クリストが側近になってから、二ヶ月の月日が流れた。この生活にも慣れ、手伝いも難なくこなせるようになっていた。
「ブラン様、今日のご予定は?」
「そうね……お客さんが来るわ」
「お客さんですか。何か準備することはありますか?」
「応接室の点検と、お客さんが来たらお茶の用意。この二つをお願いするわ」
「わかりました!」
来客なんて珍しい、なんて思いながら応接室の点検を始めた。全くと言っていいほど不備は無かった。クリストの担当ではないが、毎日掃除されているかららしい。
次にお茶菓子の用意を始めた。クリストが選んで用意してもいいようだ。
「煎餅とみたらし団子と……ブラン饅頭。ブラン様の顔が描かれているお饅頭だ」
ルウィーの名産品ブラン饅頭。これは必ず入れろと指示された。まだ食べたことは無いが、とても美味しいらしい。
「一つくらい、食べてもバレない……訳ないか。うん、止めておこう」
お菓子を持った皿を応接室に運ぶ。
(あれ……ドア閉めたっけか?)
さっきは開けたままにしておいた応接室のドアが閉まっている。恐らく中に誰か居る……と、二ヶ月の間に鍛えられた勘が言っている。
一応、ドアをノックしてみる。部屋の中からブランが返事をした。
「クリストです。お茶菓子を持ってきましたが、今よろしいですか?」
「あぁ、ありがとう。いいわよ」
「失礼します……」
入ると、ブランの向かいには黒髪のツインテールの女の人が座っていた。少し驚いたが、この人がブランの言っていたお客さんだと思い、挨拶をした。
「こんにちは」
「こんにちは……」
あっちも挨拶を返す。クリストはお菓子の皿をテーブルに置く。
「お茶もすぐ用意しますね」
「頼むわ」
クリストは部屋を出て、すぐにお茶を容れに行った。あの人とブランがどんなやり取りをしているのか、少しだけ気にしながら。
❅
ブランはお茶を持ってきたクリストに対し、仕事部屋の机の整理を指示して部屋から退室させた。そしてブランは向かいに座っている少女、ノワールとの会話を再開した。
「さ、じゃあさっきの話の続きを……」
「いや、話の続きの前に一つだけいい?」
「何?」
「あの子、誰? なんだか異様に慣れたようにやり取りしてたけど」
「……側近」
「はぁ!?」
ノワールはブランの発言に心底驚いた様子を見せた。
「いつから!?」
「二ヶ月前くらいからね」
「だとしたら、まぁあれだけ慣れてるのは納得だけど……いきなり側近だなんて何があったのよ」
ブランはお茶を一口飲んでから答えた。
「執筆の……いや、仕事が忙しいから」
「小説のためね」
「……」
バツの悪そうな目をする。何か反論が来る前にノワールは話題を変えることにした。
「それで、私に用事って何なのよ。ブランの方から私を呼び出すなんて珍しいじゃない」
「……前にあなたが話した魔力を使った武器の話よ」
「お、まさか完成の目処が立った?」
「まぁ……出来なくはないのだけど。試作段階だからなんとも……」
ノワールは以前、より高火力な武器を作るためにと、ブランに魔力で強化できる武器の共同制作を提案した。手始めにノワールが扱うショートソード、そしてラステイションの女神候補生のユニが扱う銃器の制作を依頼したのだ。
「一応、現段階での現物はここにあるわ。と言っても、まだショートソードの方しかできてないけどね」
ブランは椅子の横に置いておいたケースを開き、中をノワールに見せた。中にはなんの装飾もされていないショートソードが1本入っている。
「なんだか地味ね」
「まだ装飾していないから。魔法による
「へぇ。試作品にしてはなかなかいいんじゃない?」
ブランは首を横に振った。
「まだまだ欠点だらけよ。魔法の付与に耐えることには成功しても斬れ味を両立させることはできなかった。だからこれの斬れ味は店売りのショートソード以下。それに、素材が膨大だから量産にも向かない。もし同じようなものをまた作るとして、その時はあなたからの素材の提供とそれなりのお金を要求することになるわ」
「つまり、属性を付与して殴るお高い鈍器ってこと?」
「そうね。現段階ではそれで精一杯」
「なるほど……。にしたって、よくここまで作れたわね。正直、もっと時間かかるかと思ってたわ」
「それに関しては、良いサンプルが手に入ったからよ」
「良いサンプル?」
「えぇ。クリストが持っていた刀がそうだったからね」
「どういうこと?」
「見れば分かるわ。ついてきて」
ブランはノワールを連れて教会の地下牢へ向かった。その牢の一つにいかにも頑丈そうなケースが一つ、置いてあった。ブランは鍵で格子の扉を開け、ノワールと一緒に中に入った。
「一応、手袋して触って。汚したり傷つけたりして文句言われたくないから」
「あの子の物なら自分で管理させたらいいんじゃないの?」
「あぁ、それについてはかくかくしかじか……」
ブランは刀を預かることになった経緯を説明した。
「……なるほどね」
ケースを開け、中にある刀のうち一本を取り出す。
「勝手に解析してみたのだけど、この刀、二本とも魔法伝導の効率が良い上に斬れ味もかなりのものになっているの。この刀は氷属性特化って感じだけどね」
ブランはノワールに刀をそっと手渡した。ノワールも両手でそっと受け取る。
「軽い……。確かに片手で振るのにも苦にならない重さね。これ、素材とかは解析できたの?」
「ほとんどは解析できたけど、でも斬れ味との両立については分からないままよ。本人に聞いても『詳しいことはわからない』って」
「謎ね」
「そうね」
ブランはノワールから刀を受け取り、またケースの中にしまった。結局、この企画の成功にはまだまだ時間を要するだろうということで今日のところはお開きになった。
❅
「あと一ヶ月……」
クリストは仕事部屋のカレンダーを見ながらぼんやりと呟いた。刀が返ってくるまでもう少し。
(一国を治める守護女神の側近になったんだ。刀が戻ってきたら……ブラン様の為に振ることにしよう)
今度は自分の力試しではなく、人の為に振る。そんな決心を抱いていた。
「しかし……前にブラン様に色々聞かれたけど、あの刀なにかあるのかな? たまたま迷い込んだダンジョンのアイテムボックスの中にあったやつだから詳しいことはさっぱりなんだよなぁ……」
あの刀に思い当たる節はない。ただ、他より軽く、刃が白いこと以外は何の変哲もないはず。
「……ま、今はどうでもいい事か。お茶のおかわり必要か聞いてこよーっと」
クリストは仕事部屋を出て、応接室に向かった。もう既にお開きになったとは知らないまま……。
次回のお話はちゃんと内容あるものにします……。一応内容は考えてありますので……。
モンハンやAPEX等の欲に負けないようにして書いておきます!