我妻物語   作:スピリタス3世

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第二十話 絶技

  side 萌

 

 無一郎の筋肉が透けて見える…………。先程までと比べて全ての物体の動きが遅く感じる………。もしや、これが黒死牟様の言ってた、透き通る世界か?

 

「霞の呼吸 肆の型 移流斬り」

 

 無一郎が下に滑り込みながら近づいてくるのがハッキリと分かる。痣が出ているのにも関わらず、動きが目で追える。これは使えるぞ‼︎

 

「月の呼吸 拾陸の型 月虹・片割れ月」

「くっそ…………っ!」

 

 上から下へ刺すこの型も、命中率がかなり上がってる!ただあっちも段々と近づいてくる。

 

「霞の呼吸 弐の型 八重霞」

 

 身体を捻りながら斬撃を繰り出そうとしている。次に身体のくる場所はあそこだから、そこに向かって…………

 

「月の呼吸 捌の型 月龍輪尾」

「くっそ!霞の呼吸 伍の型 霞雲の海」

 

 斬撃を打ち込む‼︎相手も何発も細かい斬撃を放って迎撃してきた!そしてそろそろ相手の刀が届く位置。ならばこちらも近接攻撃に変える‼︎

 

「月の呼吸 参の型 厭忌月・銷り」

「霞の呼吸 肆の型 移流斬り」

 

 くそっ、私の攻撃を下に潜ってかわしてきた‼︎そこからの流れるような攻撃‼︎透き通る世界に入れたからといって、すぐに仕留められる相手ではないか‼︎

 

「霞の呼吸 壱の型 垂天遠霞」

「くっ…………‼︎」

 

 くそっ、突き技を喰らった‼︎だが刀が刺さったのは腹‼︎ならば力を振り絞って…………

 

「くそっ、抜けない………抜けないっ‼︎」

「月の呼吸 弐の型 珠華ノ弄月」

「ぐわぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 無一郎の周りを取り囲む3つの斬撃を放つ‼︎奴は腹に力を集中させたから、刀を抜けなくて手こずっていただろう。それは最大の隙である‼︎幸い鬼だから突き技では致命傷には至らない………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 ってなんだ⁉︎身体が焼けるように熱いんだけど⁉︎というか無一郎の日輪刀がめちゃくちゃ熱い‼︎何が起きた⁉︎刀が…………赫い⁉︎まさか黒死牟様が言ってた赫刀か⁉︎でもあれは黒死牟様だって出来ないんだぞ⁉︎それなのに、何故無一郎が出来ている⁉︎

 

 

 

 

  side 無一郎

 

 突然下弦の陸の速度が上がった。攻撃の先読みがされるようになってきた。さっきの僕が速度が上がったのと同様、相手も覚醒したってわけか。やはりこの鬼は一筋縄ではいかない‼︎

 

 そう思って刀を思いっきり握ったら、何だか知らないけど赫くなった!そして鬼が悶えている‼︎なら今が……………

 

「がはぁっ…………はぁっ………はぁっ………」

 

 ってまずかった‼︎呼吸をするのを忘れてた‼︎あまりにも力を刀に入れたもんだから、それ以外が疎かになっていた‼︎マズい‼︎このままでは相手に隙を与えてしまう‼︎だから少し距離を取る‼︎

 

 

 

 

  side 萌

 

 なんだか知らないけど無一郎は息切れしてる。そして刀が元の白色に戻った。なら今がいい機会‼︎

 

「月の呼吸 肆の型 年災月殃」

 

 今度は私がアイツの下に潜り込んで攻撃してやる‼︎

 

「霞の呼吸 陸の型 月の霞消」

 

 相手は上に飛んでの迎撃!ならばこちらは上に向かって攻撃するまで…………って居ない?それじゃあどこ…………っていつの間に距離を取ったんだ⁉︎もしや少し斜め上に逃げて、横方向への移動も意識したというのか⁉︎

 

 

 

 

  side 無一郎

 

