GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境   作:混沌の魔法使い

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その29

GS芦蛍外伝平安大魔境 その29

 

~美神視点~

 

アスモデウスと道真公から退いてくれたお陰で皆無事だが、次は確実に最後まで戦う事になるだろう。1度目は顔見せ、2回目は遊び、3回目は本気となるだろう。

 

「正直な所聞くけど……アスモデウスか道真公。どっちか倒せる?」

 

私達の最大戦力――「メフィスト」「シズク」「清姫」に尋ねる。大体なんと言われるか判っていても、淡い希望なら砕けてしまった方が良い。

 

「いや、無理。あたしの霊力とかも上がってるけど桁が1桁も2桁も違うよ。正直自殺行為」

 

「……日本がどうなっても良いなら可能」

 

「人も妖怪も、神も等しく滅びますが」

 

「止めて下さい、お願いします」

 

倒す手段があったとしても、帰る場所が無くなるなんて冗談では無い。やっぱり判っていた事だけど今の私達の戦力ではアスモデウスを倒す事ができない……どう考えてもその結論に帰着する。

 

「……お前達が未来から来たと言うのならば、上手くやってアスモデウスを退けるのでは無いのか?」

 

「普通に考えたらそうなんだけど……こっちには横島君がいるからね」

 

「横島がいると何か不味いのかい?」

 

メフィストの問いかけに頷く、普通ならば未来と言うのは過去が在る段階定まっている。だから大丈夫と考えるのが普通だ、なんせ未来から来た私達が居るのだ。未来はこの後も存続していると考えるのは当たり前だ。

 

「前に過去の西洋に跳んだ事があるんだけど……その時の行動で未来が変わったわ」

 

「そんなことがありえますの?」

 

「普通はありえないわよね……だけどガープ達が言うには横島君は特異点……過去を書き換える事が出来る楔らしいの、つまりもう未来は変わっている可能性は十分にあるわ」

 

高島が変身している段階でまずおかしいのだ。確実に横島君に影響を受けている……この段階で横島君の特異点としての力は間違いなく発揮され始めている。

 

(……どこから書き換わっているのかも判らないのよ)

 

帝が横島君を気に入ったのは確実に横島君の影響だ。ではその後は?

 

なよ竹のかぐや姫の物語でかぐや姫と藤原の姫が一緒に逃げたなんて話は聞かない、それ所か藤原の姫が薬を盗んだという話だった筈。

 

それに陰陽寮が壊滅したなんて話も聞かないし、鬼道が狂神石によって失脚したなんて言うのも聞かない。

 

それに何よりも、まだ私達の前に「シズク」が居る。

 

「……何か?」

 

「ううん。なんでもない」

 

高島が処刑される前にシズクは高島によって封印されている筈……これはシズクからも聞いていたので確実な話だ。

 

(いつ高島は処刑されるの?)

 

別に高島が処刑される事を望んでいるわけでは無い。だが今の流れではどう考えても高島が処刑されるという流れにはならない、高島の処刑の理由は藤原の姫に手を出したから……だけどその藤原の姫は横島君に懐いて、かぐや姫との友好を結んだ……。

 

(もう歴史は変わり始めている……)

 

私達の知る平安時代の大きな事件が既に変わっている……。つまり歴史の改変はもう始まってしまっていると考えて間違いないだろう。

 

「つまり横島がいるから歴史が書き換えられてるって事?」

 

「多分ね……だから私達が未来から来たって言っても、無事に戻れる保障は何処にもないのよ……」

 

過去はもう書き換えられて現在になりつつある……つまりもう私達が無事に未来に帰れる保証も無く、全員揃って……ううん、それこそ5体満足でいられるという保証も無くなってしまったのだ……。

 

 

 

 

 

~蛍視点~

 

眠っている横島の額に乗せていたタオルを手に取るとまるでお湯に浸していたように熱い。冷たい井戸水の中に浸して、良く絞ってから額に乗せるけど、多分またすぐに熱くなる事は容易に想像出来た。

 

「蛍。井戸水を汲んできたぞ」

 

「うん、ありがとう。茨木」

 

「べ、別に礼を言われるほどでは無いが……吾も横島が心配なのだ」

 

