我妻物語   作:スピリタス3世

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 配達や試着室等、大正時代にあったかどうか分からない文化が登場しますが、ご容赦下さい。


第四十一話 ぶらり浅草旅

  side 萌

 

 私と甘露寺さんの浅草食べ歩きが始まった。記念すべき最初の食べ物は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、ここの呉服屋さんにしよっ♪」

 

 服だった。

 

「服を食べるんですか⁉︎」

「違うよ⁉︎ついでに服でも買ってこうかな〜、って思って!」

「なるほど…………」

 

 どうやら食べ歩き中に他の店に行くのはありらしい。鬼になってから休暇らしい休暇を一度も取らなかったので知らなかった。いや、正確にはこれも休暇では無いんだけど…………

 

「いらっしゃい、お嬢ちゃんたち!好きなもん見てきな!」

「は〜い!」

「よ、よろしくお願いします。」

 

 さてと、まずは甘露寺さんに合う服を探すか………。もうじき夏。となると浴衣が定番だろう。

 

 まずは色だけど…………あの人は桃色の印象が強いから、桃色の浴衣とか…………は安直か。ここは敢えて髪の色と正反対な水色とかはどうだろうか?とりあえず本人の好みも合わせて聞いてみるか………

 

「甘露寺さん!」

「どうしたの、萌ちゃん?」

「えっと、その〜、この水色の浴衣とか………甘露寺さんに似合うと思ったんですが………どうですか?」

 

 さて、どうだろう?

 

「おっ、いいかも♪とりあえず試着してみるね!」

「あっ、はい!お願いします!」

 

 とりあえず気に入ってくれたみたい。良かった!さて、あとは似合うかだけど…………

 

 

 

 

 試着室から出てきた彼女を見た途端、その心配は無くなった。

 

「どうかな、萌ちゃん?」

「すっごく似合います‼︎」

「ホント⁉︎やった〜♪」

 

 桜餅色の髪の毛に対照的な、今は亡き青空を思い浮かべるような水色。その2つの組み合わせがとても似合っていた。浴衣についてる小さな花模様も可愛らしく、これまた甘露寺さんに似合っている。

 

「それじゃあこれ買おう…………とその前に、他にも着てみたいのがあるんだよね〜。萌ちゃん、ちょっと見てくれない?」

「あっ、はい!」

 

 そして追加の服。今度は何の服を着てくれるのかな?

 

 あと思ったけど、甘露寺さんなら可愛いから何でも似合いそう!凄い綺麗な体型もしているし。自分がちんちくりんだからこそ、すごく羨ましい。血鬼術でいくらでも体型を変えられるとはいえ、それをしても正直虚しいだけだ。

 

 

 

 しばらくすると、甘露寺さんは別の服を着て出てきた。

 

「じゃじゃ〜ん!これどうかな⁉︎」

 

 そう言って着てきたのは、紺のセーラー服だった。元気いっぱいの女学生って感じの雰囲気で、教室の人気者になっている姿がすぐ浮かんできた。

 

「凄く似合ってます!可愛いです!」

「頭良さそうに見えるでしょ〜♪」

「えっと…………」

 

 全く見えない。

 

「そそそ、そうですね!」

「あっ、萌ちゃん嘘ついてるでしょ〜!」

 

 やばっ、バレた!

 

「ち、違…………わないです………」

「だよね〜!さっきのは冗談よ♪」

 

 正直普通の人なら怒ってるが、甘露寺さんならそんな気がした。

 

 それと柱だから忘れがちだが、甘露寺さんだってまだ10代だ。鬼なんかいなければ、きっとこんな感じで本当に学生をやってたのだろう。それを私たち鬼が壊してしまった。本当に取り返しのつかないことをしてしまったのだと、何度も心の中で反芻する。

 

 とりあえず今はそんな甘露寺さんを出来るだけ幸せにすることだけ考えよう。

 

「なんか他に買いたいのあります?」

「えっとね〜、」

 

