GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境   作:混沌の魔法使い

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その33

GS芦蛍外伝平安大魔境 その33

 

~清姫(千年前)視点~

 

私とシズク、そしてメフィストの3人の前に消えかけの姿で浮かび上がる高島様の魂を見て、私は思わず目から涙が溢れた。魂は欠損し、もはや高島様の魂は人間の魂としての最低限のエネルギーさえも失っていた。

 

【あーなんだ。うん、今までありがとう。楽しかった】

 

「……言う事欠いてそれかお前は」

 

自分が消えかけているのに楽しかった、ありがとう何て言葉は普通は出てこない。陰陽師であるからこそ、もう自分が転生出来ないと判っている筈なのに……どうして笑えるのか私には判らなかった。私も、シズクも西郷も何を言えばいいのか、消えかけている高島様に色々言いたい事はあるのに、何も口に出来ない中……メフィストが一歩前に出た。

 

「高島殿……まだ1つ。契約残ってるけど……」

 

【また会おう、それで頼むぜ。メフィストだけじゃない、清姫も、シズクも、後ついでに西郷も】

 

「私はついでか、まぁ、それで良いのかもしれないな。それで、死ぬ間際だ。もう1個くらい我侭を聞いてやるぞ?」

 

【はは、悪いな。じゃあ、メフィスト達を頼む。力になって欲しい】

 

消え去る最後の瞬間まで私たちの事を思い、そして心配する高島様は小さく笑い、思い出したように手を叩いた。

 

【あ、後、京を守ってくれてた四聖の獣と神鹿と、あと……あー、一杯頼む】

 

「……やれやれとんだ貧乏くじだ。お前を悼む時間もないじゃないか」

 

高島様が京でやった改革は非常に多岐に渡る。高島様の死後、それらの契約を頼むと言われ西郷は苦笑し、高島様に指を向けた。

 

「良いだろう。全部引き受けてやる、来世では私に迷惑をかけるなよ」

 

【はは、そいつは約束できねえな……っともう時間みたいだな】

 

姿が空中でボロボロに崩れ始める、自分が完全に消え去ると言う恐怖があるだろうに高島様は歯を出して、私達が好きだった顔で笑った。

 

【またな!未来で、俺じゃない俺でまた会おうッ!その時はまた頼むぜ、俺は情けない、弱い男だからさッ!】

 

皆がいないと駄目なんだと言って高島様の魂は空気に溶けるように私達の目の前で消え去った……。その姿が消えるまで、じっと私達はそれを見つめ続け、霊力の残滓も消えたところで小さく振り返る。

 

「……ちっ、霊体がボロボロだ」

 

「ちょっと!? どうすれば良いのよ!?」

 

「水!水ですわ!綺麗な水!!」

 

「湧き水で良いの!?」

 

「わ、湧き水ですね!えっとえっとッ!!!」

 

「おい、あの馬鹿超加速で何処へ行きやがったッ!!!」

 

横島と言う高島様の転生者の周りには人間も神も悪魔もすべてが等しく集まっている。それは私達が好きだった高島様の周りの出来事だ……どれほど1000年。その長い時を経て、またああやって集まれるのならば私も待ってみようと思う……また楽しい、幸福なときを過ごす為に……

 

「シズク様はどうなさいますか?」

 

「……私は眠る。1000年、力を蓄えよう……2度とああならないために」

 

「では私は天界に戻りましょう。もっと強い力を得るために」

 

見ているだけしか出来なかった。そんな弱い自分ではない、今度はちゃんと最後まで守れるようにもっと強い力を手にしたい。

 

「判りました。ではメフィストは?」

 

「……あたしは……うん。人間になるよ、1000年後にあたしは高島を最後まで守れるように力をつける。また恋するのか、それとも今

度は違うのか……それは判らないけど後悔だけはしない為にね」

 

1000年の先にまた会える。そして今度は絶対に、後悔するような事にならないように力をつける事を私達は誓い合うのだった……。

 

 

 

 

~美神視点~

 

アスモデウス達は退ける事が出来たけど、高島の死や、私達の知る歴史から大きく変わったシズクと清姫の事。そして何よりも、2度にわたる狂神石の力による変身――問題は山積みと言っても良いだろう。

 

「ぷぎい!」

 

「うん、ごめんな?」

 

「ぴぐう?」

 

狂神石の影響は横島君の手足の麻痺と言う深刻な後遺症を残した。握力は殆ど無く、立ち上がる事は出来ても歩く事は出来ない。と移動と食事に介助に必要な有様だった。それでも「普通」だ。いや、普通になるように気絶している間にヒャクメに頼んだのだ。

 

(美神さん……)

 

(普通にしていない、これが最善なのよ)

 

