GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境   作:混沌の魔法使い

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その27

GS芦蛍外伝平安大魔境 その27

 

 

~美神視点~

 

平安時代最強の悪霊……「菅原道真」……現代では雷神にして学問の神として崇められている。悪霊、そして神としての2つの側面を持つ道真公は間違いなく最強の英霊と言っても過言では無い。

 

【抗うな、人間がワシに勝てると思っているのかッ!!】

 

突き出された道真公の手から放たれる雷電――それは人間を火達磨にするところか、街を1つ滅ぼしても余りある威力だ。

 

「悪いけど、さっきまでのあたしと思わない事ねッ!!」

 

メフィストが地面に両手を叩きつけ、その直後地面から噴き登る火炎が道真公の雷と相殺しあう。

 

「今よッ!!」

 

「ありがとねッ!蛍ちゃんッ!」

 

「はいッ!!」

 

同時に道真公の目を狙って霊体ボウガンを打ち込む。以下に悪霊と言えど、元は人間である。目等の急所を狙えば咄嗟に顔を庇うのは当然の事である。

 

「……人間で駄目なら、竜神はどうだ?」

 

「……驕るなよ。人間霊が……」

 

「たっぷりと炙って差し上げますわ」

 

「横島様が心配ですから、早く死んでくれますか?ああ……もう死んでましたね?」

 

……正直言ってシズクと清姫を敵に回す方が危険すぎる。それを改めて実感した、1000年前のシズクと清姫の凶暴性が並じゃない。

 

【ぬ、ぬがあああああーーッ!!!】

 

氷の散弾と炎の中に飲み込まれ苦悶の声を上げる道真公――英霊と言えど、あの火力と物量には押し勝てないのは当然だと思う。

 

「それより、メフィスト。急にパワーアップしたけどどうしたの?」

 

「判らないけど……多分、贈り物だよ。あたしにね」

 

贈り物……か、そういえばメフィストの創造主も平安京にいる筈だけどその姿を見せないのは正直言って謎だ。

 

(……アスモデウスの味方っていうわけでは無いのかしら?)

 

平安京には複数の神魔がいた。その中にはアスモデウスと同格の神魔がいて、その神魔がメフィストを作った。だけど何かをしたせいでメ

フィストは記憶を失った……。その段階でメフィストを作り出した神魔は撤退した?思想に違いがあった?

 

「ッ!!」

 

強烈な殺気を感じ身体を反転させると、稲妻の矢が私の顔の前を通過して樹木を薙ぎ払った。

 

【ふーふーッ!侮るなよッ!ワシは、ワシは雷神道真ぞッ!!!竜神だとしても、ワシの負けは無いッ!!!】

 

業火と氷を打ち砕きその下から姿を見せたのは、既に道真公ではなかった。

 

「……狂神石って事ね」

 

「ですね……ッ」

 

赤黒い霊力の甲冑を身に纏い、その目を真紅に輝かせる道真公。その姿は辛うじて人型だが、人間には見えなかった。

 

(倒しきれないわね……)

 

直感で悟った……確かにメフィストも強くなっているし、私達も現代とは比べ物にならないほどに強力な霊具を装備している。だがそれを差し引いても、道真公には勝てない……。倒しきるには一手届いてない……ちらりと横島君と高島に視線を向ける。アスモデウスを相手に2人がかりでイーブン、私達は6人がかりでやっと道真公とイーブン……眼魂の力の凄まじさに驚愕するのと同時に、その凄まじいまでの霊力にただただ素直に驚いた。ちらりと横島君と高島の戦いに視線を向ける。

 

「自ら空中に飛ぶとは死にたいのか?」

 

アスモデウスが飛ばす炎の矢が空中の高島に向かって凄まじい勢いで連続で放たれる。

 

「させるかよッ!変身ッ!」

 

【カイガン信長!我の生き様!桶狭間!】

 

空中に浮かんだ霊力の火縄銃から霊波弾の嵐が放たれアスモデウスの矢の軌道を僅かに逸らす。その隙に高島は別の12神将の力を発動させる。

 

「弱点はどこだッ!」

 

【クビラッ! サーチアイッ!】

 

「ふははははッ!我に弱点などないぞッ!!」

 

「そう思ってなッ!横島ぁッ!!合わせろッ!!」

 

【シンダラッ!ソニックムーブッ!!】

 

「しゃあッ!」

 

