GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境   作:混沌の魔法使い

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平安大魔境 おまけ その2

平安大魔境 おまけ その2

 

~蛍視点~

 

ナイチンゲールさんの襲来によって私達は強制的に京都で療養となってしまった。その時のナイチンゲールさんの弁がこちらなのだが……今考えても至極真っ当なことでぐうの根も出なかった。

 

【は?意識不明の重傷者を連れて東京に帰る?それに平気そうにしてますけど霊体がボロボロですよね?ミス・令子、ミス・蛍――その足。へし折って欲しいんですか?】

 

完全に目が据わっていて、やるという気迫に満ちているナイチンゲールさんに私と美神さんは即座に降参。元々横島が回復するまでは動くつもりは無かったけど、本気で足を折られると思い私達は京都で療養を続ける事に賛成せざるを得なかった。

 

「何時まででも滞在してくれて結構ですよ? 全て躑躅院が持ちますので、ごゆっくり療養してください」

 

あんまり躑躅院に貸しを作りたくない美神さんとくえすは苦虫を噛み潰したような顔をしていたけど、ナイチンゲールさんが睨みを聞かせていれば躑躅院の提案を受け入れるしかなかった。

 

【はい、ゆっくり息を吸って、はい、吐いて】

 

「あいたたたたたッ!!! もうちょっと優しくッ!」

 

【それだけ弱っていると言う証拠です。ゆっくりとリハビリに務めなさい。はい、捻りますよ】

 

「ま、まっ……うぎゅうううーーーッ」

 

美神さんがナイチンゲールさんに物理的に曲げられているのを見て、あれ次私なんだよなあと思わず遠い目をして天井を見つめる。

 

(美神さんは結局どうなるんだろ?)

 

メフィストと高島の悲恋――1000年前に起きていた私ルシオラと横島の恋愛と似たような出来事。その記憶を美神さんが知ったらどうなるんだろうか?今の関係性と変わってしまうのだろうか……私はそれが不安でしょうがなかった。

 

「……ん?ちゃん?蛍ちゃん?大丈夫?」

 

「え。あ……は、はい。大丈夫です。すいません」

 

琉璃さんに何回も声を掛けられているのに気付いて、呼びかけにすぐ答えれなかった事を謝罪する。琉璃さんは私の様子を見て、平安時代での戦いの後遺症と思ったのか無理はしなくていいわよと声を掛けてくれた。

 

「ちょっと考え事をしてて」

 

「横島君の事よね。まだ目を覚まさないのよね」

 

「……そうなんですよ、流石に心配で」

 

熱は引いたけど、これで2日目も眠り続けている横島の事が心配だと言うと琉璃さんもそうよねと呟いて、私の隣の座布団に座った。

 

「横島君もそうだけど、紫ちゃんも心配だわ」

 

琉璃さんに言われて、自分が横島の事しか考えていなかったことに改めて気付いた。横島が昏倒し、その側を離れない紫ちゃんも食事も必要最低限で衰弱の一途を辿っている。

 

「みむー」

 

「ぷぎ」

 

「う、うん。食べる、食べるけど……食欲ないの」

 

【のぶー!】

 

「う、起きたらお兄さんに怒られるかな?」

 

【のぶのぶ!】

 

「わ、判った。食べるね」

 

チビ達がいることで何とか食事をしてくれているけどそうでなかったら、多分横島が起きるまで紫ちゃんは食事をしなかっただろう。

 

「言っておくけど、蛍ちゃんも同じだからね?」

 

「……すいません。判ってはいるんですけどね」

 

かく言う私も食欲がまるで無く、朝と夜にお粥を少量食べるだけで終わってしまっている。琉璃さんに指を突きつけられ、すいませんと謝る事しか出来ない。

 

 

「あ、くえす、小竜姫様、ビュレトさん、お帰りなさい。首尾はどうです?」

 

「結界とかを強化しておきましたから、雑霊や悪霊が寄って来ることは無いですわよ」

 

