我妻物語   作:スピリタス3世

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第五十一話 愛

  side 影人

 

 嘘だろぉぉぉぉぉぉ⁉︎あの少年の闇が解けてしまったじゃないか⁉︎ふざけるな、この我妻萌‼︎幼女のくせに、調子乗るんじゃねえぞ‼︎無惨様には俺より好かれてたし、その無惨様を裏切るし、そして何より……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大好きなを殺しやがったし。

 

 俺には、それはそれはなんとも可愛らしい弟がいた。名は八咫河元親*1。俺と同じく、学力至上主義の八咫河家に産まれた男だった。

 

 元親は常に努力家で、いつも俺に追いつこうと必死で勉強していた。そして全く追いつけず、両親に叱責ばかりされていた。

 

「清親は相変わらず凄いねぇ。母さん嬉しくなっちゃうよ!」

「ありがとうございます‼︎」

「それに比べて元親、お前は何故そんなに勉強が出来ないんだい⁉︎」

「すいません………」

「多分医者が子供を取り違えたんだろ。そうに決まってる。」

「あなたの言う通りね!」

 

 特に両親に叱責されて怯えてる顔がめちゃくちゃ可愛かった。すごくエロかった。その泣き顔を思い出すだけで俺の股間が疼き、居ても立っても居られなくなるくらいに♡そのために勉強を頑張ったまである。絶対に追いつかせないために。しかし彼の妖艶さはそこだけではなかった。

 

 俺が無惨様に惚れてナンパし、鬼になってからしばらくしたある日だった。何があったかは知らないが、アイツは鬼狩りになっていた。しかも単なる正義の味方じゃない。正義を盾にし、自分にとって都合の悪い人間を殺しまくる。ハッキリ言って悪行だ。ただその時の高揚した表情と、行動そのものの愚かさが、なんとも愛らしかった♡

 

 天上天下唯我独尊、それでいて心のどこかで怯えている。俺はそういった人間が堪らなく好きなのだ。愚行を愚行とも思わず、常に自信に溢れている。その顔がまず美しい。そしてそれが恐怖で歪む姿が、これまた美しい♡元親と無惨様こそが、まさしくそれだった♡この2人さえいれば、それ以外はどうだっていい。むしろ死んでくれた方が、俺が独占できる。そんなの、最高じゃないか♡想像するだけでイッてしまうよ♡

 

 なのに我妻萌という女は元親を殺し、無惨様を裏切った。俺の最愛の人を思うがままに貶した。人類何万年という歴史の中で、彼女ほど悪事を働いた人は居ないだろう。だから俺がここで殺す‼︎そのために愛しの無惨様に言って外に出てきたんだ‼︎

 

 

 

 

  side 萌

 

 私は元に戻った善逸と街中を走り回っていた。影人を探すために。

 

「鬼の音が強くなってきている………」

「じゃあもうすぐだね。」

「うん!」

 

 そしてしばらく走っていると、

 

「萌ちゃん、アイツか⁉︎」

 

 善逸が屋根の上に佇む鬼を指差した。私はその方向を見ると、

 

「ようやく来たか、我妻萌………」

 

 陰陽師風の衣装に身を包み、顔を隠した影人がいた。

 

「うん。まあすぐに死んでもらうけど。」

「そうはいかないさ。」

「妓夫太郎に勝った私に勝てるとでも?」

「なあ我妻萌、この顔を覚えているか?」

 

 話を遮って、彼は顔を見せてきた。そういえばコイツの顔、ずっと隠してたから知らないや。よっぽどのイケメンなのかな…………って!

 

「八咫河、なんで生きてるんだ⁉︎」

「違えよ、お前が殺したのは俺の弟さ!」

「ってことは、その兄……っ!」

 

 アイツみたいに残虐非道なのだろう。そして人間時代は、次期柱候補のアイツくらい強かったのだろう。それが鬼になったんだ。こりゃかなり覚悟しないとな。

 

「萌ちゃん、八咫河って誰?」

「私が殺したクズの鬼殺隊員。自分勝手で気に食わないと人間ですら殺してた。」

「何でそんなのが見つかってなかったんだよ………」

「鎹鴉も殺したり操ったりしてたから。」

「最低すぎる…………」

「うるさい‼︎俺の弟を侮辱するな‼︎」

 

 侮辱って…………されてもしょうがないでしょ。

 

 そんなことを思ってると、

 

「とにかく、お前らはこれから殺されることになる。」

 

 影人が臨戦態勢であることを示すように、腰を低くし両手を前に出した。正直言って気持ち悪いが、今はそんなことを思ってる場合じゃない。私も日輪刀を抜かないと…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「100人の人間に、な。」

 

 えっ、100人?どういうこと…………

 

「「「「「あぁぁぁぁぁ‼︎」」」」」

 

 って影人がいる下の建物から、100人もの人たちが出てきた‼︎しかもアイツに操られてる‼︎くそっ、この人数じゃ、流石に対処できない……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃」

「えっ?」ボトッ

 

 ってあれ?いつの間にか善逸が影人の首を斬ってる?

