我妻物語   作:スピリタス3世

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第四十七話 裏切り者会談

  side 萌

 

 珠世さんに会うためにやってきた表参道の入り口では、

 

「珠世様に会いたいと言う鬼狩りがいるんで来てみたら、年増に幼女に蒲公英(たんぽぽ)とは…………これは一体どういうことだ⁉︎」

 

 1人の男が冷たく迎えてくれた。

 

「萌ちゃ〜ん、俺幼女だって〜。俺そんな可愛く見える⁉︎」

「善逸君、何言ってるの?幼女は私でしょ?だってこんなに背も小さいし………」

「黙れタンポポ、ババア。」

「「はぁ⁉︎」」

 

 いや、どう考えても幼女は私でしょ………。しのぶさんも背が低い方とはいえ私よりは高いし、善逸はそもそも男だし………

 

「ねえ萌ちゃん、しのぶさん!あれ退治しましょう!」

「そうね、善逸君。あれはきっと十二鬼月だわ!」

「「雷(蟲)の呼吸………」」

「2人とも、落ち着いて下さい‼︎」

 

 とにかく、あの男の人から話を聞かないと………

 

「あの、すいません………貴方が珠世さんのところに案内して下さる方ですか?」

「それ以外に何があるんだ?」

 

 まあそうか………。それにしても、珠世さんの弟子か何かなのかな?

 

「ですよね………。それではお願いします………」

「「お願いしまぁ〜す。」」

「ちっ、行くぞ。」

 

 ということで、私とふて腐れながら返事をした善逸&しのぶさんは、この男に案内されることになった。

 

 

 

 案内された先では、車の中で大人しく座っている珠世さんがいた。

 

「珠世様、戻りました。」

「おかえりなさい、愈史郎。」

 

 この2人の関係を謎に思いながら、

 

「珠世さん、お邪魔してすいません。鬼殺隊の柱、胡蝶しのぶです。」

「同じく鬼殺隊の我妻善逸です!」

「同じく鬼殺隊であり、かつ鬼の我妻萌です。」

「珠世と申します。その子は愈史郎。よろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

「「よろしくお願いします。」」

 

 しのぶさんの進行の元、話し合いが始まった。

 

 

 

 最初は、

 

「珠世さんって、普段何されてる方なのですか?」

 

 軽い雑談から始まった。

 

「私は普段医者をやってます。」

 

 医者………か。この人は人の命を病気から守っているのだな。裏切り者同士で似たような者だと感じたけど、全然違うな。この人は本物の善人だ。

 

「普段は浅草に住んでいて、表参道には出張医療でやってきました。」

 

 それと、普段は浅草にいたのか…………。童磨戦でもしこの人がいたら、甘露寺さんは死なずにすんだのかな…………。どうしても余計なことを考えてしまう。

 

「医者なんですね。私も同じです。鬼殺隊の柱をしながら、医者をやってます。」

「それは凄いですね。尊敬します。多くの命を守っているのですね………」

「いえいえ、そんな………」

 

 そしてしのぶさん。この人は蝶屋敷で医者もやっている。対象は鬼殺隊だけとはいえ、本当に多くの命を救っている。

 

「いや、珠世様の方が全然凄いんで、安心して下さい‼︎」

「愈史郎、その発言は安心できませんよ?」

「すいません‼︎」

 

 あと、愈史郎さんは珠世さんをものすごく慕っている。ただ、一つ気になることがある。

 

「あの、愈史郎さんも鬼なんですか?」

 

 この人も鬼だということだ。眼を見ればすぐに分かる。鬼がもう一匹いる、ということは私たちは知らなかった。だからこそ、この鬼がどういう経緯で珠世さんのところに居るのかが気になった。

 

「それがどうした、幼女?」

「愈史郎、言葉には気をつけなさい。あと、その人は幼女さんではなくて萌さんよ。」

「はいっ、珠世様‼︎」

 

 この2人のやりとりに独特な面白さを感じていると、

 

「愈史郎は私が鬼にしました。」

「「「えっ⁉︎」」」

 

 珠世さんがとんでもないことを言った。

 

「といっても、彼の同意の上です。不治の病を負って、余命幾ばくもなかった彼に、鬼について説明した上、こうしました。」

 

 やり方的には無惨と同じだ。ただ、

 

「凄い………この人からは優しい音しかしない………」

「当たり前だろ?珠世様を舐めるな。」

 

 善逸が言うのだから間違いない。この人は完全に善意でやっている。だからこそ、愈史郎さんにも慕われるんだろうね。

 

 

 

 

 その後もしばらく話をしていると、

 

「そういえば、我妻萌さんは昔鬼舞辻無惨に使えてたとお伺いしたのですが………」

「はい、その通りです。」

 

 当然、私の話題になった。いうなればこれは裏切り者会談。鬼舞辻無惨に愛想を尽かした者同士の話し合いだ。

 