横島君にシェイド 12魔神将として暴走した記憶を残すのは得策ではない、横島君は案外考えすぎる性格だ。本当ならばシェイドの事自体を忘れさせたいが、かぐや姫と藤原の姫の事を忘れるのは間違いなく横島君が反発する。落し所としては2度目の暴走の記憶を封印する……これが私が最善だと思った手段だ。

 

「どうかしました?」

 

「ううん、なんでもないわ。とりあえず無茶をせずに大人しくしていてね、挨拶をしたら現代に戻るから」

 

正直に言えばもう少し安静にしたいが、平安時代では何時横島君の記憶が戻るか判らないし、医療設備も決して優れているわけではない。時間移動の不安はあるが、最善策として横島君を早く現代に連れて帰るべきだと私は考えていた。

 

「本当に美神さんだけで良いんですか?俺達も行ったほうが」

 

「病人がなに言ってるのよ、大人しくしてなさい。道真公。準備はお願い出来ますか?」

 

蛍ちゃん達に目配せし、横島君に余り今回の戦いは言わないように合図をし、道真公もその話に乗ってくれた。

 

【うむ。任せておけ、お前達を未来へ送り届けたら、拙者も天界に戻る】

 

帝への挨拶は私だけが行く事にした。横島君は今動かせる状況じゃないし、高島の死の事を批判させる訳には行かない。

 

「……同行してもいいぞ?」

 

「ううん、大丈夫。横島君をお願いね」

 

シズク達にそう声を掛け、私は帝の屋敷へと足を向けた。

 

「良く来てくれた。美神、今回の件はご苦労だった」

 

叱責されると思っていたのに、労いの言葉を投げかけられ私は正直困惑した。

 

「高島の死については皆心を痛めているが……私達は事前に聞いていた」

 

「え?」

 

高島の死を事前に知っていたと聞いて、私は思わずそう尋ね返す。すると、目を真っ赤に染めた六道幸華が口を開いた。

 

「自分はこの闘いで死ぬけれど、美神達を責めないで欲しいと、もしも自分の事を思うのならば、未来まで続く騒乱を見据え手助けして欲しいと」

 

「私も六道も1000年も家を続けれるかは判らないが、それでも助けれる範囲なら助ける」

 

「私もだ、京の復興もあるので、それほど渡すことは出来ないが……これからの戦いに役立てて欲しい」

 

平安時代の質の高い破魔札や陰陽札、それに大量の霊具の数に驚くのと同時に、自分の死後の事も考えてくれていた高島には感謝しかなかった。

 

「ありがとう……ございます」

 

責め立てられることも覚悟していた。それなのに激励された事に情けないと思いながらも深く頭を下げて、与えられた宝を手に帝の屋敷を後にするのだった……。

 

【では未来へと送ろう。此度の戦い、まこと感謝にします】

 

横島君を病院に連れて行かないといけないし、何よりも今回の事でどれだけ歴史が変わったのかと言う不安もある。

 

「西郷さん達に別れは」

 

「手紙だけは置いて来たわ。これ以上は触れ合わないほうがいい」

 

あまりに過去を変えすぎては何が起きるかも判らない。心情的には別れを告げたいが、手紙だけで帰る事になるだろう。

 

「それでやっと、茨木童子さんは?」

 

「吾は横島と行くぞ」

 

……琉璃に丸投げする事になるけど、うん。茨木童子は鬼のはずなんだけど、どうしようもないポンコツ感があるから大丈夫だろう。

 

「……ま、良いだろう。鬼にしては良い奴だ」

 

「面白いから良いんじゃないですかね?」

 

シズクも清姫も問題ないと言っているので私はこれ以上何も言えないと言うか。何を言っても無駄だと判断したので諦めるしかない……でもとりあえず琉璃の愚痴とかは聞こうと思うのでそれで許して貰おうと思う。

 

「良いんですか?」

 

「引き離すほうが危険だわ」

 

置いていくのならばって鬼火を作り出したことを考えれば連れて帰るのが一番安全だ。

 

「では道真公。お願いします」

 

【うむ。では、また未来で会おう】

 

落雷が私達を包み込み、私達は平安時代を後にした。様々な出会い、そして別れ、これからの不安……様々な思いを抱えて、私達は平安時代から現代へと引き返していくのだった……。

 

この平安時代での戦いが現在に生きる全ての命の明暗を分ける。大きな戦いの予兆であると言うこと、そしてこの戦いが私達に途方もない絶望を与える種となる事を私達は知る良しも無いのだった……。

 

 

 

平安大魔境 おまけその1へ続く

 

 

 




と言う事で平安編はこれにて完結となります。最後が短いですが、これ以上平安編は引っ張れないのでこう言う形になりました。次回からはおまけ編と言う事で番外編を5つほど書いて、ファイナルに入って行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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