白の女神の新たな従者   作:よっしー希少種

15 / 24
ベールさんの話し方わからなさすぎて泣いた


リーンボックスへ

「クリスト、急で悪いんだけど、少しお使いを頼める?」

「何なりと」

「ありがとう。じゃあ、これを」

 

 ブランが渡したのは至って普通の鞄。

 

「これは?」

「これをベールのところに届けて欲しいの」

「ベールさんのとこへ……って、国外じゃないですか!?」

「そうなのよ。私が行ければ一番なんだけど、生憎外せない用事ができてね」

「こっちより大事なんですか?」

「遥かに大事」

「……わかりました。届けておきます」

「助かるわ」

 

 そんなこんなで、クリストは一人、リーンボックスへ向かうことになった。

 

 

 リーンボックスへは飛行機に乗って向かった。過去にルウィーに他国の女神が来たことはあった為、ブラン以外の女神とも面識はあるが、こうやって他国に赴くのは初めての事だ。

 空港から出て、まず一言。

 

「暑っっつ……」

 

 一年を通して寒冷な気候のルウィーに居たから実感はなかったが、今は夏真っ盛り。日向に立っているだけで汗が出るくらいには暑い。

 

「早く教会行こ……」

 

 額の汗を拭い、早足で教会へ向かった。

 

 

 リーンボックスの教会内、ベールの部屋の前。

 

「失礼します、ブラン様の側近のクリストです」

 

 ドアをノックしながら声をかけてみる。足音が部屋の奥の方から段々と近付いてきた。

 

「その声、やはりクリストちゃんでしたのね。ついに私の側近になる気になりまして?」

 

 ドアを開け、出てきたのはリーンボックスの守護女神、グリーンハートことベールだ。

 

「いえ、違います。ブラン様からこれを届けろと」

「ち、違いますって……返しが冷たすぎますわ」

「何度も言われれば、そりゃドライな返しになりますって……」

 

 前に会って以来、ずっとベールに気に入られて(?)いる。

 

「では次回以降はもっと魅力的な言葉で誘いますわ」

「そうではなくて……とりあえず、本題入っても良いですか?」

「えぇ」

「これ、ブラン様からベールさんにって」

 

 クリストは持っていた鞄をベールに渡した。

 

「これは……多分ブランに貸した小説ですわね。後で感想を聞きに行きませんと」

「そうだったんですね。では、私はこれで……」

「ちょ、ちょっとお待ちになって!」

 

 ベールはクリストの手首を掴んだ。

 

「何か?」

「せっかく来たのに、もう帰るんですの?」

「もっと居たい気持ちはありますよ。欲を言えば、リーンボックスの観光をしたいとも思っています。ですが、あまり留守にするのもブラン様に迷惑だと思うので……」

「そんなこと言わずに……せめてクエストだけでも一緒に……」

「うーん……」

「報酬はクリストちゃんに全部あげますわ!」

「そういうのではなくて……」

「ブランには私から伝えておきますから!」

(なんなんだこの熱意……逆に断りづらくなってきたな)

「…………では、クエストに同行するだけなら……」

「では早速準備をしますわ!!」

「え、早!?」

 

 ベールは部屋に引っ込み、出かける支度をし始めた。クリストは窓から見えるリーンボックスの街並みを眺めながらベールの支度を待った。

 

 

「ブランにも連絡しておきましたわ」

「ブラン様はなんと?」

「おかしなことしないなら一泊させるのは許す、と」

「え、私今日泊まることになったんですか?」

「その方が良いと思って。だって、今からルウィー着の飛行機に乗ったところで、着くころには日を跨いでいますわよ。だったら、泊まって明日の午前に飛行機に乗った方が良いでしょう?」

「なるほど……」

(まぁ、ブラン様に『おかしなことするな』って忠告されてるなら大丈夫だよね)

 

 二人はギルドでクエストを選んでいる。

 

「報酬が良いものは……」

「あまり難易度高すぎるやつにはしないでくださいね?」

「では、これで」

 

 ベールが選んだクエストを受注し、目的地へ向かう。夏の日差しが照りつける中、二人はハイラノレ平原へ向けて移動を開始した。

 

 

「さぁ、張り切っていきますわよ!」

「はい……」

 

 内容はモンスターと討伐。種類は指定なしで、一定数倒してこい、とのこと。

 

「私はあちら側から倒していきますわ」

「では私は逆の方を。……これ、二人バラバラになっては討伐数がわからなくなるのでは?」

「うーん……では、三十分後にまたここに集まりましょう。そこでお互いどれだけ倒したか教え合うということで」

「わかりました。では、お気を付けて」

「クリストちゃんの方も」

 

 二人は別々の方向へ向かい、モンスターの討伐を開始した。

 

 討伐開始から二十五分が経過。

 

「ふう……結構倒したな……」

 

 クリストは汗を拭いながら携帯電話の画面を確認した。集合まであと五分ある。

 

(もう少し倒すかな……いや、やめとこ。遅れてベールさんを待たせるなんてことあってはならないからね)

 

 刀を納刀し、駆け足で集合場所へ戻った。

 集合場所に戻ると、そこにはベールの姿があった。

 

「ベールさん!? ま、待たせましたか?」

「そんなことありませんわ。飲み物を用意していましたの」

 

 ベールはクリストにペットボトルを一つ差し出した。中に入っているのは麦茶のようだ。

 

「ありがとうございます……」

 

 クリストはペットボトルの蓋を開けて、中の麦茶を飲んだ。

 

「なんか……ちょっと変わった味しますね」

「塩を少し混ぜましたの。熱中症対策ですわ」

「なるほど、熱中症対策……」

 

