GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境   作:混沌の魔法使い

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その7

平安大魔境 その7

 

~美神視点~

 

平安京を荒らしている英霊2人。そのうちの1人……人間を殺して回っている英霊と遭遇する事が出来た。英霊と戦ったという実績があれば横島君との再会が早くなると私も蛍ちゃんも考えていたけど、長尾景虎の存在感は圧倒的だった。

 

【あはははッ!!神魔は興味が無いんですけどねえッ!!】

 

擦れ違い様の一閃でシズクの上半身と下半身が両断され、清姫が弾き飛ばされる。

 

【ふっ!!!】

 

刀から斧に持ち変えられたその一撃を神通棍で2人で受け止めるが、その衝撃の凄まじさに私も蛍ちゃんも足が地面にめり込むのを感じた。だけど全身に力を込めて弾き飛ばす事が出来た。

 

【へえ?】

 

弾かれた勢いで宙回転して着地した長尾景虎の目がまるで猫のように細まった。その目は今までの狩る獲物とでも言っているのか見下していた目からほんの僅かに興味を抱いたという感じの目の色に変わっていた。

 

「蛍ちゃん。難しいと思うけど、合わせて行くわよ」

 

「……はい」

 

声や合図を出していては長尾景虎に反応されてしまう。私がフォワードで前に出て、蛍ちゃんに何の合図もリアクションも無く私の動きに合わせてもらう必要がある。

 

【良い夜ですねえ……ああ、酒があればもっと楽しいでしょうにッ!!」

 

「ッ!!」

 

ゆらりと傾いた瞬間に鋭い踏み込みで突き出された槍の切っ先を神通棍で横から叩いて、その切っ先を辛うじて逸らす。

 

【良い組み合わせですね】

 

切っ先が地面に刺さったと同時に、開いている左手に握られた刀による刺突を蛍ちゃんが私の背中から飛び出して、結界札で弾き飛ばす。

 

「ふっ!!」

 

【……っつう】

 

突き出した神通棍の先がほんの僅かに長尾景虎の頬を捉えたが、致命傷には言うまでも無く程遠い。それに僅かに赤くなった頬は殆ど一瞬で回復されてしまった。それでも英霊相手にほんの僅かでも手傷を負わすことが出来た。そしてこれは第二、第三の矢と繋がる大きな布石になる。

 

「……いけっ!」

 

「そこッ!」

 

私と蛍ちゃんに視線を向けていた長尾景虎の背後から氷柱と火球が迫る。これは完全に直撃のタイミングだと私も蛍ちゃんも確信していた。長尾景虎は人間狩りを重視しているのならば、シズクや清姫は眼中にない。手傷を与えた事で私と蛍ちゃんに注意を引きつけた、英霊と真っ向勝負と言う自殺行為に挑んだだけの価値はそこにあった。

 

【あはッ!!あははははははッ!!!あーッはははははははッ!!!!!】

 

視線を私達に向けたまま、右手の槍を回転させ背後からの氷柱と火球に視線も向けず、氷柱を清姫に、火球をシズクに弾き飛ばして狂ったように笑い出した。

 

【見つけた見つけたッ!みぃつけたぁッ!!さあさッ!!私をっ!この堕ちた軍神を殺してみせよッ!!!ははははッ!!あーはははははッ!!!この世に魔神はいる!恐るべき魔神がいるぞッ!!】

 

完全に狂っている訳じゃないッ!?血涙を流し、身体を激しく痙攣させながら長尾景虎は声を張り上げる。

 

【私は人にしか殺せぬ!そのようにされている!さぁ殺せッ!私も殺す、お前達も殺すッ!!!抗え!さもなくば死すぞッ!!!】

 

たとえガープに狂わされていても英霊としての矜持は捨てていない。今も血反吐を吐きながら私達に戦えと叫んだ。

 

「やるわよ」

 

「はいッ!」

 

真っ向から英霊と戦うなんて冗談じゃないけど、この平安京で魔神がいると言うことが長尾景虎の口から告げられた。長尾景虎を退けたとしてもそのあと魔神と戦う事になるだろう。ならここで立ち止まることなど出来はしない。

 

【さぁ!さぁさぁさぁッ!!いざ尋常に勝負ッ!!この堕ちた軍神に勝てねば、魔神になど勝てはせぬぞ!抗えッ!】

 

歯が砕けんばかりに歯を噛み締め、血涙を流している長尾景虎の発破に答える様に私達は長尾景虎という誇り高き英霊と向かい合うのだった……。

 

