我妻物語   作:スピリタス3世

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最終話 我妻物語

  side 萌

 

 残り時間は15分。それまで無惨を絶対に日向に留め続ける。ここで必ず勝って、鬼の居ない世界を作るんだ‼︎それが私の、罪滅ぼしなのだから…………

 

 最後の技を出し切り、意識が遠のいていく。もうそろそろ私の命も終わるだろう。次第に山から太陽が見え始め、街が明るくなってゆく………。これなら無惨も………倒せたかな?

 

「くそっ、手こずった‼︎猗窩座、後は任せたぞ‼︎私は日陰へと逃げる‼︎」

「はい。」

 

 嘘………でしょ?無惨、まだ生きてたの………?猗窩座も………

 

 そして辺りを見渡すと………

 

「「「………」」」

 

 柱3人が息絶えてた。不死川さん、宇髄さん、そして悲鳴嶼さん。そんな………やはり鬼の耐久力には、人間は勝てないの………?

 

 って何を言ってるんだ、私は。私だって鬼でしょうが。その証拠に、私は死にそうになりながらも、無事なんとか生きている。無惨の血が入ってなかったら、普通に元気だっただろう。

 

 そしてこのままだと無惨が逃げる。奴は私が地獄に道連れにするって決めたんだ………っ‼︎

 

「萌ちゃん!」

 

 ん?これは善逸の声………?

 

「脚に力を入れて、地面を蹴って、思いっきり前に進むんだ‼︎そして一気に、無惨を斬っちゃえ‼︎」

「善………逸?」

「頑張って、萌ちゃん‼︎俺はその先にいるから‼︎」

 

 もしや善逸が、天国から助言してくれたのかな?やはり貴方は死んでも尚、本当に優しい人だ。そんな貴方の言葉に、私は応えたい‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月の呼吸 終の型 闇月・霹靂一閃」

 

 残された力を振り絞り、善逸の壱の型を真似て、無惨へと突き進む。

 

「くそっ!貴様、何をする気だ………っ⁉︎」

 

 そしてあと一歩のところで日陰に入れた無惨の脚を斬り落とした。弱体化が進んだ無惨は傷の回復速度も遅くなっており、謎の古傷も徘徊していた。だから脚を回復するより先に、転倒した。

 

「しまった、日の光が……っ‼︎うわっ‼︎」

 

 そして無惨が太陽から自分の身体を自分の皮膚で覆って守ろうとする。それを、

 

「させる………かっ‼︎」

「くそっ、痛ぁぁぁぁ‼︎」

 

 赫刀で刺して阻止する。まあ痛めつけるだけだけど。

 

 

 

 そうしているうちに、久しぶりに日の光を浴び、視界がどんどん狭まってきた。身体の端々が塵となって消えゆくのを感じる。あぁ、私はここで死ぬのだろう。これでやっと、この世から悪い鬼を消すことが出来た。自分も含めて…………

 

 

 

 

 

 

 再び目を覚ますと、そこは真っ暗闇の空間だった。そしてそこは、前に首が斬られて時に見た空間と同じような場所だった。

 

「猗窩座、なんで萌を攻撃しなかった⁉︎女に手を上げないと決めてても、あそこはやるべきだろうが‼︎」

 

 そこでは、無惨が猗窩座を責めようとしていた。どうやら私は無惨の討伐に成功したらしい。ほっと一息ついてると、

 

「私の夫にこれ以上話しかけないで下さい‼︎」

 

 知らない女性が猗窩座と手を繋いでいた。この人は一体誰なんだ?

 

「はっ?」

「行きましょう、狛治さん。」

「はい、恋雪さん。」

「ちょっと待て貴様らぁぁぁぁ‼︎私を置いて行くなぁぁぁぁ‼︎」

 

 無惨はあの2人について行こうとしていた。だが、

 

「ドウモ、閻魔デス。鬼舞辻無惨、貴方ノ行ク地獄*1ハコチラデス。2人トハ違イマス。」

「ふざけるな‼︎なんで私だけ違うんだぁぁぁ⁉︎」

 

 地獄の入り口に居た閻魔様に無理矢理別のところへ連れて行かされた。本当に最期まで、哀れな男だ。

 