 二人は麦茶を飲みながら討伐数の確認をした。目標数までは僅かに足りておらず、残りは一緒に倒すことになった。

 

「……これで大丈夫ですね」

「えぇ。お疲れ様でした」

「お疲れ様でした……」

 

 そしてギルドへ戻り、クエストを報告して報酬を受け取り、教会へと戻った。

 

「たくさん汗かきましたわね……」

「そうですね……早くお風呂入りたいです」

「私もそう思っていたところですわ」

 

 ベールが嬉しそうな目でクリストを見ている。

 

「一緒に……」

「一人で入ります」

「冷たすぎますわ!」

「何されるかわかりませんから……」

「私は約束は守りますわ! ブランに言われた通り、おかしなことはしませんわよ!」

「信じていいんですか?」

「勿論ですわ」

「では……良いですよ。私も裸の付き合いは嫌いじゃないので」

「では、早速入りますわよ!」

「行動が早い……」

 

 ベールは二人分の着替えを持って大浴場へと向かった。クリストも後ろをついて歩いた。

 脱衣場にて。

 

「今思った……私替えの服どうしよう……」

「パジャマなら持ってきていますわよ」

「それはわかるのですが……明日着る服と、下着が……」

「まだ時間も早いですし、今から洗濯すれば明日には乾いてますわ。職員に洗濯させておきますから心配しないでくださいまし」

「ありがとうございます。……じゃあやっぱ問題は下着か……」

「……仕方ない。寝間着の間は着けないで過ごしますか」

 

 ベールがものすごい勢いでクリストの方を見た。

 

「誘っ」ってないです」

「……。ですが、気持ち悪くありませんの?」

「うーん、実を言うとあっちでも寝間着着てる時は下着着けてないんですよね」

 

 ギョッとした目でクリストを見ている。これを聞いて驚かない方が珍しいとは思うが。

 

「どうしてですの?」

「寝る時にもサラシ巻くの、締め付けられて嫌なので」

「はぁ……。事故には気をつけてくださいまし」

「?」

「さ、入りますわよ〜」

 

 二人はバスタオルを巻いて大浴場へ入った。

 

「髪サラサラですわね〜。ずっと撫でていられますわ」

「ありがとうございます……?」

「いつものポニーテールも良いですけど、髪を下ろすとまた違った可愛さがありますわね」

「そうですかね?」

「そうですわ」

「……ありがとうございます。ですが、やはり動くのに邪魔になりにくいのはポニーテールの方なんですよね」

「邪魔になるなら、切ってみてはどうですの? きっとショートヘアも似合いますわ」

「小さい頃は短かったんですけどね……よく男の子に間違われちゃって……」

「あぁ……なるほど」

「顔立ちは女の子なはずなんですけどね……」

「まぁ……子どもなら顔だけで男女の判別を付けるのは難しいですし」

 

 そのまま体も洗って、二人は湯に浸かった。

 

「……」

「さっきからソワソワして、どこか具合でも悪くなりまして?」

「いえ……。ただ、人と一緒にお風呂入るのって久しぶりで……しかもこんなゆっくり」

「いつもは騒ぎながら入っていますの?」

「いえ、普段は一人で部屋のお風呂に入るんですよ。大浴場入るときって言ったら、ブラン様に言われて候補生のお二人と一緒に入るときくらいですね。お二人はお風呂場でもよく遊ぶので、結構賑やかなんですよ」

「そういうことでしたのね。ブランとは入りませんの?」

「ブラン様とは……入ったことないですね」

「あら、では二人きりでお風呂に入ったのは私が初めてってことですわね!」

 

 やたら誇らしげな顔をするベール。

 

「……シーシャさんとは前に二人で入りました」

「はいぃ!?」

「いや、完全に意図してなかったんですよ。入ったら居ただけで」

「では『自分からすすんで一緒にお風呂に入った』のは私が初めてですわよね!?」

「自分から……すすんで……??????」

「そうですわよね!!」

「…………そういうことにしておきます」

「なんですのその態度は!! 罰として今日は私の抱き枕になってもらいますわ!」

「はあぁぁ!?」

「今夜、覚悟しておいてくださいまし!」

 

 

 そして、その日の夜

 

(マジか……本当に抱き枕にするんだ……)

 

 ベールはクリストを抱きしめたままグッスリと眠っている。

 

(というかこれはおかしなことに含まれないのだろうか……? わからない……アウトよりだと思うんだけどなぁ。って、こんなこと考えてないで寝ないと……)

 

 クリストも眠りにつこうと試みる。が、普段と全く違う環境のせいで、全く眠ることが出来ない。

 

(落ち着け……そうだ、素数を数えよう。2……3……5……7……11……14……いや、違う13だ……)

 

 素数を数えたのが効果があったのか、その後クリストも眠ることができた。

 

 

「あ、言い忘れていましたけど、昨日のクエストの報酬は先にルウィーの教会へ送っておきましたわ。帰ったら確認してくださいまし」

 

 朝食を食べながらベールが話した。報酬はあげるから、と言ったのは忘れていなかったようだ。

 

「ありがとうございます。報酬の内容、何だったのですか?」

「お金と、ある物ですわ」

「ある物?」

「帰ってみてのお楽しみですわ」

「はぁ……期待しておきます」

 

 朝食を食べ終えると、すぐ空港へ向かった。案の定、ベールには引き止められたが、なんとか説得し、また時間ある時に来ると約束して別れた。

 こうしてクリストのリーンボックス旅行(?)は終わりを迎えた。




ベールさんの話し方わからなさすぎるんで誰か教えてください
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。