我妻物語   作:スピリタス3世

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第四話 猪突猛進

  side 萌

 

 この猪男、まさか心が読めるのか⁉︎

 

「いきなり何するんです⁉︎私の格好が見えないんですか⁉︎どうみても鬼狩りの隊服でしょう⁉︎」

「オレはお前から殺気を感じた‼︎だから攻撃した‼︎」

「そんな危険な事、味方の私にしないで下さいよ⁉︎」

 

 もし私が本当に味方だったら、今頃大問題だろう。よくもここまでコイツは罰せられずに生きてきたな。

 

 そんな事を思っていると、

 

「いや、嘘だな。」

 

 猪男は自信満々に、そして冷酷にそう言い放った。

 

「なんでそう言い切れるんです?」

「…………勘だ。」

「勘?」

「オレは山で育ったからな。敵の気配には敏感なんだよ。それにお前、人間じゃねえだろ?」

「それも勘ですか?」

「ああ。」

 

 野性の本能というやつか………それだけでここまで敵意を剥き出しにしてくるとは………ここはもう誤魔化せまい。

 

「………どうやら嘘をついても無駄のようですね。そうです、私が鬼です。」

 

 そう言って、私は眼と歯を鬼のものへと変化させた。

 

「やはりな。どおりで殺気を放ってたわけだ。」

「ええ。」

「それなら…………覚悟‼︎」

 

 そう言って猪男は私に斬りかかってきた。ここは迎え撃つ‼︎

 

「月の呼吸 弐の型 珠華ノ弄月」

「獣の呼吸 参の牙 喰い裂き」

 

 私の三連撃を交差させた双剣で迎え打ったか。さてと、次はどう出てくる?

 

「なかなかやるな‼︎」

「そりゃど〜も。」

「じゃあオレは………コレだ‼︎」

 

 ん?一歩後ろに引いた?私を誘っているのか?

 

「獣の呼吸…………」

 

 ん?そこからどうやって攻撃を届かせるんだ?腕の長さがどう考えても私には届かな…………

 

「玖の牙 伸・うねり裂き」

 

 ってなんだアレは⁉︎関節が無理矢理外れて手が伸びた⁉︎嘘だろ………ってマズい‼︎

 

「ぐわぁ……っ‼︎」

 

 くそっ、相手の攻撃を右肩に食らってしまった‼︎

 

「……………」びろ〜ん

 

 だが相手の関節は目に見えて外れている‼︎これならば奴はしばらく攻撃できまい‼︎だから畳み掛けるなら今がいい機会だ‼︎

 

「…………」バチン!

 

 って手の関節がすぐに戻っただと⁉︎あり得ない…………まさかこんな生物がいたとは………

 

「まだまだいくぜ‼︎」

 

 って油断してる場合じゃない‼︎反撃しないと殺される‼︎今は距離が多少あるから………

 

「月の呼吸 漆の型 厄鏡・月映え」

 

 こちらも中距離攻撃だ‼︎複数の地を這う斬撃。黒死牟様みたいに不規則な三日月の刃はまだつけられないが、これで立ち向かう!

 

「危ねえなぁ‼︎」

 

 上手くかわされた‼︎だが次‼︎肩が治るまでは多少は距離を取って戦う‼︎

 

「月の呼吸 捌の型 月龍輪尾」

「獣の呼吸 拾の牙 円転旋牙」

 

 範囲が巨大な横薙ぎの一閃。それを刃を振るいながら回転して防いだか………、だがまだまだ‼︎ここから更に中距離と遠距離技で叩き込む‼︎

 

「月の呼吸 拾陸の型 月虹・片割れ月」

「獣の………ぐわぁぁぁっ‼︎」 

 

 上から地面に向かって三日月のような巨大な斬撃を複数放つ攻撃。ようやく猪男は攻撃を食らったみたいだ。だが野生児ならば、恐らく痛みへの耐性も高いだろう。だからここは油断せずに、畳み掛けていく‼︎

 

「月の呼吸 拾の型 穿面斬・羅月」

「ぐわぁぁぁっ‼︎はぁっ………はぁっ………」

 

 関節をある程度伸ばせるのなら、それが届かない範囲から攻撃すれば良い。幸い月の呼吸は遠距離攻撃に優れているため、相性は抜群のようだ。ただあの猪男がどんな隠し技を持っているのかが読めない………。恐らく遠距離攻撃も普通に持っているだろう。

