輝きの復活   作:@naru

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 今回のメインは美咲さん。千聖さんも出ますぞ。





七話 期待と絆

 

 鳥の囀りと朝特有の冷え込んだ空気が流れるのを感じ、気怠げな身体を起こす。

 隣には、いつも通り千聖姉さんがすやすやと規則的に寝息を立てていた。僕はそんな姉を見て、思わず微笑みが漏れる。

 

 毎日朝は身体が怠くて苛々する筈が、今日は何故かその苛つきは無かった。千聖姉さんが隣にいる事の実感。それは当たり前なのに、何処か心を落ち着かせた。

 

 

「‥‥‥‥お弁当の準備しなくちゃ‥‥‥」

 

 

 名残惜しくも、今は一時の安心から離れる。動いた事で乱れた毛布を姉に掛け直し、キッチンへ向かう為に僕はドアノブを引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜〜〜♪」

 

 

 鼻歌を口ずさみながら野菜を切り、お弁当と朝食を同時に作っていく。

 今日のお弁当は昨日と打って変わって洋物で固めた。同じ物では飽きてしまうだろうと思い、メニューは変えたが、味付けは変わらず千聖姉さん好みのあっさりとしたもの。

 

 朝食は苺とバナナのアサイーボウル。これまた千聖姉さんの好物で、手間はかかってしまうけどどうせなら美味しく作りたい。そこらは自分の気力で何とかするしかないだろう。

 

 朝から姉さんの好物。自分でも機嫌が良く張り切っているのがバレバレだと思うが、致し方ない。

 だって、嬉しかったのだから。姉から好かれていると、信頼されるていると改めて分かって。

 

 姉の存在は昔から憧れだった。僕が進む先には全て千聖姉さんの姿が有った。子役時代、小中と千聖姉さんを模範として過ごし、千聖姉さんの言葉は全て心に留める。

 そんな自立とは程遠かった昔だが、中学を卒業間近からは自立の意識が高まり、自分で改善するよう努めた。

 

 そこから千聖姉さんとのやり取りは前より減ったと思う。思春期という複雑な感情から、昔みたいに接する事に恥ずかしさを感じていた。無論、今もその感情は少なからずあるが、昔はより酷かった。

 

 でも、千聖姉さんを大切に思う気持ちは変わらずあったのだ。

 それを直接伝えるのは今でもやはり恥ずかしい。

 

 だか、千聖姉さんは僕に対して恥ずかしげもなく想いを言葉にして表してくれる。それに応えたい気持ちがあったからこそ、昨日は自分の想いを千聖姉さんに伝えられた。

 

 自分自身の葛藤と複雑な感情が嘘みたいに、昨日はすんなり言葉に出来たのだ。それが可笑しくて、自分でも自然と笑みが溢れていた。

 千聖姉さんに自分の想いを伝える。それを達成した事実が僕を高揚させ、気分も朝から良かったのだ。

 

 

「‥‥‥よしっ。千聖姉さん、喜んでくれたら良いな」

 

 

 朝食のアサイーボウルを作り終わり、千聖姉さんの表情を想像しながらエプロンを外し始めたその瞬間—————。

 

 

「ええ、朝からとっても良い気分よ。これほど気分が良い朝もないわ」

 

「っ‥‥‥‥‥」

 

 

 聞き慣れた声と共に、僕の身体に回される二本の手。突如抱きしめられた事に驚きを隠せなかったが、正体が分かりきっているが故にその驚きもさして大きくはなかった。

 

 

「‥‥‥朝からブラコン全開な事で」

 

「弟が嫌いな姉なんて世界にはいないもの♪」

 

「さいですか‥‥‥」

 

「それに、気分が良いのは昨日こんな物を手に入れたからよ」

 

 

 そう言って千聖姉さんが取り出したのは黒く縦長状の機械。見覚えのある物に、僕は思わず顔を顰める。

 

 

「それ、ボイスレコーダーだよね」

 

「大正解」

 

 

 そして、千聖姉さんがボイスレーダーのボタンを押す。嫌な予感がとてつもない程取り巻く現状に僕は不安で一杯だった。

 

 

『本当にありがとう、千聖姉さん。これからもずっと‥‥‥‥大好き、だよ』

 

 