【ダイカイガンッ!グレイトオメガドライブッ!!!】

 

上空で風に身を包んだ高島の姿が掻き消えたと思った瞬間、凄まじい激突音と霊力の波動が周囲に撒き散らされる。

 

「ぬっ!狙いはそっちかッ!」

 

「その矢をぶちおってやらあッ!!!」

 

メキメキと嫌な音を立ててアスモデウスが手にしている矢に亀裂が走るが速度を優先した一撃では威力が足りない、しかし矢を盾にして動きを止めたアスモデウスに向かって飛び上がったグレイト魂の飛び蹴りが続けて叩き込まれアスモデウスの矢を真ん中から宣言通りに叩きおる。

 

「その程度で勝ったつもりかッ!!」

 

アスモデウスの豪腕が横島君と高島の頭を鷲づかみにし、そのままの勢いで投げ飛ばす。

 

「横島!」

 

「蛍ちゃん!自分達に集中しなさいッ!」

 

シズクと清姫が前衛を務めてくれているから何とか食い止める事が出来ているのだ。支援を止めている余裕はないと蛍ちゃんを一喝し、霊体ボウガンの引き金を引いた。

 

「……私達が前衛に出る」

 

「間違っても正面を切って戦おう何て思わないでくださいね、そのかわりちゃんと支援をしてください」

 

シズクと清姫が前に出た……それは先ほどまでならば私達でも戦えるという判断だったが、ああなった以上私達では対処出来ないと言う事を如実に示し、支援をしろと言うのは態度ほどシズク達に余裕が無い事を現していた。

 

「ごめん、お願いするわ、蛍ちゃん、こっち!」

 

「は、はいッ!」

 

蛍ちゃんを呼んでヒャクメの前まで下がる。どう考えても私達に勝利の可能性はゼロだ……だがアスモデウスには自分達が課した敗北条件がある。

 

(全うで勝てないのなら足元を掬う、それが私のやり方よッ!)

 

アスモデウスの告げた自らの敗北条件……それを聞いて何かが引っかかっていたが、それが何なのか今私に判った。横島君の戦い方を見て、師匠なのだから見本に手本になる戦いをしなければならないと無意識に思っていたのだが、それが私にとっての間違い。人間と神魔では根本的に力が違うのだ、そんな相手とまともに戦うなんて馬鹿にすること……神魔と戦う上での大前提は3つ。1つは「いかに相手の油断を誘うか」2つ「どうやって戦力差を覆すか?」そして3つ……「死なない事」……これらを満たす事で漸く私達は神魔と互角に戦える。

 

「横島、もう無理とかいわねえよなッ!」

 

「当たり前だぁッ!!」

 

「はははッ!良いぞッ!もっと抗って見せろッ!」

 

アスモデウスの巨大な斧を2人がかりで防ぎ、戦い続けている横島君と高島と比べれば私達の戦いはまだ余裕があるのだ。それに、横島君と高島が私達の方にアスモデウスを向かわせていないのは私達ならば何とかしてくれると信じているからに違いない。

 

「ヒャクメ、この辺りの霊力の流れを確認して、あと霊脈も生きているかもね」

 

何度も不自然に行なっている足踏み……それは高島からの合図だ。それを見逃すほど私は馬鹿ではない、判っていない様子のヒャクメに向かって霊力と霊脈の流れを確認するように叫ぶ。

 

「み、美神さん、急にどうしたんですか?」

 

「急にも何もないわ、私には私の戦い方がある。横島君達には横島君達の戦い方がある……そんな当たり前の事を忘れてたって事に気付いたのよ」

 

卑怯で結構、私の戦いはどこまで行っても自分達が生き残る戦い方なのだ。真っ向から戦おう何て考えるのがまず私達にとっては無謀なのだ。

 

「見せてやろうじゃない、美神流の戦い方っていうのをねッ!」

 

相手が見せた隙を見逃すのは私の戦い方では無い、横島君が真っ向から戦うのならば、私は横島君が対処出来ない方法で戦えばいいのだから……。

 

 

 

 

~ヒャクメ視点~

 

戻って来たのねえ……私は美神さんに言われた通りの作業をしながら背筋に冷たい汗が流れるのを感じていた。

 

「私の予想が正しければ、盲点はあるのよ。急いでね?」

 

「……ういっ!」

 

この笑っているのに目が笑っていない微笑……未来の美神さんにそっくりなのね……ッ。その笑みの怖さと頼もしさの両方を知っているがどうしてもいやな思い出のほうが強い。

 

