今回からまたシリアス。ちょっとホラー要素?があります。
後短いかも‥‥‥。導入なんで許してください‥‥‥。
前半はほのぼのなんで安心してくださいな。
『すいません。今日来て頂いたのに明日も続いていらすことになってしまって。』
『いえ、気にしないでください。これからのお仕事に影響する物なんですし、僕は迷惑とは思っていませんから。』
『ありがとうございます!そう言っていただけると本当に助かります‥‥‥(´∀`)』
「ふふっ、可愛い顔文字だなぁ」
事務所から帰宅して夕食も済ませ、僕はベッドに座りながらマネージャーの佐々木さんと明日の日程についてのメールを交わしていた。
どうやら自己紹介用の映像を撮らないといけないらしく、撮るなら早い方が良いと言う事で僕は明日また事務所に行くことになった。
どうせなら今日撮れば良かったのではないかと思うが、時間も時間で機材の準備もまだだったらしい。
そう言う事で、今日の撮影は難しいとの事。結局は明日撮影する事になった。当然明日も学校はあるし、少し急いで行かなければならない。
『それと、もう一つ連絡があるのですが、ラジカルの時に使っていたマスクと帽子を持ってきて頂けますでしょうか?』
「ん、帽子とマスクか‥‥‥‥一体何に使うのやら。‥‥‥構いませんよと」
『ありがとうございます。では、これで伝える事は以上ですので失礼しますね。改めて、明日もよろしくお願いします』
『はい、此方こそよろしくお願いします』
そうして、明日の事についてのやりとりは終了。
僕は『お休みなさい』とスタンプを送り、スマホの電源を落とした。
「はぁ‥‥‥‥なんか今日は疲れた‥‥‥‥」
溜息を吐き、僕はベットに倒れ込む。今日の出来事が頭の中を巡り、一つの記憶が鮮明に現れた。
それを思い出すと同時に体温が上がり、自分の顔がみるみる紅潮していくのを感じる。
「‥‥‥しちゃったのかぁ。それが千聖姉さんととは思わなかったけど」
実の姉とキスをしたという事実。
その事実をすんなりと受け入れていた自分がいた。心に喜悦した感情が募っていくのを体感し、ほぼ強制的に奪われた初めてだったのに、自分の中には少なくとも喜びがあったのだ。
「‥‥‥ち、違う違う!嬉しいとかじゃ‥‥‥‥」
その感情を自分で否定し、頭をブンブンと横に振る。
あの後、千聖姉さんと帰る帰り道は絶対気まずいだろうと思っていたが、千聖姉さんは終始にっこにっこで歩いていた。
そんな千聖姉さんを見て正直手が出そうになったけど、手を出したところでどうせ敵わないですし。挑んだところでもっと酷い事される未来が見える。悲しきかな。
そんなこんなで意外と気まずさとかはなかった。
何なら千聖姉さんは凄く嬉しそうだったしね。音符マークが出そうなくらいルンルンでしたもの。
まあ、そういうところが憎めない。嬉しそうな表情でいる千聖姉さんを責める事なんてできないんです。
‥‥‥は?お前シスコンだろって?
あんなブラコン姉さんと一緒にしないでいただきたい。少なくとも異常な千聖姉さんとは違います。
とまあ、変な自問自答を繰り返しながら、僕は疲れからか徐々に睡魔に襲われる。
幸いお風呂には入った。何ならもう寝れる。
僕は欠伸をしてベッドの上で瞳を閉じた。
取り敢えず今日は疲れた。これ以上何か考えるのはよそう。
そう自分に言い聞かせ、僕は眠りへとつくのだった。
○
『すいません!ホワイトさんですよね?』
暗く、人気のない場所。そこで一人の男性は尋ねられる。
『———、—————。——————?』
相手が話しかけてきた理由にあたる目的の人物であろう男性は言葉を返し、問いかけた。
『実は私、ホワイトさんのファンなんです!握手してもらっても良いですか?』
その言葉に男性は快く承諾する。
『————————』
『ありがとうございます!‥‥‥‥ふふっ、これがホワイトさんの手‥‥‥』
『—————————?』
小さく呟かれた言葉を耳にし、男性は不思議そうに尋ねた。
それに対して、発した本人は首を横に振る。
『いえ、何も言ってないです!ちょっとホワイトさんと握手出来た事に感極まっちゃって』
『——————。‥‥‥‥‥‥‥‥?」
『あれ、どうかしましたか?何か私の顔にでも?』
男性はここで気づく。人気のないこの場所。
そして、相手は女性。
普通、この時間と場所で女性一人がうろつくだろうか。
『———、——————————』
その疑問を口にすると、その女性は不気味な微笑みを浮かべる。
『‥‥‥ふふっ、確かに疑問に思うのも無理はありません。こんな時間に一人で、なんてね。一体どうしてだと思いますか?』
『‥‥‥‥‥‥‥‥』
男性は思わず黙り込んだ。
異様な雰囲気を漂わせるこの女性に、訝しさを感じたから。
『そんな顔しないでくださいよ。別に怪しい者ではないんですから。でも、そうですね。理由をお答えするのであれば』
そんな男性の感情などいざ知らず、女性は楽しそうな笑みを作り、その答えを出した。
『‥‥‥
○
「っ‥‥‥‥‥‥‥」
冷や汗が全身から溢れ出し、最悪の目覚めと言える朝。外は明るく、カーテンから漏れ出す光が眩しく映る。
「何、あれ‥‥‥‥‥‥」
記憶の片隅に微かに残る情景。夢と酷似したそれは気持ちの悪い不気味さを感じた。
夢で自分が言葉を発していないという事が更に奇怪な気味悪さを憶える。
夢で見た場所は明らかに記憶にある場所だった。
あれは事務所の帰り道。ラジカルに所属していた時に好んでいた道だ。人気がないが故に、静かな夜の道を歩けるスポット。
そこで出会った女性。鮮明になど残っていない筈の記憶なのに、それを思い出そうとするとどんどん明瞭になっていく。
顔。情景。言葉。
それが明らかになっていくのに恐怖を感じ、僕はそこで夢の事を完全に断ち切った。
一旦深呼吸を行い、時計へと視線を向ける。
時刻は午前6時半。いつもより幾分か遅い時間だ。早めにお弁当を用意しないと不味い。
僕は急いで部屋を飛び出し、キッチンの方へと向かうのだった。
‥‥‥怖いね。