そうなっても月に1回は絶対更新しますが
「約束の日ね。あなたの刀は返すわ」
「遂に! ありがとうございます!!」
クリストが側近になってからちょうど三ヶ月。ブランはクリストの刀が入ったケースを手渡した。クリストは子どもがプレゼントを開けるような目をしながらケースを開いた。
「おぉ! 傷一つ無い。戻ってきたか……『
「へぇ、そんな名前付いてたのね」
「はい。というか、付けたんですよ。雪のように白い刃なので……こういう名前に」
クリストは二本の刀を左右の腰に差し、立ち上がる。
「さて、刀は返したけど……」
「もう無闇矢鱈に人に刃を向けたりしませんよ」
「皆まで言わずとも良いみたいね」
「勿論です。今後はブラン様の為に役立てますから」
「それは心強いわ」
ブランは口元を隠して微笑みながら言った。
「さて。それなら、あなたに渡しておくものがあるわ」
「なんですか?」
ブランはコートのポケットから小さな紙を取り出し、クリストに手渡した。
「モンスターとの模擬戦を行うことが出来る施設、コロシアムの参加券よ。そこで体を慣らして来なさい」
「わぁ……ありがとうございます!」
クリストはブランから場所を教えてもらい、コロシアムへ向かった。
❅
コロシアム受付。ブランからもらった参加券を受付に渡し、準備が整うまで待つ。
「この施設では、モンスター等と擬似的な戦闘を行うことができます。出現するモンスターは本物ではありません。それ故に難易度によって性能に差が生じています」
「つまり……?」
「例えば、今回のプログラムはLv20相当の強さに設定されています。なので、スライヌ等のLv15相当の強さのモンスターでも、Lv20までステータスが引き上げられています」
「なるほど」
準備が整うまで職員から説明を聞く。
「また、この施設は参加者の安全を配慮し、参加者の申請か、こちらの判断で戦闘を途中で止めることもできます。怪我の手当ても無償で行います」
「なら安心か……。あ、そういえば、今回私が挑むやつって、どんな感じのやつなの?」
「今回クリスト様が挑戦するのは大連続討伐に分類されるものです。次々と現れる敵を全て倒しきればクリアです」
「体を慣らせって言いながら中々厳しそうなものを……しかもLv20相当か」
話の途中で職員の携帯が鳴った。内容は闘技場の準備が出来たという連絡だったらしい。
「準備が整ったみたいですね。お待たせしました。闘技場の方に案内します」
「はい。お願いします」
職員の後について歩く。向かった先は所謂アリーナ。円形の闘技場の周囲をぐるりと観客席のようなもので囲まれている。壁にある大きなモニターには闘技場が映し出されている。
「それでは、これより大連続討伐プログラム『スライヌもりもり』を開始します。健闘を祈ります」
直後、闘技場にホログラムで何かが形成されていく。完成したのは、見た目は本物と全く変わりがない完成度のスライヌ3匹だった。
「開始か……。いざ……!」
クリストは左の腰に差した刀の
「はっ……!」
少し刃を外に向け、横からの抜刀斬りで斬り掛かる。
「ヌラッ……」
手応えは十分。普通なら倒せていた……が、今回は野良のスライヌより少し強い。ギリギリ倒しきれなかった。
「ちっ……なら!」
今度は左手で右の腰に差した刀の柄を握り、そのまま抜刀、上から切り伏せた。
「ヌラァ……」
「まず一つ……。次」
残る二匹に視線を送る。ただのスライヌならやることは体当たりだけ。ならば、と両腕を下ろし、低い姿勢から
「オラッ!」
「ヌッ!」
体を起こす勢いも利用して二刀で斬り上げる。二匹目、撃破。
「最後だ!」
今度は一気に振り下ろし、三匹目も撃破。
「よしよし、余裕だな」
少しのインターバルの後、次のモンスター達が形成されていった。
「スライヌベス二匹にヒールスライヌ……ヒールスライヌから倒せばサクッといけるはず」
ヒーラーから倒すのは鉄則。ヒールスライヌへ詰め寄り、刀を振り上げる。
「捉えたっ!!」
その刃はヒールスライヌを切り裂き、消滅させた。間合いを詰めてきたスライヌベスも振り向きつつ横斬りで倒す。
「よし、良い感じ!」
その後も次々と出てくるスライヌ系のモンスター達を倒していった。
そして、おそらくこのプログラム最後のモンスター、巨大なスライヌ……ビッグスライヌが現れた。
