GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境 作:混沌の魔法使い
GS芦蛍外伝平安大魔境 その24
~美神視点~
横島君と蛍ちゃんが無事に帰って来たことを喜ぶ間もなく、私と高島と西郷さんは再び帝の屋敷に呼ばれていた。
「鬼の討伐、大儀であった。少なくはあるが、褒賞を用意した。まこと大儀であった」
米と絵巻とかか……米は正直持ち帰るのが辛いけど、絵巻とか屏風はありがたいわね。平安時代の職人の品なら非常に高値が付くだろうしね。
「美神よ。この際私に仕えて見る気は無いか?」
「……お言葉は嬉しいですが、お断り致します」
確かにこの時代の人間ならば帝お抱えとなることを喜ぶだろう。だけど私達はこの時代に骨を埋める訳にはいかない、だから断ると帝は扇子を開いて楽しそうに笑った。その予想外の反応に少し驚いた、最悪の場合無理やりにでも宮仕えにでもされるかと思っていたからだ。
「昨夜神仏が枕元に立ってな、お前達の事は聞いた。遠き未来を生きる人間とな……?」
にやりと悪戯っぽく笑う帝に思わず目を見開いた。まさか神魔がここで関わってくるというのは正直、私にとって計算外だったし、何よりも予想外の事だった。
「故にこれが最後の誘いだった。これは未来へと持ち帰り、未来での戦いに備える為の資産とするがいい」
「……破格のお心遣い、感謝します」
「ははは、本当ならばお前達に陰陽寮を率いてもらえれば安心だが……そうも言ってられぬ。まだ辛い戦いが続くと思うが、頑張ってくれ」
その言葉を最後に帝は屋敷の奥へと消え、私達は褒賞を積んだ牛車に乗って帝の屋敷を後にしていた。
「西郷さんも帝から聞いていたの?」
「いや、帝から聞く前に気づいていた。立ち振る舞いや、もっている物を見ればおおよその予測は付く」
「まぁ、それは俺も同じだけどな。陰陽寮で基本部分だけ作られてた陰陽棒の発展みたいのも持ってたしな」
……隠しているつもりだったけど、割と最初からバレていたのだと判り、思わず力が抜けた。
「道真公の事が判っていても、神魔は力を貸さない。いや、正しくはかせないのだろうな……」
「それは仕方ないだろうな……俺達だけで何とかしなければならないと言うことか……」
帝の枕元に立ったのだから、そのまま道真公を撃退するのに協力してくれてもいい物なのだが……。やはり平安時代と言う事で魔族の動きも活発なのだろう。いや、それよりも道真公を撃退するのに力を貸す事が出来ないと言うのが本当の事なのかもしれない。
「狂神石か……」
「ええ、多分それだと思う」
ガープ一派の最大の武器である「狂神石」……それによって神魔軍の中の誰かが操られたら情報は全てガープへと流れてしまうし、誰が操られて、誰が操られていないのかと言うことも判別が難しくなる。
「なるほどな、少ない戦力を大きくする。そのための常套手段だな」
「裏切り者がいるかもしれないと思うだけで、精神的にも疲弊する。実に嫌な一手だ」
戦力として有効ならば、何時までも操ればいい。
戦力として使い物にならないと判断したのならば、使い捨てればいい。
そしてこちら側は誰が操られているのか判らないと言う本当に最悪の一手だ。
しかしそれが戦力に乏しいガープ達が、数で勝る神魔を翻弄し、勝利し続けてきたその手段となると、その効率の良さには驚きを隠せない。
「横島君は大丈夫かしら?」
狂神石に操られていた頼光の眼魂を作る時に、僅かだが狂神石を取り込んでしまった。そして月神軍との戦いで、その狂神石の力を開眼してしまった。この事は出来れば隠し通しておきたいところだけど……横島君を中心にして事件が起きることを考えれば、それを隠すと折るのは不可能に近い。だから平安時代の最高の陰陽師と言える2人の意見を聞いてみる事にした、すると2人の意見は真っ二つに割れたのだ。
「私は横島の性格からすると、怒りに飲まれる可能性は高いだろう。隠そうとせず、早々に明らかにしてしまえば良いだろう」
「横島は戦いを嫌う、それに人を信じやすい。上手く立ち回れば、隠し通すことも不可能では無いと思うぞ」
高島と西郷さんは顔を見合わせているが、確かにそのどちらも横島君の性格を良く捉えていると思う。
「結局の所は上手い対処法は無いと……?」
「悪いが私にはどうすれば良いか等と容易に助言する事は出来ないな」
「まぁ俺の知り合いの神魔の伝を使ってみるけど……確実とは思わないで欲しい」
