会場入りしたクリストは、まず最初にカタログを購入。ブランのサークルを探しあて、そこへ向かっているのだが……。
「やばい……人多いな……」
人が多く、思ったより進めていない。早くブランの様子を見に行きたいが、そうはいかないようだ。
(……仕方ない、他のサークルのやつも見ながら向かおう)
まず、すぐそばのサークルの机を見る。知らない作品の二次創作の漫画だ。原作がわからないからなんとも言えないが、絵は好きな感じだった。その隣のサークルには、今人気のFPSの二次創作の漫画が置いてある。名前は聞いた事があるし、ゲーム自体は無料だから試しにやってみたが、馴染まなくてすぐにやめてしまった記憶がある。こんな感じで、サークルの頒布物を眺めながら歩いた。
*
そんなこんなで、ブランのサークルの近くにやってきた。
(あーそこか。いたいた)
携帯電話の画面を見るふりをしながらブランの様子を伺う。当然だが、普段とは違う格好をしている。傍から見たら普通の幼女である。そのまましばらく観察を続けているとある事に気が付いた。
(なんか……人来てなくない?)
そう、人が来ない。全く来ない訳では無いが、同人誌を手に取る人は居なかった。
(売れない方なのか……。どうしよう……あのままは可哀想だよね)
少し考えた後、ブランの同人誌を手に取ってみることにした。
(バレないように……少し声の調子変えてみようかな)
「あのー……すみません」
「あ、はい!」
「えっと、その同人誌ちょっと読んでみても良いですか?」
「! えぇ、勿論よ」
途端にブランの表情が明るくなる。クリストは同人誌を手に取り、開いてみる。どうやら小説のようだ。
(なるほど。確かにブラン様小説好きだからね。小説で書くなら知識もあるだろうし……)
内容はファンタジーで、所謂異世界転生モノ。どこかで見たことがあるようなキャラの名前や設定が書かれてある。
(もしかして、これって……)
文章から視線を少し逸らし、机の上に並んでる本を見てみる。
(……ある。私が前に借りたやつがある……!)
「ど、どうかしら?」
ブランが期待に満ちた目で見ながら聞いてきた。
「えぇ、私好みでとても気に入りましたよ。一冊もらえますか?」
「ほ、本当に!? でも、それは一応続編だから、こっちも一緒に読むとさらに話がわかるかも……」
そう言って勧めてきたのは、前にブランから借りた同人小説だ。
(もう読んだことあるけど、ここで断る方が違和感あるよね)
「そうなんですか! では、そっちも一冊……」
「わかったわ。ありがとう」
お金を渡し、ブランから小説を二冊受け取る。本は汚さないように、すぐにリュックにしまった。
「頑張ってくださいねー」
「ありがとう……」
長居するのもおかしいと思われると思い、すぐにサークルから離れた。
(もう少し様子見ていたいけど、不審者だと思われたくないしなぁ。帰ろっかな)
クリストは最後にチラッとブランの様子を眺めてから、建物の出口に向かった。心做しか、少しだけブランの表情が明るくなっているように見えた。
❅
「よーし、バレずに済んだ……」
建物から出て安堵のため息をつく。後は欲しいものも無いし、他にやりたいことも無いため、教会に戻ろうと思い、出口へ向かった。少し歩くと、何やら出入り口の方が助かるかも騒がしい事に気がついた。
(ん? 何かあったのかな?)
