我妻物語   作:スピリタス3世

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第十四話 己の意思

  side 萌

 

 八咫河は援軍を呼んだ。そして呼ばれた沿岸の女は何かを投げて*1回収した後、口を開いた。

 

「階級乙。蟲柱の継子。栗花落カナヲ。」

 

 確か柱を除くと2番目に上の階級だっけか………。ただし柱の継子。ということは柱が現役中に直で教える弟子。いくら私の同い年くらいとはいえ、かなり警戒しないとな。

 

 

 

 さてと、まずはあの2人が二手に分かれるまで待つか………

 

「そうか。俺は階級次期柱候補筆頭の八咫河元親だ。お前より階級が上なのだから、お前は俺の言うことに全て従え!」

 

 相変わらず八咫河は横暴な男だ。このようなことを笑顔で言いやがる。さて…………ってまたあの女が何かを天高く投げたぞ?

 

 そして栗花落はそれを回収した後、

 

「はい、分かりました。」

 

 口を開いた。コイツは何かを投げないと喋れない病気にでもかかっているのか?

 

 続けて八咫河が言葉を返す。

 

「いちいち硬貨を投げないと喋れないのは何故なんだ?」

 

 なるほと、硬貨を投げてたのか。もしや裏表で色々と決めてたのかな?あの女は博打でもやってるのか?まるで賽子男みたいだ。

 

 そしてまたもやあの女は硬貨を投げて回収し、

 

「硬貨を使わないと何事も決められないんです。」

 

 喋った。なんだそれ。賽子男よりよっぽど博打的な生き方じゃないか。それとも自分の意思が無い類の人間なのか?それとも幼少期に虐待されてたとかで、自分の意思を出せない類の人間だったりするのか?

 

「そうか。ならお前が鬼殺隊を始めた理由を教えてくれ。」

 

 確かに、それは少し気になるかも。意思のない人間がどうやってこんな命がけの戦いに身を投じるのか。柱の弟子になってる理由も合わせて是非とも知りたいところだ。

 

 そして女は硬貨を投げた。そして宙に放たれた硬貨はしばらく滞空した後、地面へと向かって落ちた。そしてそれを手で捕まえ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

た。八咫河が。なんで?

 

「えっ………⁉︎」

 

 栗花落は驚いたような声を上げた。それはそうだろう。だって自分が捕まえようと思ってた硬貨を、目の前の初対面の男に捕まえられたのだから。

 

 そして八咫河はこう言った。

 

「今日から俺が硬貨の代わりだ。これからは全て俺の言うことに従え。俺の意のままに動け!いいか、分かったな⁉︎」

 

 なんだよそれ⁉︎事実上の奴隷宣言じゃないか⁉︎人の意思がない、あるいは弱いのをいいことに、自分にとっての都合の良い道具を手に入れるな‼︎というか師匠である蟲柱の許可を得なくて大丈夫なのか⁉︎

 

「………はい、分かりました。」

 

 しかもこの女は少し戸惑いこそしたけれど、従ってしまうし………

 

「そうか。それでいい!ところで鬼がなかなか見つからないなぁ‼︎」

「はい、そうですね。」

 

 そして嫌な予感がする………

 

「これは少し暇になりそうだなぁ!」

「はい、そうですね。」

 

 ん?暇になる?どういうことだ?油断したら駄目なんじゃないのか?

 

「そういや、あそこにちょうどいい空き家があるよなぁ!」

「はい、そうですね。」

 

 なんだ?作戦会議でもするのか?ならしばらく様子を見た方が……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからさ、一発ヤらせよやぁ‼︎」

 

 な、なんだと⁉︎八咫河め、まさか栗花落を性奴隷にでもするつもりか⁉︎

 

「………………」

「どうした?何故『はい』と言わない⁉︎俺はお前の硬貨だぞ⁉︎」

「…………はい、分かりました………」

 

 流石の栗花落だって嫌そうだ。それはそうだろう。見ず知らずの男に自分の身体を捧げなければいけないのだから。同じ女として、奴の横暴は許せない‼︎でも、栗花落だって鬼狩り…………私が殺すべき相手だ………別にアイツが酷い目に遭おうが、どうでもいい………どころかむしろ好都合じゃないか‼︎でも…………

 

 

 

 

 

  side 八咫河

 

 俺は生き物を殺す以外にも自分の優越感を味わえる瞬間がある。それは好みの女を犯すときだ。無理矢理相手を押し倒すことにより、自分の強さをこれでもかと見せつけることが出来る。さっきの大久保*2という女はあまり好みじゃなかったが、この栗花落とかいう女は好みだ‼︎

 

 そうだ!念のために、

 

「風の呼吸 肆の型 昇上砂塵嵐」

「えっ⁉︎」

「お前は俺のものなんだ。だから鴉は一匹でいいだろ。」

「…………………」

 