 

「くそっ………お前………なかなかやるな………っ!」

「褒めてくれてありがとうございます。まあそう言う貴方もなかなかのものですよ。」

「いや………まだまだだ………オレは………こんなもんじゃねえ‼︎

 

 さてと、次はどんな攻撃を仕掛けてくるのか…………

 

「獣の呼吸 捌の型 爆裂猛進」

 

 なるほど、距離を詰めてくる………って⁉︎

 

「獣の呼吸 伍の牙 狂い裂き」

「ぎゃぁぁぁぁぁ⁉︎」

 

 速過ぎる⁉︎あっという間に距離を詰められて、腹に沢山の攻撃を食らってしまった‼︎嘘でしょ⁉︎全く見えなかったんだけど⁉︎

 

「まだまだ‼︎獣の呼吸 壱の牙 穿ち抜き」

「くそっ‼︎月の………」

「獣の呼吸 肆の牙 切細裂き」

「ぐわぁぁぁ………っ‼︎」

 

 ダメだ、凄い速さでどんどん攻撃が飛んでくる‼︎かわす間もない‼︎今はまだ腹や胸の辺りにしか攻撃を食らってないが、腕をやられると大変なことになる!何故なら傷が回復するまでの攻撃手段がなくなるからだ。更には脚。ここをやられると、回復するまでは動けなくなる‼︎速くなんとかしないと………

 

「獣の呼吸 陸の牙 乱杭咬み」

 

 って今か?二つの刃をノコギリのように合わせた………って考えてる場合じゃない‼︎ここは、

 

「させません‼︎」

「やるな‼︎」

 

 奴の攻撃を刀で受けて、

 

「一気に削り切る‼︎」

「受けて……立ちます………っ‼︎」

 

 鍔迫(つばぜ)り合いに持ち込み、

 

「月の呼吸 伍の型 月魄災禍」

 

 ほぼ予備動作無しで放てる技を繰り出す‼︎

 

「くそっ、危ねえ‼︎」

 

 ってやはり後ろに飛んで避けたか…………予備動作がほぼ無い攻撃をかわせるとは、まさしく野生の勘、といったところだが…………今のは攻撃の回避に専念した行動のはず。ならば今は…………その着地を狩る‼︎

 

「月の呼吸 陸の型 常世孤月・無間」

「ぐわぁぁぁぁぁっ‼︎」

 

 一瞬のうちに全範囲に放たれる斬撃。流石にあの野生児も避けきれなかったみたいだ。さてと、まだまだ追加の攻撃を…………

 

「獣の呼吸 捌の型 爆裂猛進」

 

 ってまた突っ込んできた⁉︎さっきよりも怪我を負ってるからか少し遅いものの、それでもかなりの速さだ‼︎というか防御と回避の事は考えていないのか⁉︎クソ、これは迎え撃つしかあるまい‼︎

 

「獣の呼吸 陸の牙 乱杭咬み」

「月の呼吸 厭忌月・銷り」

 

 そして鍔迫り合いに………って力で押される‼︎

 

「く…………っ‼︎」

「オラァァァァァァァァ‼︎」

 

 コイツめ、無理矢理力で強引に攻撃しようというのだな‼︎おかげで伍の型が出せない‼︎というか女とはいえ鬼である私より力が強いとか、コイツは一体どうなってるんだ⁉︎

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

 ってマズい‼︎この高さのままだとそのまま首をもってかれる‼︎そしたら私は死んでしまう‼︎まだ沢山の鬼狩りが残っているのに‼︎まだ無惨様の役に立てるというのに‼︎クソっ、一体どうすれば…………

 

 

 

 ってアレがあるじゃないか!鬼にしか出来ない技。鬼だからこそ出来る技。それはすなわち、鬼特有の…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ、なんだと⁉︎」 ヒュン!