 

 

 

 

 さてと、私も地獄に行くか。罪を償う為に。前は迎えに来てくれてたお父さんとお母さんも、今回は居なかった。きっと天使に呼ばれて天国に行ったのだろう。

 

 そして善逸は当然居なかった。それはそうだ。あれだけ世の為人の為に頑張った優しい子が地獄になんかいるはずがない。きっと天国で楽しい暮らしをしてるのだろう。ずっと一緒に居るって約束はしたけど、流石に何も悪いことしてない人を地獄に巻き添えにするのは申し訳ないし。

 

「ドウモ、閻魔デス。我妻萌、貴方ノ行ク地獄ハコチラデス。」

「分かりました。」

 

 そんなことを思いながら、私は地獄への扉を開いた…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お義父さん、お義母さん‼︎萌ちゃんもう来ちゃったよ‼︎」

「なんだと、善逸⁉︎それはマズい‼︎こっちは魚がまだ焼けてないぞ‼︎」

「味噌汁も出来てないわ‼︎善逸君、ご飯は⁉︎」

「まだ炊き上がってませぇぇぇぇん‼︎」

 

 するとそこでは、お父さんとお母さん、それに善逸が、一つ屋根の下で食事を作ってた。なんで?

 

「え、えっと………」

「萌ちゃん、ちょっと待っててね〜‼︎まだご飯出来てないから………」

「いや、そうじゃなくて………」

「あっ、お義父さんとお義母さんにはもう挨拶したよ‼︎これからは俺が萌ちゃんの旦那さ‼︎」

「いやいやいや、そうじゃなくて…………」

「なんで3人とも居るの?ここは地獄じゃないの?」

 

 私は確かに地獄への扉を開けたはず。それなのに何故、この3人いるのだろう?もしかして私は閻魔様の手違いで、天国に来ちゃったのかな?

 

「地獄で合ってるよ。萌ちゃんはこの家で暮らしながら、地獄での勤めを果たすんだ‼︎」

 

 どうやら手違いではないらしい。

 

「じゃあなんで皆地獄に居るの⁉︎誰も悪いことしてないじゃん‼︎私と違って‼︎皆天国に行くべきなのに………っ!」

 

 もし私のせいで連帯責任とかになってたら………嫌な考えが頭をよぎる。すると…………

 

「萌ちゃんが居るところが、俺たちにとって天国だからさ!」

 

 善逸はそう言って優しく抱きしめてくれた。それを言われると、私としてもとても嬉しくなる。やっぱり私はこの人のこういうところが好きだ。

 

「ありがとう………っ!」

「ど〜も♪」

「萌ちゃん、いい旦那さんを持ったわねぇ。」

「お父さんも嬉しいぞ!」

「お父さん、お母さん、ありがとう……っ!」

 

 そして私を育ててくれたお父さんとお母さんは、やっぱり本当にいい人だ。

 

「おっ、そんなこと言ってるうちに、魚が焼けたぞ!」

「味噌汁も出来たわ!」

「萌ちゃん、ちょっと待っててね………えっとご飯は………炊けてる‼︎」

「よしっ、それじゃあ皆で飯にするか‼︎」

「萌ちゃんの鬼舞辻討伐と、」

「俺との結婚を祝して‼︎」

 

 そんな人たちと同じ屋根の下で、一つの家族として暮らせるのがとても嬉しい。これからの地獄の勤めは長いだろうけど、この人たちと一緒なら、きっとやっていけるだろう。

 

「皆、ありがとう………っ‼︎本当にありがとう‼︎」

 

 私はそう言ってにこりと笑い、子供のようにはしゃぎながら食卓へと向かったのであった。

*1
地獄の階級は仏教と同じです。犯した罪の重さにより、行き先が変わります。




 ということで、我妻物語、完結です‼︎全60話にわたって読んでくださり、誠にありがとうございました‼︎萌と善逸、2人の我妻による物語は如何だったでしょうか?

 ちなみに鬼滅に関する話は今後書かないと思います。一度猗窩座主役のバカテスを書こうとしたのですが、諦めました。代わりに善逸主役の物語が既に掲載されてますが、それは本作よりもだいぶギャグ多めの話になってます。

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