GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境   作:混沌の魔法使い

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おまけその1

平安大魔境 おまけその1

 

~躑躅院視点~

 

道真公の助力によって再び過去に跳んだ美神と小竜姫様達。彼女達が無事に横島を連れて帰ることを祈る神代琉璃達を見ながら、私は小さく微笑んでいた。

 

(横島君の評価は改めなければならないな)

 

唐突に頭の中に浮かんだ知らない記憶――。これが噂の横島君がガープに狙われている理由の1つ、特異点と言う能力による物なのかと思うと中々に面白い物がある。

 

(シズク様と清姫様の大暴れは無くなって、変わりに鬼道家の反乱……ふぅん。なるどね……)

 

歴史が書き換わる事で、2つの記憶が脳裏を駆け巡る。古い記憶が消え、新しい記憶になる。その痛みは中々に強烈だが、その程度でどうにかなるほど私は甘い人生を歩んでいない。その痛みさえも呑み込み、己の糧とすれば良いのだ。

 

「どうかした? 躑躅院」

 

「いえいえ、なんでもありませんよ。神代会長、横島君が無事に戻って来て欲しい……私が考えているのはそれだけです」

 

「そうね。はぁ……本当に無事に帰ってきて欲しいわ」

 

横島君と言う存在はこの現代で活躍している全てのGSの急所と言っても良いだろう。味方を鼓舞するという意味でも、そして精神的な支柱と言う意味でも横島君の存在は非常に大きいと言わざるを得ない。

 

(そしてその影響は私にもある)

 

美弥の為に横島忠夫を手にする計画を私は考えていた。だが、横島君に対する私の評価は既に変わり始めて……。

 

「何か?」

 

【いやあ?別に、ただなぁ。お前の気配がどうも不穏な物でな?いや、ワシの気のせいなら良いんじゃよ?】

 

流石大英霊と言った所か……上手く自分の内面を隠すのは得意にしていたつもりだが、さすがに大英霊織田信長の眼力を誤魔化すのは無理だったと苦笑する。

 

「いや、いや、私の妹の美弥も横島君を随分と好いているようなのでね。前途多難だと思ったのですよ」

 

「この状況で良くそんなことが考えれますわね?躑躅院」

 

「待ちなさいよくえす。こういう状況だから、逆に良いのかもしれないわ」

 

絶望的な状況だからこそ、また心が休まる時を考えるのは当然の事。そして神宮寺が噛み付いてくるのも計算の内、そしてそれを神代琉璃が諌めるのも計算の内。

 

【全くこんな状況なのに妹の事を考えるとはお前も相当な兄馬鹿じゃな!】

 

【ふふ、兄と言うのは何時も下の者を考えるものですからね】

 

まだ疑いの視線はあるが、私がどうやって神代琉璃達を出し抜くか考えていたのかと思ってくれた事で僅かに敵意と監視の視線が弱まった織田信長と牛若丸の事を考えていると、獣の姿で伏せて紫の面倒を見ていたタマモとシロが跳ね起き、それと同時に人間の姿になった。

 

「……お兄さん帰ってくる?」

 

眠っていた紫が目を擦りながら尋ねるとタマモとシロは再び広がった暗雲を見つめながら返事を返す。

 

「ええ、感じたわ。近い、でも……これは」

 

「……何か嫌な感じがするでござる」

 

2人の言葉を聞いて、流石九尾の狐と私はタマモの評価を改めた。ただの少女のように振舞っているが、傾国の大妖怪。その実力は弱体化していても並みのGSより遥かに高い。まだその姿を確認していなくとも、横島君の不調を感じ取っていた。

 

(記憶の通りならば……)

 

横島君は平安京で、狂神石を投与され、2度に渡る暴走状態に陥っているはず。つまり、戻って来た頃合には肉体も霊体もボロボロで動かせる状況に無いはずだ。無論それを100%信用出来る訳では無いが、それでも50%くらいは信用できると思う。

 

「神代会長! 横島君達は戻ってきましたか!?」

 

「さ、西条さん。ど、どうしたんですか、そんなに慌てて」

 

屋敷に転がり込むようにやってきた西条は額の汗をハンカチで拭い、荒い呼吸を整えながら空を見上げた。

 

「い、いえ、何か、上手く説明できないのですが……横島君達が戻ってくるようなそんな気がして……」

 

【戻ってくるぞ!】

 

道真公の声が響き、一際大きい雷鳴と共に高島の屋敷に複数の人影が見える。戻って来たと神宮寺達が喜色の笑みを浮かべたが、煙の中から響いた美神の怒声にその表情は凍りついた。

 

「横島君が重傷! 寝かせる準備! それと東京のナイチンゲールに連絡して早くッ!!!」

 

その一喝で私が与えられた記憶は間違いではないと判り、誰にも見られないように顔を隠しながら、私は歪んだ笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