 

 身体変化だ‼︎私は奴の攻撃を避けるため、鍔迫り合いから急激に背を縮めた。それにより、鍔迫り合いにこそ負けたものの、奴の刃は前まで私の首があった虚空を(かす)めた。そして奴が体勢を崩したその隙に…………っ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月の呼吸 肆の型 年災月殃(ねんさいげつおう)

 

 下から上へと放つ斬撃‼︎背が縮んだ今だからこそ、使いやすくなるわざだ‼︎

 

「グブァッ…………」

 

 奴は重傷を負った。畳み掛けるなら今だ‼︎

 

「月の呼吸 陸の型 常世孤月・無間」

「グブァッ……………」バタン

「月の呼吸 陸の型 常世孤月・無間」

「………………」

 

 しばらく私が何発もの斬撃を与えると、猪男は倒れて言葉を発さなくなった。恐らく死んだのだろう。私は一応念のため心臓に耳を当てた。普通ならそこから聞こえるはずの鼓動は、奴からはもう聞こえなかった。

 

 

 

 強敵の討伐完了に安堵していると、空が少しずつ明るみ始めた。このまま日に焼けて死ぬのは御免なので、私は日陰へと猪男の死体を抱えて走り、太陽から逃げ切った。

 

 さてと、コイツは………食べられるのか?見た目は人間と猪を合わせたようなものだが、果たして……………とりあえずは腹から食べてみるか………

 

 その味は、普通の人間の味だった。それこそ数時間前に食べた賽子男のものと似たような味だった。では猪の形状をした、奴の頭を食べるとどうなるのか?私は気になったので、奴の頭にかじりついてみた…………が、食べられなかった。それは毛皮だったからだ。だとするとこれは被り物か何かか?気になったので猪の皮に手をかけて頭の方にずらすと…………………

 

  

 

 

 中からは人間の顔がうっすらと見えた。どうやら猪の頭は被り物だったみたいだ。気になったので全部取ってみると、中にはとても可愛らしい顔が隠れていた。まるで女の子のような顔だ。あんなに図太い声がしていたのに。コイツは男なのか?それとも女なのか?まあ体つきからみて、完全に男だろう。母親似の顔、とでもしておくか。

 

 それにしても、相変わらず人間を喰うのは気が引ける。共食いの感覚、とでも言うべきか。他の鬼はそんな事は無いらしいのだが………、もしや私だけか?まあいい。これも強くなって、無惨様の役に立つためだ。不味かろうが気が引けようが、食うしかあるまい。

 

 私は彼を食べ終えた後、そこの日陰でそのまま眠る事にした。別に眠らなくても活動自体は出来るのだが、太陽のせいであまりにも活動範囲が狭いため、暇を持て余し過ぎるからだ。

 

 

 

 

 

 

 そして半日眠って夜になった後、

 

「…………」ベベン!

 

 私は突如無限城へと送還された。一体何のために呼び出されたのだろう?答えはすぐに出た。

 

「無惨様、私に何か御用でしょうか?」

 

 無惨様だ。何故女装しているのかは分からないが、ただならぬ事態なのだろう。もしや日頃から黒死牟様と共に心配している、日の呼吸の鬼狩りの事か?

 

「お前は察しが良くて助かる。」

「ありがとうございます。」

 

 やはりそのようだ。

 

「耳に花札のような飾りを付けた、鬼狩りの首を持って来い。」

 

 瞬間、私の脳内に溢れ出した…………()()()()()記憶………

 

「何が楽しい?何が面白い?命をなんだと思っているんだ?」

 

 昔たった1人で無惨様を追い詰めた、黒死牟様の弟、継國縁壱。日の呼吸を使い、異次元の強さを持つ、正真正銘の化け物だ。彼はもう既に寿命で何百年も前に死んでいることから、恐らくは彼の末裔が鬼狩りとなって現れたのだろう。日の呼吸の使い手は御二方が手に汗握って必死に潰したというのに。これは由々しき事態だ。今すぐにでも倒さねばなるまい。

 

「分かりました‼︎」

「では行って来い。」

「はい!鳴女さん、よろしくお願いします‼︎」

「分かりました。」ベベン

 

 こうして私は無惨様の宿敵の末裔である、耳に花札のような飾りを付けた鬼狩りの討伐に向かった。




 ということで伊之助戦でした。萌と伊之助の死闘は如何だったでしょうか?ちなみに僕がオリジナルで考えた肆の型「年災月殃」は実在する四字熟語です。意味は「次々と災厄にみまわれること。」らしいです。

 さて、次回からはいよいよ炭治郎戦になります!本作の主人公と本来の主人公との戦いをお楽しみ下さい‼︎

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