我妻物語   作:スピリタス3世

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第三十八話 生きるも地獄、死ぬも地獄

  side しのぶ

 

 私は今冨岡さんと玉壺を探しているが…………

 

「なかなか見つかりませんね………」

「だな。」

 

 遊郭の店の中を探せども探せども居ないのだ。もちろん道にも居ない。一体どこに行ったんだ?上弦の陸たちの方には合流してないらしいからまだいいけど、もしそっちに向かわれた場合、萌はともかく善逸君が危ない。

 

「おかしいな、くまなく探したはずなのに………」

「もしや入れ違いか?」

「可能性はありますね。ひとまず来た道を戻りましょう。」

 

 そして最悪の場合、逃げ遅れた民間人が襲われる可能性もある。早めに探さねば……………

 

「ヒョヒョ。これで完了しました!」

 

 ん?今の声は…………絶対アイツだ‼︎右前の店の中から聞こえる‼︎果たして、一体何をしてるのか…………

 

 とりあえず私たちは店の中に入ると、

 

「ヒョヒョ、思ったより来るのが早い!でも上手く隠れて脱皮した甲斐がありました!貴様らには私の真の姿を見せてやりましょう!」

 

 壺から玉壺の声が聞こえていた。そしていよいよ奴は、

 

「どうでしょう、この姿は⁉︎」

 

 壺から姿を現した。その姿は、顔こそ大して変わってないが、首から下はゴツい筋肉を持つ人魚のようだった。その人魚は御伽噺(おとぎばなし)で聞かれるような可愛らしいものではなく、はっきり言って見るに堪えないほど気持ち悪いものだった。

 

「この透き通るような鱗は金剛石よりも尚硬く強い。私が壺の中で練り上げた、この完全なる美しき姿に平伏するがいい。」

「嫌だ。」

「なんだよその感想は⁉︎もっとマシなのは無いのか、この半々羽織‼︎」

「無い。」

 

 そして相変わらず冨岡さんの会話はどこかおかしい。でもそれ以上に、アイツの方がおかしい‼︎

 

「おい、毒娘‼︎お前からもなんか言ってやれ‼︎」

「キモっ。話しかけないで下さい。」

「このクソアマがぁぁぁぁ‼︎本当に人の神経を逆撫でする女だな‼︎」

 

 相変わらず短気なこと。まあ私も人のこと言えないけど。とりあえず奴の冷静さは欠かせた。後は倒すだけだ。

 

「血鬼術 神の手」ドゴッ

 

 ただ、それが難しい。萌の話が本当なら、この拳は喰らうと………

 

「…………」ピチャ、ピチャ

 

 魚になる‼︎玉壺が殴った地面が魚に変化するのを、私たちはこの目で確認した。

 

「あのガキから聞いているのでしょう、私の拳の恐ろしさを!」

「ええ。」

 

 でもこっちには切り札がある!

 

「冨岡さん、とりあえず凪で玉壺の攻撃を防いで下さい。」

 

 冨岡さんの凪。全ての攻撃を打ち消す威力。きっとこれならアイツの攻撃だって問題ないはずだ…………

 

「すまない、胡蝶。それは無理だ。」

 

 って嘘でしょ⁉︎

 

「冨岡さん、なんでです⁉︎」

「凪は刀を何度も速く振って対応してるだけ。つまりは………」

「凪をやると刀が魚になる………?」

「正解だ。」

 

 そういうことか。それなら玉壺と相性が悪い。というかあれ全部手動で止めてたんだ。改めて思うけど本当にすごい人だな。

 

「ヒョヒョ、相性最悪のようだな‼︎それじゃあ死ね‼︎」

「くっそ…………っ‼︎」

 

 玉壺の拳を避けながら策を練る。なんとか機会は無いか?アイツを倒せる機会が。

 

「血鬼術 陣殺魚鱗」

「水の呼吸 参の型 流流舞い」

「蟲の呼吸 蜈蚣の舞 百足蛇腹」

 

 避けながらなんとか探る。ついでに毒を入れる。

 

「ぬおっ、毒⁉︎まさかこの鱗を貫くとは⁉︎でも全然良し‼︎何故なら毒耐性も上がっている‼︎それに痺れが心地良い‼︎ヒョヒョ‼︎」

 

 くそっ、なんで毒が効かなくなりつつあるんだよ‼︎というか痺れて快感を得るな、気持ち悪い‼︎あぁ、もう!どっととくたばれ、糞野郎‼︎

 

 

 

 

 

  side 萌

 

 意識が朦朧とする………妓夫太郎がまさか自爆特攻を仕掛けてくるなんて………しかも私の知らない技を隠し持ってたなんて………

 

 ああ、このまま死ぬのかな………やっと死ねるのかな………こうして私は地獄に、善逸は天国に…………ってこのままじゃダメだ、私が守るんだ、善逸を!私は死ぬべきだけど、善逸は違う………っ!彼はもっと幸せになるべき………っ‼︎塵よりも価値のない私なんかとは違って、多くの人に大切にされる価値のある人なんだから‼︎

 

 そして私は震える脚で立ち上がった。

 

「お、お前、マジかぁ⁉︎まだ生きてんのかぁ⁉︎」

 

 正直全身に毒が回っている。どこを切断しても回復出来るもんじゃない。だからここは、強引に全部抜く‼︎

 

「月の呼吸 拾漆の型 絶技・日喰」

 

 自分の血をふんだんに使うこの技で‼︎

 

「くそぉ、血鬼術 跋扈跳梁」

 

 妓夫太郎も斬撃で自分を守る。でも奴だって全身が回復してるわけじゃない!不充分な条件なのは同じ‼︎だからここは押し切る、絶対に押し切るんだ‼︎

 

 そうして私と妓夫太郎との攻防は………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ⁉︎」ザクッ

 

 私に………軍配が………上がり………妓夫太郎の………首が………落ち………た………

 

 

 

 

  side 善逸

 

 萌ちゃんが妓夫太郎の首を斬ったのが遠くに見えた。そして萌ちゃんが気絶したのも。そして上弦の陸は短時間でもう片方の首を落とさないと倒せない。だからここは俺が堕姫を殺さないと‼︎まずはこの帯を避け………

 

「ぐぁぁぁぁ‼︎」

「ざぁこ♡」

 

 られなかった‼︎くそっ、神速で脚を消耗したせいだ‼︎だから体勢を崩してしまった‼︎

 

「血鬼術 荒波帯」

 

 荒波のようにうねりながら攻撃してくる帯。くそっ、このままじゃ避けることしか出来ない‼︎というかそれも出来てない‼︎早く首を斬らなきゃいけないのに‼︎何で俺はいつもこうなんだ⁉︎

 

 俺はいつも臆病で、弱くて、泣き虫で、不器用で、そして頼りない。そんな自分が誰よりも嫌いだ。誰よりも自分に対して怒りが湧いてくる‼︎もっと強くなれないのか、俺は‼︎強くなる理由は沢山あるのに‼︎何故こうもこうも出来ないんだ‼︎

 

「うわっ、なんかおでこに雷の刺青が出てきたんだけど⁉︎意味分かんない⁉︎」

 

 怒りで上がる心拍数と体温。なんだか今なら、いつもよりも動けそうな気がする!今なら堕姫を倒せそうな気がする‼︎




 ということで、玉壺があのキモい形態になり、萌が死にかけ、善逸が痣を出しました。なんか最近萌は気絶してばっかですが、暖かく見守ってやって下さい。

 そして次回はいよいよ第七章・遊郭編のラストです。お楽しみに!

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