GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境   作:混沌の魔法使い

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平安大魔境 おまけ その3

平安大魔境 おまけ その3

 

~ブリュンヒルデ視点~

 

人間にとっては禁忌の地、触れていけない物として神魔が存在しますが、神魔にとってもアンタッチャブルという物は数多存在します。

 

その中で最も危険度が高い存在――それが「明けの明星」事、ルイ・サイファー様。

 

次に神魔の両方相手取り、10にも満たない数で神魔を全滅寸前にまで追い込んだ「魔人姫」

 

そして最後に古の神々である。

 

今の神魔よりも遥かに強力な力を持ち、簡単に人間界を滅ぼせる存在として決して触れてはいけないと言われているそれらの存在が……。

 

「やぁ、横島君。近くを通りかかったから遊びに来たよ」

 

「なんだ、調子が悪そうだな。大丈夫か?」

 

「こ、これ、お見舞いなのだわ」

 

「わぁ、ありがとうございます。嬉しいです」

 

……普通に横島のお見舞いに来ているという事実に私は卒倒しそうになった。美神達もその顔から血の気が引いている、唯一平気そうにしている横島が本当に人間なのかと思ってしまうレベルだ。

 

(というかやはり彼女は……)

 

ルイ様が連れている金髪で童顔の少女。見目は愛らしく、毒気なんて感じられない天真爛漫な少女に見える。しかしルイ様が普通の人間を連れているわけが無い。

 

(恐らく彼女が……魔人姫)

 

私がネロと名乗った少女を観察しているとネロと目があった。その瞬間心臓を鷲づかみにされたような威圧感を感じた。

 

「ネロちゃん? どうかした?」

 

「ん?いや、何でもないぞ。ただ見慣れない顔がいるなあと思っただけだ」

 

「ああ、ブリュンヒルデさんかな? 結構お世話になってるんだよ?」

 

「そうか、ふーん……そうなのか」

 

逆に観察されるような視線を向けられる。横島が普通に対応してなければ悲鳴を上げてしまいそうになった……光さえ届かない深遠。それを覗き込んだような恐怖を覚えた。どうして横島はあの3人と向かい合って平気なのか私には不思議でしょうがなかった。

 

「横島の友達か?」

 

「お兄さんのお友達?」

 

「うん、ルイさんと凜さんとネロちゃん」

 

茨木童子と紫ちゃんが普通に横島の背中に抱きついて、茨木童子は右肩から、紫ちゃんは左肩から顔を出して3人に視線を向ける。

 

「茨木童子だ、よろしくな!」

 

「紫だよ。よろしくね!」

 

……どうもあの3人の重圧を感じていないのは、横島だけではなく茨木童子と紫ちゃんもだった。余りに気軽い声にルイ様が一瞬驚いた顔をしたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。

 

「よろしく。ルイ・サイファーだ」

 

「うむ!」

 

「よろしくねー、お姉さん」

 

普通にルイ様と握手を交わしている茨木童子と紫ちゃんの姿に私は初めて類は友を呼ぶという本当の意味を知った。

 

(天然トリオ……とでも言えば良いんでしょうかね)

 

色々考えているでしょうが余り意味の無い事を考えている横島と、深く物を考えない茨木童子、そして純粋で細かいことを気にしない紫ちゃん。多分この屋敷の中で全く重圧を感じていないのはこの3人だと思う。

 

「……まぁ、人数は増えたが時間が時間だ。昼食の準備をするか」

 

「おお、良い時に来たな! 余も貰うぞ」

 

「そうだね。私もいただこうかな」

 

……まぁ、そうですよね。帰るって事はまずないって判ってましたけど……ルイ様と一緒の食事とか絶対味が判らないと思うんですよね。ビュレトさんも遠い目をしているので確実に考えている事は一緒だと思う。

 

「横島は料理はしないの? 前のオムライス、凄く美味しかった」

 

「あーすいませんね。俺今動けないので、また今度に」

 

一瞬古の女神が何を言ったのか理解出来なかった。え?古の神々にオムライスを出した?というか、横島が料理を出来ると言うことにも驚いた。

 

「じゃあ今度を楽しみにしているのだわ」

 

ぱぁっと華の咲くような顔をしている古の女神を見れば社交辞令などではなく本当に楽しみにしているのが良く判った。横島が本当に何者なのか……実は人間じゃないって言われても私は全く驚かずに受け入れることが出来ると思うのだった……。

 

 

 

 

 

~琉璃視点~

 

ルイさんが来ただけでも発狂しそうなのに、それと同等の女神が2人とか本当に辞めて欲しい。

 

(て言うか、横島君の口振りだと普通に何回も遊びに来てるのよね?)