 案の定嫌な予感は的中し、再生されたのは昨日僕が伝えた千聖姉さんへの言葉。一番録音されたくない物をご丁寧に録音されてるとは思いもしなかった。

 

 僕は羞恥心から体温が上がるのを体感する。恐らく、顔も紅潮している事だろう。

 

 

「まさか、一楓からこんな言葉が聞けるとはね♪これは永久保存確定。何が何でも後世に一生残すわ」

 

「っ‥‥‥‥ほんっとうに最悪‥‥‥一生の恥だよ‥‥‥」

 

「じゃあ、これは益々記念物ね。今日は本当に良い朝だわ♪アサイーボウルも作ってくれたみたいだしね♪」

 

「はぁ‥‥‥‥まったくこの姉は」

 

 

 変わらない日常の始まりに、また一つ僕は溜息を吐く。

 だが、その溜息にはいつもの気怠さよりも、幸せを大きく感じる物だった。

 

 そんな幸せを噛み締めながら、僕は二つのボウルを手にし、また微笑みを溢す————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、美咲さん」

 

 

 場所は変わり、教室へ向かう廊下の道中。見慣れた長髪の黒髪の人物に僕は挨拶を投げかけた。

 

 

「ん、一楓。おはよーう‥‥‥」

 

 

 此方へ振り向き、いつも通りの声音で挨拶を返す美咲さん。その表情からは疲れがあからさまに見て取れた。

 

 

「もしかして、昨日も徹夜で作曲?」

 

「あ、バレちゃった?いやー、徹夜はするもんじゃ無いねー‥‥‥」

 

「バンドに所属してない僕が言えた事じゃないけど、睡眠はちゃんと取らなきゃダメだよ?」

 

「うーん。それは分かってるんだけど、時間がないとどうしてもね」

 

「そっか‥‥‥。美咲さんも美咲さんで忙しいだろうし、これ以上は言わないけど体調には気をつけてね」

 

「うん。ありがとう、一楓」

 

 

 疲れが少し見えるが、明るい笑みを浮かべる姿を目にし、僕は安堵する。何か力になりたいけど、生憎作曲の知識は浅い。

 というか、僕がラジカルに所属していた事も復帰する事も何ひとつ美咲さんに伝えていなかったな。頃合いを見て伝えるしか無いか‥‥‥。

 

 

「あ、そうだ‥‥‥‥はい、これ。ノート返すね。本当に助かったよ」

 

「そう言えば昨日貸してたんだっけ。はい、確かに受取ましたよと」

 

 

 ノートを返したところで、僕は前回のお詫びを兼ねて一つ提案する。

 

 

「ところで、昨日お昼一緒に結局食べられなかったからさ、今日は一緒にどうかな。先に言っとけば千聖姉さんにも断り入れるから」

 

「え、あっ‥‥‥あたしは勿論大丈夫だよ。別に昨日の事はそんな気にしてなくても‥‥‥」

 

「ううん。せっかく誘ってくれたのに無下にするなんて悪いから。‥‥‥‥それと、お昼の時ね。その‥‥‥伝えたいことがあるから外で二人で食べない?」

 

「うぇっ!?つ、つつ、伝えたい事?そ、それって‥‥‥大事な事ですかね‥‥‥」

 

 

 僕の言葉に美咲さんは何故か慌てふためく。

 その様子に少し疑問を覚えながら、僕は美咲さんの言葉に答えを返した。

 

 

「うん、(ラジカルの事を話すという)僕にとって凄く大切な事なんだ。だから‥‥‥良いかな」

 

 

 僕が言葉を並べ終わると、美咲さんは顔を赤くしながら慌てようを更に大きくする。

 一体どうしたのだろうか。もしかして、僕が何か変な事を言ってしまった?

