変わりはない」
今の帝の5代前が確か、鬼道家と縁組を交わしている。そんな薄れた血を持って、自分が帝だと鬼道は名乗り出るつもりなのだろうか。
「御前試合の場が謀略の場になりかねん。高島、護りは任せるぞ」
「お任せください、我が命に代えてお守り申し上げます」
深く頭を下げて帝の屋敷を後にする。だが予想通りと言うか、背後をついて来る何者かの気配を感じ早足で曲がり道を曲がる。
「い、いない!?」
「ど、どこへ!」
「くそっ!しくじった」
足元で騒いでいる陰陽師達を見つめながら、手を繋いでいるメフィストに視線を向ける。
「悪いな、メフィスト」
「ううん。良いよ別に、でも言った通りになったね」
「そうみたいだな、そこまで馬鹿はいないと正直考えていたんだけどな」
あの陰陽師達は木術……雷に特化した陰陽師達だ。さしずめ、俺を暗殺して道真公のせいにするつもりだったんだろう。
「早く戻ろう、これは美神達にも警告しておくべきだ」
「了解、ちょっと飛ばしていくよ」
メフィストに手を引かれ、空を駆ける。吹っ飛んでいく景色を尻目に、今回の件はただの勢力争いではなく、その後ろで外つ国の神魔であるあすもでうすとやらが手を引いているかもしれないと考えながら、俺はその場を後にするのだった……。
~横島視点~
「横島君、陰陽寮から決闘の申し込みがあったから、西郷さんと高島に陰陽術を教えてもらって」
「すいません、どういうことですか?流れが全然判らないんですけど」
陰陽寮から決闘の申し込みがあったから、陰陽術を覚えろという美神さんの言葉に俺はどういうことですか?と尋ねた。アスモデウスと道真公の襲撃があるかもしれないのに、決闘ってどういう事なのかが全く理解出来ない。
「……簡単だ。陰陽寮がゴミって事だ」
「燃やしても燃えないゴミの塊ですわ」
辛辣ッ!だけど、陰陽寮の見学をした時の事を考えれば、シズクと清姫ちゃんの言う事も間違ってないと思う。
「本当はそんな事をしてる場合じゃないんだけど、挟み撃ちとかにされるリスクを考えるとね、受けるしかないのよ」
【なるほど、やりかねないって事か、面倒な事だ】
「マジで?そこまでやる?」
「「「「絶対やる」」」」
アスモデウスと道真公と戦っている間に陰陽寮からの挟み撃ちを避けるためと言うけど、まさか全員がやると断言するとは思ってなくて、俺は絶句しながら頷くしか出来なかった。
「横島はまず基礎が出来てない、精霊召喚には長けているようだが、陰陽術師とは言い難い」
「まぁ、精霊召喚は上級技能ではあるんだけどな」
平安時代で最強と言われる2人の陰陽師の指導を受けるんだけど、どうもと言うか、やっぱりと言うか……俺は正規の陰陽術とは相性が悪かったようだ。
「……怪異に好かれすぎて、普通の陰陽術でも精霊が出てきているな」
「これは想像して無いな」
「……なんかすいません」
相手の霊札を無効化する術を聞いて、やってみたが精霊が出てきてガードした(らしい、俺は精霊が見えないので、確証はなし)
五行による陰陽術の行使。精霊が勝手に術をパワーアップして制御不能。
精霊は俺に褒めて欲しいと言うか、俺が好きだから頑張ってる模様。なお完全に空回りなのはご愛嬌。
「どうする、西郷。俺は……正直無理だと思う」
「……非常に厳しいが、そうだな。相手の術に被せて、相手の術を打ち破るのはどうだ?」
「それ完全に力押しだろ?」
「教えようが無い」
「……本当すいません」
【大丈夫だ。横島、お前が悪い訳じゃない】
心眼がフォローしてくれるけど、あーだこーだと話している西郷さんと高島さんを見て、本当に申し訳無い気持で一杯になる。
「……なら水と炎に絞ってみないか?」
「シズク様。それはどう言う事でしょうか?」
「……私と清姫は横島と契約してるから、ある程度外部から接触出来る。それで私と清姫が精霊を脅……んん、頑張り過ぎないように言う」
「今脅すって言いかけなかった?」
「……気のせいだ」
「気のせいですよ?」
凄く綺麗な笑顔をしてる2人に絶対これ脅すつもりだと確信したが、これで普通に陰陽術が使えるなら、決闘の時だけでもお願いしようかなと思った。
「横島君の性格を考えると、無効とか、防御とかそう言うのを重点的に教えてもらえると嬉しいわ」
「攻撃は他に手段がありますから」
美神さんと蛍は決闘の話ではなく、元の時間に戻った時の事で考えているようだ。でも確かにその通りかもしれない、攻撃手段で言えば、栄光の手、勝利すべき拳、アンちゃんから貰った霊破銃など、自分で言うのもなんだが、攻撃手段は多彩にある。それならば、俺の苦手な防御系を充実させるというのもありかもしれない。
「防御系か……確かに横島の場合それがいいかもしれないな」
「そうだよな、横島はどっちかと言うと生粋の術師じゃないしな」
美神さんの提案で攻撃系ではなく、防御系を重視した陰陽術を教わる方向で訓練の指針が決まったのだが……。
「本気ですか?」
「攻撃を防ぐのが1番学ぶのに早い。基礎は教えるから、後は自分で掴め」
「お前は俺と似ているから、自分で理解して身体で覚えろ」
その習得方法が防御手段を教えるから、それを自分で考えて効率的に使えという攻撃するから死ぬ気で防げという余りにスパルタ方式で美神さん達に思わず視線で助けを求めたのだが……。
「まぁ横島君には向いてる習得方法よね」
「あんまり危なそうだったら止めに入るから」
「……怪我は治してやるから」
「横島様、頑張れ!」
「チビ達も応援しておるぞー、横島。頑張れ」
「ぷぎい!」
「みーむー♪」
【ノブノブ!】
味方0と言うことに絶望し、気持を整理する間もなく放たれた陰陽札を必死に飛び退いてかわし、札を指に挟んでいる西郷さんと高島さんが心底怖いと思いながら、この超スパルタ方式の陰陽術習得修行を始めるのだった……。
GS芦蛍外伝平安大魔境 その21へ続く
次回は陰陽術バトルの前に現代の視点を入れて行こうと思います。前の話に書いていた、雷の元へ走った琉璃達の視点からですね。
平安編も後10話くらいで終わろうと思いますので、最後まで是非お付き合いの程をよろしくお願いします。