GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境 作:混沌の魔法使い
平安大魔境 その6
~横島視点~
英霊源頼光の襲撃を切り抜けたのは良いが、変身の反動。そして蓄積した疲労とダメージで俺は逃亡も出来ず、帝さん、輝夜ちゃん、もこちゃんの3人の詰問に耐え切れず自分の事を話してしまった。
「なるほど、遠い未来から来たと……何を馬鹿なと言えなくも無いが、あれを見れば納得せざるを得まい」
「ですね。横島は私を守りに来てくれたのですか?」
「んーそれは偶然かなあ?師匠と逸れてどうしようって思ってた時だし」
つまり俺にしても、輝夜ちゃんにしても運が良かったと言える。俺はこの時代ので拠点を得て、輝夜ちゃんは死なずにすんだ。本当に互いに運が良かったのだと思う。
「帝……その私はどうすれば」
「ふむ、私と輝夜とお前が狙われている以上、お前は自分の屋敷に戻るのは得策ではあるまい。しばし、輝夜と共に横島に守られておれ」
源頼光は何かを察知していた素振りを見せていた。それが俺か、それとも帝さんか、輝夜か、もこちゃんか判らない以上慎重になる必要がある。だから帝はもこちゃんに輝夜ちゃんと共にいるように命じた。
「横島よ、大儀であった。だが私はお前の師とお前を合わせる訳には行かぬ。師に会えば、お前は屋敷を離れるだろう?」
「……その可能性はあると思います」
えっと言う顔をしている輝夜ちゃん達には悪いが、俺としては美神さん達と合流したいと思っている。だから本音を言えば探しに行きたいが、それでももう知り合いになってしまった輝夜ちゃん達を見捨てられないと言うのも俺の本音だ。
「向こうから来る場合も暫くは許可できん、しかしお前が輝夜達を守るのならばそれなりに便宜も図ってやれる。判るな?」
「……はい、判りました」
この時代では違法に霊能力を使えば犯罪者である。それをもみ消してやるからと言われれば俺も頷くしか出来ず、俺は全面的に帝さんの言い分を受け入れる事となるのだった……
「ふごっ……」
「んー可愛い」
「は、はわわわ……」
「みむうッ!」
分身したうりぼーを膝の上に乗せてお腹を撫でている輝夜ちゃんは本当に楽しそうだし、猫じゃらしモドキを振ってちびに掴まえられてはわわっとあわてているもこちゃんも楽しそうだ。こういう顔を見ていると俺としてもこの子達を守ってあげたいと思うわけで、別に脅されなくても俺は美神さんたちなら大丈夫と思って探しに行かなかったかもしれない。
「横島。見てみて」
「ふぎゅーぷぎゅう」
寝てるうりぼーを抱き上げて踊らせている輝夜ちゃん。分身じゃなかったら怒ってるだろうなあと思いながらも、美少女と動物の組み合わせにはやはりほっこりしてしまう。
「え、えい」
「みむう、みみー♪」
「わわわーーー」
そして意外にもチビはもこちゃんに懐いた。気難しいチビだが、何かもこちゃんに思うところがあるのかもしれないな。
【ノブー♪】
「ご飯ですよー」
お婆さんとチビノブに呼ばれ食事になるのだが、平安時代の料理は正直少し微妙だったが、こうして面倒を見てくれているのに文句を言える訳も無く、美神さん達はちゃんと食事が出来ているのかなあと心配しながら固いご飯を何度も何度も噛み締める。
(金時さんにも話を聞きたいんだけどなあ)
あの英霊源頼光と因縁がある様子だった。話を聞けば源頼光と戦う上でのヒントを得る事が出来るかもしれない……。
(出来れば話を聞きたいんだけど、もしかすると無理かもしれないな)
眼魂に入って霊力を回復させているが、牛若丸とノッブちゃんの事を考えれば暫くの間は意識を取り戻さない可能性が極めて高い。
「横島、どうかしたの?美味しくない?」
「ううん、そうじゃなくて少し考え事」
「そう。もしも困ってる事があったら私も協力するからね」
「私も!お手伝いしてあげる」
協力してくれるという輝夜ともこちゃんにありがとうと返事を返した、1人だと寂しいからこうして2人に出会えて良かったと俺は思うのだった。
~輝夜視点~
英霊の襲撃の後、横島の話を聞いたが未来から来たと言うのは正直驚いた。
(少しだけ疑ってたけど……大丈夫そうね)
最初はその不思議な雰囲気から月の追手かと思ったけど、そうじゃなかったことに安堵した。横島は腹芸が出来るタイプじゃなさそうだし、敵じゃないのは確実だった。
