GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境 作:混沌の魔法使い
GS芦蛍外伝平安大魔境 その21
~くえす視点~
何度も鳴り響く雷鳴、それに打たれるかもしれないと言うのは全員の頭の中にあった。それでも、この雷が平安時代から美神が戻ってくる合図と思えば、私達は足を止める事が出来なかった。
【来る!皆止まれッ!!】
道真公の怒声と共に一際大きな雷が私達の目の前に落ちる。凄まじい煙の中で人影が2つ動くのが見えた。
「げほ、ごっほ!!死ぬかと思ったわッ!!」
「私まで道連れにするつもり!?」
煙の中から聞こえて来たのは2人の美神の声……その事に困惑していると煙が晴れ、雷が落ちた場所にいる人物の姿がはっきりと見えた。
【いや、ワシさ、美神って偶に魔族よりあくどいって思うことがあったんじゃけど……】
【まさか前世が魔族とは……想定外……ああ。いえ、想定内ですね】
美神と瓜二つの容姿をした尖った耳の女魔族と美神がボロボロの姿でそこにいた。
「美神さん!大丈夫ですか!」
「琉璃!?それにくえすに小竜姫様も!急いで探さないとって思ってたから助かるわ!!」
亀裂の間から這い出るように姿を見せた美神は宙に浮いている道真公を見て一瞬目を顰めたが……。
「元の道真公ね、文珠頂戴!時間が無いのよ!」
【存じておる。持ってゆけ】
道真公が4つの文珠を弾き、美神はそれを受け取り服の中に乱暴に詰め込む。
「小竜姫様とビュレト、それと……」
「いや、これ以上は止めといた方がいい。人間だと死ぬ」
ビュレト様と小竜姫の名前を呼び、私に視線を向けた美神の手を掴み、女魔族が制止する。
「どういう状況なんですの!?横島は大丈夫なのですか!」
「せんせーは!せんせーは無事でござるか!?」
「状況を説明してよ!」
私達の言葉に美神は説明してる時間が無いのよと叫んだ!
「このままじゃ手遅れになるのよ!後で、戻ってきてから全部説明するわ!小竜姫様とビュレトは急いで!早く行動不能にしないとそれこそ本当に手遅れになるから!!」
美神の必死の表情に小竜姫とビュレト様が美神に駆け寄り、その手を掴む4人が手を繋いだ時、その中央で光を強くする雷と刻まれた文珠を見て、琉璃達が離れていく、私はその霊力の渦に逆らいながら叫ぶ。
「貴女達が死んでも、横島は助けなさい!後は私が面倒を見てあげますわ!」
「誰が死ぬかッ!絶対全員無事で帰ってくるわよッ!!」
私の声に負けないくらいの大声で叫ぶ美神。その声を聞いて安心した、戻ってくるという強い意思があればきっと何があっても戻ってくる。
「引っぱたいてでも横島を正気に戻しなさいよ!それが師匠の貴女の仕事ですわッ!!」
「……ッ!そんなこと言われなくても判ってるわ!じゃあ、行くわッ!」
「くえす!もうこれ以上は無理よ!!」
雷鳴が鳴り響く中、琉璃に手を引かれ美神達の側から離れた瞬間。凄まじい雷が目の前に落ち、今までの嵐が嘘のように静まり返り、静寂に満ちた草原の中を呆然と見つめる。
「なるほど、GS協会とオカルトGメンが必死に匿う理由が判りましたね」
「……言ったら殺しますわよ」
私が睨むと躑躅院は怖い怖いと肩を竦め、その顔に笑みを浮かべながら私達を見つめる。
「陰陽寮を解体して、GS協会の傘下にはいると言うのに、トップに睨まれる様な真似はしませんよ。これでも道理は弁えているつもりなのでね」
「……そう、今はその言葉を信じるわ。「今」は」
「今だけではなく、ずっと信じてくれて構いませんよ?」