「これで1段落でいいだろ。またメドーサがつかいっぱしりになったが」

 

「メドーサが1番早いですしね」

 

――メドーサさん可哀想ね、横島の事を心配していたけど天界と魔界を行ったり来たり、少しくらいお見舞いさせろって叫んでいたのもわかる。

 

「茨木童子の事ってどうなります?」

 

もう1つ気掛かりなこと、平安時代からついてきた茨木童子と酒呑童子の事を尋ねる。鬼としては最上位の知名度、姿形は子供でもその力は上級神魔に匹敵する。

 

【そおいっ!!】

 

「う、うがああーーッ!もう1回!もう1回勝負だ!」

 

【良いですとも、何回でも遊びましょうぞ!】

 

今は牛若丸と簡易のサッカーで遊んでいるけど、その気になれば京都の街なんて一瞬で火の海に出来るレベルの鬼なのだ。彼女の取り扱いは神魔の中でも非常にデリケートな問題になるだろうと思っていたんだけど――。

 

「お咎めなし、横島さんの側においておくようにとのことです」

 

「確かに鬼としては危険な部類だが、横島に懐いていれば積極的に横島を守ってくれるだろうとオーディンと竜神王は決断を下した」

 

「……それはそれで良いんですけど、思ったより……そのスムーズに行きましたね」

 

英霊でいえば反英霊の極地みたいな茨木童子を良く受け入れることを決定したと思うと言うと小竜姫様が苦笑しながらその理由を教えてくれた。

 

「清姫様とシズクさんですよ。1000年前の出来事が書き換わったから、発言力が段違いになってるんです」

 

「……マジですか?」

 

「大マジだ。下手をすれば先代竜神王まで連れ出してくるぞ」

 

高島の処刑に怒り狂い京都を焼いたがどう変わったのかは判らないけど、少なくとも平和的な意味でその名前が有名ならそれに越した事はないかな?

 

「起きたぁ!お兄さん起きたよーッ!はやくーーー!!」

 

屋敷の中に響いた紫ちゃんの悲鳴に屋敷にいた全員が横島の部屋に走る。

 

「……ふああ……もふもふだ。温かくて眠くなるなあ。あふ」

 

「「「「寝るなあッ!!」」」」

 

増えたうりぼーと子狐フォーム、子犬フォームのシロとタマモ、チビとチビノブ達に埋もれてもう1回寝ようとしていた横島に私達が思わず寝るなと叫んだのは言うまでも無い……。

 

 

 

 

 

~くえす視点~

 

 

横島が目覚めた。それだけで屋敷の雰囲気が一気に明るくなったように感じた、つくづく横島はムードメイカーという事を思い知らされた気分だ。

 

【はい、口を開けてください】

 

「あー」

 

【喉の炎症などは無し、はい、では後を向いてください】

 

「はーい」

 

今は横島は診察中だが、それでも起きて動いていると言うだけで安心感がある。あのまま眠るように息を引き取るのではないかという不安が全員の頭の中にあったからだ。急性魔力中毒、霊力枯渇による死の多くは眠るように息絶える事なので、その最悪の可能性はどうしても頭から離れなかった。

 

【はい。とりあえず、今は大丈夫なようですね。何か違和感等がありましたら教えてください。それと数日の間は絶対安静です、良いですね】

 

「チビ達とかと遊ぶのは?」

 

横島の周りでボールや棒を抱えて尻尾をぶんぶん振っているチビ達を見て、ナイチンゲールはにっこりと笑い。

 

【絶対駄目です】

 

がぼーんっと言う効果音が出てきそうな顔でボールや棒を落とすチビ達。何時も思うんですけど、チビ達って表情が豊過ぎますわよね……。

 

【2~3日で霊力が回復すると思うので、それまでの辛抱です。良いですね、散歩などは禁止です】

 

「はーい」

 

主治医に言われては横島も降参するしかないのか判りましたと返事を返していた。

 

