我妻物語   作:スピリタス3世

5 / 60
浅草の方言を再現するのは難しかったです。だから店の人やうどん屋の豊さんの口調が変かもしれませんが、何卒よろしくお願いします。


第二章 仇討ちの交錯
第五話 日の呼吸の使い手


  side 萌

 

 鳴女さんに落とされた先は賑やかな街だった。夜なのにも関わらず、かなりの人で賑わっている。それと、私の地元じゃ昼はともかく夜はこんなに賑わってなかったな。こりゃあ耳飾りの剣士を探すのは大変だ………

 

 それにしても、ここは色んな店があるな。

 

「いらっしゃい、この服はどうかね?」

「今日は見るだけなの。」

「あら、そうかい。」

 

 あれは呉服屋か。かっこいい店長さんが上品な奥さんをもてなしてる。それにしても、何も買わないのに店にいるのはありなのか?あんまり良くないと思うけど…………。そういや私は鬼狩り狩りを始めてからは鬼狩りの隊服しか着てない気がする。たまにはああいったお洒落をしてみたいな。

 

「へいらっしゃい。うちの団子は旨いよ〜!」

「おっし、それじゃあ1つもらってくか!」

「まいど!」

 

 あれは団子屋か。そういえばよくお父さんが仕事の帰りに団子を買ってきてくれたな。懐かしい。今はお金を持ってないし、鬼狩りを狩るので忙しいから買えないが、いつか鬼狩りがいなくなったらまた買って食べたいな。

 

「そういやここ浅草にめちゃくちゃ旨いうどん屋があるらしいぜ。」

「それはそれは………今度寄りましょう!」

 

 前にいる夫婦の会話を聞いて知ったのだが、ここは浅草なのか。来るのは初めてだな。私もお父さんとお母さんが人間に殺されてなかったら今頃ここに遊びに……………いや、過ぎた事を考えるのはやめよう。今はただ、鬼狩りを探して殺し、喰うことだけを考えよう。

 

 

 

 

 そんな事を考えながら街を歩いていると、

 

「ったくあのガキは‼︎途中でうどん食うのをやめて逃げやがって‼︎」

 

 街外れの屋台の前で怒っているおじさんがいた。どうやらうどん屋らしい。さっき夫婦が言ってたのはこの店か?そういや鬼になる前はたまにうどんを食べてたっけ。お母さんが作るうどんは美味しかったな〜。

 

 そんな事を思っていると、

 

「ってそこの嬢ちゃん。うどんはどうかい?」

 

 その店主に話しかけられた。

 

「えっと………私お金持ってないので………」

「うちは安いよ?」

「いや、本当に一銭も持ってないので遠慮しておきます………」

「そうかい。」

 

 鬼は元々人間を食べて生活している。服は人間の頃着ていた服を着ている場合が多いし、家は太陽さえ凌げればいいので持つ必要がない。だから堕姫さんみたいに花魁としてお洒落が必要な場合とかを除いて、基本的に鬼はお金が要らないのだ。当然私も例外ではなく、鬼になってからは基本お金を持たずに生活している。だからこういう時もお金がなくて買えないのだが、まあ今は鬼狩りを狩るのが優先だから仕方あるまい。

 

 そんな事を思っていると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お代は要らねえ。だから好きなの食いな。」

 

 うどん屋の店主からまさかの言葉が飛んできた。店からしてみたら、金の持ってない客なんて論外だろう。それなのに何故、こんな事を言ってくれたのだろうか………

 

「えっと、その、それは流石に悪いですし………」

「気にすんな。俺は元々うどんが好きでな。ただうどんの魅力を皆に知って欲しいだけなんだ。」

「それでも………お金がないと店もやりくり出来ませんし……」

「お前さんはここが儲かってないと言いたいんかい?」

「いえ、違います‼︎決してそんなつもりは………」

「なら食ってきな!」

 

 そう言ってにっこりと笑う店主。ここまで言ってくれるのなら、善意を無下にするのはかえって失礼か…………

 

「それでしたら、ご馳走になります………」

 

 ということで、私はうどんを食べる事になった。

 

「んじゃ、何にすんだい?」

 

 そう言われて私はお品書きを見た。そこにはたぬきに天ぷら、しっぽく、山かけ、あんぺい、と沢山の種類があった。その中でも、私はあるものに目を惹きつけられた。

 

「きつねうどんでお願いします。」

「はいよ!」

 

 きつねうどんだ。かけうどんに甘辛く煮た油揚げを乗せたものである。油揚げがきつねに見える事からこう呼ばれているらしい。まあ本当のところは詳しく知らないが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません、山かけうど………って逃げて下さい‼︎」

 

 そうこうしているうちにお目当ての鬼狩りがやってきた‼︎緑色の市松模様の上着を着て、背中に木箱を背負っており、両耳には太陽の模様が書いてある耳飾りをつけている。間違いない、無惨様が見た人と同じだ。歳は私と同じくらいだろうか?なら敬語はやめておこう。

 

 だがなんで私たちは逃げなきゃいけないんだ?浅草に危険人物でも現れたのか?そんな感じの雰囲気は街からはしなかったが………。でもかなり焦ってるように見えるし、ここは一緒に逃げた方がいいか………

 

「おい、さっきのガキじゃねえか‼︎うどんを残して去りやがって‼︎」

「うどん屋さん!とにかくよく分かりませんが、私と一緒に逃げた方がいいでしょう‼︎」

「うどん屋さん‼︎そこの金髪の人は人喰い鬼です‼︎だからその人から早く逃げて下さい‼︎」

 

 はぁ?私は今鬼血術で人間の姿をしているはずだが?なのに何故分かる?まさか猪男と似たような類の人間か⁉︎でも殺気は放ってないはずだが………

 

