白の女神の新たな従者   作:よっしー希少種

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午後の仕事

「この書類はまとめてそこの箱に入れておいて」

「はい。……この依頼書はどうすればいいですか?」

「あ、それまだあったのね。失くしたかと思ってたわ。その依頼はもう済んだやつだから捨てていいわ」

「わかりました」

 

 二人は着々と仕事を片付けていった。ブラン曰く、効率は格段に上がったとのこと。そう言われると、クリストもなんだか嬉しくなる。

 

「ところで、あなた守護女神を知らなかったみたいだけど」

「えぇ。存在自体は知っていたのですが、実際に見たことは無かったんです」

「ということは……四つの国のどこかで生まれ育った訳では無いのね?」

「はい。生まれは田舎の村なんです」

「そう。なら女神を子ども扱いもするわよね」

「……根に持ってます?」

「少しだけね」

「はぁ……」

(絶対めっちゃ根に持ってるよ……)

 

 その後も仕事はテンポ良く片付いていった。

 

「よし、今日の分はこれで終わりよ」

「お疲れ様でした」

「どう? 疲れた?」

「いえ。書類の整理をしただけでしたし」

「なら良かった。この程度でへばられても困るから」

 

 ブランは大きく伸びをすると、今度はパソコンの電源を入れた。

 

「今日の分の仕事は終わったのでは?」

「あぁ、これは……」

 

 何か話そうとするブランの声を遮るように、仕事部屋の扉が勢いよく開いた。

 

「ただいまーー!」

 

 元気の良い声と共にピンクの服を着た幼女が入ってきた。

 

「ラムちゃん、ここお仕事の部屋だよ…」

 

 続いて、水色の服を着た大人しめな幼女が入ってくる。

 

「ラム……ドアを開ける時は優しく開けなさい」

「だって、来てるんでしょ?側近さん!」

「!!? ブラン様、この子達って……」

「えぇ。きっとお察しの通り。ほら、自己紹介しなさい」

「はーい」

 

 二人はクリストの方に向き直った。

 

「ラムちゃんだよ! よろしくねー!」

「ロムです。よろしくね」

「ロム、ラム……やっぱりブラン様の妹だったのですね。クリストです。よろしくお願いします」

 

 クリストは二人に深々とお辞儀をした。

 

「側近さんだー! すごいねロムちゃん」

「うん、すごい……(わくわく)」

(『わくわく』って言った。今『わくわく』って言ったよ……?)

 

 二人はクリストに興味津々な様子だ。

 

「クリスト、せっかくだから、この子達の相手を任せてもいいかしら?」

「私がですか?」

「えぇ。今後仕えていくなら、少しでも打ち解けていた方が良いでしょ?」

「確かに、そうですね。わかりました」

「じゃあじゃあ、側近さんと遊んでもいいんだね!?」

「良いわよ。でも、あまり迷惑かけないでね?」

「はーい!」

「行こ、側近さん」

 

 クリストは二人に引っ張られて仕事部屋を後にした。

 

「さて、クリストがあの子たちの相手をしているうちに……」

 

 

「ねぇ、側近さんはゲームできる?」

「ゲームですか? できますよ」

「じゃあじゃあ! ゲームして遊ぼ!」

 

 ラムはクリストをテレビの前まで引っ張ってきた。ロムはコントローラーを三つ用意している。

 

「ソフトは何があるのですか?」

「色々あるよ。あの棚の中に入ってるのから好きなの選んで」

 

 ロムが指さした棚の中を見てみる。様々なジャンルのゲームがシリーズ毎にしっかり整理されて入っている。

 

「……あ、じゃあこれにしませんか? 『マーリョゴーカート5(ファイブ)』。これなら三人で遊べますし」

「マリョゴね。よーし! じゃあ誰が1位になれるか勝負よ!」

「うん! 負けないよ」

 

 テレビとゲーム機の電源を入れ、ゲーム機にカセットを入れる。クリストはゲームが起動するまでに説明書を読み、操作方法を確認した。

 

「操作はやっぱり簡単ですね」

 

 そうこうしてる間にキャラセレクトの画面に。

 

「私アイアンマーリョ使う」

「私はベビィニテールで」

「私は……初めてだからスタンダードにマーリョにします」

 

 続いてマシンのカスタマイズに。

 

「二人共決めるの早いですね。カスタマイズがあるなんて聞いてませんよ……」

「いつものカスタマイズだもん」

「初めてならこのカスタマイズがいいかも」

「ふむ……。あ、確かに見た目もなんかスタンダードですね」

 

 ロムのアドバイス通りのパーツを選んでクリストもカスタマイズ終了。

 

