GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! 平安大魔境   作:混沌の魔法使い

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その8

平安大魔境 その8

 

 

~美神視点~

 

長尾景虎との戦いに乱入してきた魔族……私と瓜二つの容姿の女魔族と共に高島の屋敷に戻り、そこで念の為にヒャクメに私と魔族……メフィスト・フェレスの魂の波長を調べて貰っていた。

 

「……美神さんとメフィストさんの魂の波長は87.8%合致してるのね~」

 

87.8%……50%くらいなら他人の空似で行けたかもしれないけど、80%を越えているとなるとやはり私とメフィストは前世と現世と言うのは間違いないようだ。

 

「私が生まれ変わると人間になるんだ。ふーん」

 

「……なにかしら?」

 

「いやあ、私が人間に生まれ変われるなんて……ね、思っても見なかっただけよ」

 

それを言うと私も前世が魔族なんて想像もしていなかったんだけど……ね。

 

「……納得は出来たな。美神は人間にしては霊力が強いしな」

 

「あと質もですわね、かなり上等ですし、普通の人間ではないと思ってましたしね」

 

……神魔からすれば凄く納得出来るらしいけど、人間からすれば驚愕の真実と言う奴だと思うんだけどね。

 

「美神とメフィストが前世同士と言うのはとりあえずおいておいて良いだろう。メフィスト、お前ちゃんと覚えてるか?」

 

「……ごめん。全然まったくこれっぽっちも覚えてないのよ。凄く焦っていたっていうのは覚えているんだけどね」

 

メフィストが何を焦っていたのか、そしてどうして助けに来たのかを覚えていなかった。

 

「1回落ち着いて考え直してみたらどうですか?」

 

「……うーん」

 

蛍ちゃんに言われて腕を組んで考える素振りを見せるメフィスト。うんうん唸っていたけど、メフィストは万歳した。

 

「駄目だわ。全然思い出せない……」

 

深く肩を落とすメフィストの姿はとても芝居のようには見えない。本当になんで助けに来たのか、どうしてあんなにも焦っていたのかを完全に忘れていた。

 

「……考えられるのは契約か」

 

「親を裏切ったと言う事で、記憶を抹消されたという事か……」

 

メフィストが自身の親を裏切って助けに向かった事で魂に刻まれた契約が発動して、その記憶を消去されてしまった……か。

 

「ヒャクメ、もしかして何とかなる?」

 

「……止めといた方が良いのね~出来ない事は無いけど……今ここで戦力を失うのは辛いと思うのね~」

 

長尾景虎と戦うのに電撃を扱えるメフィストの存在は非常に大きい。無理に記憶を思い出させて離反されるくらいなら、思い出せないまま協力して貰った方が好都合だ。

 

「あ、でも助けに来た理由とかは全然覚えてないけど……平安京に居るもう1人の魔族の名前と英霊の名前は覚えてるわよ?」

 

「「「え?」」」

 

なんで自分の目的を覚えてないのにそっちを覚えているのッ!?って思いはしたけど、もう1人の魔族が何者かと尋ねるとメフィストは険しい顔をしたまま、もう1人の魔族の名前を教えてくれた。

 

「アスモデウスと源頼光よ」

 

「アスモデウスッ!?」

 

「源頼光ッ!?」

 

ソロモン72柱のアスモデウス……ガープ達の陣営の最高権力者。今まで名前だけだったけど、まさか最高責任者が自ら乗り出してきているなんて思っても見なかった。

 

「源氏……?それって貴族の源氏と関係があるのか?」

 

「……だが、頼光なんて奴はいなかったが……」

 

源氏と関係があるのかと高島とこの時代のシズクが尋ねて来る。そうか、そうよね。平安時代に源氏と平家は既に存在している、源って名前を聞けば、源氏と関係あるのかと尋ねてくるのは当然よね。

 

「今からもう少し未来の源氏の武将よ、怪異殺しって呼ばれるほど高名な相手よ」

 

「……なるほどな、確かにそいつは不味いな……殺されているのは術師ばっかりだしな」

 

高島から話を聞いていたが、異能殺しによって殺されているのは陰陽師ばかりらしい。確かに陰陽師では、怪異殺しと恐れられた源頼光と戦うのは不可能だ。ある程度は戦えても殺されてしまうのは仕方ない事だが、横島君が戦っている相手も長尾景虎以上に厄介な相手だ。

 

「でもなんか英霊がもう1人横島に協力してるらしいわよ。えっーっと……金……金……金時だったかな?」

 