 僕は他人のためならば無限の力を出せる。兄さんが言ってくれた言葉だ。僕は柱として、人間を鬼から守るために、ここで決める‼︎僕が生み出した、この型で‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霞の呼吸 漆の型 朧」

 

 

 

 

  side 萌

 

 霞の呼吸、漆の型⁉︎霞の呼吸は陸までじゃないのか⁉︎まさか無一郎自身が生み出した型だというのか⁉︎

 

 そしてさっきから奴の姿が見えない‼︎いや、厳密には見えるのだが、たまに現れては消えて、また現れては消えている‼︎まるで霞に巻かれているようだ…………

 

 ただ一つ言えるのは、現れる時は私の周囲であるということ。恐らくこの型の主な目的は、撹乱からの不意打ち。はっきりと今現在彼がどこにいるのかは分からないが、対処のしようが無いわけではない。あの型ならいけるだろう。

 

 ただこの型は他のものとは違い、自分の血も大量に使用する。いわゆる血鬼術と呼吸の合わせ技だ。そうして斬撃を沢山繰り出すのだが、血の消耗が激しいため短期間で何連発も使えない。貧血になってしまう。だから一度で決める必殺技のようなものである。しかしここで勝負を決める他ない。あちらが必殺技で来るのなら、こちらも必殺技で対応するまでよ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月の呼吸 拾漆の型 絶技・日喰(にっしょく)

 

 自分から一定の範囲内、いわゆる半球上の範囲内*1に無数に斬撃を繰り出す。自身の血を剣につけ、剣を振ることにより血が飛ぶ。そしてそれが急速に固まって鋭い斬撃となり、剣から直接引き起こされる斬撃と合わせて、範囲内をひたすらに斬り刻む。相手が自分の周りをうろついているのなら、これで範囲内を均等に攻撃する他あるまい‼︎さて、無一郎に当たってくれるかな⁉︎

 

 

 

 

 しばらくして私が日喰を止めると………辺り一面には斬撃で削れた大地が現れた…………。地面がえぐれて剥き出しになっている…………。そして貧血で頭がクラクラする………。さて、無一郎はどこに居るかな……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

「無一郎様‼︎オキテ‼︎オキテ‼︎」ポロ、ポロ

 

 あそこで血を流して居るようだ…………。銀子という奴の鴉がそばで泣いていることから、悪くて気絶………まあ恐らく死んでいるだろう。とりあえずは食べないとな…………。柱を食えば、かなり強くなるはずだ…………

 

 

 

 

  side 無一郎

 

 銀杏の葉が舞っている………ここは、どこだ?

 

「無一郎、こっちに来るな‼︎戻れ‼︎」

 

 アレは兄さんだ。いや、下弦の陸が化けてる可能性は…………

 

「本物………だよね?」

「そうだ‼︎お前と戦った鬼じゃない‼︎」

「良かった…………っ!」

 

 ないみたい。背も僕より小さいから、恐らく死んだ時から変わってないのだろう。

 

「兄さん、また会えて良かった‼︎」

「何言ってるんだ無一郎‼︎ここで死んだら無駄死にだぞ‼︎」

 

 兄さんらしいセリフ。でもそれが、懐かしさと愛着を感じる。

 

「兄さんがそんな事言わないで!」

「でも………それじゃあお前は何のために生まれてきたんだよ⁉︎」

 

 もちろん、言うことは決まっている。

 

「僕はね、幸せになるために生まれてきたんだ。確かにここ数年は記憶があやふやだったけど、それでも色んな人と楽しく過ごすことが出来た。後悔はないよ。」

「そんな………俺はただ無一郎に、もっと長生きして欲しかったのに………」

 

 やっぱり兄さんは兄さんだ。ただの弟想いの、優しい兄さんだ。

 

「ありがとう、兄さん。」

 

 こうして僕は兄さんと抱き合いながら、銀杏葉が舞う中久しぶりの再会を味わった。そしてそのまま、天国と思われる場所へと旅立った。

 