 

 

~アスモデウス視点~

 

昨晩源頼光と横島の戦いは源頼光のカウンターとして坂田金時の召喚を誘発した。想定の範囲内の事なので問題は無いが、横島と抑止力に召喚された英霊の遭遇と言うのは正直想定していた段階よりもかなり早い。

 

(なるほど、これがガープの言っていた事か)

 

横島が世界に愛されていると言う意味を理解した。正直源頼光と横島の戦闘では横島が不利になるのは当然。しかし、源頼光の戦術を知る坂田金時が助っ人に入れば横島の勝利の目は生まれる。しかし戦闘開始すぐで召喚された英霊と合流するというのは余りにも出来すぎている。これが世界の助力と考えれば、なるほど確かに横島は世界に愛されているだろう。

 

「長尾景虎も中々にしつこい」

 

狂神石をあれだけ投与したのに、英霊としての最も大事な核だけは決して手放そうとしない。自分が信仰していた毘沙門天の事すら忘れているのに、英霊としての最低限の核はどうしても手放そうとしない。

 

「だが、それも時間の問題だな」

 

狂神石のガープの術による精神制御にいつまでも耐えれる訳が無い。血涙を流し、全身を激しく痙攣させながら殺すまいと手加減しながら戦い……いや、鍛えているがそれもいつまでも持ちはしないだろう。

 

「見世物としては面白いがな」

 

ここで美神達が死んでしまえば横島の精神性は一気に魔に傾くだろう。あくまで今回は実験だったが、そこに横島達が現れたのは実に幸運だ。

 

「アスモデウス、少し良いか?」

 

「アシュタロス?どうした」

 

魔法陣から顔を出したアシュタロスに視線を向ける。その顔は酷く申し分けなさそうだった。

 

「私の娘が離反した。恐らく、美神令子に加勢する」

 

「ほう、それは面白いな」

 

「……怒らないのか?」

 

我の言葉に驚いた表情をするアシュタロスだが、今のままでは長尾景虎が美神達を圧倒して終わると思っていたので、多少のてこ入れで丁度良いだろう。

 

「物事にはイレギュラーがあって当然だ。それで一々目くじらを立てはしない、だがアシュタロスよ。しっかりと後始末はつけて貰うぞ」

加勢する事を追及するつもりは無い。だが身内から裏切り者を出したとして自らでメフィストフェレスを始末するように言う。

 

「判っている」

 

「ならば良い、お前も見ていけ。ここから面白くなる」

 

横島に良く似た陰陽師と美神令子に似た魔族……メフィストフェレスが戦場に割り込んだのを見て、我は笑みを寄り深くした。アシュタロスの娘が応援に入った事を喜んだのではない、ガープから聞いていた話が真実味を帯びてきた事に笑ったのだ。

 

(やはり横島だけが特別か)

 

横島が戦い始めてすぐカウンターとして坂田金時が現れた。だが美神達が戦い始めて1時間近く経つが、英霊が召喚される気配は無い。

 

「世界に愛された男か」

 

「何か言ったか?」

 

アシュタロスには我の呟きが聞こえなかったのか、何か言ったか?と尋ねて来る旧友になんでもないと返事を返すのだった。

 

(楽しみだ)

 

直接まみえるその時が楽しみで仕方ない。今まで映像でしか見ていなかったが、ガープがあそこまで警戒する横島と言う男がどれほどの存在なのか……それを自分の目で確かめるその時が楽しみでしょうがないのだった……。

 

 

 

 

 

~蛍視点~

 

神速で振るわれる槍に薙刀。縦横無尽に切り替わる武器と間合いの変化はまさしく変幻自在としか言いようがなかった。だがそれは最初の内だけであり、耐久に持ち込めばその剣術には徐々に荒が見え始めていた。

 

(見える、見えてきてるわ)

 

妙神山での修行がここになって生きてきた。確かに完全に見切れているとはまでは言わない、それでも反応しきれずに切り捨てられるという最悪の事態は避けることが出来て来ている。だがそれは私達が動きに慣れてきていると言うこともあるが、何よりも長尾景虎がガープ達の呪に抗うのに全精力を向けているからか動きが少しずつ、少しずつ稚拙な物に変わり始めていたからだ。

 

【うっ、うあああああッ!!】

 

獲物を自在に切り替え振るうたびに飛んでくる霊破刃。それは触れればそこから両断される鋭い物だったが、現れた時の知性で振るわれていないというだけで何とか対応出来るようになっていた。勿論シズクの水や氷の防御があるからだが、それでも対応出来るようになったと言うのは非常に大きいと思う。