「坂田金時ねッ!良かった、それなら少しは安心出来ますね」

 

「多分抑止力として召喚されたのね、でも今は本当に助かるわ」

 

源頼光の四天王の1人が横島君に協力してくれているのならば、私達よりも横島君の方が安全だと思うわ。それに坂田金時自身も知名度が極めて高い英霊だ、日本と言う土地に召喚されたのならば非常に強力な存在と言える。そう考えれば当面合流出来ないとしても横島君自身はある程度安全だ。問題があるとすれば私達の方だろう……メフィストが仲間に加わったとしても狂神石に飲み込まれた長尾景虎と戦うには戦力が余りにも足りない。

 

「……うし、1回出掛けよう」

 

話を聞いていた高島が出掛けようと私達に提案してくる。

 

「出掛けるって戦力の充てが?」

 

「あるっちゃあるが、あいつもそう簡単には動けないからな。道具や情報収集に頼もしい味方が居るんだよ」

 

突発的な遭遇戦になったら戦力の差で負ける。倒しきるとまでは言わなくても、互角に戦うにはそれ相応の準備を整える必要があると笑った高島に何処へ行くのか?と尋ねる。すると高島は横島君を彷彿とさせる笑みを浮かべて自信満々と言う表情で告げた。

 

「六道家だ……どうした?」

 

六道家と聞いた瞬間になんとかなるかもしれないっていう気持ちが何もかも萎えた。だって初代様でしょ?六道の試練の洞窟に居る……

 

(((駄目かもしれない)))

 

あのぽわぽわさんが頼もしい味方とは到底思えず、私達は駄目かもしれないと思ったのだが……それは実際に会った時、良い意味で裏切られる事になるのだった……。

 

 

 

 

 

~横島視点~

 

昨晩の霊力の高まりで美神さん達も戦っている事が俺には判っていた。応援に行こうと思いはしたが……だけど、俺は屋敷を出ることが出来なかった。

 

『横島。どこへ行くのかしら?』

 

闇の中で俺を呼び止める輝夜ちゃん。その姿は幼い少女なのに有無を言わさない凄みが合った。その目に見つめられては外に出るとは言い出せず、輝夜ちゃんに手を差し伸べられた事でその手を握り、美神さん達に申し訳無いと思っていてもあの時の目を思い出して、俺は外に出ることが出来ないでいた。

 

【昨日の霊力は大将じゃねえ、俺ッチが断言する】

 

「やっぱりか……」

 

俺は昨日の事がどうしても気になり、眼魂の中で休んでいる金時に尋ねてみたのだ。昨日の戦闘……恐らく英霊は源頼光ではない、帝さんから聞いた人間を殺して回っている英霊である可能性が高い筈だ。

 

「ちなみそれ知り合い?」

 

【いや、俺ッチの知り合いじゃねえ。そもそも俺は大将を止める為に召喚されただけだからな、知り合いなら判るけどそれらしい気配は感じねえよ】

 

【そうか……では四天王ではないと?】

 

【そいつは間違いねえ。他に四天王が居れば皆大将を止める為に動いてる】

 

「そっか、居てくれれば良かったんだけどな……」

 

正直あの狂気的な顔を思い出すだけで怖い。味方が少しでも多ければ安心できるんだけどなあ……

 

「そう言えば頼光さんっておかしくなっててあれなんだよな?」

 

【……いや、子供とかいうのは昔からだ】

 

「……うえ?」

 

俺はてっきり狂神石で発狂しているからだと思っていたのに……あれが素って言うのは幾らなんでも怖すぎる。

 

「手足もぐとか言うのは?」

 

【そっちは多分狂ってるからだと思う】

 

【多分がつくんだな……】

 

心眼の若干呆れた様子の声に俺も溜め息を吐いた。蕩ける様な顔をしていたけど、あの目に宿っている狂気的な光は思い出しても恐ろしい……。

 

【とりあえず霊力が回復すれば俺ッチももう少し力になれると思うぜ】

 

「良いよ、良いよ。焦らないでゆっくり身体を休めてくれれば」

 

霊力の枯渇間際から回復するのは英霊でも難しいとノッブちゃん達も言っていた。だから無理をしないで身体を休めるようにと言う、英霊と戦う事になるのだ。同じ英霊である金時の体調が俺達の勝機を大きく左右する筈だ。

 

【昨日の今日で動き回るとは思えない、少なくとも数日は余裕がある筈だ。無理をせず霊力を回復させるんだな】

 

