白の女神の新たな従者   作:よっしー希少種

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タイトルに深い意味はありません。マジで


深夜 二人 何も起きないはずもなく

「はぁっ! せえぇぇい!!」

 

 コロシアムで武器を振るクリスト。その手にあったのは、いつもの二本の刀ではなく、自身より大きな大太刀。眼前のモンスターは薙ぎ払われて消滅、難なくプログラムを終えた。

 

「ふぅ……よし、これも……使えるな」

 

 大太刀は四本の氷の刀に変わると、クリストの背後に浮いた。そして強化を解き、アリーナを後にした。

 

「お疲れ様です」

「お、ありがとうございます」

 

 外ではフィナンシェが飲み物とタオルを持って待っていた。休日で暇だから見学したいと、ついてきていたのだ。クリストはタオルで汗を拭いながら、飲み物を飲んだ。

 

「どうでした? 新しい戦法の方は」

「多分、実戦でも使えるかと……」

「それはよかったです」

「これで氷魔覚醒状態での戦略の幅が広がります!」

「あ、あれそういう名前だったんですね」

 

 二人は会話しながらコロシアムの出口に向かう。そして扉を開けた瞬間、風圧と大量の雪が二人目掛けて襲いかかってきた。すぐさま扉を閉める。

 

「まさか、吹雪いてる?」

「そうみたいですね……」

「でもこの中帰るのは難儀ですね……少し待ちますか」

「そうしましょう」

 

 二人は中にある壁際のベンチに腰掛けた。会話は特に無し。風の音がうっすらと聞こえてくる。

 

「……くぁ」

「眠くなりましたか?」

「少し……すみません、仮眠とります」

「はい。おやすみなさい」

 

 クリストは壁にもたれながら眠りについた。

 

(なんだか私も眠たくなってきた……。ちょっとだけ寝ますか)

 

 フィナンシェも、クリストの横で眠った。

 

 

「……さん。お……さん!」

「ん……」

「お客さん! 起きてください」

「……はい」

「もうここも閉まる時間ですよ」

「はい…………は?」

 

 携帯の画面を見る。22時50分と表示されている。

 

(仮眠ってレベルじゃないくらい寝てた……しかも公共の場で……)

「……あ、ごめんなさい。すぐ出ますね」

 

 クリストは荷物をまとめ、横で眠っているフィナンシェをおぶってコロシアムの出入り口へ向かった。吹雪は止んでいたが、雪はまだ降っている。また雪が強くなる前に帰ろうと、小走りで教会へ向かった。

 

 

「……ん、あれ?」

 

 フィナンシェが目を覚ましたのはベッドの中。しかも自分のベッドではない。

 

「……?」

「あ、起きましたか、フィナンシェさん」

 

 声がした方へ視線を送ると、そこにはサンドイッチを頬張るクリストの姿があった。

 

「クリストさん……? 今、何時ですか……?」

 

 寝起きのふわふわした声色で言った。

 

「もうすぐ0時です」

「え……?」

「かなり寝てたみたいで……」

「そうだったんですね……」

「はい。あ、寒くないですか? 帰りに雪に降られて来ちゃったので……」

「大丈夫です」

 

 フィナンシェはベッドから出て、クリストの横に座った。

 

「食べます? 夕飯……というか、夜食な時間ですけど」

「では、いただきます」

 

 フィナンシェは皿の上のサンドイッチを一つ取り、口に運んだ。

 

「……どうしましょう。この時間だと大浴場って閉まってますよね」

「そこは大丈夫です。部屋のお風呂沸かしておきましたから、入れますよ」

「ありがとうございます。クリストさんはもう入ったんですか?」

「いえ、私もまだですが」

「では、一緒にどうですか?」

 

 クリストは驚いた様子でフィナンシェを見る。

 

「一緒に……ですか」

「はい。嫌でしたか?」

「嫌ではないですが……二人だと狭かったりしませんかね?」

「それは……なんとかなると思います」

「……じゃあ、入りましょうか」

 

 

「はぁ……暖かい」

「ですが……クリストさんの言う通りですね。少し狭い……」

「ですね……」

 

 湯船に浸かりながら話す。お互い、体が触れないように脚は畳んで入っている。

 

「そう言えば、クリストさんと一緒にお風呂入るのって初めてですね」

「確かに……フィナンシェさんとは入ったことなかったですね」

「せっかくですし、二人の時にしかできない話とかしませんか?」

「……例えば?」

「ブラン様の愚痴とか」

「えぇ……」

 

 クリストは若干引いた様子を見せた。二人きりでも、あまりそういう話はしたくないのか。

 

「ありませんか? ブラン様の愚痴」

「いや……無いと言ったら……嘘になります」

「例えば?」

 

 ずいっとフィナンシェが身を乗り出してきた。

 

「……最近やたらと深夜の呼び出しが多いこととか?」

「……あぁ」

「え、なんですかその反応」

「いや、最近呼び出されないなぁと思ったらクリストさんが呼ばれてたんだなぁって」

「前はフィナンシェさんが?」

「はい。この時期になるとよく呼ばれるんですよ」

「……やめて欲しいですよね。人が寝てる時間に」

「そうですね……」

 

 クリストはフィナンシェに触れない程度に足を伸ばした。

 

「あれ、何してるんですかね? フィナンシェさんはわかりますか?」

「うーん、クリストさんも近いうちにわかると思いますよ」

「焦らすか……」

「ネタバレはつまらないので」

 

 フィナンシェは小さく微笑んだ。

 

「さ、体洗いましょうか。どっちから先に洗います?」

「フィナンシェさんからどうぞ」

「ではお言葉に甘えて」

 

 フィナンシェは湯船から出て、体を洗い始めた。クリストは足を伸ばし、リラックスした姿勢で待つ。

 

「あ、そうだクリストさん」

「はい」

「この後一緒に寝ませんか?」

「…………はい?」

 

 

「流石に無理では?」

 

 一人用のベッドに密着しながら入るクリストとフィナンシェ。

 

「ですが、せっかくですし……。ほら、お泊まり会みたいじゃないですか」

「んーまぁ、言われてみればうん……」

(同じ屋根の下(教会の中)で毎日寝てるけどね……)

 

 落ちないようになるべく内側に寄って、布団を被る。いつもより暖かく感じる。

 

「では、明日も早いのでおやすみなさい」

「寝れるんだ……」

「寝れますよ。クリストさんも、早く寝ないと寝坊しますよ」

「わかってますよ。……おやすみなさい」

「はい、おやすみなさい……」

 

 黙って目を閉じて眠ろうとしてみる。前にベールに抱き枕にされた時があったが、それで眠れたなら今回も大丈夫、と自分に言い聞かせておく。やがて、近くから寝息が聞こえてきた。フィナンシェが眠りについたようだ。寝息を聞いていたら、眠気が段々強くなっていき、やがてクリストも眠りについた。

 

 

 

 

 

「……」

「…………」

「………………」

「……………………い"っ!?」

 

 ゴンッと鈍い音を立てて、クリストがベッドから落ちた。

 

「いっった…………」

 

 頭を押さえながら立ち上がる。フィナンシェは起きていないようだ。

 

「……落ちたのが私で良かった。落ちないのが一番だけどさ」

 

 クリストはフィナンシェをベッドの中央に動かし、自分は部屋のソファで再び眠りについた。




従者二人をイチャイチャ(?)させるの好きなので、擬似お泊まり会させました。書いてて楽しかったです

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