 

「……哀れ」

 

「ここで眠りなさいなッ!」

 

シズクと清姫の攻撃が命中する瞬間。空から飛来した蝙蝠が長尾景虎の首元に噛み付いた。

 

【あ、ああああああああああーーーーーッ!!】

 

魂までが凍りつくような苦悶の悲鳴に思わず私も美神さんも足を止めた。

 

「……止まるなッ!あれは!」

 

シズクに最後まで言われるまでもなかった。あの蝙蝠は血を吸っているのではない、長尾景虎に狂神石を与えているのだと気付き、打ち落とそうとしたが、それは余りにも遅かった。背後から引き寄せられた瞬間、目の前に深い傷跡が出来ていた。

 

「す、すみません」

 

「良いのよ。でも……状況は最悪すぎるわね」

 

今までの苦悶の表情が嘘のように安らかになっているが、その目は赤黒く染まり、白い僧衣も漆黒に染まっていた。

 

【ああ。とても、とても良い気分ですね】

 

白い肌を浸食するように赤いラインが浮かび上がる、それは血管の中に注入された狂神石が肌の下から浮かび上がった姿だった。

 

【そう、貴女達を殺せば、もっと気持ちいいですよね?】

 

手にしていた刀にまで赤黒いラインが浮かびあがった。その姿は長尾景虎のままだが、もう『長尾景虎』では無いのだと一目で判った。

 

「オルタナティブ……」

 

中世でのジャンヌオルタ。それと同じく存在が歪み変質した姿……。先ほどの比ではない殺気が叩きつけられ、私は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。それでも私達は負けるわけには行かないのだ、気持ちで負けないように神通棍を握り締めた。

 

「え?」

 

視界に影が落ちた。顔を上げるとにんまりと笑う長尾景虎と目があった。だがその顔は微笑みとは程遠く、残酷な獣のような笑みだった。

 

【死ね】

 

油断していた訳ではない、気を緩めたつもりも無い。自我を失った長尾景虎の踏み込みが余りにも早すぎた、今までの動きがどうしても脳裏に焼きついていた。だからその動きに反応出来なかった、美神さんの叫び声が聞こえるが体が動かない。何もかもゆっくりに見える中輪私の首に向かって伸びる日本刀に思わず死を覚悟したその時。

 

「しゃああッ!間に合ったぁッ!!」

 

「死ぬわぁぼけえッ!!!」

 

空中から飛来した電撃の槍が長尾景虎と私の間に突き刺さり、上空から高島の悲鳴が重なった。だけど、そのあとに美神さんの驚愕の声が響き渡った。

 

「……私ッ!?」

 

「え?私がいるッ!?」

 

美神さんの困惑した声とよく似た声が響き渡る。その声の主は美神さんと良く似た魔族の女性……。

 

(メフィストフェレスッ!)

 

私達姉妹の前のお父さんの娘。メフィストフェレスの姿がそこにはあった。何故ここにいるのか、何故助けてくれたのかと言う謎は残る。それでも今は少しでも戦力がいる状況だ。味方になってくれるなら、これ以上頼もしい味方はいないと思う。

 

【全く邪魔者ばかり沸いてきますね。なら全部切り捨ててあげますよッ!!】

 

「ッ!話は後!判るわよねッ!?」

 

「馬鹿にしないでよねッ!それくらいは判るわよッ!!」

 

額に青筋を浮かべた長尾景虎が刃を向けるのを見て、美神さんとメフィストが背中合わせに立つ。その姿にメフィストが味方だと判断し、私達はメフィスト、清姫、シズクの3人の神魔を軸に、長尾景虎との戦いに再び挑むのだった。

 

 

 

 

 

~美神視点~

 

高島と共に現れた女魔族……認めたくないけれど、あれは私の前世だと、見た瞬間に理解してしまった。でもそれで私は長い間感じていた1つの疑問が氷解したのを感じた。

 

(縁があったのね)

 

横島君を護ってあげないと、助けてあげないとって思ったのは……今、この時。これが理由なんだと判った。

 

「急急如律令ッ!雷精将来ッ!」

 

「ありがと!高島殿ッ!!そら行くよッ!」

 

雷の鎌を振るう私の前世は高島の支援を得て、水を得た魚のように縦横無尽に駆け回っている。

 

【くっ!厄介な】

 

