GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境 作:混沌の魔法使い
平安大魔境 その3
~西郷視点~
輝夜様と奇怪な服装をした青年とその青年の使い魔を乗せた牛車が完全に姿を消してから私は地面に手を当てていた。
(……この感じ、良く似ている。しかし……どういうことだ)
地面に残されている霊力の痕跡……それは高島の使う陰陽術の痕跡に非常に良く似ていた。
(解せんな)
高島の陰陽術は高島だけの物だ。その希少性と汎用性は何百といる陰陽師の中でも群を抜いている。その証拠に高島を貴族階級に上げたい帝の一考で躑躅院との婚姻の話が出ているが、あの青年はどう見ても躑躅院の関係者ではない。それ所か京の人間であるかどうかも怪しい。
「西郷殿、あの青年の引渡し要求をしますか?」
「それで輝夜様に睨まれ、帝まで引っ張り出すか?あのお方はそこまでやるぞ」
帝のお気に入りの少女、輝夜様。彼女に手を出す事は自らの死に繋がる、彼女と婚姻する為に要求された秘宝は存在するかどうかも判らぬ代物。それを持ってこれたら本気だと認めて妻になると言ったが、黄泉の国に踏み込まねば手に入らぬ代物ただの貴族が手に出来るわけが無い。
「鬼道の件を解決せぬ前に会いに行けば飛ぶのは我らの首ぞ」
鬼道は名門貴族だが、それに胡坐をかいて実力を磨かなかった。貴族同士の繋がりがあるからまだ上役だが、今回の件でその地位も危うくなるだろう。
「判ったらお前達は鬼道を連行してくれ、私は調べる事がある」
鬼道を連れて行くように部下に命じて周辺を調べる。あの青年の陰陽術だけではない、私達を足止めしていた無尽蔵に沸く鬼の事も気がかりだ。
「……1つ……2つ……足りんな」
先ほど見つけたのは2つ。これで合わせて4つ……4つで術を使う事はありえない、陰陽道は五行。色違い、触媒違いの人型は4つ……1つ足りない。
「……これか、お前の言っていた事は」
高島は元々誰かと組むという事はありえない、独断専行、命令違反の常習犯。そしてそれでいて罰せられなかったのは独自の陰陽術と龍の姫2人に様々な精霊や神に愛されているからだ。高島を害せば、その倍以上の神罰が下る。それゆえに高島を御せる者はいない、私だって辛うじて友人と言えるが高島の瞳に自分が映っている所なぞこの10年ただの一度も無い。
「お前は何を見ているのやら……」
回収した4つの人型を封印し懐に隠す。今頃都にいない可能性もあるが、何かの手掛かりになるかもしれない。この人型は高島に預ける事としよう……。
「……嫌な感じだ」
空気が乱れている、そして歪んでいるのが良く判る。
「まだ増える……か」
夜に現れると言う女人の武者、そして異常なまでに増える餓鬼に妖怪……こんな事は今まで無かった。都を、京を揺るがす大きな事件が始まろうとしている……高島が今姿を消しているのは足手纏いが増える事を危惧しているだけではないのは明らかだ。
「内通者がいると言うことか……」
味方である陰陽寮でさえも信用するなと言う事を高島は私に教えてくれたのだろう。
「……気をつけなければな……」
高島をこれ以上孤立させない為にも、そして今回の件に隠れている悪意を炙り出す為にも回りを全て敵と思うべき……。
「うん?なんだこれは」
足に当たった丸い奇妙な物体。見た事も無い上に触ってみると今まで触った事も無い奇妙な質感だ。
「これも高島に預けておくか」
もしかするとあの青年の持ち物って言う可能性もあるが、どの道あの青年に会うのは難しいのだ、こうして拾った以上は預かるという名目で高島に渡してしまおうと思い、この奇妙な球体も懐に隠し私はその場を後にするのだった……。
~シズク視点~
町民が殆どいない京を歩く、着物姿の妙齢の女性。触れれば切れるような鋭利な気配と、全てを見透かすような、温度と言うものを感じさせない瞳をした女性は前を向いたまま、軽く足踏みした。
「……何者だ」
影から伸びた水の触手が曲がり角に向かったが、それは曲がり角の直前で同じく伸びた水の触手によって打ち落された。
「……ミズチか、私に関われば殺すと言ったのに貴様ら……は?」
暗がりから姿を見せた少女の姿をしたミズチを見て私は目を見開いた。見間違える訳が無い、間違えるわけが無い。
「……私?」
奇怪な服装に身を包んだ幼い少女の姿をした私がそこにいた。予想外の人物の存在に私は多分間抜け面をしていたと思う。
