輝きの復活   作:@naru

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 今回はタイトル通り一楓君の今後について。
 それと、お気に入り、評価を共にしてくださった方々、ありがとうございます。作者のモチベに繋がるのでとても嬉しいです。

 ついでにリクエスト募集しています。
 詳しくは活動報告の方へ。





八話 今後の方針

 

 

 昇降口には生徒達が溢れ返り、各々が友達と喋りながら靴を取る。周りには女生徒ばかり。改めて女子の多さを実感しながら、僕も下駄箱から外履きを取りだし、校門へと向かう。

 

 

「‥‥‥あら、来たわね」

 

 

 待ち合わせの場所には、片手にスマホを持ちながら待つ姉がいた。

 

 

「ごめん、待たせちゃった?」

 

「いいえ、私も今来たところよ」

 

 

 気にしないで、という意を込めたように千聖姉さんは言葉を返す。

 そして、スマホを鞄の中に仕舞い、僕の方へ手を差し出してきた。

 

 

「じゃあ、行きましょうか」

 

「‥‥‥手は繋がないからね」

 

「どうしてかしら」

 

「恥ずかしいからに決まってるでしょーが‥‥‥」

 

 

 当たり前の事をさも態とらしく問いかけてくる千聖姉さん。

 何せ、ここは学校の目の前。他の生徒も居るこの公衆の面前で手を繋ぐなんてどんな罰ゲームだ。恥ずかしさで死んでしまう。

 

 これがまだカップルとかならまだ良い。

 だが、こちらは姉弟。仲の良い姉弟と思う人もいるかも知れないが、普通この歳にもなって手を繋ぐ姉弟なんて如何なものか。

 

 ‥‥‥この前繋いでただろとか言うのは無しで。

 

 

「‥‥‥仕方ないわね。時間もある事だし、早く事務所に向かいましょうか」

 

 

 膨れた表情で渋々承諾し、千聖姉さんは歩を進めていく。

 

 

「そうだね」

 

 

 僕はその背中を追いかけ、目的の場所へ姉と共に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、ようこそいらっしゃいました!ささ、どうぞお席についてください」

 

 

 明るい声音で僕を迎え入れてくれる女性。首には『佐々木(ささき)』と書かれた名札を提げていた。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 僕はその女性のお言葉に甘えてパイプ製の椅子に腰を下ろす。案内された個室は白一色の壁に覆われた質素な一室。手前と奥には横長のロングテーブルが置かれ、いかにもこれから話し合いを行うという雰囲気を漂わせる。

 

 一方、千聖姉さんはというと、流石に面会は僕一人だけでという事で別室で待機中。表情には出してなかったけど不満のオーラが凄く感じ取れた。

 

 

 

「すいません、もうそろそろ上司がいらすと思うので‥‥‥」

 

「はい、大丈夫ですよ」

 

 

 緊張があるのか、女性は声色を震わせ、おどおどしたように視線を泳がせていた。何か見てるこっちがちょっとムズムズして来る。

 

 

「あのー‥‥‥確か佐々木さんって姉のマネージャーをしていらしてるんですよね?」

 

「あ、は、はい!勤めてまだ一年も経ってない不束者ですが‥‥‥」

 

「そうなんですか。新人さんには全然見えませんでしたよ」

 

「い、いえいえ!本当まだ全然冴えない新人なんで!」

 

 

 出来るだけ緊張を和らげられるよう笑みを作りながら会話を繋いでいく。その効果もあってか、徐々に佐々木さんの表情が柔らかくなっていくのを感じた。

 何なら、視線がすっごく刺さるようになった気がするけど。

 

 

「(はぁ〜‥‥‥実際に見ると滅茶苦茶可愛いぃ!あのホワイトさんがこんなに可愛い子だなんて‥‥‥あーもうこの会社に入って良かった〜!復帰したら絶対推す!何が何でも推す!)」

 

 

 ‥‥‥実際当たってたりする。

 

 

 

 

 コンコン。

 

 