「紫ちゃん。チビ達と遊んでくれる?俺ここで見てるからさ」

 

「うん!判った!いこチビ!」

 

「吾もいくぞーー!!」

 

「みむー♪」

 

「ぴぎー♪」

 

【ノブブブー♪】

 

横島本人は遊んでくれないけど、横島が見ていると言うだけで一気に元気になりましたわね。横島自身も遊んでいるチビ達を見て穏やかな表情をしていますし、安静にしているように言っているのも念には念を入れているって感じなのかもしれないですわね。

 

「あ、あの。清姫様、そのこちらはお持ち帰りを」

 

「何か問題でもありますか?」

 

「い、いえそのですね。あの――」

 

「問題ありませんわよね?」

 

「……はい」

 

小竜姫が清姫に言いくるめられてますわね。一体何を持ってきたのかと思いながら玄関先に視線を向けると龍に引かれた牛車が3台ほど停まっていた。

 

「……ほう、これは良いな。霊力の回復と霊体の強化に役立つ」

 

「でしょう? お爺様に頼んだから快く用意してくれましたわ♪」

 

「……あの爺も偶には役に立つな」

 

「ええ、持つべきものは権力者の親族ですわ」

 

ここから見るだけでも尋常じゃない霊力や神通力を秘めた食材ですわね……横島に食べさせて少しでも早く回復させようという考えなのでしょうね。まぁ、それに関しては私は反論も無ければ異論も無い。早く横島が回復してくれたほうが私に取っても都合がいい――ただ気になるのは元から清姫が横島を見る視線は普通ではなかったけれど、戻ってきてからは更にその瞳に宿る狂気の度合いが増していると言うことでしょうかね。

 

(一体平安時代で何があったのやら)

 

茨木童子の事は聞いたが、どうして横島が狂神石に飲まれたのか、そして何があったのかに関しては美神も蛍も口を閉じている。横島も起きたのだから、それに関しても話を聞きたいと思いながら中間管理職の小竜姫の背中が煤けているのを無視して、ビュレト様と結界に関しての話を聞きに行こうとしていると美神の部屋から蛍と美神の話し声が聞こえて足を止めた。

 

『それでその美神さんはその……』

 

『ないない、1000年前の私の前世の魔族が横島君の前世と恋仲だったとしても、私にそういう気持ちはないわ』

 

『本当……ですか?』

 

『本当よ。嘘は言わないわ、それに私に取っては蛍ちゃんも横島君も可愛い弟子なのよ。その弟子との関係性を壊すほど、私は馬鹿じゃないわよ』

 

「なるほどね……ギクシャクしているのはそこでしたか」

 

美神と蛍がどうも距離感を計り損ねているのは感じていましたが、そういう事情だったのかと判った。確かに前世同士が好きあっていたと判れば、蛍とすれば気が気じゃない。正直私も本当か?と疑っている気持ちがない訳ではない。美神は横島にかなり甘いですし……そんな事を考えていると琉璃と目が合った。一瞬私も琉璃も気まずそうに目を背けたが、すぐに視線を合わせた。

 

「さっさと西郷さんと美神さんくっつけましょうか?」

 

「ですわね。ちょっと手を回しなさい」

 

「OK」

 

ライバルを確実に蹴落とせるタイミングを見逃すほど私も琉璃も甘くはない、西郷も美神も私達の勘では互いを思い合っている様子なので、さっさとくっつけて蹴落としてしまうという目的で私と琉璃は結託するのだった。

 

 

 

 

 

 

~小竜姫視点~

 

良く晴れた空を見つめながら私は深く深く溜め息を吐いた。

 

「はぁ~~~」

 

過去が変わった事で清姫様が囚人として投獄されたという歴史が消えたのは喜ばしい。やっぱり龍族の中でも指折りのエリート、そして貴人だ。罪人ではなく、龍族の姫として扱われているだけでも私としては本当に喜ばしい。

 

「だけどやりすぎですよぉ……」

 