 そうして甘露寺さんの試着はしばらく続いた。元がいいからか、甘露寺さんはどんな服を着ても似合っていた。本当に素敵だった。

 

 

 

 

 しばらくすると、甘露寺さんの試着祭りが終わった。

 

「えっと、これで終わりかな〜。待たせてごめんね!」

「いえいえ!それじゃあ会計に移りましょう!すいませ………」

「ちょっと待った〜‼︎」

 

 私が店員さんを呼ぼうとした時、甘露寺さんに呼び止められた。

 

「何か忘れてない⁉︎」

 

 何か………って‼︎

 

「すいません、私お金持ってませんでした‼︎」

 

 買い物に不可欠なお金を、私は持っていなかった。魘夢を倒して以降、お館様が給料をあげようかとおっしゃったこともあったが、断っていた。もし私がお金をもらってしまったのなら、天国にいる私に殺された人があまりにも報われないからだ。罪人の贖罪に報酬なんていらない。報酬は零を正にするから貰えるのであって、負を零に近づけただけで貰えるわけもない。

 

「それは私が持ってるよ!」

 

 良かった、お金は甘露寺さんが持ってたのか。それなら安心だ!柱は給料を無限にもらえるから、何でも買えるはず…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「萌ちゃんの分がまだでしょ♪」

 

 えっ、私…………?殺人鬼の私に、お洒落する資格なんてあるのか?いや、ない。楽しむ資格なんてない‼︎

 

「いえいえ、私は大丈夫ですよ!」

「お金なら私が出すから!」

 

 それは更に申し訳ない。甘露寺さんだって他の事にお金を使った方が絶対いいだろう。

 

「ほ、本当に大丈夫です!私は買うもの無いんで!」

「本当に?」

「はいっ‼︎」

「そっか〜、それなら仕方ないね!すいませ〜ん、これら全部下さ〜い!」

 

 良かった。これで甘露寺さんが無駄金を使わずに済んだ。私にお金をかけるくらいだったら、ドブに捨てた方がまだマシだったからな。

 

「あっ、甘露寺さん、荷物持ちますよ!」

「大丈夫、配達*1で送るから!一応巡回中だしね!」

「なるほど、分かりました!」

 

 まあ確かに、服で手が塞がるのは良くないか。そんな事を思いながら、私たちは呉服屋さんをあとにした。

 

 

 

 

 

 しばらくすると、

 

「へいらっしゃい。うちの団子は旨いよ〜!」

 

 私たちは団子屋さんに着いた。どうやら最初に食べるのは団子らしい。

 

「えっと、食べ歩きするから控えめに…………私は30個だとして………」

「「30⁉︎」」

 

 控えめで30個⁉︎やはりこの人の胃袋はおかしい‼︎特異体質のせいとは聞いたが、それにしても量が凄すぎる‼︎

 

「それで、萌ちゃんは何個にする?」

 

 そして私の分か。金も持ってないし、呑気に団子なんか食う資格もないから、ここは食べないのが当然だろう。30個も売り上げるのなら、店的にも問題ないだろうし。

 

「いえ、私は大丈夫です。」

「遠慮しなくていいの♪」

「でも、私お金持ってませんし………」

「そんなの私が払うよ〜♪」

「いや、そんなの悪いです‼︎私なんかにお金を使うなら………」

 

 甘露寺さんは相変わらず優しい人だ。そんな人が損しないような世界になったらいいのに。罪人の自分が言うのもアレだが………

 

 そんな事を思ってると、

 

「こら、小さい嬢ちゃん!歳上の厚意を無下にするってのは、逆に失礼だよ〜。」

 

 団子屋さんに怒られてしまった。

 

「そ、そういうものなのですか………」

「ああ!だから遠慮なく食いな!」

「うん!」

 

 そう言って豪快に笑う団子屋さん。どこもかしこも優しい人ばかりだ。本当にありがたい………

 

「それじゃあ………私は食いしん坊じゃないので、1個で……」

「は〜い!それじゃあ2人合わせて31個、お願いしま〜す♪」

「あいよ‼︎」

 

