我妻物語   作:スピリタス3世

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第三十九話 中和作用

  side 善逸

 

 ある種の覚醒状態に入った気がする。今なら堕姫を倒せそうな気がする‼︎

 

「うわっ、なんかおでこに雷の刺青が出てきたんだけど⁉︎意味分かんない⁉︎」

 

 雷の模様………やっと俺にも痣が出たのか。これでようやく萌ちゃんと並ぶことが出来る‼︎

 

「お洒落でしょ?」

「なわけあるかぁ‼︎」

「否定したね?ならば死ね‼︎雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃」

「ちょっ、理不尽なんだけど⁉︎」

 

 自分でも驚く速さで堕姫の首に斬りかかる。コイツの首は相変わらず柔らかくて伸びるが、それもどこまで続くかな?

 

「くそっ!血鬼術 八重帯」

 

 堕姫が帯をたくさん俺に向けてくる。でも俺は、ここで奴の首を掻き切る‼︎やり方は単純かつ脳筋、奴の首を伸び斬らせて斬る‼︎よく伸びる餅がいずれ切れるように‼︎

 

「雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃・神速」

「くっそぉぉぉ、斬られるもんかぁぁぁぁ‼︎」

 

 堕姫の帯が攻撃してくる。ただでさえ脚が痛いのに身体も痛くなって最悪だ。でもそんなもの知るか!萌ちゃんなんか毎回気絶しながら戦ってるんだ‼︎ちょっとくらい気を失っても大丈夫だろ‼︎それよりもコイツの首を斬ることに専念しろ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ……………」

 

 よしっ、斬れた、斬れた‼︎上弦の首を斬れた‼︎やった…………って止まれない‼︎マズい、屋根から落ちる‼︎

 

「うわぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 踏ん張れ、踏ん張れ、踏ん張れぇぇぇぇ‼︎

 

 

 

 

 

 

  side 冨岡

 

 流石は上弦、中々倒せない。胡蝶が毒で弱らせてくれてるのに、凪が使えないせいであと一歩が踏み込めない。

 

 そして、俺は極力刀を抜きたくはないし、誰かれ構わず娯楽のように手合わせするのも好きではない。けれども今己が圧倒される強者と久々に出会い、短時間で感覚が鋭く練磨されるのが分かった。閉じていた感覚が叩き起こされ引きずられる。限り限りの命の奪り合いというものが、どれ程人の実力を伸ばすのか、今理解した。

 

「冨岡さん、痣!」

「そうか。ならば一気に畳み掛けるぞ!」

「はいっ!」

「私の芸術となり給え‼︎」

 

 痣が出た今なら、奴を倒せる!

 

「血鬼術 無量大数猛毒魚」

「「なっ⁉︎」」

 

 なんだこれは⁉︎玉壺が大量の魚を繰り出した。その数は正直数えられない。億、いや、兆を超えてもおかしくないだろう。しかも名前からして全てに毒が入ってる。この技は我妻萌の話にはなかった。奴も知らない技があるのだろう。

 

 そして更に本人が地面を殴り魚を生成する音が聞こえる。これはマズい。何がマズいかって、大量の魚に埋もれて本人が見えないことだ。だから迂闊に凪が使えない。

 

「蟲の呼吸 蝿の舞 腐敗旋廻」

「水の呼吸 肆の型 打ち潮・乱」

 

 胡蝶が毒を霧状に散布する。俺も肆の型で斬り刻む。だがそれにも限界がある。何しろ数が多すぎる。それに、どこから本体が襲ってくるかが分からない‼︎くそっ、どうすればいいんだ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」ドンガラガッシャ〜ン!

