白の女神の新たな従者   作:よっしー希少種

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就任

 ブランに引っ張られてクリストはブランの部屋の前まで来た。

 

「ここが私の部屋よ。入って」

「お邪魔します……」

 

 ブランは扉を開けて部屋に入る。クリストも続いて中へ。

 

「綺麗な部屋だね」

「ありがとう」

 

 クリストは部屋の中を見て回る。大きな本棚に数え切れないほどの本が入っている。テレビの横に据え置きゲーム機がある。隣には最新の携帯ゲーム機、しかも大きいサイズの物が一つ置いてある。

 

「ゲームやるんだ」

「やるわよ」

「……よく見たらこのゲーム機のコントローラー三つじゃん。なんで?」

「妹が二人いるの。帰ってきたら紹介するわ」

「妹がいるんだ……」

「後で二人の部屋も紹介するわ。とりあえず、次は仕事部屋に」

「はいはい」

 

 今度は仕事部屋に案内された。大きな窓がある明るい部屋だ。

 

「窓、大き過ぎない?」

「自然の光を取り入れた方が気分が良いでしょ?」

「仕事の効率を低下させないためか。確かになんか良い雰囲気だね」

「でしょ? じゃあ次は……」

「ねぇ、私も聞きたいことあるっての、忘れてない?」

「………………忘れてないわ。一通り部屋を紹介したら聞いてあげる」

(絶対忘れてたじゃん……)

 

 その後も倉庫や大浴場、キッチン等をまわった。おかげで部屋の位置は大体把握することができた。

 

 

「じゃあ、最後にこの部屋を」

「ここは?」

「客間だった部屋よ」

「客間『だった』? 何故に過去形?」

「今日からここをあなたの部屋にするから」

「わ、私の部屋に!?」

「えぇ。自由に使っていいわ」

 

 クリストはドアを開け、部屋の中を見た。パッと見た感じ、暮らしていくには不満はなさそうな感じだ。

 

「ありがとうごさいま……」

 

 ここでふと思った。いつクリスト自身の口から「ブランの側近になる」と言ったのか。無理矢理押し通され、なんとなく流されて今に至っている。

 

「ちょっと待った」

「何?」

「私側近になるなんて言ってない」

「何を今更。あなたの部屋まで用意したのに」

「君が一方的に話をバンバン進めてたんでしょ」

「それでも……あなたが私の側近になることで大きなメリットがあると思うんだけど」

「メリットって?」

「罰を受けなくて済むのよ」

「?」

「あなたはあのまま放っておけばきっと……人斬りの罪に問われてそれなりの罰を受けていたはずよ」

「罰って……例えば?」

「そうね……何千万クレジットの罰金とか、懲役刑とかね」

「……どっちも嫌だな」

「でしょ? だから私が『罪滅ぼしの為に』って無理言って引き取ったのよ」

「……!」

 

 不思議な感情だった。助けてもらった感謝の気持ちと、どうして自分なんかを……という申し訳ない気持ちが入り交じっている。

 

「なんで私なんかを?」

「根が悪いやつじゃない。そんな気がしたから」

「……そんなこと、わかるの?」

「女神の勘よ」

「……」

「まぁ、変な真似したらすぐ送り返すつもりだけど…そんなことにはならないって、私は信じてるから」

 

 上手く言葉が出てこなかった。ここまで信用されるのは初めての事だ。

 

「……ありがとう」

ただこの一言しか返せなかった。

 

「どういたしまして。じゃあ、また仕事部屋に行くわよ」

「わかった」

 

 

 二人は再び仕事部屋に戻った。部屋の中には、赤色のメイド服を着た人が居る。

 

「ブラン様、お待ちしていました。そちらの方が?」

「お疲れ様フィナンシェ。そう。この人が私の側近になる人、クリストよ」

「クリストさんですね。はじめまして! 私、フィナンシェと申します。ここでメイドをさせてもらっている者です。よろしくお願いします!」

 

 フィナンシェは右手を差し出し握手を求めてきた。クリストも右手を差し出し、握手をする。

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

 フィナンシェは明るい笑顔を返してきた。

「挨拶は済んだかしら? ところでフィナンシェ、例のもの出来てる?」

「はい! バッチリです」

 

 フィナンシェは丁寧に畳まれた水色の布を持ってきた。ブランはそれを受け取る。

 

「これはあなたに」

「私に?」

 

 ブランは水色の布をクリストに手渡す。広げてみると、雪の結晶の刺繍が入ったケープだった。

 

「これ……」

「側近の証、みたいな感じよ。羽織ってみて」

「わかった……」

 

