GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境   作:混沌の魔法使い

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その4

平安大魔境 その4

 

 

~横島視点~

 

輝夜ちゃんのお爺ちゃんとお婆ちゃんの屋敷はどこか懐かしく、祖父母の家と言う感じがした。凄く暖かい場所と言う感じで、酷く心が落ち着く、だが何時までも落ち着いてはいられない。

 

(何とかして美神さん達と合流したいんだけど……そうも言えないなあ)

 

「横島!これ似合うと思うわ、ほら、着てみて着てみて♪」

 

彼女のお陰でやってもない罪で囚われる事は無くなったが、彼女のお陰で自由を奪われている。とりあえず、気を損なわせる訳には行かないので彼女の差し出した服に袖を通す。

 

「これって……陰陽師の?」

 

西条さんに良く似ていた人物が来ていたのと同じ服装だった。それを見て、輝夜ちゃんは心底楽しそうな笑みを浮かべる。

 

「そう!とてもよく似合うわ」

 

物凄く嬉しそうなんだけど……すげえかてえ、後動きにくい……脱ぎたいなあと思いながらも輝夜ちゃんが喜んでいるので我慢する。

 

「みむう?」

 

「ぷぎ?」

 

変な格好と言う感じで俺の周りをちょこちょこ歩くチビとうりぼー。チビノブはお婆さんのお手伝いで洗濯物などを干しているので、この場にはいないが俺の姿を見れば同じ反応をするような気がする。

 

「あのね、横島にお願いがあるの」

 

「俺にですか?」

 

「うん。私の護衛になって欲しいの、陰陽寮はあんまり信用出来ないから、横島は強いし、優しいから横島が護衛が良いわ」

 

これ絶対断るべきだと思うんだけど……仮に断ったしたら屋敷から出ることも難しそうだ。

 

「俺の仲間と合流するまでで良いのなら……引き受けるけど」

 

「……うん、それで良いわ。じゃ、横島は私の護衛に決定ッ!」

 

うりぼーを抱え上げて嬉しそうに笑っている。だけどほんの僅か、ほんの少しだけ今何かが零れた……。

 

(この子……人間じゃない?)

 

姿形は人間だ、それに神魔って言う雰囲気でもない。だけど……今一瞬だけ妙な気配を感じた。

 

「横島、どうかした?」

 

「ううん、なんでもない」

 

「そ、それなら良いわ。蹴鞠また見せてくれる?」

 

サッカーボールの要領でリフティングをして見せたのを輝夜ちゃんが気に入った様子なので蹴鞠を持って庭に出る。

 

【ノブウッ!】

 

「ひゃっ!?」

 

チビノブの声と可愛らしい少女の悲鳴が響いた。俺と輝夜ちゃんが頸を傾げながら声の聞こえたほうに行くと着物姿の銀髪と言うには色が薄い……でも白髪と言うには艶がある奇妙な髪色をした少女がチビノブに捕まっていた。

 

【ノブウ?】

 

知り合い?と言う感じで尋ねて来るチビノブを見て、輝夜ちゃんを見るが彼女も首を左右に振る。侵入者ってことなのかな……。

 

「あ、お前!なんでお父様にあんな無理な事を言ったんだ!!」

 

お父様……その言葉で俺も輝夜ちゃんも大体理解した。

 

(いや、アカンやろ、その親父)

 

輝夜ちゃんと同年代の子供がいるのに、そんな相手に求婚するとか変態だろ。シズクの言っていた平安時代みんなロリコンの話が事実だと判り、俺は心底驚愕した。

 

「うーん、誰の娘か判らないけど……ちょっと話をしましょう?ね?」

 

「話なんて「ぷぎい!」ひっ!?……い、猪?」

 

うりぼーを見て驚いている少女を見て輝夜ちゃんはくすくすと楽しそうに笑い、笑われた少女の顔が紅く染まる。

 

「わ、私はお前と話なんか」

 

「まぁまぁ、とりあえず話しだけでもしてみた方が良いと思わない?」

 

「……陰陽師?」

 

「格好だけね、俺自身は陰陽師とかじゃなくて、旅人」

 

少し話をしただけだけど、この子はきっとお父さんが好きすぎるに違いない、そうでなければお姫様が他人の屋敷に侵入するなんて信じられないしな。だけど、このままだと大喧嘩とか憎み合う関係とかになりかねないから、俺とそして可愛いマスコット軍団が間に入ろうと思う。

 

「ぷぎい」

 