 

 ってアレは我妻善逸⁉︎屋根から突っ込んできたんだが⁉︎というかマズい⁉︎あのまま行くと毒魚の群れだ‼︎

 

「ヒョヒョ、新手か!それもまた良し!今からお前も芸術にしてやろうぞ‼︎」

 

 マズい、玉壺に………って奴の手が見えた‼︎これは隙あり‼︎胡蝶と目を合わせて、俺たちは魚に隠れて奴に近づき、

 

「蟲の呼吸 蝶の舞 戯れ」

「ぬほぉ、毒⁉︎気持ち悪くて気持ち良い‼︎」

 

 胡蝶が奴に毒を入れて弱体化させる。そして弱って首を見せたところを、

 

「水の呼吸 壱の型 水面斬り」

 

 一気に首を掻き切る‼︎

 

「きっ?きっ………‼︎斬られた⁉︎斬られたぁぁぁぁぁぁ⁉︎」

 

 玉壺が塵になって消えた。それと同時に大量の毒魚も消えた。

 

「しのぶさぁぁぁん、冨岡さぁぁぁぁぁん‼︎」

「善逸………君⁉︎」ドサッ

 

 それと同時に我妻善逸が俺と胡蝶に突っ込んできた。思いっきり正面衝突してしまって、正直痛い。

 

「す、すいません…………」

「気にするな。」

「大丈夫よ、善逸君。」

「えっ、大丈夫なんですか………って大丈夫じゃない人がいる‼︎」

 

 そういえば彼がここにいるってことは大丈夫なんだろうか、上弦の陸は?倒せたのか、それともまだ苦戦してるのか?我妻萌は何をしてるんだ?

 

「萌ちゃんが大変なんです‼︎死にそうなんです‼︎」

 

 なんと、死にかけてるのか!それじゃあ上弦の陸は………?

 

「善逸君、上弦の陸は?」

「それは倒しました!俺が妹で萌ちゃんが兄を‼︎」

 

 なんだ、それならまだマシな状況か…………。でも我妻萌は元々死ねないから生かしている存在。活躍したとはいえ、見逃すべきなんだろうか?

 

「そうか、ならそれでいいじゃない。そのまま萌が死んでくれたら御の字でしょ。」

 

 胡蝶は見逃すべきだと主張する。

 

「はぁ、何言ってるんですか、しのぶさん⁉︎萌ちゃんのおかげで上弦の陸が倒せたんですよ‼︎彼女は立派な仲間でしょう⁉︎」

 

 それに対して我妻善逸は助けるべきだと主張する。

 

「仲間を散々殺してきた人が今更仲間だなんて言えると思う?死ねないから鬼狩りに参加させてるだけで、死ねるなら殺すのが約束でしょ。というか貴方も殺されかけたんでしょう?なに、忘れたの?」

「忘れてはいません‼︎ただ彼女だって仕方がなかったんです‼︎」

「仕方がないから人を殺すの?そんな奴、鬼殺隊が認めていいと思う?」

「それは……………」

 

 胡蝶と我妻善逸のやりとり。一体どうすべきなのだろうか?というかそもそも我妻萌は死んだのだろうか?俺は現物を見ていない。

 

「とりあえず、我妻萌のところに連れてってくれ。」

「そうですね、死亡確認もしたいので。」

「分かりました。」

 

 ということで、俺たちは我妻萌のところに向かった。

 

 

 

 

  side 妓夫太郎

 

 ここは………真っ暗闇?

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」

 

 ってアレは…………堕姫か。ということは、もしや俺たちはどっちも負けたのか…………

 

「よぉ、堕姫。お前も負け………」

「ねぇ、お兄ちゃん。アタシの本名忘れてるでしょ?」

 

 堕姫の………本名………そうだ、アレだ。くそぉ、なんで忘れてたんだ、こんな大事な妹なのに。

 

「すまんなぁ、梅。兄ちゃん馬鹿になっちまったぁ。」

「全く、もう!そんなお兄ちゃんには、しっかり者の妹が必要でしょう!」

「どこがしっかり者なんだかぁ………でもまあ、よろしくなぁ。」

 

 そう思いながら、俺は梅の手を取り、

 

「それじゃあ行くぞぉ。」

「うん!」

 

 地獄へと向かった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒョヒョ、私もご一緒していいですか?」

 

 のだが、途中で玉壺が合流してきた。

 

「ヤダ。アタシはお兄ちゃんと2人で行くの!」

「ってことだぁ。」

「どけ、妓夫太郎!ほら堕姫、私がお兄ちゃんですぞ‼︎」

「違えだろぉ。ほら梅、行くぞぉ。」

「うん♪」

「置いてくな!私を連れて進め‼︎」

 

 こうして俺と梅は玉壺と一緒に地獄に行く羽目になった。

 

 

 

 

 

 

  side 冨岡

 