 クリストはケープを羽織ってみた。ケープの端に縫い付けられていたルウィーの紋章がちょうど前にくるデザインになっている。

 

「よく似合ってるわ」

「似合ってますよ!」

「ありがとう……」

「じゃあ、これで決まりね」

「側近のこと?」

「えぇ。お互いに損がないことはさっき話したことでわかってるでしょ?」

「そうだね。これから……よろしくお願いします」

 

 クリストは二人に深々とお辞儀をした。

 

「えぇ。よろしく」

「よろしくお願いします!」

 

 二人は受け入れてくれているようだ。

 

「じゃあフィナンシェ、後は任せたわ。色々教えてあげて」

「わかりました。ブラン様はこの後どうするのですか?」

「私はちょっと部屋で休憩してくるわ。ここを使ってもいいわよ」

「わかりました。ではクリストさん、ここで色々説明させて頂きますね」

「分かった」

「あ、さっきから気になっていたんですけど、ブラン様やロム様、ラム様対しては敬語でお願いしますね」

「ロム様? ラム様?」

「あ、まだ紹介されてなかったんですね。ブラン様の妹でルウィーの女神候補生です」

「妹がいるのは聞いていたけど、名前までは聞いてなかったな。なるほど。その三人には敬語……だね」

「そうです! では、説明を始めますね。まず側近としてブラン様にしてあげることは……」

 

 それからフィナンシェはクリストに仕事についてや言葉遣い等、様々なことを説明した。

 

「……以上で大体のことは伝えました。何か質問はありますか?」

「今のところはないかな……」

「そうですか! では、以上で終わりですね。今後なにかわからないことが出てきたら気軽に相談してください」

「わかった」

「では後はブラン様に付きっきりでお願いします」

「え!? もう!?」

「はい。大丈夫、クリストさんならできますよ!」

 

 フィナンシェに背中を押され、クリストはブランの部屋に向かった。そういえばまだこっちからの質問をしていない。いい加減そろそろこっちから質問したっていいだろう。

 

 

 ブランの部屋のドアを軽くノックする。

 

「クリストです」

 

 ドアの向こうからブランが「どうぞ」と一言だけ返してきた。

 

「失礼します……」

 

 部屋に入る。ブランは読書をしているところだった。

 

「説明は終わったの?」

「はい」

「そう。お疲れ様」

「ありがとうございます……」

 

 ブランは本にしおりを挟んで傍に置いた。そしてクリストに手で隣に座るように示す。クリストは小さく一礼をして隣に座った。

 

「じゃあ、あなたからの質問、聞きましょうか」

「あ、覚えててくれたんですね」

「そんなポンポン忘れたりしないわ。で、聞きたいことは?」

「えっと……名前……はもう聞いてますし……守護女神についても教えてもらったし……私を引き取った理由もブラン様から聞いたし……あれ?」

「ほとんど解決してしまった?」

「らしいです。あ、でも一つだけ……私の刀の行方が知りたいです」

「あぁ、あなたの刀ね。あれはこっちで預かっているわ。これに関しては三ヶ月、静かにしていれば帰ってくるはずよ」

「そうですか。よかった……」

「えぇ。大丈夫よ、すぐに捨てたりとかはしないから」

「ありがとうございます」

「そういえばあなた、私のことを『様付け』で呼べって教わったの?」

「え? いえ、敬語を使うようにとは言われましたが……フィナンシェさんが様付けで呼んでいたので」

「真似てみた……と」

「はい。……変ですか?」

「変じゃないわ。ただ、案外サラっと敬語に変えれててすごいなぁって」

「ありがとうございます」

 

 会話のキリがいいところで、ブランは立ち上がった。

「それじゃあ、早速だけど仕事の手伝いしてくれる?」

「……! わかりました! 何をすればいいですか?」

「そうね……。確認の済んだ書類の整理をしてくれると助かるわ」

「わかりました!」

二人は仕事部屋へ向かう。クリストの初仕事が始まるのだった。




フィナンシェの口調が凄く不安な作者です。敬語で話してたなぁってのは記憶にあるのですが…あと明るい感じだった気がする…。
今回のお話、クリストは部屋の位置だのフィナンシェから教わったことだので結構なことを覚えましたね。要領良すぎますね。覚えるのに長い時間かけさせたくないっていうこっちの都合もありますが…いよいよ側近としての初仕事が始まります。次回はそんなお仕事の場面から始まります。そしてルウィーの女神候補生も次回は絶対出します。
ロムちゃんの()内のセリフを上手くかける自信が全くないですが…頑張ります
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