「こうやってこう」
「みむう、みみー、みむうっ!」
猫じゃらしとか言う奴を動かして、チビを動かしている横島。お尻を降って猫じゃらしに飛びつくチビは可愛いが、それを回避して振る事でチビも楽しそうに追い回している。
「私もやりたい!」
「輝夜ちゃんもやる? はいどうぞ」
渡された猫じゃらしを振るんだけど、思ったよりもチビが俊敏だった。
【ノブウー】
「のぶー?」
【ノノーブ♪】
「の?」
あんたなにやってるの、絶対意味判ってないんだからノブで会話をしようとするんじゃないわよ。
「みむきゅー♪」
「あ!」
猫じゃらしに組み付かれ、前足と後ろ足で捕まえてあぐあぐと噛んでいる姿は凄く可愛かった。
「よーし、次!」
「みむう!」
これは面白い、チビも可愛いし、何よりも案外面白いわ。猫じゃらしを振り、チビを走り回らせる。
(見かけよりもかなり賢いのよね)
小さいけどかなり賢く、私達を楽しませるって事を十分に理解しているチビ。妖怪だけど穢れも何もない、こんな妖怪もいたのだと正直驚いている。
(でも横島がいなくなるのはなぁ……)
英霊を倒せば横島は師匠を探してしまう。そうなると横島がいなくなってしまう……それは酷く寂しい物に思えた。
(英霊なんて見つからなければいいのに)
横島がいなくなっても未来でまた会えるかもしれない。だけど、その間にどれだけの月日が流れるかと思うとやはり嫌だなと思った。死なない……老いない、病気にならない、不死者である「蓬莱人」である私の心を動かす、美貌にだけ惹かれ私に求婚した五貴族とは違う。
「どうかした?」
「ううん。なんでもない」
優しくそこにいてくれるだけ、それが妙に心地よくて手放したくない者と私は思い始めてしまっているのだった……。
~アシュタロス(現在)視点~
昨晩の横島君の戦いには肝が冷えた。まさか怪異殺しの「源頼光」が狂神石で狂わされ、ガープ達の尖兵になっているとは想像もしていなかった。神殺しと感じたのは間違いではなかったが、怪異全般に特攻を持つ「源頼光」なんて想像もしていなかった。
(よく耐えてくれた)
坂田金時がカウンターとして召喚されていたが、彼が合流するまで本当に良く耐えてくれたと思う。
「どうだろうか?横島君は凄いだろう」
「……確かにな。彼は凄いと認めざるを得ない」
英霊を相手に人間が良く粘ったと言う過去の私に思わずガッツポーズを仕掛けるが、私だから判る。まだ納得に程遠いと……。
「彼が私の命運を変える要員と言うのは認めよう、だが1人の人間だ。彼は認めても良いが、他はどうなんだ?」
「なるほど、まだ見極めが足りないと言うことだね」
「その通り、あの稀有な陰陽術、そしてあの鎧を召喚する能力。確かに神魔には牙も届くだろう」
過去の私はそこで紅茶を啜り、カップを丁寧に皿の上に戻す。
「しかしあれは人間とは言い難いだろう。あれは魔人に愛されている」
「……確かにね」
横島君はまだ人間ではあるが、今のままではそう遠くない内に魔人に堕ちる。つまり人間と言うよりかは私達に近いカテゴリーと言ってもいい。
「神通力、魔力、そして妖力に霊力、魔人に転生する要因は揃っているな」
「神や魔族になる可能性もあるよ」
「……本気で言っているのか?」
自分で言うのもなんだけど、正直かなり苦しいとは思っている。横島君はどう足掻いても神魔の精神性には程遠い、どこまでも彼は人間として強欲な己を捨て切れない、だが善性も捨て切れない。神魔よりも、魔人に高い適正を持っているのは明らかだ。
「お前が彼に感情移入するのは自分の娘が関係しているからだ、だが私に取ってはまだ娘ではない、見極めている段階だから甘い決断などはしない」
流石私、石頭だ。自分のあり方を変えるかも知れないから慎重になるのは判る。
「横島君はいい子だよ?」
「……それは判ってる。だが私情は挟まない」
横島君はいまどき本当に珍しいタイプのいい子だ。ちょっとあれな部分もあるけど、話せば結構判ると思うんだけどな。
「ほう、丁度いい。横島の師が英霊と戦うぞ」
「……長尾景虎」
私がこの時代に来た時にはじめてであった英霊と蛍達が対峙している、メンバーは……っと視線を向ける。
(悪くは無いか)
令子に蛍、それに私達の時代のシズクと清姫。神族と龍族がいれば勝率はそこまで高くないとしても死にはしないだろう。
「毘沙門天の加護を失っているが、それでもあの娘は難敵だ」