 我妻善逸に案内された先では、我妻萌の身体がほとんど腐ってて、半分くらいは既に塵となって消えていた。そして今まさに残りが塵となって消えつつあった。

 

「も、萌ちゃん‼︎大丈夫、しっかりして⁉︎」

「しっかりするのは善逸君の頭でしょ。」

「うるさい‼︎」

 

 一応生きてはいるのか?ただ死にかけていることには間違いない。

 

「とりあえず、萌に(はなむけ)の毒よ。」グサッ

 

 そして胡蝶が死にかけてる我妻萌に毒を注入した。

 

「おい、何してんだよ⁉︎」

「念には念を入れただけよ。これで確実に死ねると思うわ。」

「このバカ‼︎助けてって言ったでしょうが⁉︎さては自分も毒にかかってるんじゃないですか⁉︎」

「なんで私が藤の花食べてることを善逸君が知ってるの?」

「嘘でしょ、何なのこの女⁉︎ホントに毒まみれじゃん‼︎」

 

 お互いに事情が異なる故に噛み合わない会話。仕方がないことだ。

 

 それと、俺はどちら側なのだろうか?最初は胡蝶側だったが、我妻萌の一生懸命罪を償おうとする姿に少しずつ心を動かされ、今では我妻善逸側になろうともしている。でもこの女は炭治郎たちを殺した。その事実が俺を胡蝶側に留める要因となっている。それ故に心が揺れている。一体今は何をすべきなのだろうか……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれっ………善逸にしのぶさんと冨岡さん?」

「「えっ⁉︎」」

 

 そんな事を思ってたら、何故か我妻萌が復活した。

 

「やったぁぁぁぁぁ‼︎萌ちゃんが生き返ったぁぁぁぁぁ‼︎」

「嘘でしょ⁉︎ねえ、なんで⁉︎なんで毒が効かないのよ⁉︎」

「えっと…………どういう状況です?」

「俺が死にかけてる萌ちゃんを助けて欲しくて、この2人を呼んだんだよ。そしたらしのぶさんが助けてくれたのさ!」

「えっ?」

「違う、善逸君!私は藤の花の毒で萌を殺そうとしたのに‼︎」

 

 一体何があったらこうなるんだ?俺はしばらく理解出来なかったが、

 

「あの…………恐らくそれが原因なのでは?」

「はぁ、どういうことよ⁉︎アンタまさか藤の花が薬だって言うの⁉︎」

「違いますよ。たださっきまで私は妓夫太郎の毒で死にかけてました。そして藤の花の毒は鬼に効く。つまり…………」

「妓夫太郎の毒と私の毒が中和反応を起こした………?」

「恐らくは。」

「あっ…………」

 

 我妻萌が答えを言ってくれた。

 

「おお!やっぱりしのぶさんは天使じゃないか!口ではキツいこと言ってても、本心ではやはり大切に思ってたんですね!」

「違う‼︎そもそも萌が妓夫太郎の毒で死にかけてたのを知らなかったから………」

「それじゃあアレだ‼︎萌ちゃんが妓夫太郎と戦闘していた情報を知ってたのに忘れてたから、しのぶさんは天然だ‼︎」

「違う‼︎姉さんにもカナヲにもアオイにも他の柱にも言われるけど絶対違う‼︎」

「それって天然ですよね…………」

「萌ちゃんの言う通り!」

「だから違うって!」

 

 自覚が無いあたり、恐らく本物の天然だろう。

 

「天然は冨岡さんだけよ‼︎」

「「冨岡さん()か。」」

 

 心外‼︎それだけは違う‼︎

 

 

 

 

  side 萌

 

 しのぶさんの機転?によりまたしても生き返ってしまった。これは私が生きてることで守れる命があるかもしれないという、神からの気遣いなのだろうか?それとも貴様の罪はまだ地獄じゃ償いきれないから現世でも償えという、閻魔からの叱咤なのだろうか?

 

 まあ恐らくは後者だろう。となるとすべきことは、無惨を地獄へ道連れにすることだけだ。




 ということで、第七章・遊郭編が終了しました!原作とは異なるメンツでの戦いは如何だったでしょうか?最後はしのぶさんのうっかりで萌が生き返りましたね。

 さて、次回からは第八章に入ります。何をやるかはお楽しみに!

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