~くえす視点~

 

 

横島が戻って来た。それは喜ばしい事だし、やっと肩の力を抜けると思っていた……だが状況はそんなに甘い物ではなかった。

 

「……うう……ううん……」

 

布団で横になっている横島の額からは大粒の汗が浮かび、それを皆で交代して看病しているが、どれほど濡らしたタオルも数秒で乾いたタオルになってしまうほどの高熱だ。

 

「つまりなんですか、横島が無理をしているのに気付かなかったと……?」

 

「そうではないくえす。俺も小竜姫もその状況には気付いていた、だが平安時代で横島の治療が出来るか?」

 

「それは……」

 

確かに平安時代は霊的な物に満ちた時代ですが、それに追従する霊的な知識があるかと言われるとそうではない。

 

「……無理は承知だったが、あのままでは横島が弱る一方だった」

 

「それに周りの人を考えて無理をしていたのよ」

 

横島の性格を考えれば、それは十分に考えれた。私は浮かしかけた腰を座布団の上に戻し、美神達から目を逸らした。

 

「すいませんでしたわ……な、なんですのよ。その顔は」

 

「いや、くえすが謝るとか正直信じられないわ……」

 

「うるさいですわよッ!!」

 

自分でもキャラではないと判っているが、自分の非があるのに謝らないほど私は心の狭い人間ではないつもりだ。

 

「私ね。紫!」

 

「そうか! 吾は茨木童子! 大江山の鬼の首魁よ!!」

 

「すごーいッ!」

 

「そうかそうか。お前は見所があるな!」

 

……あの鬼の小娘、今なんて?私と琉璃が顔を見合わせ、それから美神に視線を向けると思いっきり美神と蛍は目を逸らした。

 

「「色々あって……」」

 

「「はしょるな!!」」

 

何がどうあれば、鬼の首魁の茨木童子を仲間に出来るのか私達にちゃんと説明して欲しい。

 

「そしてこれが吾の友の酒呑童子だ。今は、調子が悪くて寝ているが、その内紫にも会わせてやろう!」

 

「はーい!」

 

縁側ではしゃでいる紫と茨木童子を見て、再び美神達に視線を向ける。

 

「ちょっと、話聞かせてくれますか?」

 

「「ちょっと休んでからに……」」

 

「良いですけど、納得出来るまで説明してくださいよ」

 

どうして酒呑童子なんて言う超ビッグネームまで仲間にしているのか、眼魂になっているようですけどあの口ぶりでは絶対中身入りの眼魂だろう。

 

「もう横島だから仕方ないわね」

 

「せんせーだからしょうがないでござるな」

 

【むしろ横島なら当然?】

 

【流石主?】

 

……諦めの境地と言うか、自分達もその分類だから気にしていないって言うタマモ達ですけれども、もう少し考えるべきだと私は思うのですよね。

 

「令子ちゃん、東京のナイチンゲールと連絡が取れたよ。すぐに来てくれるって」

 

「そ、良かった……シズクの治療でも正直あんまり効果が無かったのよね」

 

ナイチンゲールが来ると聞いて安堵した様子の美神はやっと肩の力を抜いて、小さく笑った。

 

【やはり状況は深刻でしたか】

 

「道真公……ええ、かなり不味い状況でしたね。これからはもっと横島さんの事を見ておかなければなりません」

 

「英霊、神魔、手の空いている者は東京に呼び寄せる必要があるかもしれん」

 

ビュレト様がそこまで言うほどに状況は悪いという事なのですか……一体平安時代で何が起きたのか……美神達が落ち着いたら何があったのか詳しく聞くべきだろう。

 

【急患はどこですか!?】

 

地面を抉りながら現れたナイチンゲールが来て、美神達も検診になってしまったので話は1度中断される事になったが、横島達が戻ってきても、心休める時は無く、これから起きるであろう戦いに備えなければならないのは明らかなのだった……。 

 

 

 

 

~オーディン視点~

 

小竜姫とビュレトの報告を見て、龍神王と共に深い溜め息を吐いた。

 

「横島に狂神石の投与……か」

 

「ますます不味いな……どうしたものか……」

 

横島を排除すれば、ガープ達の侵攻が緩やかになると思っている若い神魔は少なからずいる。だが横島を排除すれば、それ以上の災厄が訪れる事となるだろう。

 

「英霊の追加増員か……候補はいるか?」

 

「……ジャンヌがすぐに動かせるが……」

 

「ジャンヌ・ダルク……か」

 

ガープに使役されたのは別側面、正しい意味のジャンヌ・ダルクならすぐ派遣出来ると龍神王は言うが、それも決して得策とは言えないだろう。

 

「横島からいらない反発を買うのではないか?」

 

「その可能性はある」

 

