白の女神の新たな従者   作:よっしー希少種

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オリ主交流企画の後編になります。
前編は「紫の星を紡ぐ銀糸N」で読めます。


番外:交流戦と勧誘と

「ここからは、本気でいきます!」

 

 氷晶の陣羽織を身につけ、氷魔覚醒状態になったクリスト。

 

「そう、それでいいんです」

「言っておきますけど……これ結構強い自信あるんですよ」

「ほぅ」

「女神と渡り合うくらいの実力はあります。それでもこのまま続けますか?」

「勿論です。さぁ、いつでもどうぞ?」

 

 ギンガは空いた手でクリストにかかってくるように示した。

 

「……後悔するなよ!」

 

 格段に上がったスピードを活かして一気に詰める。

 

(早い。身体能力も上がっているようですね)

 

 振り下ろされる刀もさっきより遥かに重い。

 

「やれば出来るじゃないですか」

「話してる余裕あんの?」

 

 ギンガの背後に四本の氷の刀が浮いている。

 

「なんと、自立して動くとは」

 

 四本の刀はギンガ目掛けて振り下ろされた。それを飛び引いて避ける。

 

「まぁ、これで終わってたら拍子抜けでしたが」

「とんでもない。ここで負けたらあなたの真の実力を図れない」

「……なら見せてあげますよ」

 

 ゆっくりとクリストは構えた。

 

「六つの刃、さばききれますか?」

 

 そして一気に距離を詰め、六本の刀をフルに使った連撃を叩き込む。

 

「くっ……これはっ!」

「ほらほら、散々煽っておいてこのザマですか!?」

「このっ……!」

 

 ギンガも攻撃の間を縫って反撃をする。しかしそれも、大袖を模したシールドで防がれる。反撃の隙は見い出せる。ギンガにはその隙をつく技量もある。だが、それをカバーするようにクリストは装備を巧みに操っている。このまま連撃を受け続ければやがて押し負ける、そう思ったギンガは

 

「はっ!」

 

 力強い一撃をクリスト目掛けて放つ。当然防がれたが、反動を利用して距離をとることには成功した。

 

「ちっ……『飛燕氷牙……」

(見切ってる技です)

 

 一度見た技なら対処は簡単。

 

「凍龍顎』!!」

 

 しかし、放たれたのは見た技の強化版。龍の牙の如く荒々しい形の氷の刃が飛ぶ。

 

「……『魔界粧・轟炎』」

 

 ギンガは冷静に対処し、氷の刃を火属性の魔法で打ち消した。

 

(なるほど、確かに強い。持ち前の素早さと隙をカバーする為の追加装備……。これはこのまま戦ったら負けてしまいそうですね)

(あれだけ攻撃をしかけてまだ決定打が入らない。でも……必ず隙はできるはず)

 

 クリストは再び連撃をしかけた。ギンガはそれをギリギリで避けたり剣で受けて対処している。

 

「諦めても良いんですよ?」

「諦めませんよ……。散々煽った結果負けるなんてダサいので」

 

 状況で言えばクリストの方が圧倒的に有利。しかし、ギンガの方も諦める気は無く、守りの中で活路を探していた。

 

(そろそろ決めないと……本当に負けてしまいますね。一瞬でもいい……完全に意表を突かなければ)

(装備をフル活用してるから有利に立ち回れてる。だとしたら、大袖と氷の刀を魔力に戻してから放つ『居合・氷華一文字【徒花】』は使わない方がいいな)

 

 二人の競り合いはまだ続く。この状況が続けば勝利する事を確信したクリストは攻めの手を緩めない。そして攻撃を受け流し続けたギンガはついに壁に追い込まれてしまう。

 

「しまった……」

「勝負、ありですね」

「ふっ……まだですよ!」

 

 ギンガはクリストの顔面目掛けて突きを放つ。決して遅い突きではなかったが、クリストの大袖型シールドが割って入り、防がれてしまう。しかしその直後、クリストの姿勢は大きく崩れた。

 

「なっ!?」

 

 ガクンと視界が落ちる。同時に、背後にギンガの気配を感じた。

 

(後ろ……いつの間に!?)

