「はぁ……」
雪降る空を見ながらブランは小さくため息をつく。最近忙しすぎる。というのも、普段の仕事に加えて近々開催される冬のコミックなマーケットに出す新刊の執筆もしているのだ。いよいよ徹夜続きの日が始まりそう…そう考えながら
「なにか…側近みたいな人が欲しいわ…」
こんなことも考えていた。
女神候補生のロムとラムはまだ幼いから仕事を任せられない。教祖の西沢ミナは旅に出ていて留守。フィナンシェは居るが、メイドとして働いてもらっている上に仕事を任せたら絶対に倒れる。だからせめて、自分の身の回りの事をサポートしてくれる人が欲しいのだ。
「そんな人が都合よく表れたり…は、無いか」
ないものねだりしてもしょうがない。椅子に座り、仕事を再開しようと思った時、机の上の書類の中から一つだけ目に入ったものがあった。昨日渡されたギルドからの
「ルウィー周辺での報告…つまりこのままだとルウィーに人斬りが入ってくる可能性も…?」
まずい。もしそうなったら多くの国民が傷つく事になる。ブランは身支度を整え、人斬りの調査に赴いた。
❅
依頼書に記されている場所周辺をくまなく調査してみた。が、これといった手がかりはなく、痕跡すら見つけることは出来なかった。
「そもそもモンスターじゃないなら同じ場所に黙って居るはずない……仕方ない、今日は帰ってもっと情報を集めなきゃ」
そして帰ろうとしたそのとき……
「お?」
「え?」
視線の先には一人の少女が居た。雪の中だと目立ちそうな紺色の道着袴。そして左右の腰に一本づつ刀を携えている。道着姿、二本の刀。人斬りの特徴と一致する。
「あなた……」
ここで何をしているか聞く前に、ブランの声を遮るように少女は一言
「なんだ、ガキか」
と、割と大きめな声で言った。
「ガっ……!?」
確かに見た目は幼いかもしれないが、これでも一国の守護女神。子ども扱いされるのは癪に障る。
「私は子どもを虐める趣味は無いよ。さっさとお家に帰りな」
「あ、あなたこそこんな所に居ないで帰ったらどう?それに、私は子どもじゃない」
「子どもじゃないなら何……もしかして、子ども扱いされるのが嫌いなタイプ?」
「そういう訳じゃなくて本当に……」
守護女神と知ってか知らずか、少女はブランを子ども扱いするのをやめなかった。
「じゃあ私がここにいる理由を話すわ。ここ最近、ルウィー周辺で人斬りについての報告があったの。私はその調査に来た。ただそれだけ」
「………ごっこ遊び?」
「っ……! 本当に調査で来たのよ……!」
「本当に?だったらツイてないね。多分その人斬り、私のことだから」
あっさり自白した。
「そう。なら大人しく……」
「捕まるつもりは無いよ」
「ふーん。じゃあ力ずくでやることになるけど?」
「子どものくせに何ができる……」
「……バカにしてるの?」
「心配してる。まだ幼いのに大丈夫かなっt……」
この一言がトドメになった。
「お前……いい加減にしろよ」
「え?」
「いい加減しろって言ってんだ!! 私は子どもじゃないしお前に心配される程弱くもねーんだよ!!」
「え……え……?」
突然のブランの豹変に少女は戸惑っている。
「久々に頭にきた……!!」
ブランはシェアの力を使い、女神ホワイトハートへと変身した。
「姿が変わった!? いや、変わっても子ども体型……」
「だーうるせぇ!! 加減効かなくて殺しても恨むなよ!!!!」
ホワイトハートは戦斧を構え、少女へ接近
「しまっ……!!」
少女も慌てて柄に手をかける。が、時すでに遅し。どう足掻いても回避できない距離まで接近されてしまった。
「あ……」
「オラァァッ!!」
ホワイトハートは少女へ思いっきり戦斧を叩きつけた。その衝撃で少女は頭から勢いよく倒た。
「はぁ……失礼なやつだったな」