「こことここは?」

 

「い、いけそうなのね!」

 

蛍さんと一緒にモニターを見ていると美神さんの読み通り、霊力の吹き溜まりがあった。霊脈から僅かに零れた霊力が溜まる場所……川で言う支流の事だが、霊力の流れならばそれは違う。純度の高い霊力が一箇所に留まっている……それは霊脈の流れよりも遥かに稀少で、そして利用しやすい純粋な霊力の塊である。

 

「……ちっ、暴走しているのか」

 

「……だが暴走しているのならば対処は容易い」

 

絶対嘘なのね、暴走して理性が飛んでいる相手ほど厄介な敵は存在しないのね。相手が道真公と言う規格外の神魔と互角に戦えるのは、シズクさんと清姫様だからなのね……って!?

 

「退避!退避ーーーッ!!」

 

「叫んでる暇があったら走って!!」

 

道真公の振るった刀から飛び出した雷が私達の方に飛んできて美神さん達と慌てて逃げる。

 

「ちょっと!ちゃんとこっちに来ないように相殺してよね!」

 

「やってるわよッ!でも向こうの攻撃が激しいのよッ!!!」

 

同じ声のトーンだから美神さんが2人いるように思えるのね……額に浮かんだ汗を拭い、霊力の流れを確認していると私のコンピューターに誰かがアクセスしてくる。

 

(お父さんです。心配しないで)

 

蛍さんがお父さんと呼ぶのはアシュタロスのことなのね。アスモデウスと協力する振りをして、向こうの陣営に潜り込む……そんな命懸けの任務なのに、私達に協力してくれている……。

 

(それを無駄にする訳には行かないのね)

 

アスモデウスもガープも狡猾だ、仲間だと言っても全面的に信頼するわけでは無い。アシュタロスがアスモデウス陣営にもぐりこみ、その情報をえるのは文字通り命懸けの事だ。そんな中、私達の支援をしてくれている……それを無駄にする訳にはいかない。

 

【死ねいッ!!!】

 

刀に電撃ではなく、黒い霊力を乗せて振るってくるのを見て、私は思わず声を上げた。

 

「美神さんと蛍さんは耳を塞いでッ!!」

 

あれは死の魔力だ、高純度の呪詛は人間の命を一瞬で刈り取る。それを無造作に飛ばしてくる道真公に最早神としての格は存在していない。

 

「あ、あぶなあ……何今の……」

 

「し、死んだと思いましたよ」

 

「あれは高濃度の呪詛の塊なのね、逃げることに専念するのね!」

 

神魔にはあれは効かない、あれはあくまで美神さんと蛍さんを同時に殺すもの……美神さん達に逃げ回るように指示を出して、私は霊脈と霊力溜まりの位置を確認し、その2つを利用出来る位置を調べ上げる。

 

(見つけた!)

 

膝をつかせれば、アスモデウスと道真公は撤退する。それはアスモデウス自身が口にし、自らに課した誓約……それを踏まえれば私達は勝利する必要は無い。文字通りアスモデウスと道真公の足元を掬う……それだけで勝てる。そしてそれに気付いて動き出した美神さんは実に生き生きとしていた。横島さん達の見本になろうと、清廉潔白……は言いすぎだけど、美神さんらしからぬ戦いをしていたが、このアイデアを思いつく辺りを見ればもう何も心配は無いだろう……。

 

(悪魔よりあくどいって言われてた美神さんが復活するのは怖いけど……絶対に必要になるのね)

 

アスモデウス達は前回のアシュタロスよりも遥かに慎重で、そして邪悪だ。そんな相手と互角に立ち回るには美神さんの頭脳が必要不可欠だ……敵に回すには厄介で、そして味方にしても厄介だけど……美神さんの存在はアスモデウス達と戦うには絶対に必要になる……。

 

 

 

 

 

~シズク(現代視点)~

 

千年前の私と清姫に道真公との戦いを任せ、私と清姫は美神の悪巧みに協力していた。

 

【邪魔をするなあッ!!】

 

道真公の攻撃力は確かに神魔の中でも上から数えた方が早いだろう。だが相性が悪い……それすらも判断出来ないのならば道真公に勝ち目は無い。

 

(不純物のない水に電気は通らない、それすらも判らないか)

 

