GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境 作:混沌の魔法使い
GS芦蛍外伝平安大魔境 その26
前の帝の屋敷は酒呑童子……いや、鬼道のせいで破壊されてしまった。だが平安京の最重要人物である帝を護るというのは当然の事であり、帝お抱えの霊地には数多の屋敷が用意されている。つまり、鬼道によって屋敷は破壊されたが、その日の内に帝は新しい屋敷へと住居を移しており、今いる屋敷は幸か不幸か道真公の稲妻によって唯一破壊されなかった霊地の上の屋敷だった。
「あ……皆が行ったわ」
「……話には聞いていたが、こういうことか」
六道家当主「六道幸華」の周りにいた12神将が霊力の光になって、空を飛んで行った。それが突然の事であれば全員パニックになっていたが、事前に高島から説明を受け居ていたからか驚きは少なかった。
「皆が助けになってくれればいいわ~」
「そうだな。外つ国の神魔だからな……高島殿が無事ならば良いのだが……」
戦う事の出来ない者は無事に帰ってくる事を祈る事しか出来ず、空気に乗って響いてくる霊力のぶつかり合いにどうか、無事に戻って来て欲しいと心から祈る。
(高島、死ぬんじゃないぞ)
そして西郷もまた心から祈る。鬼道と鬼道派の陰陽師が一掃された今高島の陰陽寮当主になる道を阻む者はいない、苦しい道を歩んで来た高島の努力と苦労が救われる時が来たのだから死なずに帰って来いと西郷は祈る。
「……不吉な」
帝の部屋の鏡が音を立てて砕けた。それは西郷や、幸華、そして躑躅院の高島の無事を祈る気持ちを嘲笑うかのように、自然では決してありえない方法で砕けた鏡を見て、帝はその顔を歪めるのだった……。
~高島視点~
何故か判らないが、再び俺は横島と似た姿に変身する事が出来ていた。しかも今回は謎の男に渡された巨大な球体を使った変身だった。
【アンチラ ラピッドエッジッ!!】
腰帯から聞こえてくる声は何を言っているかは判らないが、その前の12神将の名前でどんな能力かはある程度予測がついた。
「行くぜッ!」
目の前に現れた兎の耳を連想させる三日月状の刀を持ち、アスモデウスとやらに斬りかかる。
「ッ!なるほど、厄介な能力だな」
「はっ!俺の引き運も満更じゃねえッ!」
上級神魔が展開している魔力壁、それを豆腐のように容易く切り裂くこの刀は紛れも無くアンチラの能力による物だ。
【ハローアロー森で会おうッ!】
「いけっ!!」
「よっしゃ、そのまま撃てッ!!」
俺が障壁を切り裂き、その隙を見て横島の狙撃がアスモデウスを襲う。1対1ならば間違いなく、俺も横島もアスモデウスの敵では無いだろう。だが2人ならば戦術は広がる、打てる手段は大きく変わる。
「1+1は2……ではないということか、面白いッ!やはり戦いとはこうで無ければなッ!!」
虚空に右手を翳し、そこから現れた牛の角が装飾された盾を構え、左手で巨大な戦斧を構えるアスモデウス。そのめには先ほどまで無かった爛々と燃える闘志の色が浮かんでいた。
「人間って侮ってくれてもいいんだぜ?」
「はっ、人間の可能性は神魔にとっても脅威だ。そんな愚かな真似はしないッ!」
盾を構えて突進してくる。巨大な質量が高速で向かってくる、それだけでもかなりの脅威だ。一瞬でも怯めばその隙に畳み込まれ、押し潰される。
【メキラ ディメンジョン・ステップッ!】
軽く地面を蹴ると俺の身体はその場から消えうせ、アスモデウスの背後を取っていた。
「短距離転移かッ!?」
「どういうことか俺も判らんが、続けて行くぜッ!」
【アジラ ドラゴンブレスッ!】
右腕に嵌るアジラの頭部を連想させる篭手を突き出すと、そこから放たれた炎がアスモデウスを包み込んだ。
「こんな炎などッ……これはッ!?」
「は、流石、アジラの能力だッ!!」
アジラの能力は石化と炎、その2つの性質を持った炎はアスモデウスの足元で炎を石化させ、アスモデウスの動きを拘束していた。
「横島ッ!!」
「おうッ!」
【ビカラッ! パワードボアッ!】
【カイガン! ベンケイ! アニキ!ムキムキ!仁王立ち!】
全身に漲る力は紛れも無くビカラの物。腰帯から飛び出した剣を両手で握り締め全力で振るい、横島は僧服を連想させる衣装に身を包みながら跳躍しつつその手に現れた巨大な槌でアスモデウスを殴りつける。
「ぐうっ!?」
確かな手応えを感じアスモデウスの身体が吹き飛んだ。有効打撃とは言い難いが、確かに傷を与える事は出来ているだろう。
「今度は俺だぜ、高島ッ!」
【カイガン! ニュートン! リンゴが落下!引き寄せまっか!】