(よし、上手くいきましたね)

 

 ギンガは防御される事を想定してクリストの顔面に突きを放ち、シールドで視界を遮った隙に背後に周り、姿勢を崩す作戦に出た。結果は成功。クリストの姿勢を崩し、大きな隙を作り出せた。

 

「決まりです。『ギャラクティカエッジ』!!」

「あぁぁっ!!」

 

 完全に意表をつかれたクリストは防御も間に合わず、ギャラクティカエッジを背中にモロに受けた。クリストは衝撃で壁に激突したが、防具で受けた為大したダメージは受けなかった。

 

「……」

 

 クリストは立ち上がると、氷魔覚醒を解き、刀を納めた。

 

「完敗です……」

「そうでもありませんよ。私も、あれが上手くいかなければ負けてましたから」

「でも、上手くいくと思ってやったのでしょう?」

「勿論です。刺突攻撃なら、刀で受けるよりシールドで受けた方が確実に防げますから」

「……経験で負けた気がする」

「まだまだ伸び代はありますよ」

 

 ギンガはクリストに軽く微笑んだ。クリストは少し驚いた目をした後、照れくさそうに笑った。

 

「さ、練習用の武器は私が片付けておきます。ギンガさんは先に応接室に戻っていてください」

「では、お言葉に甘えて」

 

 ギンガはクリストに武器を渡すと、先に練習場を後にした。

 

「あー首痛い……。デカすぎでしょあの人……」

 

 

「改めてお疲れ様でした。飲み物です」

「ありがとうございます」

 

 クリストは応接室に居たギンガに飲み物を手渡す。

 

「いやぁ、良いものを見れましたよ。ブラン様も良い側近を持ちましたね」

「あはは……ありがとうございます。私の方も、良い経験になりました」

「それは良かった。ところで、私から一つ気になる事が……」

「なんでしょうか?」

 

 ギンガは飲み物をテーブルに置いた。

 

「あのソードビット、どうやって動かしているのですか?」

(ソードビット? あ、氷の刀のことかな?)

「あれは、頭で動かしてます」

「頭で……」

「はい。私が思ったように動かせるんです」

「なるほど」

「ですから、さっきみたいに思考が乱れるような事があると操作できなくなるんですよ」

「ふむ……」

「でも、それ以外なら自由自在に動かせます。攻撃にも防御にも使える、優秀な武器ですよ」

「……気に入った」

「はい?」

 

 ギンガはテーブル越しに身を乗り出してきた。

 

「やはりプラネテューヌに持ち帰ります!」

「は……はあぁぁぁ!?」

「安心してください。私が朝から晩まで特訓付けてあげますから!」

「え、遠慮しておきます……それに私には側近としての仕事が……」

「ルウィーにはいつか返しますから!」

「そういう問題じゃないんです!」

「はぁ……そんなに嫌ですか」

「嫌っていうか……私ブラン様の側近ですし」

「借りるだけです」

「本人の前で『借りる』とか言うな!!」

「……何としても鍛えてあげたい」

「ちょっと、戻さなくていい話題に戻すのやめてください」

 

 なんとかしてプラネテューヌに連れ帰ろうと、ギンガは説得を試みたが、クリストも意見を変えようとしない。その時、ギンガの携帯電話が鳴った。ネプテューヌから呼び出されたようだ。

 

「ネプテューヌ様からの呼び出し……戻らないといけませんね」

(助かった……)

「では、私はこれで……。ブラン様によろしくお伝えください」

「はい。今日はありがとうございました」

「こちらこそ。次こそ持ち帰りますから」

 

 そう言ってギンガは窓から飛び立った。その姿はすぐに吹雪の中に消えてしまった。

 

「……確かに、顔『だけ』はいい人だったな。あぁ、迂闊にプラネテューヌに行けなくなった……」

 

 クリストはギンガが飛び立った後の窓をゆっくりと閉めた。

 

 

 その夜、教会の食堂で夕飯をとりながら、ブランに今日の事を話した。

 

「なるほど、口説かれたと……」

「語弊がある言い方やめてください。そもそもあれは口説くってより誘拐です」

「ギンガらしいわね」

「らしいって……」

「でも、立場が近い者同士、仲良くできたでしょ?」

「それは、そうですね。手合わせでも学ぶことはありましたし」

「なら良かったじゃない」

「その点に関しては、本当に有意義な交流になりました」

 

 食事を終え、二人は食堂を後にした。

 

「さて、私は後少し残ってる仕事を片付けるわ。あなたはロムとラムのお風呂お願い」

「わかりました」

 

 クリストは部屋に戻って入浴に必要な物を準備する。

 

(……そういや、あの人についてあんまし聞き出せなかったな。なぜ初代守護女神の代からついてるか、何故そこまで変態なのか……うむ、謎は尽きない人だな)

 

 機会があれば今度はゆっくり話をしたいとクリストは思った。




書いてて楽しかったです。




さて、これにて「白の女神の新たな従者」は一区切りとさせていただきます。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回作に関しては、書いてたら楽しくなってきちゃったのでいずれ上げます。

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