私の向かい側に座り、荒い呼吸をしている横島を心配そうに見つめている茨木の姿を見ているととても悪鬼として恐れられた茨木童子には見えず、外見相応の幼い少女にしか見えなかった。

 

【ノブウー】

 

「大丈夫、横島は強いからな」

 

チビノブ達とも仲が良いみたいだし……私達と合流する前にどれだけ横島が茨木の世話をしていたのかが良く判る。チビ達が懐くという事がまず珍しいのだ、チビ達の中ではもしかすると茨木は自分達の仲間と言う認識なのかもしれないわね。

 

「茨木はどうするの?」

 

「どうするとは?」

 

「私達は未来……今日からずーっと明日の未来から来たの。私達が帰るとなったら……茨木はどうする?」

 

私の問いかけに茨木はうーんっと腕を組んで悩む素振りを見せた。

 

「ずっと明日と言われても吾には全然想像がつかん……だけど、横島と離れるのは嫌だな。横島の側は心地よい」

 

鋭い歯をむき出しにして笑う茨木。今の所は悩んでいると言うか良く判ってない感じだと思うけど……多分もう会えなくなるとなると絶対ついてくるわね。

 

「みみーむうー?」

 

「ぷぎい!」

 

「ほほう、そんな美味い物があるなら吾も未来とやらに行くのもいいかも知れんなぁ」

 

……チビ達は完全に仲間と言うか同類って認識みたいね。判らないと言う茨木を説得しているし……後は未来に帰った後が問題よね。

 

(琉璃さんの心労がマッハね)

 

鬼の首魁が2人も横島の家に転がり込んだと聞いたら、それこそ琉璃さんが心労で血を吐きそうな未来しか想像出来ない。それに京都で出会った紫ちゃんも確実に横島に懐いているし……また横島の周りに人外が増えると知ったら琉璃さんがどんな反応をするかなと思わず苦笑する。

 

(……こうでも考えてないと駄目なのよね)

 

美神さんに聞いたが、もう私達が無事に未来に帰れる保障は何処にもない。アスモデウスにも道真公にも敗れて、ここで死んでしまう可能性だって十分にあるのだ。その不安を忘れるように帰れた時のことを考えてないと、不安で押しつぶされてしまいそうだった。

 

(蓮華や揚羽になんて説明しよう、お父さんも自分で何か考えているのかな)

 

アスモデウスと協力して今回は動いていた。それはガープ達が本格的に動き出すから内部にもぐりこんで情報収集をしようとしているのだと思うんだけど……余りにもリスクが高い。蓮華はまだしも、揚羽に逆行の記憶が無いので何でお父さんが居ないのと泣き出したらどうしようとか、自分でもどうすればいいのか判らず混乱していると障子がゆっくりと開いた。

 

「お邪魔するのねー」

 

「ヒャクメ……待ってたわ」

 

高島の様子を見ていたヒャクメが戻って来て、思わず安堵の溜め息を吐いた。グレイト眼魂は横島への負担が大きい、それなのにアスモデウスと戦うのに相当長い時間変身していた。その反動が出て、横島が昏睡状態なのは明らかだ。ヒャクメに今の状態を聞いて、どうなるのか聞かないと正直気が気じゃなかった。

 

「……うん、大丈夫なのね~。霊力が枯渇している訳でもない、単純に短時間で一気に霊力を使い過ぎたのね~」

 

霊力の枯渇ではなく、一気に霊力を消費しての霊力の回復の為の睡眠と聞いて本当に安心した。

 

「じゃあ心眼が姿を見せないのは……」

 

「霊力の譲渡をしてるのね、心眼は高密度の神通力と竜気の結晶体だから~普通に寝て回復するよりも早く回復すると思うのね」

 

心眼も姿を見せないから魂に何か影響があったのかと心配していたので、そうじゃなくて良かったと心底安堵した。

 

「目の神よ、では横島は寝ていれば回復するのか?」

 

「そうなのね、多分早くて今日の夜、遅くて明日の朝まで寝ていれば回復すると思うのね」

 

具体的な横島が目覚めるまでの時間も聞いて、漸く私も気を抜く事が出来た。

 

「シズクと清姫は?」

 

「2人には協力して貰ってるのね、最悪の場合に備えてるの」

 