 

「なんで俺負けてんの⁉︎」

「それはテメェが遅すぎるからだよ。」

 

 アイツも斬られたことに気づいてないし。なんていうか、速すぎない⁉︎

 

「くそっ、ふざけんな‼︎さてはあのクソアマの仕業か⁉︎」

「いや、私関係ないけど………」

「萌ちゃんを侮辱するな、このド変態が。」

 

 善逸が影人に言い返してくれた。それが嬉しい。

 

「それはお前も同じだろぉぉぉぉぉ、多分んんん‼︎」

「俺は変態じゃない。」

 

 それは違うと思う。

 

「くそぉぉぉぉぉ、無惨様ともっとイチャイチャしたかったのにぃぃぃ‼︎」

 

 こうして影人はあっという間に、塵となって消えていった。

 

 

 

 

  side 影人

 

 俺は死んだのか…………って随分真っ暗な世界だな。ここは、どこだ?

 

 炎が俺を包んでいく。もしやこれは、地獄の業火ってヤツか。ってことは………………っ!

 

「くそっ、何で俺が地獄なんかに‼︎おかしいだろ‼︎」

 

 いたっ、愛しの元親だ♡地獄でお勤めしているみたい♪可愛いね♪

 

「元親〜、貴方のお兄ちゃんだよ〜♪」

「うわっ、クソ兄貴じゃん‼︎来んじゃねえよ、気色悪い‼︎」

「あぁっ、その罵声すらも気持ち良い♡///」

「キモっ‼︎」

 

 これから元親と一緒にいれると思うと、胸が高鳴って高鳴って仕方がなかった♪

 

 

 

 

  side 萌

 

 影人を善逸が瞬殺した後、私たちは色んな人からお礼を言われてた。

 

「ありがとうねぇ、2人とも。助かったよ。」

「自分の身体が勝手に動くの、めちゃくちゃ怖かった………」

「「いえいえ〜!」」

 

 鬼だった頃なら素直に受け取れなかった感謝の言葉。でも鬼狩りの今なら、受け取ることができる。これも善逸のおかげだな。

 

 

 

 

 しばらくしてお礼が終わると、私たちは助けた人たちに別れを告げ、しのぶさんたちのところに戻ることにした。

 

「アイツ雑魚だから人間盾にしてたのか〜。ホントクズだね、善逸。」

「まあね〜。」

 

 それにしても、影人を倒したってことは………夜が明けるってことになる。今はまだ暗いままだから、恐らく夜なのだろう。となると朝日が昇ったら私は死ぬことになるが…………まだ死んではいけない。無惨が生きてるからだ。アイツを殺すこと、それが私の使命だ。

 

「それにしても、萌ちゃんとずっと一緒か〜。それってもう結婚だよね⁉︎ね⁉︎」

 

 善逸にはずっと一緒に居るって言っちゃったけど、正直アレは失敗だったかもしれない。こんないい人と悪人の私がくっつくのは間違ってるのかもしれない。

 

「そう、なのかな………?」

「そうだよ、そうだよ‼︎うん、これは間違いない‼︎」

 

 でも善逸は、私が一緒に居ることで救われたんだ。共に歩むことで善人が救われるのなら、そうするのが悪人の定だろう。

 

 だから無惨を倒した後も、善逸が天寿を全うするまで、

 

べべん‼︎

 

 私がそばに…………って鳴女の琵琶の音⁉︎どういうことだ⁉︎

 

「萌ちゃん、地面が………っ!」

 

 善逸に言われるがまま下を見ると、そこにはさっきまであった道はなく、かわりにどこまでも落ちてゆく無限城があった。

 

「しまった………っ‼︎」

 

 広い襖、掴めないふち、そして落ちるしかない2人…………

 

 

 

べべん‼︎

 

 

 

 再び琵琶の音が鳴り響くと、そこにはさっきまでの表参道の街並みは一切なく、延々と続く無限城だけがあった。私と善逸は誰とも連絡が取れないまま、無限城に閉じ込められてしまった。

*1
第三章に出てきたクズ鬼殺隊員




 ということで、第九章終了です!鬼滅は兄弟家族の物語なので、こういうタイプの兄弟も出してみました。ちなみに元親(弟)は清親(兄・影人)のことは気持ち悪いぐらいにしか思っておらず、どうでもいいと思っています。だから第三章で出てきませんでした。

 ちなみに影人は血鬼術こそ強いですが、フィジカルはお堂の鬼より下です。弟と違って運動音痴なので。

 さて、次回からいきなり最終章です。無限城に閉じ込められた2人、一体どうなるのか⁉︎お楽しみに!
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