我妻物語   作:スピリタス3世

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第十三話 劣等生

  side 萌

 

 私にもついに痣が発現した!だからここで私はこの化け物を倒す!

 

「月の呼吸 壱の型 闇月・宵の宮」

「なっ、速っ⁉︎」

 

 いつも使っている壱の型の速度が上がり、更に強力な技になる‼︎

 

「炎の………」

「月の呼吸 参の型 厭忌月・銷り」

「くそ………っ‼︎風の………」

「月の呼吸 陸の型 常世孤月・無間」

「ぐわ……っ‼︎」

 

 さっきまで互角だった相手が格下に感じる‼︎奴は私の上がった速度についていけてない‼︎これが痣の力か‼︎

 

「雷の………」

「月の呼吸 肆の型 年災月殃」

「ぐっ…………水………」

「月の呼吸 弐の型 珠華ノ弄月」

「くっ!」

 

 このまま叩き込む‼︎そしてコイツをここで絶対に倒すんだ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ってなんだ⁉︎何が起きた⁉︎灰色の煙で周りが見えない⁉︎とりあえずは自分の頸を守らないと‼︎

 

「月の呼吸 拾参の型 闇夜ノ円舞・月輪」

 

 自分の周りを一回転して刃を振るう。視界が閉ざされた今、不意打ちを防ぐにはこれしかない。とにかくこれで耐えつつ、何が起きたかを考えろ‼︎

 

 

 

 

 数分後、辺りは晴れてきて視界が戻って来た。どうやら八咫河は忍者が使うような煙玉を使ったみたいで、私が混乱している隙に逃げやがった。奴め、どこに行きやがった⁉︎とにかく急いで探さないと‼︎まずはこの辺から‼︎

 

 

 

 

 

  side 八咫河

 

 なんとか煙玉を使って逃げられたが…………くそっ、なんなんだよ、あの女は⁉︎頬の月模様が出た途端急に強くなりやがって‼︎速さだけじゃない‼︎力までもが強くなってる‼︎あんな覚醒を残してたなんて………なんて卑怯な鬼なんだ‼︎卑怯な手段を使って俺より強くなりやがって‼︎クソが‼︎俺は強いのに‼︎強いのに‼︎

 

 

 

 俺は帝国大学を卒業した両親の元に生まれた。両親はいつも口酸っぱく、

 

「八咫河家に生まれたのならば、学問を極めろ‼︎勉学のできない人間は、八咫河家の子供ではない‼︎」

 

 勉強しろと俺と2つ上の兄、清親(きよちか)にずっと言ってきた。俺はもちろんそれに従って勉強をしてきたが、いかんせん兄が優秀すぎた。寺子屋での成績は常に首席。旧制高校*1にも飛び級で合格してきた。それに比べて俺は勉学の才が無かった。

 

「清親は相変わらず凄いねぇ。母さん嬉しくなっちゃうよ!」

「ありがとうございます‼︎」

「それに比べて元親、お前は何故そんなに勉強が出来ないんだい⁉︎」

「すいません………」

「多分医者が子供を取り違えたんだろ。そうに決まってる。」

「あなたの言う通りね!」

 

 だから俺はいつも両親から見下されながら生きてきた。いくら努力しても結果が伴わなければ全て無駄。優秀な兄と比べられ、叱責をされ続ける。そんな両親がとても恐ろしく、怒られないために勉強を頑張るという日々が続いていた。ただその努力もずっと徒労のまま終わっていた。

 

 

 

 そしてそんな日々が続いたある日、兄が突然失踪した。俺が17歳の時だった。

 

「清親はどこに行っちゃったのかしら………」

「あんなに八咫河家に相応しい人間だったのに………」

 

 両親は最初、兄の失踪を悲しんだ。それはそうだ。自分の息子が居なくなったのだから。

 

 だが次の瞬間、奴らは信じられない言葉を発した。

 

「元親みたいな出来損ないだけを養うなんて、出来ないわ………」

「居なくなったのが元親だったら良かったのになぁ………」

 

 流石にこれには俺は耐えられなかった。多少予想していたとはいえ、ここまではっきりと面と向かって不要宣言を出された暁には、たまったもんじゃない‼︎俺は一応、お前らの息子だぞ‼︎家族だぞ‼︎

 

「ふざけるな、テメェら‼︎」

「なんだい元親、アタシらに逆らおうってのかい⁉︎」

「学もないのに調子に乗るな‼︎」

 

 そして俺は両親に殴りかかった。するとどうだろうか?

 

「「くっ…………」」

 

 今まで俺が散々恐れていた両親は、恐ろしいほどに弱かった。俺1人相手に全く歯が立たず、すぐに2人ともくたばってしまった。何故俺はこんな奴らを恐れていたのか…………。自分が心底バカらしく感じたのと同時に、今までに味わったことのない優越感を感じた。俺はコイツらより強い‼︎俺は勉学面においては才が無かったが、武力面ではあったのだ‼︎

 

 

 

 その後は人や他の生き物を殺すのが快感になっていた。殺す度に殺した相手よりも自分は優秀で強い。それを実感できるのが堪らなかった。ただし警察が目を光らせていたので、中々思うようには活動できなかった。一応人殺しは悪なわけだしな。

 

 

 

 そうしてひっそりと人を殺し続けていたある日、

 