反転英霊のジャンヌと友好を結んだ横島にジャンヌを会わせるのは正直危険だと思う。

 

「だが他にすぐ派遣出来る英霊となるとな……数が絞られる」

 

「それに神魔を送り出すのもな……」

 

今の横島には不安要素が多すぎる。狂神石の影響を何処まで受けているのか、そしてその横島の側に神魔がいることでどれだけの弊害が起きるか……。パッと思いつくだけでも、とんでもない数の影響が容易に想像出来る。

 

「横島を中心にして狂神石の感染が広がりでもしたら……」

 

「流石の我達でも止められぬ」

 

横島の存在は間違いなくジョーカー。どんな相手にも負けるが、どんな相手にも勝つ可能性がある最高の切り札。だがそれはほんの少しの擦れ違いで、神魔にも牙を剥きかねない最強の鬼札だ。

 

「最高指導者の意見を聞いて見るか?」

 

「そうだな、流石に私達の考えでは……」

 

席を立とうとして、背後に現れた強烈な気配に我も龍神王も足を止めた。振り返りたくないと心からそう思っても、視線は引き付けられるように後を向いていた。

 

「なんだ、神魔の軍隊の司令室と言う割には味も素っ気も無いな」

 

「はは、オーディン達にはそんな余裕もないさ」

 

ルイ様と魔人姫。その2人が和やかに談笑しながら、我達の後にいたのは肝が冷えたとかそう言うレベルではない。本気で死を覚悟した……我と龍神王の視線に気付いたルイ様は本当に楽しそうに、しかしそれでいて邪悪な笑みを魔人姫と共に浮かべた。

 

「横島は私が助けてあげよう」

 

「狂神石などで狂う横島は見たくないしな」

 

横島を助けると言うほどにあの2人も横島を注目している。それはそれ自体がある意味、横島の守りとなるだろう。何処の馬鹿がルイ・サイファーとマザーハーロットの2人を敵に回したいと思う?そんなのはただの自殺行為に等しい。

 

「だけど、馬鹿な神魔が横島を害してみなよ?」

 

「お前らを殺すからな、部下の失態は上司が命で償え」

 

あの2人ならば殺すと言えば、瞬きの間に我らを殺すことも可能だろう。それだけの力が、ルイ様と魔人姫にはある。

 

「さて、じゃあ行こうか」

 

「うむ!久しぶりに横島の顔を見に行くか。土産は何が良いだろうか?」

 

「そうだねえ、チビ達がいるから果物とかが良いんじゃないかな?」

 

「そうかそうか、ああ、忘れる所だった。冥界の女神も拾って行かないとな」

 

「鹿とガゼルの違いってなんだろうってずっと鹿公園にいたっけ? やれやれ困った女神だよ」

 

本当に楽しそうに虚空へと消えていく2人。その2人の気配が消えたと同時に、我と龍神王は同時に膝をついた。

 

「横島を警戒している神魔を全員ピックアップしよう」

 

「ああ、それも早急にな」

 

横島は人外に愛される。ルイ様と魔人姫のそれが愛玩動物を見るものなのか、それとも異性に向ける物なのかはわからない。可能性とすれば、前者だが、後者が無いとは言い切れない。

 

「とにかくだ、馬鹿を全員拘束しなければ」

 

「ああ……大変な事になる」

 

今回は我達に釘を刺しに来たのだ。横島が狂神石を投与されるのも、それを全て知った上で、何もせず。自分達が見たい物を見たから後は横島を処分されては困ると釘を刺しに来たのだというのは明らかだった。

 

「横島はどうなるんだ……」

 

「判らない少なくとも……英霊に祀り上げられる可能性は十分にあるだろうな」

 

既に横島は幾つ物偉業を成し遂げている、それは現代ではありえない英霊としての条件を全て満たす物だ。だが逆を言えば、横島は全てを救うが、全てを破壊する素質も持ち合わせている。

 

「救世主か……それとも」

 

「人類悪か……慎重に見届けなくては……」

 

世界を救う救世主「セイヴァー」としての素質を横島は我達に幾度も渡り見せてきた。だが狂神石に取り込まれたことで全人類を滅ぼす可能性を秘めた人類悪「ビースト」への適正も得てしまった……。

 

「正念場だな」

 

「ああ、その通りだ」

 

ここからはより慎重に、しかし大胆に行動して横島を守らなければならないだろう。魔人へと至らせない為に、そして人類悪へと辿り着かせない為に……オーディンと龍神王は動く事を決めたのだった……。

 

 

平安大魔境 おまけ その2へ続く

 

 




横島にセイヴァーと人類悪適正発言。救世主になるか、それとも破壊者となるか?横島のルート分岐が1つ増えました。今回はシリアスでしたが、次回は久しぶりにほのぼのテイストの話をかきたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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