 

横島君の周りの結界とかかなり強化しているし、破られたら判るようにしていたんだけどそれらの痕跡は無かった。それらから考えられる結論は1つ――格が違うと言うことだ。

 

「と言うか、横島。あんた料理できたの?」

 

「普通のは出来るぞ?」

 

「し、知らなかったでござる……」

 

私達が警戒している中。タマモちゃん達が横島君に声を掛けた。シロちゃんは何にも考えてない感じだけど、タマモちゃんは警戒はしている。

 

「と言うか、料理作れるのならば私達にも今度作りなさい」

 

あくまで普通に、普段通りに振舞うことが私達の生死を分ける。くえすもそう判断したのか横島君にそう声を掛ける。

 

「ふふん、お前は横島に料理も作って貰った事が無いのか。横島のオムライスは美味かったぞ?」

 

ネロの挑発に思いっきり青筋を浮かべるくえす。お願いだから堪えてと心のそこから思った……というか、くえすの煽り耐性が余りにも低かった。

 

「そんなに大層な物じゃないですけど、食べたいって言うなら作りますよ?元気になってから」

 

横島君が不味い状況になっていると判断したのか、料理を作ると口にした。

 

「楽しみにしてますわ」

 

「あ、でもあくまで普通の料理ですからね?過度な期待はしないでくださいよ?」

 

あくまで普通の男子高校生が作れるレベルの料理だったとしても、横島君が作ってくれると言うだけで私達は興味を持っていた。

 

【それならワシも食べるからな!】

 

【私もです】

 

「横島の料理って私も興味があるのよね」

 

皆が口々に横島君の料理に興味があると言うと横島君は困ったような、それでも楽しそうな顔をして笑った。

 

「じゃあ皆で食べれる何かを作ろう。大阪の伝統の味を作るぜ」

 

大阪の伝統の味と言うと――確実にお好み焼きだと思うけど、本場の大阪の人が作るお好み焼きって凄い興味があるわよね。

 

「じゃあその時は私も食べに来よう」

 

「余もだな!」

 

……なんか今回と同じで味とかが全然判りそうに無いけど、横島君が楽しそうだから良い……のかな?

 

「みむうー」

 

「チビは今日も元気ね、良い子良い子」

 

「みむぅ♪」

 

「ぷぎぎー♪」

 

【ノブノブー♪】

 

……いや、凜さん凄くない?私チビが横島君以外に懐いている所なんて殆ど見たことないんだけど……

 

「……なんで?」

 

蛍ちゃんの何でって言葉がこんなにむなしく聞こえたのって初めだと思うわ。横島君と殆ど一緒にいる蛍ちゃんに今だ懐かないのに、何故凜さんに懐いているのか謎でしょうがない。

 

「ほら、横島君。私とも仲良しだ」

 

「み、みむうう……」

 

「あのすいません、チビを苛めないでくれますか?」

 

ルイさんに震えながら擦り寄るチビ。めちゃくちゃ怯えているし、震えている。多分死んだ目をしている小竜姫様達の心境を今1番正確に現しているのがチビなんだろうなとルイさんの手の中でめちゃくちゃ怯えながら、擦り寄っているチビを見て私はそう思うのだった……。

 

 

 

 

 

 

~シズク視点~

 

清姫と共に昼食の準備をしながら大広間から聞こえて来る横島の声を聞いて、私はやっと合点がいっていた。

 

「……私が目的も無く出かけていたのはあいつらが原因なんだろうな」

 

「多分私もですわね」

 

