白の女神の新たな従者   作:よっしー希少種

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報酬はすごいものでした

 リーンボックスから帰国後、すぐにクリストはブランに呼ばれてブランの部屋へ向かった。

 

「ベールからクエストの報酬が届いていたの」

「はい。ベールさんからその事については聞いてます」

「まぁ、特に変わったものはなかったわ。ただ一つを除いては」

 

 それがベールが言っていた『ある物』だろう。

 

「何か、変わったものが?」

「これよ」

 

 ブランが箱から取り出したのは、綺麗に畳まれた白い布。広げてみると、羽織るものだということが分かった。

 

「これは……」

「陣羽織……みたいね」

「おぉ……陣羽織……! ですが、これのどこが変わっているんですか?」

「どうも、普通じゃない感じがしたのよ。解析してみたけど、これはどうやら最初に羽織った人の魔力に適応して、その魔力を増幅させる力があるみたいなの」

「増幅……つまり……!」

「増幅した魔力による身体能力の強化等が期待できるわ」

「……すごい」

 

 クリストは陣羽織を広げて眺めた。眩しいくらい真っ白だ。

 

「ただ、どれ程身体能力が強化されるかまでは未知数なのよ。だから即実戦とはいけないわ」

「では、まずは試しに使ってみて、ですか」

「そうね。クリストが良いなら、これからコロシアムでテストするけど」

「本当ですか!? やりましょう!」

 

 試さない選択肢は無かった。クリストはワクワクしながらコロシアムへと向かった。ブランも……少しの不安を抱えながらコロシアムへ向かった。

 

 

「まずは着てあなたの魔力を学ばせるのよ」

「はい……」

 

 陣羽織に腕を通す。純白だった陣羽織は、徐々に薄い水色へと変化していった。触れると、少しだけヒンヤリしている。

 

「上手く馴染んだみたいね。じゃあ、これからプログラムを起動するわよ。全力で取り組んでね」

「わかりました」

 

 ブランはアリーナを後にした。すぐにホログラムによりモンスター達が形成されていく。クリストは一度目を瞑り、自分の中を流れる魔力の動きに集中した。頭のてっぺんから足の先まで、全身にくまなく魔力が行き渡るのが感じ取れた。

 

「いざ……」

 

 形成を終え、活動を始めたモンスターの気配を察知し、目を開ける。溢れた魔力の影響か、その目は水色へ変色していた。

 モンスター達のレベルは格上に設定されている。普段ならギリギリ勝てるレベルだが……

 

「はぁっ!」

 

 今のクリストにとっては敵ではなかった。威力の増した氷の刃は一振でモンスターを凍てつかせ、次々と倒していった。

 

(体が軽い……いつもより速く動けるし、刀を振る力も強くなってる気がする)

 

 身体能力も大幅に上がっていた。いつもより機敏に動けている。

 

(すごい……ここまで強くなれるんだ。なんだか……楽しくなってきたな)

 

 クリストの勢いは止まらなかった。現れたモンスターを無双ゲームのようになぎ倒していった。

 

 

「側近さん、凄いね……」

「うん、とってもカッコイイ……(わくわく)」

 

 コロシアムの観客席、ブランと、クリストの様子を見たいと着いてきたロムとラムはクリストの戦う様子を見ていた。

 

「……」

「お姉ちゃん、どうかしたの?」

「……なんでもないわ」

(順調ね。このまま何事も無く終わればいいのだけど……)

 

 

「ふうっ!」

 

 一閃。前方のモンスターはまとめて凍りつき、消滅した。

 

「後ろか……『飛燕氷牙』!!」

 

 振り向き、刀の魔力を氷の刃として飛ばす。いつもより遥かに大きい氷の刃はモンスターを切り裂き、コロシアムのバリアに当たって砕けた。

 

(よし、あと少し……)

 

 残りのモンスターもさっさと片付けてしまおう、そう思った時だった。

 

「……いっ!?」

 

 突然、激しい頭痛が襲ってきた。

 

「え……? う……ぐ、あぁ……!」

 

 あまりの痛さに思わず膝をついた。

 

「側近さん……?」

「……! まずい、何か反動が起きてしまったのかも……。ロム、ラム。あなた達はクリストの様子を見てて。もし自我を失って暴れる様なことがあったら、すぐに大人しくさせるのよ」

「わかった!」

「頑張る……!」

 

 ブランはプログラムの停止の為に観客席を後にした。

 頭痛に激し目眩も加わる。立ち膝で居るのも辛いくらいだ。あまりの辛さに目から涙が溢れる。いや、涙ではなかった。かろうじて見えたのは、床に落ちる赤い液体。

 

(血……? なん……で……?)