最上級に龍神2人に協力して貰うような事となれば、それは1つしかない。アスモデウス対策だろう……。

 

「何か策があるの?」

 

「……一か八かのギャンブルになるけど……私達とアスモデウス達をシズクさん達の霊力と神通力、そして平安京の霊脈を使って未来へ跳ぶのね」

 

「美神さんへの負担は?」

 

それほどの負担が掛かる美神さんの事を考えれば、私としてはその作戦には反対だ。どうなるかなんていうのは私にも判っていて、美神さんへの負担を尋ねるとヒャクメは明らかに目を逸らした。

 

「相当大きいのね……でも私達にはそれしか今は打つ手がないのね~」

 

最上級の神魔と戦うには準備も仲間も足りない……そして助かるかもしれない術は美神さんを再起不能にするかもしれない方法しか残っていない……修行をして力をつけたつもりでも、結局私に出来る事は殆どなくて……。

 

「嫌になっちゃうわ……目の前にある壁が大きすぎるんだもの……」

 

修行して、頑張ってやっと目の前にある壁を乗り越えたと思ったら、それよりも大きな壁がすぐに立ち塞がる。それは私の努力も何もかも無意味だと言われている気がして、私は深く溜め息を吐くのだった……。

 

 

 

 

 

~メフィスト視点~

 

アスモデウスと道真公への対策を話し合った後。あたしは高島の部屋に居た、タオルを引きちぎらないように気をつけて絞り、高島の額に乗せる。

 

(……不思議な縁だよね)

 

誰を助けたいと言うのは忘れて、どうしても思い出せないし、あたし自身の創造主の事も思い出せない。それでも助けたいと思ったのは本当の事だし、人間じゃないのに助けてと言って助けてくれた高島の事を考えると胸の真ん中が暖かくなるような気がする。

 

「……ん、んん……め、メフィスト?」

 

「あ、起きた?大丈夫?」

 

ゆっくりと目を開けた高島に大丈夫か?と尋ねると高島は腕で目を隠して小さく溜め息を吐いた。

 

「めちゃくちゃしんどい、前と全然違う」

 

「そう……水でも飲む?」

 

「……貰う」

 

前と言うと多分横島が暴走している時の話だろう。高島を抱き起こして、水の入った竹の入れ物を差し出す。

 

「ありがとう、もういいよ」

 

「ん、判った」

 

高島をもう1度布団に横にさせる。シズクからこうすればいい、ああすればいいと聞いておいて本当に良かったと思う。あたしだけじゃ、どうすればいいかなんて全然判らなかったしね。

 

「そう言えばさ、お前は悪魔なんだよな。悪魔って契約をするって美神に聞いたんだけどそこはどうなんだ?」

 

「……まぁ、一応そうだけど……今はそれ所じゃないでしょ?」

 

美神……あたしが人間に生まれ変わった存在で、そして高島が生まれ変わった横島……正直それを見てあたしは嬉しかった。人と悪魔の寿命は違う……だからあたしは高島が死んだ後も生きなければいけない。

 

(記憶がなくてもまた会える)

 

それが判ればあたしは大丈夫。どれだけ時間が掛かってもまた会えると思っていれば、心が砕けることは無いのだ。

 

「いや、今だからお前と契約したい」

 

真剣な顔で言う高島を見て、凄く嫌な予感がした。

 

「どこか悪いの?」

 

「いや、そう言う訳じゃない。俺ってさ、忘れっぽいから思いついた時に契約したいんだよ」

 

誤魔化すように言う高島に何かを感じ取ったのかもしれない、本当ならばそんな状態での契約なんてしたくない……だけど。

 

「良いよ。高島……お前はあたしに何を望む?」

 

悪魔と契約するという事は魂に刻まれた契約だ。それを覆す事は出来ない、永久に続く永遠の契りだ。魔力を解放しながら高島に何を望むのかとあたしも神妙な顔をして問いかけると高島はにっと歯を見せて望みを口にした。

 

「……生まれ変わってもまた会おう……約束だ」

 

高島の言葉にあたしは目を見開いて、そして笑った。確かにこれは大切な契約だと思った……死ぬと思って生きる者は居ない、だけど、万が一と言うこともある。

 

「ん」

 

