我妻物語   作:スピリタス3世

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第十五話 花開く蝶

  side 萌

 

 この無表情な感じ、そして自分で物事を決められない感じ、多分過去に親から虐待されてたのだろう。鬼に家族を殺されて鬼狩りになった者なら境遇が似てて立場が異なるだけで済むのだが、鬼関係なしに生きてきた人は可哀想に思ってしまう。自分が親に恵まれていたこともあって。だからああ言ったが………さて、どう出る?

 

 

 

  side カナヲ

 

 なんだろう、この鬼は………いきなりこんな事を言ってきて………なんか他の鬼と雰囲気が違う………さっきも私をこの男から助けてくれたし………

 

 それにしても、自分の意思か………小さい時に虐待を受けてたから、出せなくなっちゃったな………。いや、出すと駄目だった。出すと悪いところに親の拳が当たって死んじゃうから………それで死んだ兄妹を何人も見てきたから………だからあの時から、自分の意思を捨てざるを得なかった………。そうしていくうちに、自分では何も決められなくなっていった………

 

 そんな私を拾ってくれたのは、当時から鬼殺隊で活動していた姉さん*1たちだった………奴隷商人に売られた*2私を拾ってくれた………そして育ててくれた………。名前まで付けてくれた………

 

「今度から、カナヲはこれを投げて物事を決めるようにしなさい♪」

「姉さん、それでいいの?」

「いいのいいの!だってカナヲは可愛いもの〜♪」

「それじゃあ答えになってないでしょ‼︎」

 

 何も決められない私に、硬貨を与えてくれた。硬貨を投げて決めるように、言ってくれた………

 

 

 

 その後、カナエ姉さんが上弦の弐に襲われて亡くなった。でも私は、カナエ姉さんが死んだ時に泣くことが出来なかった………。自分の感情を出せなかったから………。でもそんな私を、しのぶ姉さんやアオイたちは温かく受け入れてくれた。鬼によって自分たちの心がさらに傷ついているのに………そんな優しい人たちのことを傷つけた鬼が段々と許せなくなって、そしてその人たちに笑っていて欲しくて、目で花の呼吸を盗み、最終選別を突破した。私にしては珍しく、自分の意思を出してしまった時だった。

 

 そうして色んな鬼を退治してきたが……………目の前の鬼だけは他の鬼とは何かが違う*3のを感じた………。必要以上に人を殺したく無さそうにしている。鬼なのに優しさを感じる………。鬼なのに私のことを助けてくれた………。だからこの鬼のことも信じたい………でも、私は………どうすれば………そうだ、硬貨………

 

「また硬貨に頼ろうとしてるのか?それは駄目だ。お前が自分の意思で行動出来るようになるまで、私はこれを返さんぞ。」

「…………うん。」

 

 はこの鬼に取られてるんだった………じゃあどうしようか………鬼の言うことを聞いて鬼殺隊を辞めるか………それとも姉さんたちのために続けるか………この鬼はきっと強い………私より強いこの男を瞬殺*4したのだから、間違いなく私では勝てない………。だから自分が助かるには、鬼殺隊を辞めるしかない………でもそれだと姉さんたちへの気持ちはどうなるのか………ああ、どうすればいいんだろう………

 

「別に私はお前がどんな選択をしようと責めるつもりはない。ただ私はそれに合わせた行動をするだけ。」

 

 目の前の鬼は何故か私を受け入れようとしてくれる。その鬼のためにも、自分で決めるんだ…………どちらを優先させるべきか…………私の…………答えは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は………鬼殺隊を辞めるつもりはない‼︎

 

 姉さんたちのために生きる‼︎

 

 

 

  side 萌

 

 そうか…………なら私はこいつを殺さなければいけない………嫌だな………って動揺してる暇はない!栗花落に起きた虐待も、ただの私の推測でしかないし、こいつが鬼狩りを続ける以上、無惨様の邪魔に他ならない‼︎自分を奮い立たせろ‼︎こいつを殺すんだ‼︎

 

「分かった。それじゃあ私はお前を殺す。」

「やれるもんならやってみなよ‼︎」

「月の呼吸 壱の型 闇月・宵の宮」

「花の呼吸 陸の型 渦桃」

 

 私の一閃に対して、上に避けてからの身体を捻らせながらの斬撃。身体の反応速度は、同い年くらいの臭い男や猪男に比べたら格段に速い。恐らく禰豆子よりも…………でも八咫河よりは遅い‼︎そして痣が出た私の敵じゃない‼︎上に逃げたのなら………

 

「月の呼吸 肆の型 年災月殃」

「くっ…………‼︎」

 

 下からの攻撃‼︎更に畳み掛けるように、

 