出来る限りの手段は皆取ってくれる訳だけど、横島君に関しては爆弾を抱え続ける事になるのだろう。それでも、私は横島君を見捨てたくは無い……これは前世の縁とか、そんな安い言葉じゃない。まだ霊能に目覚める前から横島君の面倒を見ていたのだ、今更1つや2つ爆弾が増えた所で横島君を見捨てると言う選択は私には無いのだ。GS協会だろうが、オカルトGメンだろうが、横島君を最後まで守り通してみせると私は決意を新たにし、高島の屋敷へと続く道に視線を向けたのだが……。
「先に謝っておくわ、なんか大変なことになってる」
「……そうみたいだな」
屋敷の方から上がる火柱と水柱を見て、絶対大変なことになっていると悟り、家主の高島に私は深く頭を下げるのだった……。
~ヒャクメ視点~
横島さんの魂の調子を見ていたんだけど、結果は私としては信じられない物だった……。勿論それは皆一緒で鋭い視線を向けられて、背筋に冷たい汗が流れたのを感じたのは言うまでも無いのね。
「……もう1度調べなおせ」
「それか貴女の目が腐っているんじゃないんですの?」
シズクさんと清姫様に言われても、結論は絶対に変わらないのね。と言うか、私自身が何度も何度も調べてその上でのこの結果なのだ。何度調べても、この結果は変わりようが無い。
「狂神石は横島さんの魂の何処にも残滓が見えないのねッ!」
今までのことを考えれば、魂の中に狂神石のあの赤黒い独特の霊力反応があるはず……だけど幾ら調べても、それらしい反応は見えないのだ。魂に干渉している狂神石の今までの情報を考えればありえないのだが、データ上は横島さんに狂神石の影響が無いと言うのが私の出した結論なのである。
「……余り感情的になるな、常に冷ややかであれと言う心情はどうした?」
「……それとこれとは話が違う」
「そんなに横島が大事なんですか?」
「大事ですわ!もう龍族なんてどうでも良い位に!」
……同じ声が3つも4つも重なっているので正直かなり混乱しているけど、結果は変わらない。横島さんの魂の中には狂神石の残滓は無い……それが私の診察の結論なのだ……でも何故狂神石の残滓が無いのか……そこが不思議でしょうがない。
(確かに暴走しているのね)
黒いウィスプの姿を私も見ている。あの時は完全に狂神石に呑まれていたし、その直後の診察では狂神石の反応があった。だけどそれが無い――楽観的に考えれば、心眼と横島さんの魂の抵抗力で狂神石の性質が無効化された。という見方もあるけど、神魔も英霊も抵抗できない狂神石の力に人間の魂の抵抗力で無効化できるかとなるとやはり疑問が残る。
「あのさ。話をこじらせるつもりは無いんだけど、1個気になったこと聞いて良い?」
「なんなのね?」
メフィストさんに何が気になっているのかと尋ねる。するとメフィストさんは縁側に視線を向ける。
「しゅーてーん。今日は良い天気だぞ、明日も良い天気だといいなあ」
【……】
酒呑童子の眼魂を大事そうに抱えて、声を掛けている茨木童子がそこにはいた。
「……あれがどうかしたのか?」
「いや、眼魂って魂が入っているんでしょ?」
「そうなりますわね?」
眼魂の性質は英霊や神魔といった、魂が主体になっている存在を収用できる物質と考えて良い筈だ。あるいは、固形化した魂と言っても良いだろう。メフィストは私達の回答を聞いてそれならあたしの考えている通りと笑った。
「じゃあさ。狂神石の性質が眼魂に封じられているんじゃないの?」
「「「あ……」」」
それは考えてみれば当たり前の事だった。横島さんが暴走した時は眼魂から常に赤いオーラが溢れていたし、横島さんの身体からもオーラが出ているので横島さんの魂の中に狂神石が残っていると思っていたのが間違いだったのかもしれない。
「じゃあ、あの赤黒い眼魂が出現した時に……」
「……奪い取って封印すれば」
「横島さんから狂神石の影響を取り除けるかもしれないのねー!」
あくまで可能性の話だが、横島さんから狂神石の影響を取り除けるかもしれない。そう思うと、今までなんの光明も無かった道に光が差し込んだように思えた。
「なら今の段階は竜気で押さえこんでおくのが1番確実ですね」
「……まぁ、私と清姫の竜気なら……」
平安時代のシズクさん達がそう口にした瞬間。私達の時代のシズクさんと清姫さんが姿を消した、平安時代の2人がきょときょとするのを見ながら私は天を仰いだ。
「何?大変なことにでもなるの?」
「……たぶんと言うかこれから確実になるのね……」
竜気で封印すると言う大義名分を得てしまったら、あの2人の事だから暴走するのが目に見えていた。
『え?え?何?心眼をどうするのッ!』
心眼を奪われたみたいなのね。理路整然と攻めてくるから先に心眼を奪うのはきっと大正解なのね。
『大丈夫です、ね。何にも怖くないですからね?』
『……すぐに済む』
『蛍ー!蛍!助けてーーーッ!!!』
私の目だから判るけど、完全に肉欲に染まっている2人に迫られるのは怖いのね……横島さんでも助けを求めるのは当然だった。