「コースはどこがいい?」

「難しすぎなければどこでもいいですよ」

「じゃあ、キノ子サーキットにしよ!」

 

 ステージを選んでゲームスタート。

 

『3…2…1…GO!!』

「あぁ! スタートミスったぁ!?」

「お先ー!」

「大丈夫?」

「むむ、スタートミスったくらいで勝負が決まった訳ではありませんよ!」

 

 二周目、三周目とレースは進んでいった。

 

「私1位ー!」

「私は2位だね」

「……6位」

 

 ラム1位、ロム2位、クリスト6位だった。

 

「初めてなのに6位だったら充分上手だと思うよ」

「そうですかね?」

「うん。絶対上手になると思うよ」

「……なら、もう1回やりませんか?」

「いいよ。ラムちゃんもいい?」

「何回でもやるわよー!」

 

 そして三人はゲームに興じた。

 

「おぉ、確かに。上手くなってる気がします!」

「でしょ?」

「すごーい!側近さんゲーム上手なんだね!」

 

 まだ続き……

「どうです!? 1位ですよ1位!!」

「も、もうそんなになるなんて……」

「すごい。上達早いね……(ドキドキ)」

 

 まだまだ続いて……

 

「ロム、ラム、夕食の時間よ。クリストも」

「あ、はーい!」

「ご飯の時間だね」

「え、もうそんな時間だったのですか!?」

 

 ブランが声をかけるまでゲームは続いた。時計を見ると、18時を示していた。

 

「あなた、側近なら時間の管理くらいしっかりしなさい」

「すみません、久しぶりのゲームでつい熱中してしまいました……」

 

 ブランに続くようにしてクリストは食堂へ向かった。

 

 

 食堂のテーブルには夕食が並んでいる。メニューはシチューだ。

 

「シチューだ!」

「やったー!」

 

 ロムとラムは大いに喜んでいる様子。

 

「あなたはここに座って」

「わかりました」

 

 ブランは自分の隣の席を示した。クリストはその席に座る。

 

「では、食べましょうか」

「いただきまーす!」

「いただきます!」

「いただきます」

 

 四人は賑やかに会話をしながら食事を楽しんだ。

 

「ブラン様、この後何か手伝うことってありますか?」

「特に無いわ。後はもう部屋で休むから。あなたもゆっくり休んで」

「ありがとうございます」

 

 ふと、クリストの手が止まる。スプーンにはシチューに入っていたブロッコリーが乗っている。クリストはさりげなく、ブロッコリーをブランのシチューの中に入れた。

 

「……クリスト?」

「はい?」

 

 当然の事ながら、あっさりとバレてしまう。

 

「これ……」

「ブラン様のシチューにブロッコリー入ってないなぁと思ったので」

「ブロッコリーならもう食べたわ」

「そうでしたか。ではもう1ついかがですか?」

「クリスト……」

「はい」

「見苦しい」

「……」

 

 ブランはブロッコリーをクリストのシチューに戻した。クリストはもう一度ブロッコリーを移そうとした。が、ブランはクリストの腕を掴み、それを阻止した。

 

「!?」

「黙って食べる」

 

 全く腕を動かせない。その細い腕からは想像できないくらいの強い力で抑えられている。

 

「ですが……」

「食べれない訳じゃないでしょ?」

「そうですけど……苦手なんですよ!」

 

 まだ(あらが)うクリスト。

 

「ブロッコリー嫌いなの?私は食べれるよ?」

「苦手な物も食べなきゃダメだよ…?」

 

 ロムとラムも口を挟んできた。

 

「いやでも……」

「ロムちゃんは苦手な椎茸(しいたけ)を克服して食べれるようになったよ? ねー?」

「うん!」

「え……」

「あの子たちの方がよっぽど大人ね」

 

 よっぽど大人ね。この言葉がクリストの心に大きなダメージを与えた。

 

「そ、そこまで言いますか……」

「事実でしょ。今の様子を見たら」

「う……」

「すごく効いてるみたい……」

「こうかはばつぐんね!」

「……わかりましたよ。食べればいいんでしょ、食べれば……」

 

 クリストはブロッコリーを口に運んだ。ものすごく顔をしかめてはいたが、ちゃんとよく噛み砕いてから飲み込んだ。

 

「これで満足ですか?」

「やればできるじゃない」

 

 ブランはクリストの頭を撫でた。

 

「…………!!!!???」

 

 落ち込んでいた感情が一気に羞恥にシフトチェンジした。

 

「な、ななななななな!!?」

「ご褒美」

「頭撫でてご褒美って!!」

「嫌いなものを人の皿に移すような人にはピッタリだと思ったのだけど……」

 

 袖で口元を隠しているが、いたずらっぽい笑みを浮かべているのがわかる。

 