「月の呼吸 陸の型 常世孤月・無間」

「うっ…………‼︎」

 

 沢山の斬撃をぶつける‼︎

 

 

 

 

  side カナヲ

 

 分かってた………この鬼に勝てないことぐらい……でもここで死ぬと、この鬼が他の隊士を殺すかもしれない………。一般人をも殺すかもしれない………。そして私が鬼殺隊をやる以上、それは防がなければならない………っ!だから、悪あがきをする‼︎たとえ、自分の目を潰したとしても‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「花の呼吸 終の型 彼岸朱眼」

 

 

 

  side 萌

 

 なんだ⁉︎急に速度が上がっただと⁉︎

 

「月の呼吸 弐の型 珠華ノ弄月」

「花の呼吸 伍の型 徒の芍薬」

「月の呼吸 拾参の型 闇夜ノ円舞・月輪」

「花の呼吸 肆の型 紅花衣」

 

 私の技にも対応してきている‼︎奴は何をした⁉︎花の呼吸に終の型なんてあったか⁉︎とりあえず一旦距離を無理矢理にでも取らないと‼︎

 

「月の呼吸 拾伍の型 月槍・陰牙突」

 

 突きのこの技は、相手から一気に逃げたい時にも使える‼︎

 

 

 

 

 そして距離を取ったら、月の呼吸の利点を生かす‼︎それは、長距離斬撃‼︎

 

「月の呼吸 漆の型 厄鏡・月映え」

 

 一閃からの前に突き進んでいく斬撃。栗花落は頑張って避けてるが、次は意識してない上から攻撃‼︎

 

「月の呼吸 玖の型 降り月・連面」

 

 上を意識させたら、

 

「月の呼吸 拾の型 繊面斬・羅月」

 

 次は前から‼︎

 

「月の呼吸 拾陸の型 月虹・片割れ月」

 

 そして上から‼︎

 

「くっ‼︎」

 

 栗花落はだんだん避けきれなくなってきた。そしてなんとなく分かった、終の型について。あれは恐らく自分の眼球に負荷をかけて動体視力を上げるものだろう。さっきまでとは違って、眼がかなり赤くなってたし。それにより、相手の攻撃を避けながら自分の攻撃を当てている。だが眼球に負荷をかけるということは、長時間は使えないはず‼︎

 

「月の呼吸 捌の型 月龍輪尾」

「花の呼吸 壱の型 枝垂桜(しだれざくら)

 

 だがもう私の近くまでやってきたか‼︎上から下に刺してくるような斬撃‼︎ならこっちは相手の意表を突いて……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月の呼吸 拾伍の型 月槍・陰牙突」

 

 逆に距離を縮める‼︎そして思いっきり串刺しにする‼︎八咫河にやったみたいに‼︎

 

「ぐっ………‼︎」

 

 疲れもあってついに栗花落に攻撃が当たった‼︎そして次は刀をほぼ動かさなくても出来る、

 

「月の呼吸 伍の型 月魄災禍」

 

 伍の型でえぐる‼︎

 

「ぐっ………花のこ………」バタン

 

 これにより、栗花落は一応倒れはしたが、念のため、

 

「月の呼吸 陸の型 常世孤月・無間」

 

 刀を奴の身体から抜いて、斬り刻むことにする。

 

「…………」

 

 どうやら無事栗花落は死んだようだ…………鬼狩りを辞めてくれたら良かったのにな………。まあ彼女なりの決意があったんだ。だから私はそれを尊重するべきだ。

 

 それに、敵である鬼狩りに同情するなんて、あってはいけないことだ。その甘さがいつか命取りになるかもしれない。心に刻んでおかねば。

 

 しばらくして、私は栗花落の死体を食べた。同い年くらいの女の子の死体はあまり食べたくなかったが、これは無惨様のためだ。無惨様のために強くなるんだ‼︎

 

 

 

 

 そして栗花落の死体を食べ終わった後、今度は八咫河の死体を食べに行った。すると、

 

「おい、これってまさか………」

「あの殺人鬼だよね?」

 

 中華料理店で見たことあるような男と女がそこには居た。確か八咫河から逃げ惑ってた人の中に居たような気がする。とにかく今は人間のフリをしないと‼︎そうして私は眼と歯を人間のものに戻して、その人たちに近づいた。

 

「すいません、そこをどいてくれませんか?」

「貴方は………?」

「その死体を回収したいのです。」

「「えっと…………」」

 

 マズい、変なことを言ってしまったか⁉︎

 

「えっと、その………変な意味はないっていいますか………その………っ!」

 

 何かとりあえず言い訳を考えろ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ありがとうございます‼︎」」

「へっ⁉︎」

 