 そんな不安が募るが、美咲さんは動揺しながらも小さな声で言葉を発した。

 

 

「わ、分かった‥‥‥。そ、それじゃあお昼ねー!」

 

「あ、み、美咲さん!?」

 

 

 そう言葉を残して、逃げるように美咲さんは走り出した。

 何だかとてつもない勘違いをしているような気がするけど、果たして大丈夫なのだろうか。

 

 まあ、しっかりしている美咲さんの事だし、心配はいらないと思うが、あの姿を見るとその心配はどうしても浮き彫りになってしまう。

 

 

「‥‥‥‥大丈夫、なのかな‥‥‥」

 

 

 一人残された廊下で、僕は不安に思いながらぽつりと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っはぁ‥‥‥はぁ‥‥‥‥」

 

 

 煩いほどに鳴り響く心臓の鼓動。いきなり走り出した事による息切れも合わさり、鼓動は益々早くなる。

 あたしはトイレへ駆け込み、何とか気の高まりを抑えようと深呼吸を繰り返して行う。

 

 

「‥‥‥ふぅ。よし、落ち着いて来た‥‥‥」

 

 

 この胸の高鳴りは明らかに大きかった。一楓から伝えられたあの言葉が、何度も脳内でリピートする。

 

 

「これって、そう言う事だよね‥‥‥」

 

 

 二人きりで昼食を取る。それだけでも一喜一憂する大きな出来事なのに、そこに大事な話と来た。

 そこで想像してしまうのは、やはり一楓からの告白。浮ついた感情がどうしても心の内に現れ、心臓の鼓動はまた早くなる。

 

 

 はっきり言って、あたしは一楓の事が好きだ。

 あまり目立つ事を嫌っていた自分に、入学当初から声をかけて来てくれた彼。

 

 接していくに連れて一楓の優しさに触れ、徐々に仲は深まって行った。信頼出来る人だからこそ、ハロハピで自分が活動している事も打ち明けられた。

 

 悩みも愚痴も、一楓は優しく受け止めてくれて、相談に乗ってくれる。一楓はハロハピのミッシェルとして私を見ない。奥沢美咲として私を見てくれる。ありのままの自分と真摯に向き合ってくれる事が本当に嬉しかった。

 

 いつしか、あたしはそんな彼に惹かれていたのだ。

 

 

 好きな人と二人きりで大切な話をする。その内容は定かではないけど、想像くらいしたって良いだろう。

 だって、あたしも一人の乙女。一楓には悪いけど、今はこの高揚感に浸らせてほしい。

 

 

「っ〜‥‥‥‥さっきの、期待しちゃっても‥‥良いよね‥‥‥?」

 

 

 あたしは期待と緊張感で一杯になりながら、上がり切った口角を下げれずに一楓からの言葉を頭の中で想像するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前中の授業もあっという間で、チャイムが鳴り昼食の時間。あたしはお昼の事で頭の中が一杯で、授業なんてままならなかった。

 いつもは気の緩むチャイムも、今日は落ち着いていられない。平静でいられないが故に、緊張と期待、不安が三つ巴になって押し寄せて来る。

 

 

 

「——————さん?みーさーきーさん」

 

「は、はい!」

 

 

 自分でも可笑しく思える声の裏返りようを自覚しながら、自分の名前を呼ぶ相手に返事を返す。

 その人物は青色のカバンを片手に持ち、心配そうに此方へ視線を向けていた。

 

 

「大丈夫?ぼーっとしてたみたいだけど」

 

「だ、大丈夫大丈夫。ちょっと考え事してただけだから」

 

「もしかして作曲の事?あまり根を詰め過ぎるのも良くないよ?」

 

「べ、別にそう言う訳じゃ‥‥‥‥‥いや、そんな事よりも、お昼外で食べるんだよね。早く行こっか」

 

 

 あたしは恥ずかしさから一楓と目を合わせられず、話を直ぐに打ち切った。こういう時に一楓の身長が低くて助かったと思ってしまう。一楓には悪いけど、目線をすぐに逸らしやすいからね。

 そんな何ともまあ失礼な事を考えながら、あたしはお弁当を持って早々と教室を出て外へと向かった。

 

 

 

「‥‥‥‥何かなぁ。他人行儀というか、余所余所しいというか‥‥‥今日の美咲さんは少し変な感じがするんだよねぇ‥‥‥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天気も良く、太陽が辺りを照らす昼下がり。あたしと一楓はベンチに腰を下ろし、お弁当を広げていた。

 

 

「一楓のお弁当今日は洋風なんだ。いつもは和風って感じだけど」

 

「毎日同じだと飽きちゃうと思ってね。千聖姉さんも同じメニューにしてるから、偏りがあると申し訳ないし」

 

 

 そう言って、箸でハンバーグを掴み口へと持っていく一楓。つくづく女子より女子力が高いと思う。容姿も相まって、一楓の性別を本格的に疑ってしまうレベルだ。

 