さっきから純水を作り出し道真公の攻撃の壁として利用している。だが道真公は雷による攻撃を続けている……攻撃が通用する・しないがもう判断がついていないのだ。

 

「……凍れ」

 

「シャアアッ!!」

 

【ぬ、ぬあああああーーッ!!】

 

水と氷の粒の嵐と清姫の火炎を一喝して弾き飛ばし、電撃を放つのを見て純水を作り出し電気の流れを遮断する。

 

「こんどはこっちの番だよッ!」

 

【う、ウガアアアアアーーーーッ!?】

 

メフィストが雷を放った段階で逆に道真公の回りに不純物に満ちた水を作り出す。それに雷が直撃し、鎧に身を包んでいる道真公を包み込む

 

(……やはり倒しきれない)

 

ダメージは与えている、だが私達の攻撃で当たれるダメージよりも狂神石による回復力の方が大きい……。

 

(やはり決め手が足りない)

 

普通の神魔ならばもう倒せているが、やはり狂神石に影響を受けている神魔は厄介だと判断し、美神達の作戦通りに動きだす。

 

「ずいぶんとずるがしこいことを考えますわね」

 

「……私とすればそっちの方がらしいがな」

 

横島が真っ当……とは言い難いが、直接戦闘に秀でた成長をする度に美神は悩んでいた。その悩みのせいで本来の頭の回転が劣っていると私は感じていた。

 

「……美神は戦闘者ではない、あいつは盤面を見て戦場を作るゲームメイカーだ」

 

「なるほど、確かにその通りですわね」

 

美神の霊能者としての素質は道具使い。その反面、ヒーリングや霊視はやや苦手としている。それでも使いこなせないだけで、人並み以上には扱える。そして戦場の中で、冷酷な判断も取れ、相手の裏を欠く戦術にも秀でている。しかし普通の軍師ではなく、自らも戦場に立ち、戦場をかき乱し、ほんの一欠けらしかない勝利をもぎ取ろうとする。

 

「なるほど、だから横島様から美神を引き離さない訳ですか……」

 

「……納得したか?」

 

「ええ、貴女らしい、陰湿でねちっこい考えとだけ言っておきますわ」

 

私は横島を取り囲む人間関係を見てきた、その中で横島にとって益のある人間はと考えると不思議な事に美神が一番だと思うのだ。

 

(前世の縁か)

 

私は忘れていたが、確かに高島はメフィストと言う女魔族と繋がりがあった。そしてそれが遠い未来で師弟と言う関係で再び繋がった……これは何とも面白く、そして奇縁と言わざるを得ないだろう。

 

「……横島は単純だからな、そこを補う人材として美神が1番優秀だ」

 

霊脈の上に氷の杭を打ち込む、私の隣で清姫が同じく炎の杭を打ち込んだ。

 

「見ていて心配になりますしね。でもそこが良いんですけどね……」

 

「……まぁな、私もそう思う」

 

保護欲をかき立てると言うのか、横島の純粋さは見ていて心地いいものだし、横島から向けられる信頼も悪いものでは無い。高島の子孫とかそう言うのを関係無しに、もう私は横島に絆されている。

 

「……さっさと仕上げるぞ、横島を長時間戦わせるのは不安だ」

 

「言われなくても判ってますわ」

 

道真公に攻撃を繰り出し、目晦ましをしながら私と清姫、そして美神と蛍達は戦場を駆ける。

 

「どうしたどうした!防いでいるだけではつまらないぞ!!」

 

高島と横島が必死に攻撃を防ぎながら私達を見た。その目を見れば何を言いたいのかは判っている、この戦いは最初から勝つ必要は無い。アスモデウスが神として宣言した「膝をつけば退く」これは誓約であり、神言だ。神が口にした事は覆せない、だから私達は自分の発言には注意している。

 

「遊びと侮った事を後悔させてあげましょうか」

 

「……ああ、その通りだな」

 

一時しのぎだとしてもアスモデウスと道真公を撤退させれるのは大きな意味がある。予想にもしてない方法で、アスモデウスと道真公の足元を掬う……それだけが私達が全員無事で戻る為の手段なのだから……。

 

 

 

 

GS芦蛍外伝平安大魔境 その28へ続く

 

 




今回も短いですが、いい所なのでここで切りたいと思います。アスモデウスと戦っている間に美神達が配置した足元を掬う方法……次回はそれを用いてアスモデウス達を一時撤退させ、次の戦いに備えたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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