「可愛い子はいねえかぁ⁉︎」

 

 なまはげ風の鬼がやってきた。もちろん俺は殺そうと画策したが、いくら斬っても斬っても鬼は死ななかった。ああ………またこうして劣等感を味わってしまうのか………

 

 そう思った矢先、

 

「水の呼吸 壱の型 水面斬り」

「ぐわっ⁉︎」

 

 艶々の髪をした学生服のようなものを着た人が現れ、一太刀で鬼を倒していった。自分がいくら苦労しても倒せなかった相手を難なく倒せたこの男に、俺はまたしても劣等感を感じてしまった。だから、

 

「大丈夫か、お前⁉︎怪我はないか⁉︎」

「なぁ、あんたらみたいに強くなるにはどうしたらいい?」

 

 俺は相手の問いかけを無視し、すぐにこう聞いた。

 

「えっ⁉︎えっとそれは………俺たちと同じ、鬼殺隊に入ってみるとか?」

 

 そしてその男からこう言われたとき、俺のやるべきことが決まった。

 

「それだ‼︎俺をそれにしてくれ‼︎」

「えっ⁉︎あっ、うん、分かった!とりあえず俺の育手………師匠に話をつけてみるね!」

「ありがとう‼︎」

「俺は村田!これからよろしくね!」

「俺は八咫河‼︎これからよろしくな‼︎」

 

 こうして俺は村田によって、鬼殺隊に入った。

 

 

 

 鬼殺隊は俺にとって、とても快適な居場所だった。鬼という生き物を殺すことにより、多額の金と大量の快感を得られ、人々から賞賛される。仲間や一般人が逆らおうが、鬼になってるから人を喰う前に斬らねば、という理由で殺せる。連絡手段も鴉のみという脆弱さ。本当に鬼殺隊は俺にとっての天職だった。最初に強いと感じた村田を殺した時も、自分の強さを感じられて更に気持ち良くなれた。

 

 

 

 

 そんな俺の快適な生活を、今再び1人の女が壊そうとしている。俺はもう劣等感は味わいたくない‼︎だからとにかく今は鴉に連絡させて援軍を呼ばないと‼︎

 

「横浜の近くにいる、階級が最低丙以上、出来れば甲か乙の隊士を呼んでこい。ただし柱は呼ぶな。」

「承知しました。」

 

 あのクソ女よ、今に見てろ‼︎必ずお前をぶっ殺してやるからな‼︎

 

「「Hey, guys!」」*2

 

 ってなんだコイツらは⁉︎人外の言葉を話すだと⁉︎まさかあの女、援軍を呼びやがったな*3⁉︎しかも2人も‼︎

 

「雷の呼吸 陸の型 電轟雷轟」

「「Ha⁉︎…………」」*4

 

 幸い奴の援軍は一太刀浴びせたら死んだから良かったものの………まだまだいるかもしれない。だから気を抜くな‼︎

 

 

 

 

 

  side 萌

 

 市街地をくまなく捜索したが、八咫河は見当たらなかった。また街の人の話を聞く限り、どうやら他に犠牲者は出てないことが分かった。恐らく奴は人通りが少ないところにいるだろう。

 

 そう思って街のはずれを探していると、八咫河に殺された村田という男の死体があった。自慢であろう艶々の髪は、むごたらしくぐちゃぐちゃにされていた。味方に殺されたのは非常に可哀想だが、奴も所詮は鬼狩り。無惨様にとって邪魔となる存在だ。さて、この死体を放置してもいいのだが…………今食べて更に強くなっておいた方がいいだろう。それに、早食いをすれば問題ないはずだ‼︎

 

 

 

 

 私は村田という男を早食いした後、

 

「血鬼術 人間擬態・擬態変化」

 

 自身の姿を黒髪から桃髪に変化させ、更に背丈を頭ひとつ分小さくした。これにより、奴の隙を突くことにした。さて、八咫河の捜索を再開しなければ‼︎

 

 

 

 

 しばらく横浜の街外れを捜索していると、私は八咫河を見つけた。よしっ、隙を見て殺さねば‼︎

 

 

 

 そう思ったのだが、

 

「よう、お前が俺の援軍か。」

 

 まさかの敵増援が到着してしまった。あの野郎、自分だけじゃ私を倒せないから、味方を呼びやがったな‼︎さて、援軍で来た子は……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私と同い年くらいの女の子で、髪を一つに縛っており、蝶の髪留めをしていた。そしてその子は天高く何か*5を投げた。そしてそれが再び彼女の手元に収まった時、

 

「階級乙。蟲柱の継子。栗花落カナヲ。」

 

 その女は口を開いた。

*1
現東大や京大などの成績優秀な大学群を示す旧帝大

*2
やあ、坊や!

*3
違います。ただ外人2人は萌の行方を八田河に聞こうとしただけです。目的はナンパですが………

*4
えっ⁉︎

*5
萌の場所からはよく見えないが、硬貨を投げた。




 ということで、八咫河の過去が明かされました。子が子なら親も親でしたね。グレた原因こそ仕方ないけれど、その後やったことはしょうもないという、鳴女タイプの過去でした。あと書いてる本人が言うのもなんですが、村田さんが可哀想………

 そして、まさかのカナヲも登場です‼︎果たして一体どうなってしまうのか、それは次回のお楽しみに!

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