【……すまねえ、言葉に甘えさせて貰うぜ】

 

その言葉を最後に金時の気配が遠ざかる、完全に意識を断った所を見ると深い眠りに落ちたようだ。それを確認してから立ち上がり部屋の扉を開ける。

 

「あれ、もこちゃん。どうかした?」

 

「……う、ううん。な、なんでもないよ?」

 

部屋の外で座り込んで待っていたもこちゃんに何かあった?と尋ねると慌てた様子でなんでもないよと両手を振る。

 

「はい、立てる?」

 

「……ありがとう」

 

着物姿で座り込んでいたので簡単には立てないと思い、手を貸してもこちゃんを立ち上がらせる。

 

「うりぼー達と遊んでて良かったのに」

 

「……横島様がどうなるのかなって」

 

……この様付けって慣れないよなあ。俺はそんなに偉い人間じゃないのにと思いながらどうなるのかな?と尋ねてくるもこちゃんにどういう意味?と尋ね返す。

 

「……輝夜のお婿さんになるの?」

 

「なんで?」

 

まさかの言葉に逆になんで?と尋ね返す。輝夜ちゃんってお姫様だ、そんな天上人と俺みたいな一般人が結婚するとかありえない。

 

「……そっか、それなら良いよ。安心した」

 

「何が?」

 

勝手に納得してくれた様子だけど、一体何を聞きたかったんだろうか……俺が首を傾げているともこちゃんは俺の手を引いて歩き出した。

 

「あ、お話終わった?後でお客さんが来るから横島も準備しておいてね」

 

「俺も?輝夜ちゃんともこちゃんのお客さんじゃなくて?」

 

俺居候だし、そもそもこの時代の人間じゃないから知り合いなんて居ないし、何かの間違いじゃない?と言うと輝夜ちゃんはにっと笑った。

 

「陰陽寮の西郷さんがお会いしたいって文をね。ほら、あの時の英霊の事とかあるでしょ?」

 

どうしようめっちゃ嫌な予感がする……蛍とか美神さんとかがいない時に偉い人と話をするのは嫌だなあと思いはしたものの、断れる雰囲気ではなく、俺は判ったよと返事を返すのがやっとなのだった……。

 

 

 

 

~蛍視点~

 

高島と一緒に六道の屋敷に来た。高島も居る事もありすぐに当主の元へ案内されたけど、そこは部屋の中ではなく裏庭とでも言うべき場所だった。

 

「そー……」

 

【うーッ!】

 

ショウトラとそれを撫でようとする生前の初代様。だけど唸られてびくっと身体を竦めて半泣きになっている。

 

「ショウトラ!」

 

【わんッ!はっはっはッ!!】

 

高島が呼ぶと尻尾を振って初代様を無視して高島に駆け寄るショウトラ。

 

「うー、高島さまぁ!この子達全然私に懐いてくれない!」

 

「言っただろう?幸華(さちか)。この子達は特別な式神だと、俺が君の為だけに作った式神だ。だから普通の式神と思わないほうがいい」

 

頭をなでられわふんっと鳴いているショウトラは幸華さんに目もくれず、高島の足元にじゃれ付いている。

 

「頑張る」

 

「そうしな、大丈夫だよ。この子達はまだ警戒しているだけだ。ちゃんと君を守ってくれる」

 

「……うん」

 

高島が幸華さんの頭を撫でながら言うと、幸華さんは少しだけ頬を赤く染めて高島を見つめている。

 

(……横島君の個性って昔からなのね)

 

(……みたいですね)

 

年下と人外に好かれる性質は高島も持っていたようだ。いや、むしろ横島の物よりも強力かもしれないと思うレベルだ。

 

「あら、シズクと清姫……遊びに……?貴方達本当に清姫とシズク?」

 

清姫達を見て笑みを浮かべた幸華さんだが、すぐに怪訝そうな顔をする。

 

「……ここより先の時から来た」

 

「お元気そうで何よりですわね」

 

「……そうなのね!いらっしゃい」

 

にぱーっと笑う幸華さんは冥子さんよりも更に幼いこともあり、本当に幼女と言う感じだった。

 

「ちょっと手伝って欲しい事があるんだけど大丈夫か?」

 

「うん大丈夫よ~高島様のお手伝いならいつでもするわ~」

 

にこにこと笑い屋敷の中へどうぞーと言って歩き出す幸華さんの後を追って屋敷の中に足を踏み入れる。

 

「それで~何をお手伝いすればいいの~」

 