獅子身中の虫と言うことは判っている。それでも躑躅院を抱え込まないといけないのが今の私達の現状だ、それが分かっているからこそこの態度……くえない男……いや、女?正直いい加減どっちか知りたい所ではある。
「それで道真公、今はどうなっているのですか?」
【……恐らく、シェイドで暴走し、そしてその上で12神将を全て取り込んだ姿で暴走しておられるのだろう】
12神将を全て取り込んだという言葉に一瞬何を言われたのか理解できなかった。
「何が、何が平安時代で起きたんですか?」
【愚かなる鬼道によって酒呑童子を呼び出し、それの暴走によって起きた大惨事の後の事だと思う……】
2度と聞くことの無いと思っていた鬼道の名。しかし平安時代で考えれば、鬼道は帝お抱えの陰陽師だ。
「「「余計な事しかしないな……鬼道」」」
私と琉璃と躑躅院の声が重なった。本当に鬼道は余計な事しかしない……私と琉璃と躑躅院の呆れたような声が重なるのだった……。
~西郷視点~
私も高島も出来る限りの技術を横島に教え込んだ。横島の知識は非常に尖っていたが、それは感覚の物で、教えれば教えた分だけ知識を吸収し、そして己の物にした。正直、1年も修行を積めば私を越えると確信し、その才覚には私も高島も恐怖した物だ。
「それではこれより御前試合を行う。審判は陰陽寮から西郷、そして私の代理として高島が勤めるが、異論はないな?」
帝が立ち、横島と変装している鬼道に声を掛ける。高度な陰陽術で姿を変えているが、私と高島にはその変装はまるで意味がないものだった。なぜならば、既に私も高島も鬼道よりも陰陽師として高みにいる。慢心し、己を鍛える事を止めた鬼道よりも技術が秀でているのは当然の事だ。
「「ありません」」
横島と鬼道の声が重なる。だが異論はないと言っておきながら御前試合の場と言うのに、帝に対する敵意を隠す事が無い。それにその霊力が濁っているのを見て、やはり西洋の悪魔と内通していると確信した。
「立会いとして六道家当主、躑躅院当主、そして横島の師も含まれる。これは正当な決闘であり、御前試合である。勝敗がついた場合、試合中であれ殺しは禁止とする。過度な攻撃に出たと判断した場合、高島、西郷両名により、拘束を行う。異論は無いな?」
これは私と高島で話し合った予防策だ。躑躅院当主は霊力こそあるが、それを扱う術に劣る。だが自分の霊力を他人に譲渡するという術には秀でている。その霊力を六道に渡し、その増幅した霊力で12神将で拘束する。そして美神達は外からの乱入者及び、周囲の警戒と陰陽寮の陰陽師の乱入や異議申し立てに備えている。だからこそ、横島はこの場に不安も恐怖も無く立つ事が出来ている。
「ありません」
横島はすぐ返事をしたが、鬼道は返事を返さない。帝は鬼道に視線を向ける。
「もう1度聞く、異論は無いな?」
「……ありません」
不服と言う態度を隠しもしない鬼道にやはり、御前試合と言う場を与えず反逆者として捕えてしまえば良かったという考えが一瞬脳裏を過ぎった。
「また勝敗に問わず、謂れのない誹謗中傷を行った陰陽寮所属の者は全て高島と横島に謝罪を行う事。良いな?」
返事を返さない陰陽寮に帝は眉を吊り上げるが、小さく息を吐いた。
「帝の言葉に返事を返さぬと言うのならば、全員反逆者として処理する」
その言葉と同時に兵が動くと慌てて陰陽寮の陰陽師達も御意と返事を返す。だがその態度を見れば不服、不満を抱えているのは明らかだった。それに私を爪弾きにして、何か話をしているのも見ている。この御前試合で何かを企んでいるのは明らかだ。