両手が紺色の球体になった横島が手を翳すと吹き飛んでいるアスモデウスが凄まじい勢いで戻ってくる。
「はっ!お前とは戦いやすいぜッ!!」
大きく足を振り上げると上空に猪の蹄状の霊力の塊が生成される。それを確認し足を振り下ろすとその猪の足は高速で飛来し、アスモデウスを踏み潰そうとするが、アスモデウスの強力の前に完全に受け止められる、それならばと足を振り上げアスモデウスを上空に蹴り上げる。
【サンチラ ライトニングスネークッ!】
【カイガン! ノブナガ! 我の生き様!桶狭間!】
「「吹っ飛べッ!!!」」
俺の手に現れた電撃の槍と、横島が手に持つ銃から放たれた霊波砲がアスモデウスを飲み込み吹き飛ばす。1対1ならば、俺達はどう足掻いても勝てない。だが同じ考えを持ち、そして相手が何をしようとしているのか判る俺と横島ならば、圧倒的格上のアスモデウスにもその牙は届く。勝てないにしろ、手傷を負わせアスモデウスを撤退させれるかもしれない、それにアスモデウスの言った膝をつけば撤退するという誓約を満たせるかもしれない……それは本当に小さい勝利の目だが……確かに俺達にも勝利の目が僅かに生まれるのを感じるのだった……。
~アスモデウス視点~
地面に戦斧を突き立て、強引に姿勢を立て直したアスモデウスは激しく震えていた。人間如きに背中をつきかけた……と言う怒りでは無い、人間が、弱く簡単に死ぬ生き物が、自分を倒して見せた……その事に対する激しい歓喜だった。
「良いぞ、横島忠夫、そして高島忠助……」
横になったまま魔力で身体を起き上がらせる。我の姿を見て横島と高島が驚いているのが判り、我は笑い出した。
「何を驚く?この程度で我を倒したと?手傷を与えたと思ったか?笑止ッ!」
霊力で弾き飛ばされた事は認めよう。だが今の攻撃で我はダメージなど殆ど受けていないのが現実。
「良いぞ、お前達は我を楽しませてくれる……その礼だ。本気で相手をしてやろう。カアアアアーーーッ!!!」
赤黒い炎が我を包み込み、人間の擬態を打ち砕く。燃える様な真紅の身体と鎧、そして燃え続ける炎の翼。
「第二ラウンドだ、早々に死んでくれるなよ?」
戦斧ではなく、棘つきのスパイクを虚空から引きずり出し無造作に振り下ろす。
「ぬっぎいッ!!!」
「良いぞ、一撃で押し潰されてしまう等と興醒めな真似をしてくれるなよ?」
【シンダラ ソニックムーブ!】
振り上げ、再び無造作に振り下ろそうとした直後。凄まじい衝撃が背中を襲った。だがそれだけ、たたらを踏むことも無く、無造作に蹴りを叩き込んできた高島を鷲づかみにする。
「効いてない!?」
「いいや、悪くない。良い一撃だった。だが我を倒すには力不足だッ!!」
高島を振り上げそのまま地面に叩きつける。苦悶の声を上げながらバウンドする高島にスパイクを振るいその姿を大きく弾き飛ばす。
「高島!?「他人を心配している暇があるか?」変身ッ!」
【カイガン!ムサシッ! 決闘!ズバット!超剣豪ッ!】
横島の姿が真紅へと変わり、両手に持った刀で我のスパイクを防いだ。その姿を見ると、心が震えてくる。
「ああ、良いぞッ!神魔など我の剣と一合ともかわせなかったからな!」
「ぐっ!ぎっ!がああッ!!!」
苦しみながらも我のスパイクを、斧を受け止め、受け流し続ける横島。確かに人間ではある……だがその技量は一部だけではあるが、神魔の領域に踏み込もうとしていた。
「うあっ!?」
「残念だったな。ここで死ぬか?」
下からの切り払いで横島の手から刀が2本とも飛ぶ。そのがら明きの胴に斧を振るおうとしたその瞬間、自分の身体が後にずれるのを感じた。
【バサラ バキュームカウ!】
「そうそう簡単に……決着なんて言うなよ」
凄まじい力で吸い寄せられ、我の戦斧は僅かに横島を掠めるだけに留まる。
「ああ、そうだな。これほど面白い戦いは早々決着をつけるものでは無いなッ!」
盾の側面に付けられた刃で高島へと斬りかかると同時に、前を向いたまま斧を後に向かって振る。
「くそっ!」
「ははは、そんな奇襲など我には通用せんぞッ!!」
斧に横島を引っ掛け、振るう勢いで横島を高島に目掛けて投げつける。
「うおっ!?」
咄嗟に横島を受け止めて足を止めた高島。これこそが、我の狙いだった。
「この程度で死んでくれるなよッ!!!」
盾を構えてシールドチャージを高島と横島に叩きこむ。確かに高島と横島を捉えた手応えを感じ、吹き飛んだ2人の後を追って歩き出す。さっきから女の悲鳴が聞こえて戦いに集中出来ない。こんな面白い戦いは久しぶりなのだから、心から楽しむ為に戦場を変えたのだ。