龍族の最上級階級でなければ口に出来ない天界でも高級な肉と魚、そして野菜の数々。そしてそれに加えて、霊薬までも大量に運び込まれている。以前では罪人として龍族の姫だったとしても権力の無いお飾りの姫だった清姫様だが、そこに今は龍族の姫としての十分の後ろ盾を得た。恐らく清姫様は自分の血筋と立ち位置を十分に使うだろう――横島さんに食べさせる為の食料に薬……職権乱用と言われても当然の行為だが、先代の竜神王様の孫娘と言う立ち位置の清姫様にそれを指摘出来る者はいない。

 

(でもこれは追い風になる)

 

横島さんの立ち位置は今回の件で更に危うい物になってしまった。狂神石の力に飲み込まれかけたと言う事が公になれば、横島さんを排除するべきという声も当然が上がるだろう。その時に先代の竜神王様の孫娘である清姫様が背後についていれば、龍族の動きはある程度封じられる。

 

(後はブリュンヒルデさんとオーディン様次第)

 

天界での横島さんを守る基盤は出来た。孫馬鹿で有名な先代の竜神王様がバックについていると判れば血気盛んな若い龍族だったとしても、横島さんに牙を剥くリスクの高さを考えて動くことはない。そして天界で守りの基盤が出来た間に魔界も準備を整えてくれれば横島さんの身の安全は確保出来たも同然。

 

「気は重いですけど、これで大分状況は良くなったと言えますよね」

 

清姫様が余りにも横島さんに対して想いが強すぎるが……それが横島さんを守る事に繋がれば良い。

 

(……そ、それにその……うん、大丈夫)

 

清姫様が本妻となったとしても妾くらいなら私にもチャンスがあるのではと、1人頬を紅く染めていると背後に凄まじい神通力と魔力を感じて、一瞬で思考を切り替えて反射的に神刀を振るったのだが……。

 

「な、ななな、なああああああッ」

 

神刀を指一本で受け止めている少女を見て、私はおもっいきり上擦った声を上げてしまった。何故ならば、そこにいたのは、今この場に最もいてはいけない人物――いや、神魔だったからだ。

 

「うんうん、良い太刀筋だよ。横島君への危険性を考えて排除しようとするのは好感が持てるよ」

 

神魔の中で触れてはいけない者――「ルイ・サイファー」様が私の神刀を指一本で受け止めていた。

 

「太刀筋も鋭い、うむ。天界も良い人材が揃っているな!良い事だ!」

 

「は、はわわわわッ!?な、何をするのだわッ!?」

 

その後で上機嫌に笑う少女も腰を抜かしてへたり込んでいる少女も私よりも遥かに格の高い女神。その姿に私は目を大きく見開き絶句した、そしてどうか間違いであって欲しいと思ったが目の前の光景は変わらず私の目の前にある。

 

「そう警戒しなくても良い、私達は横島君のお見舞いに来た。それだけなんだからね」

 

私の神刀を普通につかんで私の腰の鞘に戻してルイ様は楽しそうに笑った。

 

「あの2人は私の連れだ。身分は証明する、通してくれるよね?小竜姫?」

 

「は、ははははははい……お、お通りください」

 

ルイ様に言われれば私に逆らえる訳が無く、ルイ様とお連れの2人が屋敷の門を潜るのを見届け、その場にへたり込んだ。

 

「誰か助けてえ……」

 

ほんの僅かな時間で悪夢のような展開になってしまった。こういうのは私ではなく、ヒャクメの役割なのにと思いながら私では処理しきれない異常事態に心から助けてと呟くのだった……。

 

 

平安大魔境 おまけ その3へ続く

 

 




中間管理職の涙。きっと今の小竜姫様はルキフグスさんやベルゼブルさんと美味しくお酒を飲めることでしょう。横島の元へ来る1人でも世界を滅ぼせる存在3人。これで横島君の守りは完璧ですね(白目)それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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