 

 

 

  side 萌

 

 頭がクラクラする…………上手く歩けない…………。銀子は………無一郎との別れを惜しんだ後、飛び去ったようだ…………。本当は追いかけるべきなのだが………私にそんな体力は残ってないだろう………。でも必ず…………食べるんだ…………

 

 そうして私は無一郎の元に辿り着き、彼の死亡を確認した。その後、彼を食べた。これでまた強くなれた気がする…………。もっと無惨様の役に立てる気がする…………

 

 食後、私はおぼつかない足取りで洞窟に逃げ込んだ後、そのまま倒れるように眠った。

 

 

 

 

 

 そして目を覚ますと、そこは無限城だった。どうやら私は寝ている間に呼び出されたらしい。

 

「血鬼術 光殺霧」

「おお!これなら近いうちに計画を実行できるぞ、影人‼︎」

「ありがとうございますぅ〜、無惨様ぁ///」

 

 相変わらず影人は無惨様と一緒に血鬼術の練習をしている。それに伴い、辺りが暗くなる。無惨様の発言から、以前見た時に比べて暗くできる範囲が広がってるようだ。私も彼みたいに無惨様の役に立てるようになりたいな。

 

 

 しばらくすると、影人の付き添いが終わった無惨様がやってきた。

 

「萌、柱を倒したようだな。」

「はっ、はい‼︎」

 

 無惨様は嬉しそうに私を見つめてくれる。この人のこういう顔が見たくて、私は頑張っているんだ。

 

「そんなお前を下弦の壱に上げようと思う。」

 

 って下弦の壱だと⁉︎陸から壱、かなりの大出世‼︎この私が‼︎これなら上弦だって夢じゃない‼︎

 

「あ、ありがとうございます‼︎」

「そしてお前はよく働いている。だからお前には、一週間の休暇をあげようと思う。」

 

 休暇…………だと⁉︎位を上げてくれるだけでなく、遊ぶ時間まで下さるのか⁉︎

 

「ありがとうございます‼︎本当にありがとうございます‼︎」

「では一週間後から、再び私の役に立つとよい。」

「はい‼︎」

 

 本当にありがたいお方だ‼︎よしっ!この方のためにも、まずは残りの8人の柱を全滅させるぞ‼︎

 

 

 

 

  side 無惨

 

 休ませること。これにより更なる労働が見込める、と童磨が言ってたからな。とりあえず萌を休ませることにしよう。彼女は私が1,000年生きてきた中で、一番忠誠心が高い鬼だ。それこそ黒死牟以上に。だから大切にしなければな。

 

 

 

  side 萌

 

 まさかの休暇。正直過ごし方が分からない。一応いつでも鬼狩り狩りが出来るように日輪刀は持ってきた。そして一応人間の姿にしている。髪は今までにやったことがない緑で。

 

 そんなこんなで街をふらついてると……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいませ〜ん!おまんじゅう100個下さい‼︎」

 

 桜餅の髪色をした食いしん坊な女がそこには居た。

*1
半径約5m




 ということで、無一郎戦が終了しました。柱相手に奮闘する萌は如何だったでしょうか?無一郎も赫刀を出したりとかなり萌を苦しめました。そして、最後はお互いの必殺技同士のぶつけ合いで決着しました。

 ちなみに絶技・日喰の元ネタは日食です。月が太陽を隠すあの現象です。月の呼吸らしいと思ってこうしました。喰の字は確か本来しょくと読まないのですが、鬼っぽい感じだと思ったのでこう当てました。

 それと貧血設定は、鬼だって血で生きてるならあってもおかしくない、と思ってつけてみました。血鬼術による血の消費量が心臓による血の生成量よりも上回る状態が続くと、あるいは差が激しいと起きます。

 さて、次回はのんびり萌の日常譚………かと思いきや蜜璃ちゃんに遭遇しました!一体どうなるのか、お楽しみに!

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