「それでははじ「……火精将来ッ!」マジかッ!?」
初めと同時に鬼道が陰陽術を放った。炎の中に消える横島に一瞬腰を浮かしかけたが、それは本当に一瞬の事で、すぐに腰を下ろした。美神達がうろたえていないのに、私がうろたえていては何の意味もない。更に言えばあの程度で死ぬような柔な鍛え方はしていない。
「やはり月神族と結託していたのではないか?」
「あの程度の実力で本当に神魔を退けたのか?」
「帝、やはり1度西郷と高島、そして横島の師達も調べるべきでは?」
横島が負けたと判断して、好き勝手言う陰陽師達だが帝は小さく笑い。
「お前はまこと私を楽しませてくれる。なあ、横島よ」
火柱が弾け飛び、そこから横島が無傷で姿を現し、手を閉じたり開いたりしながら困惑した様子で向かい合っている鬼道に視線を向けた。
「なんだ、ビックリしたけど……これくらいなら全然行けるッ!!」
不安げな表情を一転させ、強気な表情を見せる横島を見て、私はやっと安堵し、椅子に背中を預けるのだった。
~美神視点~
先制の不意打ちには驚きはしたが、焦りはしなかった。不意打ち、騙し討ちはあると考えるべきと助言をしていたのだ。その通りになった程度の認識だった。正直に言えばあの程度の炎なんて横島君にとってはマッチの火に過ぎない、それに開幕の不意打ちで力が抜けたのか、横島君は実に生き生きし始めた。
「ッ!火精将来!」
「おせえッ!救急如律令!霊符の力を散らしめよッ!禁ッ!!」
剣指で空中に文字を描き、鬼道の陰陽術をキャンセルし、そのまま自分の陰陽札を構える。
「救急如律令!風精招来ッ!」
横島君の姿が掻き消え、鬼道の苦悶の声が響く。横島君の前蹴りが鬼道の胴を捕らえ、そのまま上空に向かって蹴り上げられる。
「陰陽師の癖になんと言う事を!」
「あのような行動を許してよいのですか!」
「先に不意打ちしておいて何を言う、それにだ。陰陽術で己を強化し戦うことの何処が間違っているのだ?」
西郷さんのまともな言葉に反論など出来るわけがない。
「でやあッ!!!」
「がっ!?」
ただ空中で回転踵落としを相手の腹に叩き込むのは正直陰陽師としてはどうかと思うけどね……。
(ヒャクメ、どう?)
(んーまだそれらしい反応はないのねえ)
私の予想では鬼道が狂神石を使って自分の霊力を強化していると予想していたんだけど、今の所それらしい予兆はない。
「土精将来ッ!」
「雷精将来ッ!」
地面から伸びる無数の腕を雷精を呼び出した横島君が高速で駆け、その余りにも鈍足な腕を完全に回避する。
「救急如律令!火精将来!」
「霊符の……ぐうううッ!!」
横島君の陰陽術をキャンセルしようとした様子だが、横島君の霊力の練り込みのほうが上かつ発動までの時間が短く、鬼道は変装のローブごと炎に巻かれる。のたうち回り、転がる姿を見れば鬼道の力量で横島君に勝てないのは明らか。
「これで決まり……だと良いんですけどね」
「そうも行かないわね。蛍ちゃん、精霊石の準備」
どうもあのローブは変装用ではなく、狂神石の力を押さえ込む為の物だったようだ。明らかに霊力が変質しているのに気付き、精霊石の準備をした瞬間。横島君がバク宙で鬼道から距離を取る、だがその胸には一文字の切り傷と切り裂かれた服の下から血が滴っているのが見えた。
「横島!?」
「大丈夫!ちゃんと避けたッ!」
避けたと言いつつ、陰陽札を胸に貼り付け治療を行う横島君の目は険しい、その視線の先には額に札を張られた小柄な少女……いや、鬼の姿があった。下着のような面積の少ない服の上に着崩した着物――幼い容姿なのに、いや幼い容姿だからこそある魔性の色気と言うものがあった。