ルイ・サイファー。神魔の中で触れてはいけない、近づいてはいけないとされる者――そんなやつのメイドが横島に預けられているのだ。普通に考えて横島の事をルイが相当気に入っているのは明らかだが、まさかここまでとは思っていなかったというのが本音だ。

 

「大丈夫なんですかね?あんなのに魅入られて」

 

「……まぁ今の所は害はないだろう」

 

ルイは己の興味を満たすこと、そして楽しむ事を最優先にする。横島を気に入っているのは、横島の周りで起きる出来事、そして横島の周りに集まる人外を見て楽しんでいるのだろう。ちらりと厨から大広間を見ると流石に布団には入っていないが、座布団の上に座りひざ掛けを掛けられた横島が楽しそうに笑っている。

 

「横島様は本当に楽しそうですわね」

 

「……あいつにとっては種族とかはどうでもいいんだろう」

 

自分の側に集まってくれて、そして楽しく過ごす事が出来れば良い。結局の所、横島は寂しがりやで、その寂しさを癒してくれる者。自分の側に寄り添ってくれる相手を欲しているのだろう。

 

「……歴史が変わってどうだ?」

 

「お爺様に頼み事がしやすくなったのと横島様への愛が溢れておりますわ」

 

「……それだけじゃないだろ」

 

私が言いたいのはそういう事では無い。清姫はふうっと小さく溜め息を吐いて、嫌そうな顔をしながら口を開いた。

 

「貴女にすこーしだけ好感があるんですよね」

 

「……吐き気がするな」

 

「こっちの台詞ですわ」

 

私と清姫は水と油、決して相容れない存在の筈なのに、千年前の出来事が大きく響いているのだろう。前までは顔を見るのも嫌だったのに、今は少し話をしても良いかな?くらいには好感を持っている。

 

「はぁ……なんでこんなことになるんですかね」

 

「……横島を好いてしまった段階で諦めろ」

 

横島の側にいれば、側にいたいと願えばこうなるのは必然だった。喧嘩するほど仲が良いとか言っておきながら、私と清姫が口論しているのを見て悲しそうにしていた横島だ。横島を悲しませたくないと思えば、そして1000年前の高島の死に対応出来なかった事を考えれば、私達同士の相性の悪さなんて関係ない。横島を死なせない為に協力する必要があったという結論に辿り着くのは当然の事だった。

 

「横島様はきっと太陽なのでしょうね」

 

「……そうかもな」

 

明るく照らして包み込んでくれる。その温かさを知れば、横島から離れたくないと思ってしまう。そう思ってしまえば、離れたいと思っても離れる事が出来なくなってしまうのだ。

 

「こんにちわ!帰ってきたと紫に聞いたので遊びに来ました」

 

「天魔ちゃんいらっしゃい」

 

「天魔ー♪」

 

庭から聞こえてきた天狗の姫の楽しそうな声を聞いていると、申し訳なさそうに天狗が食材を手に厨に入ってきた。

 

「あのシズク様、清姫様。お食事時に申し訳ありません」

 

「その天魔様が横島殿の所に行くと駄々を捏ねられたので……こちらその食材です。お納めください」

 

深く頭を下げて食材を置いていく天狗達を見て、私も清姫も諦めたように溜め息を吐いた。

 

「普通の料理は止めますか」

 

「……だな、味噌汁だけ仕上げるから、それまで頼む」

 

「はいはい、判りましたよ」

 

どの道この人数じゃ普通に料理を作っていたら時間ばかりが過ぎてしまう。ここは材料を適当な大きさに切り分けて、バーベキューみたいにしてしまったほうが早いと判断し、私は清姫に下拵えを頼み、作りかけの味噌汁を仕上げる為に冷蔵庫から味噌を取り出すのだった……。

 

 

 

 

 

~エレシュキガル視点~

 

横島達が滞在している屋敷の庭に石釜が作られ、その上に鉄板が置かれてばちばちと音を立て、私含めてルイ達皆が鉄板の周りで肉が焼けるの楽しみに待つ中。ちらりと背後に視線を向けると横島だけが簡易の机と椅子に腰掛けて、1人の女性にしかられている。

 

【横島はこの机と椅子から離れない事、良いですね】

 