「うどんを残した奴の言う事なんか信用できるか‼︎それにお前がこの子をいじめてるのか⁉︎」

「俺を信用して下さい‼︎その人は危険です‼︎」

「なんで私が鬼なの⁉︎どう見ても人間の見た目をしてるでしょ⁉︎」

「嘘をついてる臭いがする‼︎それに、お前からは鬼の臭いがするからだ‼︎」

 

 クソ、コイツめ‼︎

 

「臭い臭いって、私一応女なんだけど‼︎いきなりやってきてそんな事を言うなんて、失礼だとは思わないの⁉︎」

「でもお前は鬼だろう⁉︎俺はこの鼻で人の感情を読んできた‼︎」

 

 鼻で人の臭いを嗅いで感情を読むだと⁉︎日の呼吸を使う奴はそんな事まで出来るのか⁉︎にわかには信じ難い話だ…………ん、信じ難い?

 

 そうだ、ここにはもう1人一般人がいる。うどん屋さんにとってもあの男の言ってることは信じ難いだろう。しかも信用はこっちのもの。ならば嘘を通して誤魔化してやる‼︎

 

「鼻を使った読心術とか、君の方がどう考えても鬼でしょ⁉︎」

「違う、俺は人間だ‼︎それに俺は、太陽だって浴びられる‼︎」

「証明は出来るの⁉︎」

「朝まで君と一緒にここに居てやる‼︎もちろんうどん屋の店主を守りながら‼︎」

 

 くそっ、やけに強気だな………誤魔化しきるのも難しいか?でもここでこのまま朝まで粘られると大変なことになる…………

 

 そんな事を思っていると、

 

「お前、金無い嬢ちゃんに酷いことを言いやがって‼︎いい加減にしろよ‼︎」

 

 私はうどん屋さんに庇われた。そう、この人の信用があるから、私はこの場で優位に立てる。この状況は利用させてもらうぞ。さあ臭い男よ、この状況で私を断罪出来るものならやってみろ‼︎

 

 そんな事を思っていたのだが………

 

「うどん屋さん、途中で食べ残して去ったことは謝ります‼︎本当にすいませんでした‼︎でもこれだけは信じて下さい‼︎そいつは何人も人を喰ってる人喰い鬼です‼︎一緒にいると危険なんです‼︎食べられます‼︎そいつは貴方の敵です‼︎だからどうか、そいつから逃げて下さい‼︎」

 

 臭い男が謝りながら、うどん屋さんに力説した。それを聞いた時、私はハッとした。鬼は人間の敵。いくら私に食う気がないとはいえ、うどん屋の立場からすれば私は危険な存在なのだ。それに、私はこのままこの場にコイツと居座るわけにはいかない。ここで死んだら、無惨様にかなりの迷惑をかけるだろう。だからあの男を殺して逃げなければならない。だがその姿をうどん屋さんは見たいだろうか?いや、見たくないはずだ。自分が庇った子が使命のためとはいえ人を殺したら、目も当てられないだろう。余計な責任を感じてしまうかもしれない。そんな事になるくらいなら……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ………そうです、あの男の言う通りです。だからうどん屋さん、私から逃げた方がいいですよ?」

 

 正体をバラして、余計な情を抱かせない方がいいだろう。私はうどん屋さんに正体を告げながら、眼と歯を鬼のものに戻した。

 

「嬢ちゃん………」

「おい鬼狩り、ここだとお前の刀がこの人間に当たるかもしれないぞ?それは嫌だろう?」

「当たり前だ。」

「だからこの人から離れたところで戦おう。」

「…………嘘は言ってないようだね。」

 

 そして私はうどん屋さんを逃した後、その方向とは逆方向に臭い男と一緒に動いた。

 

 

 

 

 

 しばらく動いて完全に人気の無いところに来た後、臭い男は口を開いた。

 

「君はさっきなんであの男を喰わなかったの?俺が言うのもなんだけど、喰える機会はいっぱいあったはずじゃ………」

「私は鬼狩りを狩って喰うのが仕事だからな。関係ない人は食べない主義なんだよ。」

 

 私がそう答えたとき、

 

「………だから君から人喰い鬼の刺激臭と優しい臭いが同時にしたのか〜。」

 

 臭い男はにこっと笑いながら変な事を言った。私が優しい?そんなはずはないだろう?ましてやお前ら鬼狩りにとっては天敵のはず。それなのに何故、そんな気持ちがあるのだろうか?まあいい、ここは適当に受け流すか…………

 

「臭い臭いって、女の子にそれ言うのやめなよ。嫌われるよ?」

「………分かったよ。ごめんね、変なこと言って。」

「分かればいいよ。」

 

 私を優しいと認識してくれたのなら、この男は油断してくれたりはしないのだろうか?もししてくれるのなら、私はその隙をみて一気に倒す事にしよう。

 

「とにかく、君が優しい心を持ってることは分かった。でも俺の仲間達を殺す君を、俺は見逃すことは出来ない。」

 

 臭い男は刀に手をかけながらそう言った。どうやら油断する気も見逃す気もないらしい。だったらもうやるしかないか!

 

「なるほどな。ならば私も遠慮せずに、お前の事を殺してやるよ‼︎」

 

 私はそう言い放ち、鞘から刀を抜いた。




 ということで、うどん屋の豊さんとのやりとりも終わり、ついに臭い男こと炭治郎戦が始まります!譲らない気持ちを持つ者同士の熱い戦いをお楽しみに!

 ちなみにサイコロステーキ先輩も伊之助も炭治郎も作中では萌の前で一度も名乗ってないため、萌から賽子男だの猪男だの臭い男だの変な呼ばれ方をされてます。ちゃんと名乗った善逸だけは名前で呼ばれてますね。

 最後に、評価・感想をお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。