「貴方の式神は可愛いですね」

 

「おお、うりぼーは可愛いからな。さ、立って。うりぼーと遊ばないか?」

 

「……良いの?」

 

うむ、やはり可愛い動物の魔力は最強だな。輝夜ちゃんと一緒って事で少し嫌そうな顔をしているが、うりぼーが遊んでくれないの?と言わんばかりに見上げるとうぐっと呻いた。

 

「一緒に遊んでやってくれるか?」

 

「……うん」

 

勝ったな……とりあえずチビ達と遊ばせてそこから話をする方向に持って行こう。

 

(今帰らせるのは危ないしな……)

 

明らかにさっきまでと周辺の空気が変わった。2人は気づいていない様子だが、明らかに周囲の温度が下がっている。

 

「貝合せか石投でもしような、さ、屋敷に戻ろう」

 

「え?蹴鞠してくれないの?」

 

「後でやるよ、でも先に貝合わせか石投をしよう。今度は勝てそうな気がするんだ」

 

2人を少しでも早く屋敷の中へと思い、少し強引に屋敷の中に2人を連れて行く、だが屋敷の周りを覆う暗い気配は弱まる所かますます強くなっていく事に気付いた。

 

(心眼どうしよう)

 

(とりあえず、この娘を外に出すな、狙いはこの娘だ)

 

屋敷に侵入した子供を狙っていると聞いて、俺は何としてもこの子を輝夜ちゃんの屋敷に留める事を決めた。

 

(美神さん達が気付いてくれることを祈るしかない)

 

この気配に気付いて美神さん達がこの屋敷に来てくれることを祈り、心の中に強い不安を抱きながらそれでも俺は笑って輝夜ちゃん達と遊ぶ事にするのだった。

 

「あ、ところで君の名前は?俺は横島、この子がチビで、こっちがうりぼー、んでこれがチビノブ」

 

「藤原妹紅(ふじわらのもこう)」

 

「もこう?じゃあもこちゃんね」

 

変わった名前だなあと思いながらもこちゃんと呼ぶ事にし、貝合わせの準備をしている輝夜ちゃんの所までもこちゃんの手を引いて歩き出す。遊んでいる間に屋敷の周りの気配が霧散するか、それとも美神さんが合流してくれるか……最悪の場合戦う事になることを覚悟し、なんとしてもお爺さん達と輝夜ちゃん達は守ってみせると俺は強く決意を固めるのだった……。

 

 

 

~蛍視点~

 

1000年前のシズク……大人の姿のシズクと共にやって来た陰陽師高島を初めて見た感想は横島とは全然違うだった。そりゃ前世なのだから似ていないわけでは無い、だが私が違うと感じたのはそんな所ではない。顔付きも似ているし、目付きとかふとした仕草も非常に似ている、だがその纏う空気はまるで別物。強いて言うと悪巧み全開の冥華さんとお父さんを混ぜたような……何もかも見通しているぞと言わんばかりに向けられる視線もその全てが横島とは違う。

 

「さてと、お前が1000年後のシズク……か、何故そんなにも弱体化してるんだ?」

 

「……ま、色々と訳ありでな。だが大したことじゃないだろ?お前にとって大事なのは使えるか、使えないかの2つだけだろう?」

 

くっくっくっと喉を鳴らす高島に何故嫌悪感を抱いたのかを理解した。人を見ているようで見ていない、この人にとって重要なのは能力であり、そしてそこに義理も人情も無いのだと……。

 

「……勘違いするなよ?高島自身は甘すぎるほどの善人だ、だから仕事の時は……」

 

「おい馬鹿。止めろ」

 

服の下に何枚も札を貼っているのが見えた。すぐにシズクが捲りあげた服が元に戻されるがその顔は不機嫌そのものだ。

 

「……お前、それまだ治らないんだな」

 

「うっせえ。生まれ持った性分はどうにもならねえんだよ」

 

えっとつまり、自分の性格が戦いに向かないから陰陽術で性格を変えているって事……?