「相性が良い見たいねッ!」

 

刀や薙刀を使う長尾景虎は雷の武具と打ち合うと感電するのか、打ち合いを避け避けに回っている。

 

「そこッ!」

 

「逃がさないわよッ!」

 

【ちいっ!!】

 

逃げに回っている所ならば私と蛍ちゃんで狙い打てる。足を徹底して狙い、その機動力を削げば雷の一撃と炎が長尾景虎に向かっていく。相性と言うのは非常に大きいと言う事は知っていたが、それを改めて思い知らされた気分だ。

 

【くっ、鬱陶しいですね!】

 

「そう言うのなら死んでおきなよッ!あ、もう死んでたっけ?」

 

【貴様ッ!】

 

戦いの中で軽口をたたけるだけの余裕があの魔族にはあった、それはあの魔族が上級なのもあるが、やはりそれ以上に長尾景虎との相性が物を言っていた。

 

「……気になることはあると思うが、今はそれを考えない事だ」

 

「そうですわね。魂は輪廻転生してますからね」

 

「……ありがと」

 

横島君の事ではないけど、私の事も少しは気にしてくれているのか考えすぎるなと言うシズクと清姫に感謝の言葉を告げる。自分の前世が魔族だった、そして高島と親交があった。

 

(それはそうなるわよね)

 

霊体ボウガンの矢を番えながら自分で考え、そして自分で納得した。普通のGSならばあれだけ妖怪と親交やつながりのある横島君を弟子として扱おうとは思わない、それでも私は仕方ないと思ってそれを受け入れていた。最初は蛍ちゃんだけを重要視していたが、いまは横島君を護ろうとして動いている。情が沸いたのもあると思うけれど何よりも縁が強かったのだろう、横島君と居て神魔への偏見は薄れてきたと思うけど、それでも自分の前世が魔族なんて思っても見なかったなあ。

 

「シッ!」

 

【くっ、急に狙いが正確にッ!】

 

そのやるせない気持ちを矢に込めているからか狙いが急に良くなったと自分で思っている。でも今私が考えるべきことはそこじゃないのよね。

 

「……」

 

支援はしてくれているし、私のフォローもしてくれている。でも違いますよね?美神さんは違いますよね?っと訴えかけている蛍ちゃんの目が死ぬほど恐ろしい。下手をすれば、長尾景虎よりもやばいのは蛍ちゃんかもしれないと思った。

 

【……月が、ちっ、ここまでのようです。次は殺しますからね】

 

地面を蹴り飛び上がった長尾景虎は屋根の上を走りどこかへと去っていった。月がどうとか言ってたけど……。

 

「……月の見える時間が関係している?」

 

「……その可能性はあるな」

 

月の満ち欠けか、それとも時間か……何らかの制約がある可能性は高い。確かに私の前世は長尾景虎にとって有利に立ち回れていたが決め手に欠いていた。

 

「それで貴方は何をしに来たのかしら?」

 

「何をって……あれ?何をしに……「助けに来たんだろ?」あ、うん、そうそう……で、私は誰を助けたかったの?」

 

高島に逆に尋ねる私の前世。その顔は本当に判らないと言う顔をしていた。

 

「とりあえず、1回俺の屋敷に戻ろう。あれだけ派手に立ち回ったんだ、陰陽寮の連中がくると面倒だぞ」

 

確かに遠くからこっちに向かってくる人間の気配が近づいている。見つかると今回の件の首謀者にされかねないわね……高島の言う通り私達は憲兵達に見つかる前にその場をあとにすることにした。

 

(問題はかなり増えたけどね)

 

横島君と合流する事の難しさに加えて、長尾景虎の狂化。そして私の前世……何が原因で私達が平安時代に来たかは判らないけれど、何かずっと前からこうなる事が決まっていたような気がする。

 

(まさか……ね)

 

一瞬脳裏を過ぎった考えを馬鹿馬鹿しいと首を左右に振り、私達は高島の屋敷に向かって走り出すのだった……。

 

「運命は廻る。1つ目の鍵はもうすぐ傍に来ている。お前達はそれに気付けるか?」

 

走り去る美神達を見つめるローブ姿の男はその手に巨大な眼魂を持ち、楽しそうに笑うと風の中に溶けるように消えていくのだった……。

 

 

 

平安大魔境 その8へ続く

 

 

 




次回は美神と横島の2つの視点で状況整理などを書いて行こうと思います。今の所は話があんまり動いていませんが、そろそろ大きく話を転がして行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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