「あのお方は最低最悪ですよね?」

「ホントその通りです‼︎」

 

 気が合うのは容易だった。

 

「臆病者で小心者、常に何かに怯えてる!」

「しかも自分の勝手で、すぐに人を騙しますよね⁉︎」

「萌さんも騙されたんですか⁉︎私もです‼︎」

「奇遇ですね‼︎私は両親の仇を討って私を助けてくれた恩人、って名乗られました!殺したのはアイツなのに‼︎」

「私は病弱で、子供が大人になるのを見たかっただけなのに………アイツに鬼にされたせいで、理性も無くなり食い殺してしまったんです‼︎夫も含めて‼︎」

 

 珠世さんはそんな境遇だったのか………やはり私と似ている………珠世さんの方が私よりも何倍も可哀想だが。

 

「ああ、ホント憎たらしい‼︎さっさと死ねばよかったのに‼︎私の夫と子供を返せ‼︎」

「ですよね⁉︎同じ裏切り者同士、一緒に無惨を倒しましょう‼︎」

「そうですね‼︎あの男が滅びることが、私の願いです‼︎」ガシッ

 

 手を取り合ってお互いの顔を近づけ、意気投合する。裏切り者同盟が、これにて成立だ‼︎

 

「くそっ、忌々しい女め………珠世様とあんなに仲良くなりやがって………」

「あの〜、しのぶさん。これ俺ら要ります?」

「私も思った。」

「なら一緒に逢引きしません⁉︎」

「バカじゃないの?嫌よ。」

 

 気がついたら、他の参加者を置いてけぼりにしていた。だからとりあえず他の人に話を振ることにした。

 

「あ、あの、すいません………こ、こんな感じで話がまとまったのですが………」

「萌、ご苦労様。」

 

 素直に労ってくれるしのぶさん。甘露寺さんが亡くなってから、少し彼女からの対応が変わって気がする。

 

「後は珠世さんをお館様の家に案内することですね。」

「わ、私を鬼殺隊の本部に入れていいのですか………?」

「ここに前例がいますんで。だから安心して下さって大丈夫です。」

「なるほど………それならありがとうございます。」

 

 ちなみに珠世さんには、無惨退治の薬をしのぶさんと協力して開発してもらうことになってる。無惨はクズだが強さだけは本物。薬で弱体化でもしないと、鬼殺隊全員でかかっても倒せないだろう。

 

「それでは、今後よろしくお願いします。」

「「「よろしくお願いします。」」」

「ふんっ!」

「ほら、愈史郎も。」

「よろしくお願いします‼︎‼︎‼︎‼︎」

「「「よろしくお願いします………」」」

 

 こうして、裏切り者会談は終了した。

 

 

 

 終了後、珠世さん愈史郎さんとしのぶさんが薬について打ち合わせする、とのことで、私と善逸で表参道を巡回することにした。

 

「ねえ萌ちゃん、しのぶさんと愈史郎さんって似てない?」

「えっ、どこが?」

「怒りっぽいとことかさ!」

「あっ、確かに。」

 

 きっとあの2人は薬開発中にも揉めるのだろう。光景が容易に想像出来る。

 

 そんなことを思ってると、

 

「それにしても、鬼になっても長生きしたい、か〜。俺はしたくないな〜。」

 

 善逸がまさかのことを言い始めた。

 

「えっ、長生きしたくないの?」

「うん。まあそもそも痣出したから、長生き出来ないけどね〜。」

 

 そうか、善逸も痣を出してたんだよな、堕姫戦の時に。最初に聞いた時は正直ショックだった。貴方みたいな優しい人が長生き出来ないのが残念で。でも痣出したのを喜んでたから、その時はおめでとうと言うしかなかった。今もだけど。

 

「そういえば出してたね………」

「うん。まあ俺なんか長く生きてたって、誰も得しないしな〜。」

 

 善逸がさらっととんでもないことを言う。彼にとっては軽い冗談かもしれないけど、私にとっては違う。貴方が生きてることで得をする人が沢山いる。貴方はとても価値のある人間なんだ。だから早く言わないと…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「あぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」」」」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎人が人を食い始めたぁ⁉︎」

「お姉ちゃん、急にどうしたの⁉︎私だよ、食べないで⁉︎」

「助けてぇぇぇぇぇぇ‼︎」

「痛い、痛い、かじるな‼︎」

 

 そう思ってたのに、辺り一面が急に地獄と化したため、その言葉は引っ込まざるを得なくなった。人が急に人を食い始めた?しかも何人も?なんだ、何が起きてるんだ?鬼が急に出てきたとでも言うのか⁉︎




 ということで、萌と珠世様の裏切り者会談でした。元上司の話題で愚痴り合う元同僚、現実世界でもありそうですね。

 そして、最後に急展開です。人間が人間を襲い始めました。しかも急に何人も。どうなるのかは、次回のお楽しみに!

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