「ヒャヒャヒャ!貴様なんぞが私に逆らうのが悪いのだ!私こそが真なる帝!平安京の……あえ?」
【ニタァ……】
変装が解け自分こそが真の帝と叫んだ鬼道だが、その言葉を最後まで言う事は無かった。鬼に胸を貫かれ、心臓を抉り出された鬼道は金魚のように口をパクパクさせながら、その場に倒れ動かなくなった。そして鬼は抉り出した心臓を美味そうに飲み込み、身の丈の倍以上の刀を大きく振りかぶった。
「西郷!」
「分かってる!!」
「シズク!清姫ッ!」
その動きを見て私達がそれぞれの名を叫び、障壁が張られるのと振るわれた刀から飛び出した魔力刃に反応の遅れた陰陽師達と兵士――そして帝の屋敷の壁を引き裂き、反応の遅れた兵士と陰陽師は腰から両断され、崩れた瓦礫の中に消えた。
「だ、大丈夫か!」
「な、何とか!それよりそっちは!?」
精霊石とシズクのバリアのお陰で無事だが、後ほんの少し反応が遅れれば私達も両断されていたかもしれない……それが分かっているから背筋に冷たい汗が流れた。
「帝も、躑躅院も幸華も無事だ!」
砂煙の中から聞こえてきた高島の声に安堵していると私達の耳に茨木の声が飛び込んできた。
「酒呑!何をしておるのだ!そんな姿はお前らしく「あぶねえッ!!」……しゅ、酒呑ぃ……」
声を掛ける茨木に向かって刀を振るう鬼……茨木から告げられた名は「酒呑」……。それが何を意味するか判らないわけが無かった。
「本当に鬼道は余計な事しかしないわねえッ!!」
金時から生きているかもしれないと聞いていたが、陰陽術と狂神石で使役されているなんて想像もしていなかった。日本で随一の知名度を誇る鬼と戦うなんて本当に冗談じゃない。
「本当ですね!」
「……全くだ、ここで滅ぼしておいても良いかもしれないな」
「横島様に害なすなら、死ぬ覚悟をして貰いましょうか」
【にいぃぃ……ッ!】
シズクと清姫の殺気の溢れた視線を向けられて笑うなんて、私でも出来ない。それだけ実力に差があるからだ、幼い少女の姿をしていても、龍神。私達よりも数倍強い。だがそんな視線を向けられても笑う、それはシズクと清姫を相手にしていても、勝てるという余裕の表れなのか、それとも好敵手を見つけたという笑みなのか……どっちにせよ良い笑みではないのは確実だ。
「蛍ちゃん、ヒャクメ、横島君の方へ行くわよ!」
「はい!」
「分かってるのね~」
この場はシズクと清姫に押さえて貰って横島君の様子を見に行かなければ、狂神石に飲まれた鬼の攻撃を受ければ、横島君の狂神石が活性化するかもしれない、そう思って横島君に駆け寄ろうとしたのだが……。
「変身ッ!」
【カイガンッ!金時!雷光!正義!ゴールデン・スパークッ!】
雷鳴が下から上に上がり、雷を振り払って変身した横島君が姿を見せる。その姿はあの夜のシェイドの物とは違っていたが、それでも狂神石の力を使う相手と戦わせるのは嫌だった。だから私と蛍ちゃんは高島の下へと向かった、たとえ自分に出来る事が微々足る物でも黙ってみるなんて事はしたくなかったから……。
GS芦蛍外伝平安大魔境 その22へ続く
陰陽術バトルかと思いましたか?残念、ライダーVS怪人鬼娘です。今回は導入回なので短め、次回は金時魂&シズク、清姫VS酒呑(狂神石+陰陽札で思考誘導中)となりますが、今回は決着まで行かない予定です。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。