 鴉を殺しておかないとなぁ!これでこのことを知る者は俺と栗花落しか居ない‼︎さあて、楽しい夜の稽古を始めるとするか‼︎

 

 

 

 

 

  side 萌

 

 栗花落は鬼狩り………助けるべき相手じゃない………むしろ八咫河が犯してる最中にまとめて殺せばいいんだ………でも同じ女として、あれは………いや、栗花落は鬼狩り…………いくら酷い目に遭おうが、いいじゃないか……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月の呼吸 拾伍の型 月槍(げっそう)陰牙突(いんがとつ)

 

 槍のように両手で日輪刀を握り、遠距離から目標に向かって一気に突撃する技。これで栗花落が犯される前に、八咫河を殺す‼︎

 

「ぐわっ⁉︎な、なんだ⁉︎誰だ⁉︎」

「えっ⁉︎」

 

 見事に栗花落を避け、八咫河の腹に命中‼︎そして一気に刺さった‼︎後は傷を広げるように刻み殺す‼︎

 

「死ねぇぇぇぇぇ‼︎」

「お前、まさか大久保………っ⁉︎変身………したのか……っ⁉︎」

「ご名答。まあこの姿も名前も本来のものじゃないけどな。」

「くそっ!栗花落………俺を………助け………ろっ‼︎」

「……………はい。」

 

 お前、自分を犯そうとした相手の言うことを素直に聞くのか⁉︎

 

「お前、それでいいのか⁉︎コイツはお前を犯そうとしたんだぞ⁉︎そんな奴の言うことを聞いていいのか⁉︎」

「……………」

「鬼の………戯言だ………っ‼︎殺せ…………っ‼︎」

「うるさい、このクソ男‼︎自分が全て正しいとでも思ってんのか⁉︎」

「鬼に………言われる………筋合いは………ない‼︎栗花落………っ‼︎」

「あっ…………は、はい。」

 

 くそっ!栗花落が奴隷になる前に、犯される前に、先に八咫河を殺す‼︎まずは日輪刀を奴の腹から抜いて、

 

「月の呼吸 壱の型 闇月・宵の宮」

 

 一気に斬る‼︎

 

「く……っ!月の呼吸 壱の型 闇月・宵の宮…………」

 

 奴め、この短時間で月の呼吸まで習得したのか⁉︎本当に底知れない奴だ‼︎でもここで私は負けない‼︎

 

「月の呼吸 陸の型 常世孤月・無間」

「くっ……………」 バタン

「月の呼吸 陸の型 常世孤月・無間」

「…………………」

 

 よし、なんとか倒せた…………本当に強い奴だった………柱になってたら、それこそ上弦の方々でも手こずったかも知れない。

 

 

 

 あとは栗花落だが………

 

「えっ………あっ………花の呼吸………」

 

 何が起きたか分からず、呆然としている。とりあえず奴が最期に放った命令に従おうとしているが…………

 

「お前、それでいいのか?」

「……………」

「硬貨や他者に自分の全てを決めさせて、それでいいのか?」

「……………」

「今みたいに嫌なことだってされるかもしれないんだぞ?」

「……………」

「鬼の私が言うのも変だけどさ。もっと自分を大切にしなよ。そして自分のことは自分で決めようよ。事情は知らないけどさ。」

「……………」

 

 一般人ならともかく、なんで鬼狩りなんかに情けをかけてるんだろう、私は?奴らにとっての善人ではないはずなのに。彼女が元虐待児である可能性を考えて、少し優しくしたくなってしまう………

 

 そうだ。ここはこの質問をしよう。これは自分に対するケジメにもなる。そして、命の恩人である無惨様のためにもなる。そして、その質問によって栗花落の意思を復活させるのだ。

 

「お前に一つ選んで欲しいことがある。」

「……………何?」

「もしお前が今ここで鬼狩りを辞めるなら、私はお前を見逃す。だがもしお前が鬼狩りを継続したいと思うのなら、私はお前を殺す。」

「…………………」

「硬貨や人の意見に頼らず、自分で決めてくれ。」

 

 さて、栗花落はどう答える?

*1
萌視点だと遠くて見えなかったが、カナヲは硬貨を投げた

*2
萌が八咫河にはこの偽名で名乗ってる




 ということで、八咫河の討伐が完了しました。前回の過去でちょっとだけ株を上げてからのカナヲレ○プ発言。クズっぷりをこれでもかと発揮しながら地獄に落ちていきました。

 そして萌がついに鬼殺隊に情を見せてしまいます。ただ無惨への恩を思い出して、あの質問をするに至りました。果たして、この質問にカナヲがどう答えるのか?それは次回のお楽しみに!

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