 

 症状は更に悪化していった。

 

「はぁ……うっ……ゴフッ! う……ぁ……」

 

 今まで体験したことが無いくらい強い吐き気に襲われ、その場に戻してしまう。どういう訳か強い寒気もある。まるで吹雪いている雪山の中に防寒具無しで放り出されたような寒さ。手の感覚が次第に無くなっていった。

 

「クリスト!」

 

 プログラムを停止し、コロシアムに戻ってきたブランはすぐさまクリストに駆け寄った。

 

「クリスト!!」

「あ……がぁ……」

「クリスト!! ……クソっ!」

 

 ブランは引き剥がすようにして陣羽織を脱がせた。その瞬間、クリストは意識を失ったが、呼吸はしていた。しかし、血涙を流していたり、体が異常なくらい冷えていたり、まだ安心することは出来なかった。

 

(おぶって運ぶには危険な状態ね……だったらここで少し回復させてやるしか……)

「ラム! ここの職員に言って体暖めるもの持ってきてもらって! ロムはこっち来て、応急処置して!」

「わかった! すぐ取ってくるね!」

「わかった……! 今行く!」

 

 二人も観客席から飛び出していった。ロムはすぐにコロシアムへ降りてきた。

 

「側近さん……!? 目から血が……(おどおど)」

「ロム、まずは手の方をお願い……これ、まだ軽いけど壊死してきている。凍傷……の類いかしら」

「え、壊死……!? 早く治さなきゃ……」

 

 ロムはオドオドしながらも、クリストに回復魔法をかけ始めた。

 

「終わったら足もお願い」

「うん!」

 

 クリストの顔を見る。気を失ってはいるが、相当な苦痛を感じていたことは分かる。

 

(クリスト……ごめんなさい…………)

 

 

 あれから二日後……

 

「クリストの具合はどうだった?」

 

 部屋から出てきたフィナンシェに訊ねる。

 

「治療の甲斐あって、大体は治っているみたいでした。今は意識もはっきりしてます。ですが……」

「何か後遺症が残ったりした?」

「いえ……本人曰く、地獄のような筋肉痛がすると」

「筋肉痛……?」

「はい。それも全身で」

「なるほど。フィナンシェ、クリストは今起きてるんでしょ? ちょっと二人で話がしたいわ」

「わかりました」

 

 ブランはドアをゆっくり開け、部屋に入った。中にはベッドの上で横になっているクリストの姿があった。

 

「ブラン様?」

「クリスト……その、具合はどう?」

「全身がバカ痛いです……」

「そう……」

 

 ブランはクリストの傍によった。

 

「あなたには本当に辛い思いをさせたわ……ごめんなさい……」

「いいんですよ。やるって決めたのは私ですから」

「でも……」

「起きちゃったこと抱え込んでも何にもなりませんから。ね?」

「……」

 

 クリストは本気で許してくれている……いや、ブランに非が無いとまで言ってるように聞こえた。それで万事許されるとは思っていないし、何より自分自身が許さない。

 

(でも……抱え込んでも何にもならない……か。ならここでずっと抱え込んでても仕方ない。……クリスト、あれはあなたが扱えるものにしてみせるから)

「ありがとうクリスト。……償いはきっとするわ」

「つ、償い……? それは……どういう意味ですか?」

「気にする事はないわ。とにかく、今は治療に専念しなさい。フィナンシェの言う事はちゃんと聞くのよ?」

「は、はい……」

「じゃあ、私は仕事に戻るから。今度またゆっくり話しましょうね」

「わかりました。頑張ってくださいね」

 

 ブランは部屋を後にした。入れ替わるようにしてフィナンシェが入ってくる。

 

「ブラン様とは何を?」

「別に、大した話じゃないですよ」

「そうでしたか。あ、私はクリストさんのお世話を命じられているので、何かあったらすぐ言ってくださいね」

「ありがとうございます」

 

 フィナンシェはベッドの横の椅子に座った。

 