「……そうだ、私はお前だ。正し……1000年後の私だがな」
「本当1000経ってもこの好戦的なところは変わらないんですのね、ああ、千年後の方がもっと陰湿になってますわね」
そして続くように姿を見せたのは漆黒の着物姿の清姫だった。こちらも少し幼い姿をしているが、見間違える訳がなかった。
「……黙ってろ、陰湿ストーカー蛇」
「死ね」
その後ろから姿を見せたのも紛れも無く清姫。私と清姫が揃って行動をしている……そんなありえない光景に私は驚いたが、印を結び結界を作り出す。
「……さすが私だ、見られても困るからな」
「……認めよう、お前は私だ。だが、その姿は一体どうした事だ」
神格も霊格も殆ど失っている。1000年如きで何があったというのか……いや、そもそも何故1000年も先の時代から私の元に現れたのかが理解出来ない。
「……高島に繋ぎが欲しい。私達を紹介してくれ、今の私達にはあいつの力がいる」
「……何人連れてきた」
「……人間が2人、神が1人」
人間と神が一緒に行動している……しかも私までも……少し考えれば応えはおのずと出る。
「……その人間は高島の転生者か?」
高島の転生者と一緒に行動していると言うのなら私と清姫が共にいる理由も判る。そう考えて尋ねたのだが、2人は首を左右に振った。
「……高島の転生者……「横島」と言うのだが、あいつが行方不明だ。それを見つけるのを手伝って欲しい」
契約しているのだから魂が繋がっている。どこにいても判る筈なのだが、それが判らないと言うことはただ事ではないということは良く判る。だがこちらも全面的に協力する訳にはいかない理由がある。
「……高島に話は通してやる。だが、そちらも協力してもらう」
「……京に人がいないのと関係しているか?」
「……ああ、英霊が暴れまわっている。その件に協力するならこっちも協力しよう、よく話し合って連絡して来い」
互いに認識したのでどこにいても場所は把握できる。協力する気があるなら連絡して来いと2人に告げ、私はその場を後にした。だがこれはあくまで形上のものだ、高島の転生者を見つけるつもりなら危険性があっても向こうは私に協力するしかないのだから……あくまで向こうから協力すると口にしたと言う形式にしたいのだ。
「おう、シズク。どうだった?何か判ったか?」
「……1000年後から私と清姫が来ている」
私の言葉に高島は眉を細め、なんと言って返した?と尋ねて来る。
「……向こうの頼みを聞く代わりに、こちらに協力しろと伝えた。返答はまだだ」
「そっか、ま、1000年経っててもシズクは頼もしいからありがたい限りだ。戦力は多いほうがいい、しかもそれが打算があっての協力関係ならなおいい」
高島はそう笑い、人型を空にばら撒いた。それが飛んで行く光景を見ながら良いのかと呟いた。
「そうだな、正直1000年後の術師なんてさほど信用できるものじゃないが、それでもシズクがついているならそれなりの力はあるだろ?権力しかない愚図を使うよりかは良いさ、それより飯にしよう、飯にな」
背を向けて歩いていく高島、この決断力と冷酷とも言える判断力。そして桁はずれた霊力を見て私は高島の傍にいることを選んだ。
(……お前は何を見ているのか、それも知りたい)
1000年後の私はどちらかと言うと恋慕の色が強かった。高島の転生者と言うことは高島に似ているのか、それとも全然違うのか……。
「どうかしたか?」
「……いや、面白いと思ってな」
犬猿の仲と言える清姫と嫌そうにしながらも一緒に行動していた。それは横島とやらのためだと思うと、私と清姫を一時的にも協力させる事が出来るだけの魅力があると言うことなのだろう。
(高島とどう違うのか、見てみるのも面白いそうだ)
私と清姫をこうも変える、その相手がどんな人物なのかを想像しながら、あちこちで怪異がおかえりーと鳴き声をあげる庭を通り屋敷の中に足を踏み入れるのだった……。
~美神視点~
山の中で一晩を過ごしたからか、身体が痛いと思いながらゆっくりと柔軟を行い霊力を巡回させる。
「蛍ちゃん、一気に霊力を取り込み過ぎないように、ゆっくりね」
「……はい」
現代と今の時代の霊力の質は根底から違う。それこそ妙神山での瞑想をしているときと同じ位の気持ちで霊力を巡回させないと霊力酔いを起こすとアドバイスをして立ち上がって身体を更に解す。
「よし、とりあえず。私はこれで大丈夫ね」
「そうねえ~美神さんの霊力は安定したのね~」