 

「うん?何か僕の顔に付いてる?」

 

「い、いや。特に何もないです‥‥‥」

 

 

 あまり一楓を凝視すると思わぬ反撃を喰らってしまう。さっきよりは幾分視線を合わせられるようになったけど、それも十秒ぐらいが限界。

 

 どうしてこうなったんだろう‥‥‥。

 元はと言えば、大事なお話があると一楓から誘いがあって来たけど、それのせいで余計に緊張が収まらない。休息を取る筈の昼食の時間が逆に疲れを招いている始末だ。

 

 

「‥‥‥‥ごめんね、美咲さん」

 

 

 突如、箸を進めていた一楓からの謝罪の言葉。突然の言葉に驚きながら、あたしは疑問形で返す。

 

 

「な、何が‥‥‥?」

 

「朝、大事な話があるって言ったから、余計な緊張を美咲さんに与えてると思って。折角のお昼なのに、それじゃあ休めるものも休めないよね。

‥‥‥‥本当にごめん」

 

「い、いやいや。全然あたしは気にしてないよ?」

 

 

 その言葉は本心からのものじゃなかった。

 だからこそ、気遣いから出た言葉は一楓に簡単に見破られる。

 

 

「‥‥‥だって、今日の美咲さんはいつもより少しおかしく見えるから。変に気負わせて無理するより、正直に言ってくれた方が気はらくになると思うよ」

 

 

 顔を下へ俯かせ、申し訳なさを露わにする一楓。

 違う。あたしはそんな表情を見たくはない。

 

 だが、一楓にかける言葉は見当たらなかった。

 あたしは一度沈黙を貫き、一楓からの言葉を受け流す。

 

 

「ごめん‥‥‥」

 

 

 考える間もなく、口からは何故か謝罪の一言が出ていた。

 その言葉で一楓の表情が明るい方向へ変わる筈がないと思っていたが、それとは反対に苦笑しながら一楓は手を口の方へ寄せる。

 

 

「ふふっ、美咲さんが謝る事なんてないのに」

 

 

 咄嗟の言葉が功を奏し、一楓の表情が少し柔らかいものへと変わる。

 そして、一楓は箸を置き、真剣な表情を作って此方に視線を向けた。

 

 

「さて、そろそろ話そっか。時間もない事だしね」

 

 

 その言葉を聞き、あたしは思わず固唾を呑んだ。

 いよいよ来る。一楓が伝えようとしている事は未だに分からないが、やはり告白という名の期待がこの瞬間に押し寄せて来た。

 

 気持ちを昂らせ、緊張が走るこの状況。

 気がつけば、一楓へ視線はがっちりと固定されていた。先程の恥ずかしさも、今は0に等しい。

 

 

「実は‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

 口を動かし、徐々に言葉を並べていく一楓。

 その一言一言に神経が研ぎ澄まされ、時間が凄く遅く感じる一時(ひととき)

 

 

 だが、時間は止まりはしない。

 一楓の言葉は完成されていく。

 

 

 そして、それは告げられた—————。

 

 

 

 

 

 

「僕、ラジカルのホワイトとしてバンドをしてたんだ」

 

 

 

 

 

「‥‥‥へっ‥‥‥‥‥‥?」

 

 

 

 その言葉が告げられた瞬間、風によってあたりの草木が靡き、驚愕と()()無い感情が同時に押し寄せて来た。

 自分の淡い期待が一瞬にして消え去る一方、彼から伝えられた事実の驚きは計り知れない。

 

 

「一楓が‥‥‥ラジカルのホワイト‥‥‥?」

 

 

 脳の整理を促すよう自ずと一楓の言葉を復唱するあたし。

 それに対して、一楓は心苦しそうな表情を作った。

 

 

「‥‥‥うん。隠してたんだ。僕がラジカルのホワイトとしてバンドに取り組んでいた事を。それがバレたら学校生活に支障をきたすと思ってね。

 それに、気持ちの整理もあって伝えるのがどんどん難しくなっちゃって‥‥‥」

 

「え、えっとー‥‥‥じゃあ、今何でそれをあたしに?」

 

「‥‥‥実は、それについてもう一つ。僕、またバンドをやろうかなって思ってるんだ」

 

「そ、それって、ラジカルがまた————」

 