 な、何故だ⁉︎何故私は感謝されている⁉︎

 

「貴方がこの殺人鬼を退治してくれたんですよね⁉︎」

「いや、ち、違います‼︎」

 

 確か擬態変化で姿形どころか声も変えてるはず‼︎一緒なのといえば隊服ぐらい。なのに何故気づいた⁉︎

 

「でも雰囲気似てますよね⁉︎」

「そうですか⁉︎ってか似てるって誰に⁉︎」

「口調の細かいところとか、仕草とかが一緒かな〜って!」

「あとはなんとなくの雰囲気‼︎」

「そんななんとなくで人を恩人にしないで下さい‼︎」

 

 口調や仕草は分かるとして、なんとなくの雰囲気って何だよ⁉︎さてはこいつ、臭い男や善逸みたいに音や臭いで人を判断する類の人間か⁉︎だとすると鬼狩りじゃなくて良かったとも言えるが………

 

「とにかく、ありがとうございました!」

「本当に助かりました!」

「えっと…………」

 

 まあこの人たち的には、自分たちの敵であった殺人鬼、八咫河を私が退治してくれたのだから、私は彼らにとっての命の恩人なのであろう。でも私は鬼だ。私はこの人たちを食べるつもりはないが、鬼は人間にとっての敵だ。そんな自分たちにとっての敵を命の恩人だと勘違いするのはいたたまれない。だからここは勘違いさせないためにも、正体を明かすべきだろう。

 

「あの、私は人喰い鬼ですよ?」

 

 そして私は眼と歯を鬼のものに戻した。

 

「今はこの殺人鬼の方が食べたいので貴方たちは見逃しますが、将来は知りません。また貴方たちを食べるかもしれません。だから敵である私に感謝の意を抱くなんて、やめて下さい。」

「「…………」」

「それと、早く逃げた方がいいですよ。私の食欲が増える前に。」

 

 そして鬼らしいことを言った。これならば誤解は解けただろう。さあ、後は八咫河の死体を食べれば………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「おお、やっぱりいい人だ…………ありがとうございます‼︎」」

 

 はい⁉︎

 

「な、なんでですか⁉︎私は敵ってさっき言いましたよね⁉︎」

「そういうとこですよ!」

「本当に俺たちを食いたけりゃ、そんなことはわざわざ言わないですよね⁉︎」

「えっと、その…………」

「「とにかく、ありがとうございました!それではまたどこかで会いましょう‼︎」」

 

 そう言って2人は帰ってしまった…………全く、なんで人の話を聞いてくれなかったんだろう…………まあいいか!

 

 

 

 

 私は八咫河の死体を食べ終わった後、

 

 

べべん!

 

 

 鳴女さんの琵琶の音とともに無限城に召喚された。

 

「血鬼術 人間擬態・擬態変化」

 

 急いで私は元の姿に戻すと、そこに無惨様が現れた。何かお気に召さないことでもあったのか⁉︎

 

「無惨様、どうされましたか⁉︎」

「萌、お前に話がある。」

「はい、なんでしょう⁉︎」

 

 一体何の話だろう?鬼狩りの退治の依頼か?柱の出現か?それとも日の呼吸の使い手がまだ居たのか?はてさて、一体……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前を今日から十二鬼月の下弦の陸に任命する。」

 

 十二鬼月だと⁉︎まさか、この私が、あの十二鬼月に任命されたというのか⁉︎これほどまでに嬉しいことはない‼︎

 

「あ、ありがとうございます‼︎」

「それではこれから頑張れ。」

「はい‼︎」

 

 そう言って無惨様は去った。そして近くにあった鏡*5を覗くと、私の左目に『下陸』の文字が刻まれているのが分かった。これで晴れて十二鬼月だ‼︎これから無惨様の側近として、もっと役に立てるよう頑張るぞ‼︎

*1
カナヲは姉さん呼びと師範呼びのどっちもあった気がするので、今は姉さんにしてます

*2
間違ってたらすいません。

*3
カナヲに会う前に禰豆子は萌に殺された

*4
カナヲ目線では瞬殺。実際は瞬殺ではなかったのだが、痣が出た後は余裕で萌の方が強いのは第十三話を読んで分かる通り。

*5
大正時代には既に鏡があったとされている




 ということで、第三章が終了しました。カナヲだったら萌より蝶屋敷の皆を優先させると思ったので、こういう展開になってます。また本編の時系列的に本編の響凱戦の少し前になるので、彼岸朱眼を使ったカナヲでも柱クラスはありません。

 そして萌がいよいよ十二鬼月になりました!彼女がこれからどういう活躍をしていくのか、それは次回、第四章からのお楽しみに!

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