 ということで、私は団子を食べることになった。

 

 

 

 しばらく隣にあった椅子で待ってると、

 

「へい、お待ち‼︎」

 

 31個の団子が到着した。

 

「わぁ^〜、美味しそぅ〜♪」

「ありがとうございます!」

「ど〜も‼︎それじゃあまた‼︎」

「「は〜い!」」

 

 団子を食べるのは久しぶりだ。そしてこれを見てると…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、お前はあん時の嬢ちゃんじゃねえか………」

「へっ?」

 

 私は考え事をしていたら、禰豆子たちと戦う前に会った、うどん屋さん*2と再会してしまった。

 

「えっと、あの、その………」

「萌ちゃん、知り合い?」

「えっと、前にお会いしたことがあって…………」

 

 この人は私が人喰い鬼だと知っている。私自身が言ったんだ。そんな奴がこんな平気な顔して街中を歩いてるんだ。怖いったらありゃしない。何を私は呑気に遊んでたんだ。甘露寺さんの好意を利用して。ホント最低な女だ。今すぐここを去って、うどん屋さんを安心させないと!というか他の人たちもまた無意識に騙して………。私ってホント最悪だ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫だったか?怪我はなかったか?」

 

 えっ?なんで………なんで私を心配してくれるの…………?

 

「えっと、あの…………」

「怪我?萌ちゃん、何かあったの?」

「無惨の手下だった頃、鬼狩りと戦う直前に会ったのがこの人で………」

「なるほどね!」

 

 甘露寺さんには事情を説明した。あとはこの優しいうどん屋さんに説明しなければ………

 

「怪我はすぐ治ります。人喰い鬼ですから。政府が最近公表された通りです。」

「そうかい。」

「あの時の少年が正義の味方で、私が悪役です。だからお逃げになった方が…………」

「なんか事情があったんだろ。それよりきつねうどんだったよな?今用意するぜ。」

 

 そ、そんな…………私を慰めてくれるどころか、だいぶ前にした注文を覚えててくれたなんて…………しかも合ってるし…………

 

「ありがとう………ございます………」

「それじゃあ私はやまかけうどんで!」

「はいよ!」

「うどんを待ってから、一緒にお団子食べよっ♪」

「はい…………」

 

 本当に、甘露寺さんにしろ、うどん屋さんにしろ、団子屋さんにしろ…………世界には優しい人間が沢山いらっしゃるのだな………本当に………本当に…………泣きそうだよ………

 

 

 

 

 しばらくすると、

 

「お待たせ!きつねうどんと、やまかけうどんな!」

「「ありがとうございます!」」

 

 きつねうどんがやってきた。

 

 こうしてみると懐かしい。お父さんがよく仕事帰りに買ってきてくれたお団子。それは浅草のものじゃないけれど、私が団子を大好きだった事には変わらない。

 

 そしてきつねうどん。私が前にこれを頼んだ理由は、お母さんがよく家で作ってくれたからだ。私はそのきつねうどんが大好きだった。ああ、また会いたいなぁ、お父さん、お母さん。今も地獄の入り口で待ってくれてるんだよね。こんな不出来な娘を。だから早くやるべき事をやって死ななきゃ。

 

 そんな事を思いながら私はきつねうどんを口にすると、

 

「ぐふぁ⁉︎」

「「大丈夫⁉︎」」

 

 ものすごい拒絶反応を起こして吐きそうになった。なんで………?ねえ、なんで…………?

*1
大正時代に郵便があるくらいなら、服ぐらいなら軽いしあってもいいかも、と思って入れました。

*2
豊さん




 ということで、萌と蜜璃ちゃんの浅草旅が始まりました。蜜璃ちゃんの優しさに心打たれていく萌は如何だったでしょうか?

 それと萌が第五話できつねうどんに目を惹かれてた理由が明らかになりました。団子と共に、両親を思い浮かべる大切な食べ物だったのです。ただし、それを食べた萌に拒絶反応が起こります。一体どうなるのか、それは次回のお楽しみに!

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