「……からかってます?」

「わかる?」

「……! やっぱ根に持ってますよね! 私が子ども扱いしたこと!!」

「だから……少しだけって。ふふっ……」

「めちゃめちゃ根に持ってますよね!?」

 

 夕飯の時間はいつもより賑やかな雰囲気で流れていった。

 

 

「いつも以上に賑やかな夕食だったわ」

「それは良かったです……」

 

 クリストはブランが部屋に戻るまでは一緒に行動していた。

 

「お疲れ様。今日はあとゆっくり休みなさい」

「ありがとうございます。ブラン様も、お疲れ様でした」

 

 ブランと別れたクリストは自室へ戻った。戻ってすぐにお風呂のボタンを押し、お湯を入れる。お風呂ができるまではしばらくかかりそうだ。

 

「……何しようかな」

 

 やることが無くなると途端に暇になる。ぼーっとしていると、あることに気が付いた。

 

「着替え、どうしよ。あと諸々の置いてきた物」

 

 ルウィーから家までは結構な距離がある。ましてや夜に一人でそこまで行くのは危険を伴う。悩んだ結果、ブランに相談してみることにした。

 ブランの部屋のドアをノックする。

 

「失礼します、クリストです」

「どうぞ」

 

 部屋に入る。ブランは小説を読んでいた。

「どうしたの?」

「私が家に置いてきた荷物について気になって…あれってどうなるんですか?」

「あぁ、教会の職員に取りに行かせているわ。あなたがフィナンシェに色々教わってる間に頼んでおいたわ」

「取りに行かせてるって……住所わかるんですか?」

「ギルドと協力した。国外にも活動範囲があるギルドの情報と繋げればバッチリわかるわ」

「えぇ……おっかない。そんな簡単に重要な個人情報扱います?」

「元々犯罪者みたいなものだったからね。そこは容赦してないわ」

「何も言い返せない……。では、荷物は届くんですね?」

「そうね。時間的にもそろそろ着く頃だと思うわ。部屋に戻って待機してて」

「分かりました。ありがとうございます」

 

 ブランに言われた通り、部屋に戻って待つ。

 10分後……

 

「クリストさん、居ますかー?」

「来たかな?はーい!」

 

 ドアを開けると、そこにはダンボールを抱えた教会の職員が立っていた。

 

「ブラン様の指示通り、あなたの家にある物を運んできました。流石に全て運ぶことは出来なかったので、必要になりそうなものに絞って運ばせていただきました」

「お疲れ様。残してきたものはどうするの?」

「一週間後に全て売りに出すそうです。売り上げ金はクリストさんの手元に届くそうですよ。ですので、まだ残したいものがあれば1週間以内に伝えてくださいね」

「わかった。ありがとうね」

 

 ダンボールの中には家にあったものが綺麗に整理されて入っていた。箱ごとに衣服だったり小物だったりで仕分けもしてある。少しだけ、中身を確認してみる

 

「服は……うん、寝間着もしっかり入ってるね」

砥石(といし)も。刀研ぐのに必要だから取っておく……」

「裁縫セットも入れてくれたのか。ケープがほつれたりした時に治すのに使えるね」

「おぉ、まさか据え置きゲーム機の『ゲームスクエア』まで入れるなんて。手に入りにくいお宝ゲーム機だから嬉しいな……。しかも人気作の『すんごいマーリョサンライト』や、今や伝説の神ゲーと化した『カーフィーのエアドライブ』も忘れずに入れてる!? しっかり梱包材で保護して入れてくれるなんて、ここの職員さんは見る目があるみたいだね」

 

 見た感じ、足りない物は無さそうだ。これで不安要素は無い。物を出すのは明日やることにして、今日はもう休むことにした。

 既にできあがってるお風呂に入り、寝間着に着替える。寝間着と言ってもパジャマではなく、作務衣(さむえ)だ。

 

「アラームを6時にセットして……これで良し」

 

 目覚まし時計のセットして布団に入る。深夜の仕事とかを覚悟していたが、そんなことは無いようだ。こうして側近としての1日目は幕を下ろした。




サブタイトルが中々決まらずに結局こうなってしまいました。
田舎の人は実際の女神の姿を知らないという設定は「めがみつうしん」で田舎の村の住人たちが偽物の女神を本物だと信じていた話から。あの話で偽ブラン(犬)に帽子をあげるブラン様がとても可愛かった……。
クリストはゲームスクエアという四角い据え置きゲーム機を大切にしていますが、別にクリストのモチーフが某四角いゲーム機ということではありません。やりたいゲームソフトのパロディがあったからです。

ここから先は1ヶ月更新にしようかと思います。ですから第4話は2月中に出せるように執筆していきます〜
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