「フィナンシェさんって、魔法に詳しかったりします?」

「詳しい……とまではいきませんが、ある程度の知識はありますよ」

「でしたら、魔力を常に放出し続けることって、可能でしょうか?」

「そんなことしたら魔力切れになってしまいますが……何故ですか?」

「あれ羽織ってる間ずっと、魔力が湧き出て止まらない感覚があったんですよね。あれは多分、相当な量増えてますよ。しかも、いくらでも湧いてくるあの感じ……おそらく、魔力の回復も促進されています」

「なるほど……」

「それが体にどう影響したのかはわかりませんが……でも、有益な情報だと思いませんか?」

「確かにそうですね! 後でブラン様に報告しておきます」

「ありがとうございます」

 

 一旦会話が途切れる。フィナンシェは付きっきりのようで、ベッドの横の椅子に座ったまま読書を始めた。クリストの方は体を動かせば激痛が走る為、黙って天井を見ていた。

 

「…………フィナンシェさん」

「はい、どうかしましたか?」

 

 フィナンシェは本に栞を挟み、そばに置くとクリストの方へ体を向けた。

 

「筋肉痛って……魔法で治りませんかね?」

「……できそうですよね。ですが今ロム様はお出かけしてるみたいなので、夜にお願いしてみますか?」

「お願いします」

「……治らなかったらどうしましょうか」

「治るまで私が身の回りの事してあげるので、大丈夫ですよ」

「……全部してくれるんですか?」

「はい」

 

 それはそれで不安な事がいくつかある。

 

「食事は……」

「私が食べさせてあげます」

「着替えは……」

「私が着替えさせてげます」

「お風呂は……」

「入れませんよ。体拭くだけならしてあげられますが」

「トイレは……」

「根性で運びます」

「え、マジ?」

「マジです」

 

 予想外の回答に思わず口調が戻ってしまう。

 

「だったら……今まさに行きたいのですが」

「わかりました。頑張りますね」

 

 フィナンシェは立ち上がり、布団を捲るとクリストの背中に手を回した。そして抱きしめ、持ち上げる。

 

「重くないですか?」

「大丈夫です……! では運びますね!」

 

 若干足先を引きずってしまっているが、ちゃんと運べてはいる。我慢しているが、中々体に響く。フィナンシェの腕と触れている部分が特に痛む。こういう運び方をする以上、力が入るのは仕方がないことだが。

 トイレの戸を開けて中に入る。

 

「よし、じゃあ脱がせますね」

「!!!!???」

 

 唐突すぎた。

 

「な、なななな!!?」

「脱がないとできませんよ?」

「わかってますよ! ですが脱ぐことくらい……」

 

 できない。腰を曲げることすら痛くて自分では行えない。

 

「無理ですよね」

「…………無理です」

「ですから、私に任せてくださいって。ね?」

「はい…………」

 

 クリストは恥ずかしがりながらも、フィナンシェに全てを任せることにした。

 

「じゃあ座らせますよ。結構痛むかもしれません」

「え」

「ではいきまーす」

「待っ……ぎゃああぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!!!」

 

 誰も聞いたことのないような絶叫が部屋中に響いた。

 

 

「お疲れ様でした」

「二重の意味で死ぬかと思った……」

「二重の意味で……?」

「身体的にも精神的にも……」

「あぁ……」

 

 二人の間に微妙な空気が流れる。今後またあれをやらなきゃいけないのかと思うとお互い気が引ける。一刻も早く、この地獄の筋肉痛を治したいと思うのだった。

 なお、ロムの回復魔法によって筋肉痛は治った。

 

 

 

 

 

 

 

「ダメだわ。この陣羽織、大幅な改造が利かない……。このままじゃ、せっかくのベールからのプレゼントをダメにしてしまう……でもこのままクリストに返してもまた同じことを繰り返すだけ」

「……やっぱりこっちの方を急いだ方がいいかしら。きっとクリストも喜ぶだろうし。でも、これらを扱えるかは……クリストの努力次第……ね」

 

 そう呟き、ブランはガラスのケースの中にある物を見た。ボロボロに砕けた、二本の白い刀を……。




陣羽織で強化ってのは、某戦隊からです。そこら辺の特撮作品が世代なんです。

反動での体へのダメージについては八割がTwitterのフォロワーの案です。本当にありがとうございました。
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