「駄目ですか?」

 

【駄目です。全く何故調子が悪いというのに立食なんて……確かに良い天気で気持ちも判りますが……もう少し自分の体調を考えることです】

 

横島は体調が悪いと言うのは知っていたので、尋ねてきたタイミングが悪かったかもしれないと暗い気持ちになっていると、魔人姫に背中を叩かれた。

 

「な、なにをするのだわ!?」

 

「一々暗い顔をするな!楽しんでいる顔を見れば横島も元気になる。そういうものだ、な、横島!」

 

「勿論ですよー。でもたまにこっちに来てくれると嬉しいでーす」

 

楽しんで食べてくださいと言いつつも、1人だけ机というのは寂しいのでこっちに来てくださいという横島。その顔は明るく、仲間はずれを悲しんでいるようには見えない。その顔を見ると、悪いことをしたと俯いているのは余計に横島を悲しませているような気がしてきた。

 

【ノブノブー♪】

 

「「ごはんごはん♪」」

 

チビノブ達と紫ちゃん達がお皿を持って横島の元に向かう。いやチビノブ達だけじゃなくて、初めて見る黒い魔女も野菜や肉を取ったら横島の方に早足で向かっている。

 

「これじゃんけんで負けたら地獄過ぎるんだけど」

 

「30分ごとだから頑張りましょう」

 

お肉や野菜を焼いている蛍達は鉄板の前で大汗をかいている。

 

「大丈夫?はい、これお水」

 

可哀想になってきて水を渡すと2人とも笑顔でそれを受け取って口にする。

 

「ふーありがと、でも次はじゃんけんで負けないからね」

 

「焼いてると食べている所じゃないのよ、皆食欲凄いから」

 

確かにその通りだと思う、焼き係りになると食べている所じゃないと思う。最初のじゃんけんで勝てて良かったと少しだけ思いながら、お肉と野菜を自分の皿の上に乗せる。

 

「あー」

 

「はい、あーん」

 

「あー」

 

「はい、あーん」

 

横島が紫ちゃんと天魔ちゃんの口にお肉を入れて上げている姿を見ているととても穏やかな気持ちになってくる。

 

「お肉が足りないでござるよー」

 

「野菜を食べなさい、馬鹿犬」

 

「狼でござるよ!?」

 

【うめー、こういう風に食べると肉を焼くだけでも美味いのー】

 

【ですね。あ、美神殿、蛍殿、焼くペースが遅いですよ?】

 

「「2人で間に合うかぁッ!!!」」

 

遅いと言われてトングを片手に怒鳴り声を上げる美神と蛍。2人ともがんばっているのに、遅いって言うのは酷いと思うのだわ。

 

「はい、こっちでも焼き始めましたよー」

 

「肉が足りないのはこっちに来てくださいねー」

 

2人だけで焼いていては間に合わないと判断したのか神魔2人が鉄板の準備を終えて、こっちでも焼いてると声を掛けると人の波が2つに分かれる。

 

「ふふ」

 

「なんだい?そんなに面白いかい?」

 

「私、こういうのは初めてだから楽しくて面白いわ」

 

「そうかい、じゃあ私は誘って正解だった訳だ」

 

ガゼルと鹿は違うのかと考えて鹿公園にずっといたら、この楽しさは味わえなかったと思うと誘われて良かったと思う。明るい太陽の下でこうやって食事をするのがこんなに楽しいなんて知らなかった。

 

「あー」

 

「いや、ネロちゃんは自分で食べれること無い?」

 

「貴女何してるんですの?」

 

「駄目か?」

 

「駄目です」

 

「不公平だぞー」

 

紫ちゃん達と同じ扱いをしろーと言っている魔人姫を見て思わず噴出した。それと同時にこの楽しさは横島に出会わなければ味わえなかったと思いながら私は手にしているお肉を口に運ぶのだった。

 

 

平安大魔境 おまけ その4へ続く

 

 

 




わいわいと楽しく過ごしている感じにかけたと思います。エレちゃんの好感度も上がりつつ、平和な日々を過ごしております。もう少し京都編も終わり、finalへと進んで行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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