ヒャクメのお墨付きも貰って軽く霊力を身体に通してみる。妙神山での瞑想と例えたけど、それ以上かもしれないわね。
「ふう……」
「蛍さんももう大丈夫なのね~現代に戻ったらしんどいかもしれないけど~」
「ま、それは仕方ないわね」
現代の霊力に馴染んでいてはこの時代との霊力の差で結局身体がしんどくなる上にこの時代の悪霊に負ける可能性がある。生き残らない事には現代に戻るなんて夢のまた夢なので、霊力の循環に踏み切ったのは当然の事だ。
「横島は霊力の循環してますかね?」
「心眼がいるから大丈夫でしょ。むしろ危険なのは私達かもしれないわよ」
この時代にもシズクと清姫がいるからこの時代のシズクと清姫にコンタクトを図って貰っているが、それが逆に危険を呼ぶ可能性だってある。そう言う面では横島君よりも私達のほうが危険な状態と言えるだろう。
(うりぼーがいてよかったわね)
乙事主とのしての神性を取り戻したうりぼーがいればこの時代ならば横島君を害せる者はいない。危険だと判断すればうりぼーが横島君を連れて逃げてくれるだろうと思い、シズクが出発前に取ってくれていた川魚を焚き火で焼き始める。
「それで実際の所、ここが過去って言う認識でいいの?」
「……ちょっと難しいのねえ~、霊力が澱んでいるのは判っていると思うけど……それがこの時代特有の物なのか~」
「ガープが手を加えているか判らないって事ね?」
「そうなのね~あ、そこの魚はもういいのね~」
ヒャクメが指差した魚が刺さっている木の棒を抜いて蛍ちゃんに差し出す。
「あの穴自体もガープの攻撃なのかしら?」
「イレギュラーだと思うのねえ~多分私達がここにいるのもガープにとっては想定外のはずなのね~」
もし攻撃ならガープの追っ手が既に掛かっている筈。ガープにとっても計算外という可能性はかなり高いか……。
「ガープは何がしたかったんでしょうか?」
「多分だけど、西洋の時代の巻き戻しね」
あの時ですらも大きな歴史改変が行われた、しかし今回は日本。可能性として考えられるのは私達の前世に干渉して現代の私達を消すか弱らせる、もしくは霊能者で無くするか……考えられるのはそこら辺だと思う。
「なんでこんな傍面倒な搦め手を打ってくるんですかね」
「そうね、私もそう思うわね」
戦力で押し潰しに来ても困るが、ここまで入り組んだ搦め手を打ってくるのも本当に鬱陶しいわねと話をしているとシズク達が戻って来た。
「協力は得れなかったのね~?」
「……いや、協力は得れそうだ……得れそうだが……英霊が暴れているらしい」
「最悪ね、それ……」
英霊が暴れていると聞いてますます中世の巻き戻しだと思った。あの時は横島君がジャンヌを味方に付けてくれたけど……そうではないとなると英霊から真っ向から戦う事になるかもしれない。
「……横島大丈夫かな」
「大丈夫ですわよ、きっと元気ですわ」
「……うん」
英霊がいると聞いたら少しでも早く横島君と合流したい、だけどどこにいるかも判らないと言うのが問題だ。京に居ない可能性だってある筈だ、もし京に居ればシズクと清姫が判らない筈が無いし……京に居ない可能性が濃厚って所ね。
「それで私から行くの?」
「……いや、英霊と戦う事になると言う事、そのリスクを承知した上で協力するなら連絡しろと言われている」
「それなら連絡してくれて良いわよ。英霊だろうがなんだろうが戦うってね」
どっちにしろ戦わなくては生き残れないのだ。それならば戦うしかない、横島君を見つけるためにも、そして現代に無事に帰るためにも……。
「それに考えたく無いけど、横島君もどこかでもう戦っているかもしれないしね」
「その可能性はありますね……」
生粋のトラブルメイカーの横島君だ、既にどこかで大きなトラブルに巻き込まれているかもしれない。いや、もしそうなら霊力の流れで見つける事が出来るから、まだ戦ってはいないと思うけど……本当に無事ならいいわね……。
美神達が横島の安否を気遣う中……横島はと言うと……。
「ふふふ、横島様は和歌が苦手なのね?」
「……いやあ、無理無理。俺馬鹿だし」
「ふふ、じゃあ貝合わせでもやりましょうか?それとも石投でもしましょうか?」
「知らない遊びだなあ……教えてくれる?」
「良いですよ、教えてあげましょう」
輝夜を助けたと言う事で竹取の翁の家に世話になり、そして輝夜が気に入っていると言う事もあり、彼女の護衛権遊び係になり美神達とは比べれないほどの良い生活を送っていたりする。