 

「そうみたいなのね~自分の魂に鎖を掛けてるのが見えるのねえ~」

 

「……なるほど、お前は視れる神って事か、つまりこの場では使えない役立たずか」

 

酷いのねえっ!とヒャクメさんが号泣する。だけどそれはあながち嘘ではないので慰めようが無いのよね……。

 

「さてと、こっちの種はシズクが切っちまったから言うが、俺はどうも随分と甘い性格でな、こうして陰陽術で性格を変えないと率先して

戦うなんてことはあんまりしたくない、気を逆撫でるかも知れんが……許せ。陰陽寮高島忠助だ」

 

そうやってニッと笑った高島の顔は横島と本当に良く似ていて、前世と言うのを信じてしまうそんな不思議な説得力があった。

 

「美神令子。この時代で言う民間の巫覡って所ね、まぁ、1000年後では京抱えの方が少ないんだけどね」

 

「はっ、そいつは良い。偉いだけの無能は俺は嫌いでね、実力の有無が大事なのさ、それでお前さんの名前は?」

 

シズクと清姫は知っているから私の名前を尋ねて来る高島に小さく頭を下げる、

 

「芦蛍です。よろしくお願いします」

 

「……弟子か?」

 

「そ、探してるのはもう1人の弟子なんだけど……妖怪を3匹連れてるんだけど……噂になってない?」

 

美神さんの言葉に高島は頭を抱え、深く、深く溜め息を吐いた。

 

「噂だけは知ってるが、猪と空飛ぶネズミと変な小人を連れてる坊主か?」

 

「それですわ!横島様に間違いありません!」

 

他に猪とかを連れてる奴がいるなら私が教えて欲しいくらいだ。横島の目撃情報が出たことに喜んだが、高島は首を左右に振った。

 

「悪い事は言わん。その坊主は諦めな、少なくとも……3月は無理だな」

 

「……どういうこと?」

 

3ヶ月も無理と聞いて美神さんが眉を吊り上げた。それを見て高島は京に視線を向ける、その視線の先は大きな屋敷に向けられていた。

 

「帝のお気に入りの輝夜姫様がその坊主を自分の護衛として抱え込んでる。下手に会いに行けば……」

 

「帝と陰陽寮を敵に回すってことね?」

 

「そ、俺も帝の命令は断れねえ。暫くは諦めな、会う方法がない訳でもないからよ」

 

会う方法があると聞いて笑みを浮かべた。だがシズク達の顔色は悪いままだ。

 

「……今京に魔神と英霊が3人確認されている。そのどれかを討伐すれば……帝への謁見も叶うだろう」

 

魔神……それに英霊が3人と聞いて私も美神さんも顔が引き攣った。高島は頬を掻きながら俺が会いに来たのもそれが理由だと告げた。

 

「1人は民間人を殺す、1人は陰陽師を殺す、もう1人は姿が目撃されただけ、魔神はそいつらを統率してる。お前達が探してる横島って言う坊主に会いたけりゃ俺を手伝え、じゃなきゃ顔を見ることすら出来んぞ」

 

……なんで横島だけそんな私達と別の意味で危険な状態になっているんだろう?だけど、安全と言えば安全な場所にいると思えば私も美神さんも安心できる。

 

「良いわ。手伝う」

 

「良し、契約成立。んじゃま、俺が調べた情報を渡すし、少し休んだ方がいいだろ。俺の屋敷まで案内する、月が出た頃には京の捜索を始める。着いて来てくれ」

 

とりあえず今は平安時代での拠点と目的が定まっただけよしとするべきだと思い。私達は高島に案内され、下山を始めるのだった。

 

 

 

 

 

~アシュタロス視点~

 

京の中に隠された異空間に足を踏み入れると同時に拳を突き出す。

 

「やれやれ、随分と物騒なお出迎えだ」

 

「……私?……そうか、未来から来たのか」

 

「話が早くて助かる」

 

最上級神魔の魔力だけを感知して襲ってきた過去の私にやれやれと肩を竦める。同じ私だが、横島君や蛍達と暮らしているから丸くなっていると言う実感はあるが、まさかこうも違うかねと苦笑する。

 

「何をしにきた、その様子では我が悲願はまだ達成していないようだが?」

 

「ああ、そうだな。私の願いはまだ叶っていない」

 

魂の牢獄を壊す、死ぬという望みはまだ叶っていない。そしてその為に戦争を起こすという結論に至ったのも無理の無い話だった、元豊穣神の私には悪と言われるのは耐えられる物ではないからだ。

 

「別の方法で魂の牢獄から出る手段を最高指導者に提案され、私はそれを飲んだ」

 

「……本当か?」

 

疑い半分と言う様子だが、最高指導者の名前が出たことで僅かに過去の私に話を聞こうと言う姿勢が見えた。

 

「書類もある、まずは目を通してくれ。1000年の間に私も大分考えが変わったと思うが……リスク無く、そして最も平和的に私の願いが叶う筈だ」

 