【ショウトラ ヒーリングライト】
「そうだ。そうでなければ、つまらない」
霊力の光に包まれその傷を癒している高島と横島を見て笑う。ただ、回復するだけならば興醒めだ、力の差を知り絶望などされては面白みもない。だがこの2人はまだ我を倒そうとしている、気力が折れていない。その事に笑いながら、我は斧とスパイクを背中にマウントし、虚空から取り出した燃え盛る強弓を構える。
「さぁ、狩りの始まりだ。これを越えて、我に牙を突きたてて見せるがいいッ!!我は約束は護るぞ!抗って見せるがいいッ!」
膝をつけば下がるという誓約を破るつもりは無い。だから我に膝をつかせて見ろと叫び、我は炎の矢を横島と高島目掛け打ち出すのだった……。
~横島視点~
凄まじい勢いで迫ってくる炎の矢を打ち落とす。だがそれが限界だった、一歩も前に出ることが出来ない。嵐のように射出される弓矢、それを弾き、防ぐのだけで俺も高島も手一杯だった。
「どうした、さっきまでの勢いはどうした。もっと楽しませろ」
バトルジャンキーだったのはある程度予測がついていた。だがまさか近~遠まで完璧にこなすオールラウンダーとは夢にも思っていなかった。
「くそったれ、陰陽術を使ってる間もねえ!」
「こなくそおッ!」
アスモデウスが射撃で俺と高島の足を止めている理由は明らかだ。陰陽術と文珠を使わせまいとしているのだ、確かに陰陽術も文珠も使えればその瞬間に流れを変えることが出来る。だがそれはアスモデウスの求める戦いでは無いのだろう、剣指を作ろうとすれば、矢でピンポイントで指を狙ってくる。文珠も取り出す隙もありはしない……弾けはする。だが、ここで千日手……何か打開策が無ければ、このまま力尽きるまでアスモデウスは攻撃を止めないだろう……。
(俺の計算通りに……な)
アスモデウスがそう考えていると俺は考えていた。正直に言えば、心眼が魂の中にいる俺は文珠を使おうと思えば、心眼に使わせることが出来る。そこからアスモデウスへと肉薄することも不可能では無い、だが俺も高島もそれを敢えてしない。
(かなり大胆な一手を取るな)
(……正直かなり危険な賭けですけどね!)
アスモデウスがこっちに来る前に互いに陰陽札を張って、念話で会話できるようにしている。だから完璧とまでは言わないが、ある程度は連携が出来ている。
(なんとか、美神達が道真公を倒してくれればな。反撃にも打って出れる)
(大丈夫ですよ。美神さん達ならやってくれます)
俺達がこうして耐久に出たのはアスモデウスと道真公が合流する事を避ける為だ。ただでさえ強い、道真公とアスモデウスが共闘すればそれこそ俺達に勝ち目は無くなる。こうして俺達がアスモデウスを足止めする事で美神さん達が道真公を何とかしてくれる……俺と高島はそれを信じるしかない。道真公も俺達と同じで文珠を使える。もしその文珠でアスモデウスが強化されればそれこそ手の打ちようが無くなる、こうして俺達が劣勢に追い込まれていると……思わせることでアスモデウスをここに足止めする。そして美神さん達が道真公を倒す、あるいは正気に戻るまで追詰める。そうしなければ反撃に打って出ることは出来ない。
(問題はアスモデウスがこっちの策を見抜いているかどうかだな)
あからさまに耐久すればアスモデウスもこっちの思惑に気付くだろう。この炎の矢の雨をかわすのは並大抵の事では無い……放たれたと思った瞬間には既に顔の目の前に来ているからだ。それでも俺なら弾ける、そして高島も同じだ。
「ほう?」
アスモデウスの声に先ほどまでと同じく喜色の色が混じる。俺と高島はガンガンブレードでアスモデウスの矢を弾きながら、少しずつ、本当に少しずつだが前に出ていた。
「良いだろう、何処まで弾けるか……見せて貰うとしよう」
あからさまに激しくなった炎の矢の雨に冷や汗を流しながら、それでも歯を食いしばって前に出る。
(美神さんなら……蛍なら、シズク達ならやってくれる)
絶対に美神さん達ならば道真公を倒してくれる……俺と高島はそう信じ、少しずつ炎の矢に抉られながらも一歩、一歩……亀のように遅い足取りでも確実にアスモデウスに向かって歩み始めるのだった……。
GS芦蛍外伝平安大魔境 その27へ続く
良い所なので、今回はここで切りたいと思います。次回は美神達の視点で道真公との戦いを書いて行こうと思います。横島と高島が美神達の勝利を信じ、アスモデウスとの耐久戦に挑みます。そして美神達との道真公との戦いがどうなっているのか、そこを次回は書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。