「英霊が居るんだが、真っ向に戦うと勝てない。今京で一番霊力が高まっている場所と減っている場所を知りたい」

 

了解~と笑い棒を振る幸華さん。12神将が手に入る前の六道家は今とは違う霊力の形態だったのかしら……。

 

(ギリギリって所ね)

 

(そうですよね)

 

見た目は綺麗だったが、中はボロ屋敷だった。それにお手伝いらしい姿も無く、数人がほそぼそと働いていると言う感じだ。未来の事を知るからこそ、あの六道家にこんな時代があったのかと驚いた。

 

「ここと~ここね~、後ここだけど……ここは近づかない方がいいわね~」

 

「理由は?」

 

「霊力が暗く、重く澱んでいるわ~英霊の拠点かもしれないし、もしかすると地獄の入り口かもしれないわ~」

 

「なるほど、判ったよ。ありがとう」

 

地獄の入り口……アスモデウスが私達の時代から来ているならそこが未来に帰る場所かもしれない。だけど、それは敵の本拠地となっているのならば今の戦力で突入する事は難しい、出来れば、ううん、出来て欲しくないんだけど自然発生の地獄の入り口だと思いたい。

 

(平安時代は魔窟だったらしいし……)

 

鬼や悪魔が闊歩する時代、あちこちで神隠しの伝承があるのは地獄の入り口に飲まれた人間が数多く居るからだ。暗く澱んだ霊力と言うのが、アスモデウス達の拠点でないことを心から祈る。

 

「それで~お弟子さんかしら?」

 

「1人じゃ勝てないから助っ人だ。あんまり屋敷の外に出るなよ、今は危ないからな」

 

「うん~それは判ってるわ~みんな助けてくれるのよ~懐いてはくれないけど」

 

どうも今の12神将は高島から譲渡されたばかりで懐いてはいないようだ。だけど主としては認めて護ってくれていると言うのならば六道の屋敷は安全な拠点の1つと言えるだろう。

 

「それなら少し庭を貸して貰ってもいいか?」

 

「いいわよ~高島さまなら何時でも訪ねてきてくれていいんだから~」

 

「ありがとう、迷惑を掛けるけど迷惑ついでにお願いしても良いか?」

 

「なーに?」

 

「武器が欲しい、いくつか手配できるだろうか?」

 

「全然大丈夫よ~没落寸前だけど、まだまだ名家だからね~」

 

今の私達に足りない戦力と装備、平安時代の強力な霊具ならば武器としては申し分ないだろう。

 

「いいわよ~準備してあげる~」

 

「ありがとう、本当に助かるよ」

 

「ううん~良いの良いの~高島様の為だもの~」

 

凄く嬉しそうな顔をしているけど、幸華さんがホストか何かに貢いでいるようにしか見えず大丈夫かなあっと思わず心配になってしまった。

 

「さてと、じゃ、シズクと清姫にメフィスト、それと令子と蛍はここに立ってくれ」

 

地面に印を書いた高島にそう言われるが、いきなり印の上に立てと言われてもはいそうですかとは言えない。

 

「警戒するのは無理はないが、霊力を上手く取り込めれてないだろ?ここは上質な霊脈だ。ここの霊力に入れ替えておくべきだと思うぞ?」

 

「……そうね、お願いするわ」

 

「何戦力向上だ。後は簡単な陰陽術も伝授する。昨日の今日だから襲ってこないとは思うが、楽観視も出来ないしな」

 

英霊長尾景虎との戦いに備え、私達は六道の屋敷で準備と装備を整え始めるのだった……

 

 

 

~西郷視点~

 

帝の護衛の陰陽師が殺された。それは悲しいことだし、殺した相手にも殺意を覚えた。だが帝の話を聞けば、行くべきではないと止められたのに占いで大丈夫だと言って無理に向かい、そして逃げようとした所を殺されたと聞いては私としても複雑な気持ちになる。

 

「えっと、横島です。よろしくお願いします」

 

「……あ、ああ。よろしく、西郷だ」

 

帝から命の恩人である少年が輝夜様の屋敷に居る。話をしてくるようにと命じられたが……こうして間近で見ると本当に高島に良く似ている。

 

「横島ー、頑張れ」

 

「ぷぎー♪」

 

「が、頑張れ」

 

【ノーブー♪】

 

「みみーむ♪」

 

……こいつ高島以上か?あの気難しい輝夜様が猪を抱きかかえて笑い、鬼子といわれていた藤原の姫も笑っている。こんな事は高島でも出来ないぞ……。

 