「だろうね、今の彼女には自制心が無い」
元々サイコパスの長尾景虎が狂神石で更に狂っている。その驚異は間違いなく神魔に匹敵するだろう、それでも私は彼女達なら無事に切り抜けてくれると信じている。
「ねえ、アシュ様……え?アシュ様が2人?」
扉を開けて入ってきたのは私の初めての娘「メフィストフェレス」だ。私と私が向かい合って座っているのを見て目を丸くするメフィスト。
「入る前にノックをしなさい」
「え?したよ?」
集中しすぎていて聞こえなかったのかもしれないと私も過去の私も思った。それくらい私達には深く考え込む悪癖があるからだ。
「それで何を見てる……え?私?」
「……お前が人間に転生した存在らしいぞ」
「え?私死ぬの?」
「役目を終えたら願いを叶えてやると言っただろう?多分それで望んだのだろう」
まぁ彼女にとっては未来だから困惑するしかない訳だけど……このままなら私が頭をパーンして高島を殺すこともなさそうだし、メフィストも普通に輪廻に入る可能性もゼロじゃないな。
「ふーん、それでこの黒髪の子は?」
「妹かな?」
蛍はメフィストの妹になるからと私が言うとメフィストの目が輝いた。
「え!?妹いるの!?ちょっと妹が死んじゃうじゃない!私行くからね!!」
しかし長尾景虎と対峙しているのを見るとその顔を険しくさせ、転移の魔法陣を展開してしまう。
「「待てええッ!!!」」
直情思考のメフィストは言うが早く飛び出してしまい、私と過去の私の静止の声が重なったが、メフィストは足を止める事無く基地を後にしてしまう。私達に出来る事は1つだけ、メフィストが私達の事や妹がいると言うことを口にしないように術を組むだけだ。
(ああ。わずらわしい)
アスモデウスがいなければ私が助けに行くのに、アスモデウスがいるからそれすらも出来ない。口止めの術のほかにメフィストに能力強化の術を辛うじて掛ける。
(どうか助けになってやって欲しい)
色んなしがらみに絡め取られて動けない私の変わりに蛍達を助けて欲しい、私は心からそう願うのだった……。
~蛍視点~
横島と再会する為に京の出現する英霊の討伐に出ていた私達。ヒャクメさんは霊視が本調子ではなく、それに加えて強力な神魔の魔力が満ちているからいつも以上に役立たずなので高島の屋敷に残して来たんだけど……たとえ戦力として期待できなくても連れて来るべきだったと私は後悔していた。
【ふふ、貴女達は人間ですね。あはははッ!そうだそうしましょう。今日は貴女達を殺しましょう、そうしましょう】
高島と別行動で捜索していたが、まさかこんなに早く英霊と遭遇するなんて思っても見なかった。白い僧服に身を包んだ細身のシルエット……声からして女性だが、その声のトーンが尋常じゃなく低い、声が低いという訳ではない。空気を冷やすほどの圧倒的な殺意が全身から迸っている。
(空気が重い……それに真っ当な英霊じゃない)
元々狂神石で狂わされているのだ。真っ当じゃないのは判りきっているが、それを差し引いても真っ当ではない、纏っている空気が尋常じゃないほどに歪んでいる。
「……下がってろ、前衛は清姫がやる」
「私ですか?まぁ良いですけど、貴女達が怪我をすると横島様が悲しみますし」
私達を庇うように清姫とシズクが前に出た。すると英霊は困ったように首を傾げ、ゆっくりと口を開いた。
【私は人間を殺せって言われてるんですよ、神魔はちょっと困るんですよねえ】
なんでもない世間話のような口調だが、明確な敵意と悪意が叩き付けられるのが良く判る。
「……それで?」
【神魔は斬っても面白くないのでどいてくださいな……ええー。なんでそんな事をするんですか?】
清姫の放った火球をいつの間にか抜刀していた刀で両断する英霊。だがフード付きの僧服は耐え切れず焼失し、僧服に隠されていた人物の姿が明らかになった。
【まぁ別にこれはあってもなくてもかまわないんですけどねえ】
白い髪に黄色の瞳。その顔には笑みが浮かんでいるが、目は全く笑っていない所か黒く濁っている。
(な、何この人……)
怖い神魔や色んな悪霊を見てきた、それとはまた違う生理的な嫌悪感を感じる。
【ま、攻撃してきたからには殺してもいいですよね?あ。死なないんでしたっけ?】
「くっ!?」
ゆらりと前傾になったと思った瞬間。清姫の腕が宙を待っていて、シズクの腹には長い槍が突き立てられ、そのまま遠心力で遠くに投げ飛ばされていた。