ついて来いと言って基地の奥へと向かう過去の私の後を着いて歩く、今のこの基地では宇宙卵、そして究極の魔体の開発が行われている筈だ。

 

(そのどちらも開発を破棄させなければ……)

 

危険な発明だ。もしそのどちらかの情報がガープに渡れば神魔は愚か人間界すらも滅びかねない。元の時代で何とかしても、この時代の私がいる限りその2つはどうしても生まれる。この時代の私を説得しなければ、宇宙卵も、究極の魔体の誕生も防ぐ事は出来ないのだ。

 

「……未来の娘とその恋人……か」

 

「その2人が未来を変える。それを成し遂げれば私は魂の牢獄から出れる……「アスモデウス達を止める事が条件と言う事か」……不満か?」

 

私は決して情が深いタイプではない、だが同じソロモン同士として仲間意識はある。アスモデウス達を裏切る結果になる事を認められないか?と尋ねると過去の私はそうではないと言った。

 

「正直私は人間如きがソロモンに勝てるとは思っていない。1000年の間に考えが変るとしても今の私はそれを受け入れる事は出来ない」

 

「だろうな」

 

それは私としても納得の理由だ。人間では神魔には勝てない、それは全てにおいての常識だ。そしてアスモデウスと言えばソロモンでも屈指の武人だ。そんな相手を人間が下せるとは思えないのは当然の事だ。

 

「だが、1000年後の私がその結論を下したと言うことはそれだけの可能性があると言うことだ。そしてお前が希望を見出した者が今平安京にいると言うのならば……それを見届けよう。その上で私は私の決断を下す」

 

「ああ、それで良いよ。きっとお眼鏡に叶うだろう、だって」

 

「「同じ私だからだろう?」」

 

過去の私と声が重なった。考え方は今は異なっても元は同じ存在だから判る。1000年と言う時間が過ぎても、その感性は大きく変わることは無いのだから……。

 

「所で気になっていたんだが、メフィストは?」

 

「……男の陰陽師の所に行って戻ってこない……初の娘だから心配で心配で……」

 

おろおろしている過去の私にやっぱり私だなと嫌な所で確信を得てしまうのだった……。

 

(今頃は高島の所だろうか……)

 

アスモデウスが動いているから過去の私の動きが鈍いのは幸いだった。高島をまだパーンっしてない事に更に安堵する、あれが原因でメフィストに嫌われたんだよな……そこが修正されれば、現代でも何か大きな変化が生まれるかもしれない。

 

「やっぱり男は狼だから、そんな所に娘を向かわせたのが失敗だったんだろうか?」

 

「大丈夫、きっと無事に帰ってくるさ」

 

そっか、そうだよなっとぶつぶつ呟いている過去の私の姿にやっぱり私だなあと思わず苦笑するのだった。

 

 

 

~帝視点~

 

輝夜が自分の護衛として抱え込んだ陰陽師を見に来たのだが、実に良く高島に似ている。

 

「ふふ、良いでしょう?良く似合っていると思いませんか?」

 

「そうだな、良く栄えている。旅人と聞いているが、陰陽寮に入ってみるか?」

 

私の口引きならば入れるぞ?と声を掛けるが童は首を左右に振った。

 

「師匠も探したいですし、お言葉はありがたいですが」

 

「ふふ、そうかそうか。またそれも良かろう」

 

本気で迎え入れようとしている訳ではない、それに実力も未知数の者を精鋭部隊である陰陽寮に入れるわけにも行かぬ。

 

「して藤原の姫はここで何を?」

 

「えっと、えっと「ふふ、友達になったのよ。とても楽しかったわ♪」

 

輝く笑顔の輝夜を見て私も笑う、ここまで楽しそうに笑うのは久しぶりに見た。5人の貴公子の求婚を受けてからその美貌が曇っていたが、元の輝きが戻ったことに安堵した。

 

「それは大儀であった。どれ、屋敷に戻るのならば道中だ。連れて「待ってください、今は動かないほうが良い」……ほう?」

 

外に出ないほうが良いと言う童。護衛の陰陽師が顔を歪めるが、それを手で制す。

 

「何故そう言う?」

 

「……空気の流れが妙です、それに嫌な予感がします。もう暫く屋敷に留まった方が良いのでは?」

 

ふむ、私としてもそれは大層魅力的ではあるが……帝としての責務もある。

 

「そうも行かんのだよ、童。私は帝である。京を治めるものとして責務がある。それに陰陽寮の者に予知もさせている、心配する事はない」

 