「ううん。ごめんね、それとはまた別なんだ」

 

 

 あたしが言葉を口にする前に、否定を即座に入れる一楓。一層申し訳なさを纏う一楓の表情が、あたしを煩悶させる。

 

 

「詳しい事は今日事務所で話すことになってるんだけどね。ただ‥‥‥ラジカルが復活する事はもうない‥‥‥」

 

 

 悲痛な表情を隠すように一楓は顔を俯かせた。

 それほど一楓にとってラジカルというバンドが大切な物だったのだろう。それを感じさせるからこそ、今の一楓の表情は余りにも見ていられない。

 

 

「そうなんだ‥‥‥‥」

 

 

 あたしはそんな一楓にどんな言葉を返せば良いのか分からなかった。励ましの言葉。元気づける言葉。何だってあるだろうに、解答は得られない。

 

 暫しの沈黙が続き、あたしと一楓の間に気まずい空気が取り巻く。

 どう沈黙を断てば良い。そんな迷いが頭の中で渦巻く中、先に口を開いたのは一楓の方だった。

 

 

「そういう事で、バンドとプラスで芸能界の復帰も考えてるんだ。これから忙しくなったりするかもしれないけど、お互い頑張ろうね」

 

 

 そう言い、傷ましい作り笑顔を浮かべて一楓は席を立つ。

 

 

 このまま一楓を行かせて良いのか。

 彼はきっと、ラジカルの解散で傷心している。思えば、ラジカルの解散について聞いた時、一楓の表情は浮かない顔だった。

 

 あたしは知らないところで彼を苦しめていたのだ。

 一楓から告白されるかもしれない。そんな浮かれた気持ちでこの場に臨んでいた自分が馬鹿馬鹿しかった。

 

 あたしを支えてくれた一楓。

 拠り所としていてくれた一楓。

 

 彼には数え切れないほどの恩がある。

 彼の優しさに触れてあたしは惹かれた。

 

 一緒に居たいと思えた人。

 感謝しても仕切れない人。

 

 

 

 そして、好きになった人。

 

 

 

 

 だからこそ—————今度はあたしが支える番だ。

 

 

 

 

 

 

「待って!」

 

 

 

 あたしは声を荒げて叫び、立ち上がって彼の腕を掴む。

 一楓は目を丸くし、驚きを隠せなかったのかビクッと身体を震わせた。

 

 

 

「ど、どうしたの‥‥‥?」

 

 

 困惑した表情で此方を見る一楓。あたしはその桃色の瞳に視線を送る。

 

 

「あたしは、一楓を応援する。これからもずっと。

そして、支え続けるから」

 

 

 自分の本心から、想いを彼に伝える。

 嘘偽りなく、純粋な気持ちを。

 

 

「ラジカルが好きだからとかじゃない。白鷺一楓を思って精一杯応援する。あたしを支え続けてくれた事、すっごく感謝してるよ。だからこそ、今度はあたしが一楓を支えて見せる。一楓はあたしにとって‥‥‥‥大切な(友達)だから」

 

「‥‥‥‥‥ありがとう。本当にっ‥‥嬉しいっ」

 

 

 目を腫らし、一楓の頬には一線の水が伝う。 

 その数は徐々に増え、咳き込みながらも手でそれを拭う。

 

 そんな中で一楓は笑顔を浮かべ、口を開いた。

 

 

 

「僕、これから頑張るよ。また、ステージに立って見せるからっ‥‥‥!」

 

 

 

 その笑顔は宝石のように輝いて、凄く眩しかった。

 彼の眩い笑顔に釣られて、あたしも自然と笑みが溢れる。

 

 

 

「うん、お互い頑張ろうね。あたし、期待してるよ?」

 

「ふふっ、相変わらず美咲さんらしいや」

 

 

 

 お互いが信じ合う事で、深まる信頼。

 

 

 

 そこからは、二人の更なる絆が紡がれていくのだった。

 

 




○一楓のプロフィール
学校‥‥‥花咲川学園
学年‥‥‥高校一年
誕生日‥‥‥10月24日
好きな物‥‥‥和食全般、和菓子
嫌いな物‥‥‥きのこ
身長‥‥‥150cm
趣味‥‥‥家事、レオンのお世話
所属バンド‥‥‥なし ※(元Radical Sound所属)
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