「……けほっ、惚けてる場合かッ!!」
シズクの一喝に飛び退くと同時に刀が私達の近くに振り下ろされ、蜘蛛の巣状の亀裂を作り出す。
【んー中々、良い反射神経ですねえ。あはははっははあははっはッ!!!今日は楽しくなりそうですねえッ!!!】
狂ったように笑い、虚空から薙刀を取り出し、それぞれの手に槍と薙刀を手にする。
「武蔵坊弁慶」
【弁慶?誰ですか、それはっとッ!!】
地面を滑るように近づいてきてふるわれる神速の突きと横薙ぎの一線。それは防御すれば防御ごと断ち切られる。それほどまでに洗礼された鋭い一撃だった。
【んふふふ、良いですね。ああ、今日は良い夜になりそうです。我が身に毘沙門天……あれえ?毘沙門天ってなんだっけ】
けらけら笑い出す英霊、だが毘沙門天の言葉に私も美神さんも英霊の正体に辿り着いた。
「越後の龍……長尾景虎」
「泣けるわね……」
平安時代ではまだ生まれていないからこそそこまでの実力はないはずなのに、恐ろしいほどに強い。これがもし現在だったらそれこそ小竜姫様がいなければ対処できないほどの英霊だっただろう。
「そう思えば平安時代で良かったと思うべきね」
「そうですけど……勝つには余りにも厳しすぎますよ」
八華の備えと戦国時代ではありえないほどに武器を使い分ける才能に長け。飛び道具こそ無いが、それでもリーチを自在に変える、なおかつ武器を変えてもそれを完璧に使いこなすその才能。
「馬を持ち出してくる可能性もあるわよ」
「判ってます」
長尾景虎は騎乗戦にも長けていた武将だ。今でこそ自分の足で歩いているが、馬を召喚する可能性は十分にある。
【っと、もう回復しましたか】
「……そう簡単に神魔が死ぬか」
「痛かったですからね、思いっきりやり返して差し上げますわ」
長尾景虎からの先制攻撃から回復したシズクと清姫が加わったが、それを見て長尾景虎はますます笑みを深めた。
【いいですねえ、獲る首が増えるというのはいいですよぉ。あははははははッ!!全員の首を断ち切って私の手柄にしましょう!あの怪異殺しのアホ女には負けませんとも、あはッ!あはははははッ!!】
怪異殺し……?それがもう1体の英霊の肩書きなのだろうか……しかし今はもう1人の英霊の正体を考えている場合ではない。
【ふふふ、ふふふふ、楽しみましょうかぁ】
光の無い瞳で私達を見つめる長尾景虎の姿に私は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
「……この気配。ちいっ、あっちが当たりかッ!」
美神達と別行動をしていた高島は念のために渡していた護符から伝わる気配に美神達のほうに英霊が出現した事を知った。
「シズク!頼めるかッ!」
「……ああ。任せろ」
水を媒介にした転移でシズクに先に行くように高島は頼み、美神達の元に合流しようとした。しかしその瞬間に高島の目の前に上空から何者かが舞い降りてきた。
「妖かッ!」
「ちょ、ちょい待ちッ!私は別に戦いに来たわけじゃないよ!」
札を構えた高島に舞い降りてきた何者か……「メフィスト・フェレス」は両手を向けて戦う気は無いと抗戦の意志は無いと訴える。
「それなら良い、お前は何をしに来た」
「ちょっとね、野暮用。どう?私に協力してくれない?」
メフィストの言葉に高島は顔を緩めた。他の陰陽師ならば問答無用で相手を殺したが、神魔や妖怪と親交のある高島だからこそ、メフィストの話に耳を傾けた。
「俺も困っていた所だ。本当に力を貸してくれるのか?」
「勿論、私も凄く困ってたのよ。それで協力してくれるかしら?陰陽師さん?」
挑発するようなメフィストの言葉に高島は笑みを浮かべ、指の間に挟んでいた札を着物の内側に戻してメフィストに手を向ける。
「高島だ。悪いけど手助けを頼むわ」
「OK、よろしくね。高島殿」
美神達が長尾景虎との戦いを始めている頃。高島はアシュタロスの娘であるメフィストと出会い、そして互いの目的の為に協力する事を約束し、2人で美神達の元へと向かうのだった……。
平安大魔境 その7へ続く
次回は長尾景虎と美神達の戦いだけで1リポートを書こうと思います。正し、今回は決着までは書いていけないので、イベントで相手の離脱になるか、美神達の離脱になると思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。