『み、みむう?』
『ぴぎゅー?』
『ノノーブ?』
『……大丈夫。問題ない、これは横島の為になる』
『そう言うことですから大丈夫ですわよ?』
チビ達が助けてという声に出てきたみたいだけど……シズクさんに横島さんの為になると言われて、どうすればいいのか判らないのか困惑した鳴き声を上げている。
『何!?何事!?って何してるの!?』
すると横島さんの助けを求める事を聞いたのか、廊下を走る音と障子が勢い良く開く音が響いた。まず、間違いなく蛍さんが来たみたいなのね。
『ちい、邪魔者ですわね』
『……大丈夫、すぐに済む』
『つ、つめたぁ!?足元凍らせるとか酷くない!?って言うか何するつもりなのよーッ!!!』
そして助けを求める声に姿を見せた蛍さんだけど、庭から聞こえてくる冷たいっと言う悲鳴にこれは絶対大変なことになっていると確信した。竜気を注ぎ込むという名目で横島さんとキスをするつもりなのだろう……ガッツリ肉食系の2人なら絶対それをすると確信していた。
『いやいや!待って!お願い!』
『大丈夫ですわ、すぐに終わりますから』
『……念の為だから』
『『邪魔をするな……』』
「家が吹き飛ばないようにして欲しいのね」
「まぁそれくらいならやりますわ」
「……高島の帰る家を無くす訳には行かないしな」
邪魔者の動きを止めて、いざ横島さんに迫れば最大の敵は目の前にいる。屋敷の中にいても、びりびりと伝わってくる殺気――その近くに居るであろう蛍さんと横島さんの事を思い、南無と呟き、庭から上がる火柱と水柱に本当に大変なことになったと頭を抱え込んで、机の下に潜り込むのだった……。なおシズクさんと清姫様の争いは美神さん達が戻ってくるまでの間の1時間ずっと続いていて、戻って来た時の美神さんの怒声に私へ向けられた物じゃないと判っていても、身が竦んでしまうのだった……。
酒呑童子が狂神石に適合しているのではなく、その桁並外れた精神力で押さえ込んでいると言う報告を受けたガープはアスモデウスに作戦の最終段階に入るように告げていた。
「アシュタロス。お前にも協力してもらうぞ」
「良いとも、だが姿は隠させてもらう」
協力するのは構わない、だが正体を隠すと言ったアシュタロスにアスモデウスは首を傾げた。
「それほどまでにお前の娘に正体を明かすのが嫌か?」
「まだその時じゃない。それにあの子は私を本当に父親だと思っている。まだ利用価値はある――そうだろう?」
あくまでその時が来るまでは自分の娘……蛍には自分の正体を隠すというアシュタロスにアスモデウスはそれも良かろうと頷いた。
「無意識の内にあちら側の陣営の情報を流してくれているのだ。それを失うのはまだ痛いか」
「そうだ。それに精神攻撃にもなるし、人間側の陣営の出鼻を挫く為にもな」
本当はそんな事を思っていなくとも、アシュタロスはそのように振舞わなくてはならない。
「過去のお前は協力を拒否したな」
「仕方ないだろう、未来を知る私とお前がいるんだ。無理に動く必要は無いのさ」
アスモデウスに協力する上でアシュタロスは保険を残した。それは平安時代の自分だ。かなりギリギリだったが、未来のアシュタロスは過去の己を引きこむことに成功していた。だからアスモデウスと共に動いても、最悪の場合はアシュタロスが用意した保険を起動してくれるだろう。それが、アスモデウスと協力する上でアシュタロスが出来た横島達への贈り物だった。
【アシュタロス様、アスモデウス様、準備は出来ております】
道真公が黒い稲妻と共に表れる。その目は紅く染まり、全身から溢れ出る紅い霊力……道真公もまた狂神石を投与され、その霊力を増加させていた。しかし今までの神魔と違い暴走していないのがガープによって、更に改良された狂神石の力だった。
「平安京の霊力溜まり、そして霊脈を破壊する。良いな」
【全てはお2人の思うがままに……】
今までは隠れながら美神達の手伝いをするという事も出来た。だがこうしてアスモデウスと共に立った以上、もう表立って美神達に協力することも出来ない……ここからが、アシュタロスにとっての本当の戦いの始まりであり、決して気を緩める事の出来ない騙しあいが始まる瞬間なのだった……。
そしてこの日の深夜――平安京の霊力の溜り場、霊脈、そして平安京を守る結界の基点が全て黒い稲妻によって破壊されたのだった……
GS芦蛍外伝平安大魔境 その25へ続く
次回は結界の基点が破壊されたことで溢れかえった鬼や悪霊との戦いから始まり道真公の降臨までを書いて行こうと思います。
過去に飛んだ面子が出てくるのはもう少し後になりますが、それは話の都合と言う事で1つよろしくお願いします。