(顔が似ているだけではないのか)

 

高島から偏見ととっつきづらさを取り除いて、素直さが加わった少年……横島に少しばかり驚いた。

 

「さてと帝からのお言葉だが、お前の師匠達だが、高島と行動を共にしているようだ。顔見せは許可できないが、とりあえずは安全だと言っておこう」

 

「……そう……ですか、良かった」

 

高島と行動している巫覡達。これが横島が探している相手と言うことは帝も判っているが、高島にも私にも釘を刺した。

 

『横島と居ると藤原の姫も輝夜も機嫌が良い。横島の気持ちも判るが、京に骨を埋めて貰うとしよう』

 

酷な事を言いなされる。だがそれだけ帝も横島の能力を評価していると言うことだと思えば、帝の意見を私が曲げる事は出来ない。五貴族よりも横島に輝夜様が好意を持っているのは明らかだ、帝もそれを見抜いているからこそその決断をしたのだろう。

 

「陰陽術を正式に学んだ事がないそうだね?」

 

「はい、殆ど独学で」

 

独学……か、私はまだ彼の陰陽術を直接見たことが無いが、帝が言うのだ。類稀なる術者なのは間違いないだろう。

 

「では得意な物でいい、1つ見せてくれないか?」

 

「あ、はい。判りました」

 

横島が了承したので札を筆を渡そうとすると横島は親指を噛み切り、空中に文字を刻んだ。

 

「は?」

 

「こんな感じですかね」

 

……札も無しで術を発動させるだと、どうなっている。今までの陰陽術の常識を全て覆している。

 

(なるほど、納得だ)

 

これほどの才をむざむざ手放す事は誰だってしない、今代の陰陽寮が腐敗しきっていてそれの再構築を考えておられる帝だ。藤原の姫、輝夜様を楔にしても残そうとするのは横島を頭目に据えるつもりなのだろう。

 

「それは余りにも一般的ではないね、剣指と足の動きは知ってるかね?」

 

「……剣指は判りますけど、足の動きも関係あるんですか?」

 

「良いだろう、それも含めて指導しよう」

 

恐らく彼は基本的な技術を何も納めていない。空中に文字を刻んだのは霊力操作に長け、血文字は血自身に陰陽術に関する情報があると言うことだろう。

 

(間違いなく、彼もまた鬼子)

 

旅をしていると聞いていたが、恐らく前住んでいた場所から追放されたのだろう。だがその決断をした者に感謝する、これだけの才を持つものはそうはいない。それを自ら手放した愚か者を脳裏で嘲笑い、私は横島に陰陽術の指導を始めるのだった。

 

(良かったのか?)

 

(ああ、これでいい。目の色が変わっただろう?学べるだけ学んでおけ、これは滅多にないチャンスだ)

 

西郷に札を使わないで発動させれる陰陽術を見せたのは心眼の指示であり、横島に足りない知識と術を指導させる為の行動だった。

 

(ちょっと気が引ける)

 

(どうせこの時代からはいずれ去る。割り切るんだな)

 

何もかも利用しろと言う心眼に対して横島は世話になっている人間や、親身に相談に乗ってくれる西郷を利用する事に抵抗があった。しかし心眼が居なければ横島は簡単に情に囚われ、どっちつかずになってしまっていた。冷酷とも取れる心眼の判断が、横島を救っていることに横島は気づく事は無く……。

 

「そう、その感じだ。印を結ぶときは手早く正確にだ」

 

「は、はい!」

 

申し訳ないと思いながらも横島は西郷から陰陽術の手ほどきを受けて、確実に陰陽術に対する理解を深めているのだった……。

しかし横島達が戦いに備えているのと同じく、アスモデウス達もまた動き始めていた。

 

「憎かろう?悔しかろう?我がお前に戦える力をやろう。さぁ、再び立ち上がれ」

 

【あ、アアアアアアーーーッ!?】

 

黒い雷電を纏いながら1人の亡霊が蘇る。禍々しい黒い光に照らされながらアスモデウスは笑みを深めていた。平安時代での1つ目の大きな戦いはすぐ傍にまで迫っているのだった……。

 

 

 

GS芦蛍外伝平安大魔境 その9へ続く

 

 




次回は現代の視点を入れてから横島&ゴールデンとライトニングママ戦を書いて行こうと思います。視点は横島、ゴールデン、ライトニングママの視点だけになりますが、同時刻で美神達も戦い始めていると言う感じで書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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