鬼道の事は残念だが、それでも腕の良い陰陽師は多数いる。だから心配する事はないと言うと護衛の陰陽師が童に嘲笑を向ける。

 

「素人が私達の予知に口を挟むではないわ」

 

「これだから平民は」

 

むっとした顔をする童だったが、失礼しましたと頭を下げる。だがその目は私を制止しているように見える……。

 

「ふむ、輝夜よ。少しばかり私に付き合え」

 

「はい、判りました。横島、貴方も準備して」

 

「え、でも……」

 

「良いのよ、着いてきて。そう言うことでしょう?」

 

本当に輝夜は頭が良い、私の考えている事をすぐに理解してくれる。

 

「言っておくが、これは童を試す物でもあるが、お前達を同時に試していると言うこと夢忘れるなよ」

 

「「「……御意ッ!」」」

 

鬼道の件で私は陰陽寮に対する信用を失っている。その失態を取り戻すだけの仕事をして見せろと私は言っているのだ、民間の巫覡にも劣るというのならば重要な役目に務めさせる意味もない。

 

「いっそ高島を頭目に据えた方が良いかも知れんなあ」

 

「「「帝!」」」

 

「何だ?文句があるのなら仕事くらい果たして見せよ。では参ろうか」

 

陰陽寮の予知が当たるのか、それともこの童の予知が当たるのか……それによって今後の事を考えねばならぬ。陰陽寮は京の盾であり剣、それが役目を果たせないのならば1度解散して、また新たに人員を揃える必要がある。

 

(躑躅院も納得したしな)

 

躑躅院と高島の婚姻で高島は貴族になる。そうなれば上役に務めれるあやつは平民の生まれではあるが、貴族の生まれよりもよっぽど腕が良い、それに頭も切れる。

 

(六道家も良いかも知れんな)

 

高島と懇意にしている六道の姫も嫁ぐには良い頃合だ。貴族の妻を持たせる事で高島の地位を確立させるというのも1つの手段だろうと考えながら牛車へと乗り込み護衛と共に藤原の屋敷へと向かう道中で突然牛が足を止めた。

 

「そ、そんな……ぎゃっ!?」

 

「う、嘘だろ!?何が【さようなら、死んでください】ギギャアアッ!?」

 

護衛の陰陽師の悲鳴が響き渡る。その事に眉を顰めた、童の言った方が当たってしまった。

 

「帝さん、車の中から動かないでください。輝夜ちゃんともこちゃんをお願いします、チビ、うりぼ、チビノブ。3人を頼んだぞ」

 

童の使い魔が牛車の中に置いていかれる。開いている窓から外を伺い、私は絶句した。そこにいたのは鎧を身に纏った妙齢の女人……だがその身体から迸る力は人間の物ではなかった。

 

(神仏か!?)

 

全身から迸る神通力と魔力……人間が勝てる相手ではない。その全身から迸る雷電で雷神かと私は顔を歪めた。

 

【貴方……そう、そうですわ。今晩は貴方を殺しましょう。そうすれば殺しは終わりです】

 

女人はそう笑うと刀についた血糊を振り払い、その切っ先を童に向ける。

 

「悪いけど、そう簡単に殺されてやらない」

 

【アーイッ!シッカリミナー!シッカリミナーッ!!】

 

童も周りを黄色い服が踊り始め、童は腰元に手を伸ばした。

 

「変身ッ!」

 

【開眼!ウィスプ!アーユーレデイ?】

 

【イヒヒー♪】

 

【奇怪な】

 

上空から黄色い服が女人の突進を食いとめ、童の姿が奇妙な鎧姿へと変わった。

 

「行くぜ!ウィスプ!」

 

【イッヒヒ♪】

 

暗い夜道に小気味良い音が響き渡ると同時に童の上に黄色の服が覆いかぶさる様に着込まれる。

 

【OK!レッツゴーッ!イ・タ・ズ・ラ!ゴ・ゴ・ゴーストッ!!!】

 

「な、なにあれ……」

 

「判らない……判らないけど……助けようとしてくれてるのは判るわ」

 

腰元から飛び出しら剣を構え、女人へと立向かう童の姿と私達は混乱しながら見つめる事しか出来ないのだった……。

 

 

 

 

平安大魔境 その5へ続く

 

 

 




横島がボスエンカウント、一体何処のライトニングママなんだ……。次回は横島と暴走英霊の視点で書いて行こうと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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