(デカい……攻撃範囲もその分広いが、当たり判定も広いはず)
クリストは大きく深呼吸をして呼吸を整えると、ビッグスライヌと一気に距離を詰めようと駆け出した。が、ビッグスライヌはそれに対し体当たりで迎撃をしようとするようだ。
(嘘!? ……スライヌなら先手を取れるという考えが甘かったか)
気付いた時には遅かった。体当たりしてくるビッグスライヌに対し、刀を振るには遅すぎる。
なんとか受け身をとり、体制を立て直す。
(受けるだけで結構
クリストは左手の刀を右腰の鞘に納刀すると、残った一本の刀を両手で持ち、構えた。
「……こういう使い方する武器じゃないけどね。許せよ銀雪」
ビッグスライヌは再び体当たりをしようと距離を詰めてくる。対するクリストは大きく振りかぶり、上段の構えをとる。
「…………ここだっ!」
そして思いっきり振り下ろす勢いを使って刀を投げた。刀は見事にビッグスライヌに命中した。
「ヌラッ!?」
「もらった!!」
怯んだ隙に一気に詰め寄り、全力の居合斬りを放った。ビッグスライヌのホログラムが消えていくのを視界の隅に捉え、勝利を確信する。
「……プログラム終了です。お疲れ様でした」
「ふぅー、終わった……」
クリストは無事にプログラムを終えることが出来た。静かになった闘技場に銀雪の落ちる音が響いた。クリストは銀雪を拾い、鞘に納刀すると、闘技場を後にした。
❅
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい。どう? 体は慣れた?」
「慣らすには大分ハードでしたけどね……」
「でも、ちゃんとクリアしたんでしょ?」
「ギリギリでしたけど……」
クリストは少し疲れた様子で話した。
「大丈夫、ギリギリは想定済みよ」
「?」
「だから、アレを安定してクリアできるように私がアドバイスをあげるわ」
「アドバイス、ですか」
「そう。せっかく良い物持ってるんだから、ぜんぶ使わないと宝の持ち腐れよ」
ブランはクリストの刀に視線を送りながら言った。なんとなく視線を察したのか、柄頭に手を添える。
「これ、使いこなせてないように見えます?」
「いえ、見た感じは十分に使いこなせているわ」
「じゃあいいじゃないですか」
「でもまだ半分……もしくはそれ以下なのよ」
「はぁー?」
クリストは不満そうに眉をひそめる。
「じゃあ何が足りないんですか?」
「……魔法」
「はい?」
「魔法」
「魔法……まさか、刀に
「察しがいいわね」
ブランはそのまま説明を始めた。
「まず、あなたの刀。それは二本共魔法伝導に優れていて、刃全体に満遍なく魔法を行き渡らせることができるの。特に氷属性に適正があるみたいなの」
「ふむ……」
「だからあなたには氷属性の魔法を覚えてもらうわ」
「覚えてもらうって……できますかね? 魔法なんて使ったことがないのですが」
「安心しなさい。何も氷塊を操ったりそういうのじゃないわ。武器に属性を付与するだけの、簡単なやつよ。あなたも絶対に扱えるはず」
「そうは言われても……」
「大丈夫。とりあえずこれ」
ブランはクリストに一冊の本を手渡した。シンプルな表紙の普通の厚さの本だ。
「これは?」
「覚えればいいやつを抜粋してまとめておいた本よ。時間を見つけて読んでおいて」
「はぁ……」
「正直、慣れよ。やり方のコツは教えるから、後はあなたのセンス次第」
「……わかりました。頑張ります」
クリストは少しの不安と、これを習得できれば討伐依頼にお供としてついて行けるようになるのかもしれないという期待を抱きながら魔法の習得を始めることになった。
「というか、何故この刀が魔法の伝導が良いってわかるんですか?」
「あっ……んんっ、えっと……め、女神の勘よ……」
「……本当かよ」
「何か言った?」
「いえ! 何も! 女神の勘って凄いなぁって、ただそう呟いただけです!」
クリストが携えてる刀です。左腰に銀雪、右腰に雪華を帯刀してます。ちゃんと刃が上を向くように帯刀してます。ちなみに型は我流です。
最後に、刀は投げるものではありません。最近流行りのマンガの主人公もやってましたが、普通は投げません。投げたことないので分かりませんが、普通は折れたりすると思うんですよね……