「みーむう♪」
「あら、揃ってるわ。凄いわね」
「みむふう♪」
「ぷぎ?ぴぎい?」
「いや、無理しなくていいからな?」
【のーぶう♪】
「あ、チビノブも揃ってる」
「ふふ、楽しいわね」
「喜んでくれてるならいいかなあ……」
コミュ力カンスト+人外キラー+マスコットの愛らしさは月人輝夜の琴線を揺らし、少女特有の柔らかい笑みを引き出す事に成功していた。
「ああ、あの人が来てくれたのは良かったなあ」
「そうね、輝夜もあんなに楽しそうで本当に良かったわ」
貝合わせをしている横島達を見て翁夫妻は本当に良かったととても嬉しそうな笑みを浮かべているのだった……。
一方その頃。平安京の外れにスーツ姿の美丈夫が浮き出るように現れていた。
「ここは……どこだ? 横島君達が消えたと聞いてから……何が……」
それはアシュタロスだった。現代に残った琉璃からの連絡で京都に向かおうとしていた筈の彼もまた何故か平安京に気付いたらいた。
「……何者だ」
混乱していたアシュタロスだったが、その顔を険しくさせ拳を強く握る。月光に照らされた白いフードを来た鎧武者はアシュタロスを光を宿さない瞳で見つめると狂ったように笑い出しだ。
「ふふふ……あははははははッ!今夜は貴方を殺しましょう、そうしましょう。毘沙門天の加護は我にあり……あれえ?毘沙門天?あははっははーーーッ!毘沙門天って何?なんだっけ?あははッ!!あはははははははっ!!!!」
毘沙門天、そして人間ではないその気配と魔力にアシュタロスは目の前に立つ存在が英霊であると言うこと、そして何者かであると言う事を一目で見破っていた。
「狂化英霊……ッ!長尾景虎」
越後の龍とまで称された戦国時代の武人……勿論平安時代に居るわけも無い存在だ。しかも明らかに正気ではない、自身が信仰していた毘沙門天ですら理解出来ないとなると完全に狂わされている。
「ふふ、駄目ですよ。人じゃないのを殺すのは私の役目ですから」
「へえ?私の邪魔をするんですかあ?」
「いえいえ、ただ独り占めは良くないと思うんです」
更に現れた人影にアシュタロスの背後に冷や汗が流れた。こちらも鎧武者姿だが、手足が震える。
(神魔殺し……)
神魔を殺す事が出来る異能を持つ者までも現れた。長尾景虎だけならば逃げ切れると考えていたが、そこにもう1人加わればアシュタロスであったとしても逃亡は極めて難しくなる。
「止めろ、それは我の朋友だ。行け、貴様らのやる事はこの場には無い」
上空から響いた声で目の前にいた狂った英霊2人は姿を消した、だがそのことにアシュタロスは安堵する事が出来なかった。
「アスモデウス……」
「アシュタロス、何故お前がここにいる?ガープに送り込まれたのか?」
「いや、気が付いたらここにいたんだ」
「なるほど、事故か。しかし運が悪いな、あの2人に目を付けられると厄介だったぞ?」
厄介なのはお前に見つかったのもだと思いながらも、アシュタロスは笑みを浮かべた。
「ガープの実験に巻き込まれてしまったようだな、やれやれだ」
「あいつは案外考えなしの所があるからな、実験の余波とかは考えて無いさ。どうする?我と来るか?」
「いや、この時代の京には私がいる。私に現代の情報を渡して、お前達に早く協力出来るようにするよ」
「それは助かる。ではな、また見つかったら我の名を出せば2人は退くぞ」
辻斬りにあったら知らんがなと笑い消えていくアスモデウスを見送り、アシュタロスは険しい顔で歩き出す。これは自分が前に見た過去の記憶、だがその内容は大きく変わっている。
「まずは私だ、私を何とかしなければ」
究極の魔体。そしてメフィストフェレス、魂の結晶、宇宙卵……そのすべてが平安時代である程度形になっている。アスモデウスに回収される訳に勿論行かないが、研究をこれ以上進められても困ると判断したアシュタロスは過去のアシュタロスを止める為に闇夜を走り出すのだった……。
平安大魔境 その4へ続く
英霊ボスその2出現。完全に狂っている影虎ちゃんです、霊基は勿論バーサーカー+狂神石でバフ状態ですね。平安編はボスを4~5人態勢でお送りします。BOSS1「狂った女人武者」BOOS2「影虎ちゃん」BOSS3「アスモデウス」が判明しましたので後2人ですね。平安時代は難易度ルナですが、ボスラッシュ的な意味でのルナです。この地獄とも言える平安京をどうやって切り抜けるのかを楽しみにしていてください。