ホワイトハートは少女を担ぎ、ルウィーのギルドへ運んだ。
❅
「う……」
少女はそこはコンクリートの壁で覆われた地下牢で目を覚ました。
「ここは……いっ!?」
戦斧の一撃がかなり堪えたのだろう。まだ頭の痛みは引いてない。
「痛たた……あいつ本当に加減しなかったな……死んだらどうするつもりだったんだ……」
「加減はしないって言ったはず」
「うわぁぁぁ!?」
少女は声のした方を見る。鉄格子の向こうにはブランが立っている。
「目が覚めたようね」
「最悪の目覚めだけど……」
少女は鉄格子の方へ歩く。
「で、私に何か用なの?」
「色々聞きたいことがあるの」
「聞いてなんになる?」
「ただ興味があるから聞きたいの」
「なんだそりゃ」
「話さないなら、もう一発叩くけど」
ブランは自分の頭をポンポンと叩きながら言った。
「それは勘弁……。分かった、答えられる範囲で話してあげる」
「ありがとう。じゃあ最初に……どうして人斬りなんかしたの?」
「試したかったから」
即答だった。
「試したかった? 何を?」
「自分で編み出した剣術を。そこら辺のモンスターに対して通用するのは分かったから、もっと強いやつに試してみたくて……」
「つまんない理由ね」
「それはどうもすいませんでした」
ブランはあまり表情を変えずに話している。故に表情から感情を読み取ることができない。
「……本当に興味ある?」
「えぇ。大いに興味あるわ」
「ならいいけど……」
「話を戻すわ。次に、あなたについて。まず、名前は?」
「……クリスト」
「クリストね……。じゃあ、あなたは家事ってどのくらいできる?」
「? ……家事はまぁ、得意って程ではないが、そこそこできるって感じ」
「ふーん。じゃあ、身の回りの整理整頓は得意?」
「?? まぁ……得意な方だけど」
「なるほど。もし何か仕事を任されたとしたら、それをこなせる自信はある?」
「??? えー……内容次第かな……」
「書類関係のものや整理整頓」
「できなくはない……やってみなきゃわからないが」
これを聞いてなんの意味があるのかわからない質問ばかり飛んでくる。
「じゃあ次に、更生するという気持ちは…ある?」
「それなら……ある。正直、悪いことしたと思ってるよ。最初からモンスターに力試しすれば良かっただけだし。あの選択は間違いだったと思ってる」
「信じていいのね?」
「あぁ」
「じゃあ決まり」
「はい?」
「あなたを私の側近にする」
「はぁ???」
いきなり側近だ、なんて言われて戸惑うクリスト。
「ちょっと待って……状況が飲み込めない……」
「すぐ飲み込めるわ」
「テキトーな事を言うな!」
「あなたの素質を信用して言ったのに」
「そんなんで機嫌とれると思うな……」
「はいはい。話は後でじっくり聞くから」
ブランは鍵で鉄格子の扉を開けた。そしてクリストの手首を握る。
「え? 何?」
「自室に案内するわ」
「自室!? ちょっと待ってよ! まだ私からも聞きたいことが沢山あるんだけど!!」
「それもあっちでゆっくり聞くわ」
「そんなーー!! なんかめっちゃ不安なんだけどーー!?」
ブランはクリストを引っ張るようにして地下牢から連れ出した。こうしてブランにとっても、クリストにとっても新しい生活が始まろうとしていた。
実はやったことがあるネプテューヌシリーズは勇ネプとVⅡしかない、作者のよっしー希少種です。今回初めてネプテューヌの二次創作を書いてみました。自分が一番好きなブラン様とオリキャラのクリストがメインのお話になります。ほのぼの系で書いていくつもりです。シリアスを書くのは苦手なので…
あまり文才があるとは言えませんが、楽しんで書いていくつもりです。白の女神の新たな従者をよろしくお願いします!