多くの人が建物の方へ走っていく。明らかにおかしいと思い、クリストは逆に出入り口の方へ走って向かった。そこで見えたのは、ここに入るはずがない存在……モンスター達だった。
「な、なんでここに……」
理由はわからなかった。迷い込んだか、反女神の集団がモンスターを手懐けてここに放ったか……兎に角、大勢の人が集まるこの場所でモンスターが暴れれば、被害は大きくなることは目に見えている。
「助けてー!」
子どもの声が聞こえた。見ると、小さな男の子がスライヌの下敷きになっている。
「くっ……」
クリストは抜刀の構えをとり、刀を出現させようとした。
(……待て。今ここで刀を出したのがブラン様にバレたら……? おそらく、私がフォローしたのもバレる。こうなればブラン様は……かなり落ち込むはず……)
悩んだ末、出した答えは……
「はあぁっ!」
格闘での対処。全力の蹴りで少年からスライヌをひっぺがした。
「今のうちに逃げて!」
「うん! ありがとうおにいちゃん!」
「お、おに……!!?」
聞き捨てならない言葉を聞いたが、ツッコミを入れてる余裕は無い。仲間を攻撃されたからか、他のスライヌ達がクリストの近くに集まってくる。
(……仕方ない、やるしかないね。せめてブラン様が来るまで……)
クリストは一度深呼吸すると、グッと拳を握った。
❅
一方同じ頃、ブランは……。
「ちょ……ちょっと……」
人混みに飲まれて建物の奥へ流されていっていた。体格が小さく、人の流れに抗えずにいた。
(全く状況がわからない……。外で何が起きているの……?)
「みんな逃げたか!?」
「まだ男の子がモンスターの相手をしてるみたいだわ!」
(モンスター……!? なんでここに? いや、今は早く向かうのが先ね)
ブランは無理矢理に人の間を通りながら、建物の外へ向かった。
❅
「離れろ! やめろって!」
慣れない格闘で対応するのにも限界がある。結局スライヌにすら勝てず仰向けでスライヌ三匹にのしかかられている。
「本っ当に! 降りろって!! これ以上はR18だから!!」
もがいてみるが、全くどかない。それどころか、スライヌが重くて体力を多く消耗してしまう。
「ぜー……ぜー……うぅ……」
このままの状態にしておけば、何をされるかわからない。それに、他のモンスター達が建物に向かっていってる為、このままでは確実に被害が出てしまう。
(……仕方ない。バレても良いから……やるしかない!)
「氷魔……覚醒!」
クリストの周りに氷の粒が舞い、体を覆うと、氷晶の陣羽織を形成、次いで氷の刀を形成すると、スライヌ達を斬り裂いた。さらに防具を形成。洋服に和風な防具と、中々ミスマッチな格好だが、この際仕方ない。
「よぉし! ここからは私のステージだ!!」
起き上がり、周りの状況を確認する。モンスター達はまとまって建物の方へ向かっていってる。
(……試してみるかな、新しい戦い方)
氷の刀四本を一箇所に集め、まとめていく。形成されたのは、クリストの身長を超える大きさの大太刀だ。
「零刀『雪嵐』。いくぞ!」
大太刀を構えて走り出す。地面に擦らせながら力を貯め、十分に近付いたところで全力で振り切った。
「せぇやあぁぁぁ!!」
白い刃はモンスターの群れを薙ぎ、一気に消滅させた。
「決める!」
残るモンスターを殲滅すべく、大太刀に魔力を込める。
「『瓦解氷消』!!」
全力の回転斬り。建物前にいたモンスター達は等しく凍りつき、やがて消滅した。
同じ頃、ブランも何とか建物の出口へ来ることが出来た。人混みを抜けた瞬間、冷たい風が襲ってきた。同時に、見覚えのある防具を纏った人の姿も見えた。
(……クリスト!? でも、あの格好は……)
色々と聞きたいことはある。が、今はそれどころではない。
(……話は後ね。今は周りの状況を確認しないと)
ブランは人目につかないようにこっそりとその場を離れた。
クリストは振り切った後の大太刀をゆっくりとおろした。とりあえず、ここの安全は確保したようだ。
「ふぅ……よかった……」
ふと、建物の方に視線を巡らせる。入り口付近に居た人達が唖然とした表情でクリストを見ていた。
「あー……忘れてください!」
その姿のまま、素早くその場を離れた。後日、モンスターを一掃した一般人が居ると少しだけ噂になったのは言うまでもないだろう。同時に、クリストがコミックなマーケットに参加していたのもブランが確信した為、同人誌の感想を迫られたとか……。
話のネタが尽きた──
ので、最終回書き始めようかと思います。ネタが浮かべばまだ続きますが。