「何?」

 

高島が小指を向けてくるが何を言いたいのか判らず何か?と尋ねると高島が子供のような顔で笑う。

 

「今度は俺との約束だ、こうやって小指同士を結んでだな。指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲ますって言う約束さ」

 

「何それ、随分とおっかない約束の仕方じゃない?」

 

「嫌か?」

 

「ふふ、別にいいよ」

 

高島が横になる部屋で高島とメフィストが小指を絡ませあい、子供のように弾んだ声で、そして楽しそうに指きりげんまんと歌う声が、夕暮れの光が差し込む部屋の中に響いているのだった……。

 

 

 

 

 

~アスモデウス視点~

 

『随分とやられたみたいだな、アスモデウス』

 

「ああ、少しばかり油断していた」

 

からかうような口調のガープに苦笑しながら返事を返す、我自身横島を侮っていた訳では無いが……あの男、想定以上に底が知れない。

 

『その有様では、無理は利かないな。道真公を使って戦え、状況が悪ければ離脱しろ』

 

「……仕方ないな」

 

今度は最後まで戦おうと言い残したが、蹴りを叩き込まれた胸は肋骨がへし折れ、呼吸するのも辛い。こんな有様では戦い所では無いので、最後の戦いは見ているだけで終わりそうなのが心残りだ。

 

『そう残念そうな顔をするな。ここからが始まりだ』

 

「……判っている」

 

人間の底力と可能性の2つを見た。横島をガープが気に掛ける理由も判った……これだけでも十分な収穫と言える。

 

『お前達の動きで現代の様子が変わり始めている。やはり横島は特異点だと確信した、これで平安時代での仕事も終わりと言っても良い、

後は……横島にもう少し楔を打ち込んでおいて欲しい』

 

「やれやれ、お前は回りくどい手が好きだな」

 

『悪いか?』

 

「悪いと思っていないんだろう?なら、それは間違っては居ないんだろうよ」

 

ガープの回りくどいが悪辣な、時限装置のような幾重にも張り巡らされた策が数で劣り、敗走に追い込まれた我達を何度も救ってきた。だからその事を悪いとも言わないし、その事にも反対しない。

 

集団戦術に秀でた我と、相手が嫌がることを、数の利を引っくり返す戦術をガープが考える事で神魔混成軍を出し抜いてきたのだ。今さらガープの謀略に反対する訳がない。

 

『それは結構。ではアスモデウス、悪いんだが横島にもう少し狂神石を投与してくれ。それで平安時代での仕事は終わりだ』

 

「やれやれ簡単に言ってくれる」

 

横島の周りの警戒は桁違いに強固だ。それを出し抜いて、狂神石を投与しろと言うガープに流石のアスモデウスも苦言を言う。

 

『大丈夫だ。しっかりと計画は練っている。後はお前がその通りに動いてくれればいい』

 

「判った判った。ではその計画とやらを聞くとしようか」

 

負傷して思うように動けないアスモデウスに入れ知恵をするガープ――平安時代での最後の戦いは武闘派のアスモデウスでは無い、悪辣で陰湿な一手を打つガープの謀略……それが美神達の前に立ち塞がる事となり、そしてその結果が齎した1つの悪夢の形……現代に帰る美神達の前に立ち塞がる最後の敵は道真公でも、アスモデウスでもなかった……。

 

【ジャゼンカイガン!ジュウマシンショオーッ!!ネズミウシトラウサギリュウヘビニウマヒツジサルトリイヌニイノシシッ!ダイヘンゲーッ!!!】

 

【「う、ウォおオオオオオオオオオーーーーーーーッ!!!」】

 

「ははははッ!さぁ、抗って見せろ人間よ。この戦いでは約束通り、我は手を出さぬ。仲間内で戦うがいい」

 

仮面ライダーシェイド 12魔将魂として再び魔に落ちた横島との戦いなのだった……。

 

 

 

GS芦蛍外伝平安大魔境 その30へ続く

 

 




平安時代のラストボスは「道真公」でも「アスモデウス」でもなく、「仮面ライダーシェイド 12魔将魂」とドチートの仮面ライダーが立ち塞がります。しかも、狂神石で暴走していると言うおまけ付き、これをどうやって退けるのかを楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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