 突如、ドアをリズムよく叩く音が部屋に響く。その音と同時に扉が開き、スーツをきっちりと着こなした身なりの男性が入って来た。

 

 

「失礼するよ。随分待たせてしまったようで申し訳ない」

 

「いえ、お気になさらないでください。僕もそれほど待ってはいませんので」

 

「そう言ってもらえると助かるよ」

 

 

 そう言葉を吐き、男性は僕の向かいの席に着席する。佐々木さんは男性が入ってくるや否や、先程の表情とは一転、真面目な顔つきへと変わっていた。

 

 恐らく、この人が佐々木さんの言っていた上司に当たる人だろう。

 

 

「では、早速本題に入ろうか。私は佐渡(さわたり)。今回一楓君の復帰に関して一任させてもらっている。詳しくは名刺を見てね」

 

 

 一枚の紙を差し出され、僕はそれを受け取る。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 僕が名刺を受け取ると、佐渡さんの視線が自分を凝視するかのように固定されていた。

 僕は少したじろいでしまったが、佐渡さんは何処か感心したように顎に手を当てる。

 

 

「ふむ、以前にも顔は見た事があるけど、余りにも可愛らしくて本当に男性なのかと疑ってしまうよ」

 

「そ、そうですか‥‥‥」

 

「うん、これなら確かにそっちの路線でもいけそうだ」

 

 

 なんだか不穏な言葉を言っていたが、一体僕は何をされるんだ‥‥‥。復帰するって豪語したけど今更不安になってきた。

 後、誉めているつもりなのかもしれないが、ちょっと傷つきました。精神面の問題ですけども。

 

 

「さて、今回話すのは一楓君の復帰について何だけど、此方としては暫くソロで活動して欲しいんだ」

 

「えっと、理由をお聞きしても良いですか?」

 

「‥‥‥実は、バンドメンバーが集まらなくってね。募集をかけたりスカウトには言ってるけど、中々苦しい状況なんだ。

 それに、一楓君はラジカルに所属していたという肩書きがある。それがハードルを上げていることもあって、それならいっそソロで活動してくれた方が都合がいいと思ってね」

 

「なるほど‥‥‥」

 

 

 確かにソロで活動した方が都合の良い事は多い。

 だが、それでは暫くの間バンドをすることは出来ないだろう。バンドは一人じゃなく複数人でやる物。それを踏まえると、ソロで活動するというのは少し寂しい気もする。

 

 

「ラジカルの解散は私達にとっても凄く悲しい。あの五人だったからこそ作れたステージがあった。それを失った大きさは計り知れない。

 それでも、こうして復帰の考えを示してくれた一楓君には本当に感謝しかないよ。改めて、お礼を言わせて欲しい」

 

「い、いえ。そんな大層な事を僕は‥‥‥」

 

「あはは、謙遜しなくて大丈夫だよ。‥‥‥でも、だからこそ私達は一楓君を全力でサポートしていきたいと思っている。一先ず、ソロで活動していく事に何か意見はあるかな」

 

「そう、ですね‥‥‥‥」

 

 

 僕は一度悩む。

 

 別にソロでも歌ったり演奏はできる。自分の好きな音楽を一生手放すという訳ではないのだ。

 だが、出来ればバンドをしたい。一人でステージに立つことを嫌ってはいないけど、複数人でやる事の楽しさを知っている今では、やはりそちらが魅力的に思えた。

 

 

「あの‥‥‥ソロだとバンドは出来ないって事ですよね?」

 

 

 僕は恐る恐る弱い声音で佐渡さんに尋ねる。

 

 

「その事に関してなのだけど、二つの案を考えているんだ」

 

「二つの案、ですか」

 

 

 僕の心を引くその言葉。内容が定かでないが故に、少しの不安と期待が入り混じる。

 

 

「まず一つ目が、うちの事務所で人気があり、尚且つ一楓君との繋がりが強い『Pastel*Palettes』にエキストラで出演してもらう案。

 この場合、一楓君がメインで活躍する場所が少なくなってしまうけど、しっかりとしたバンドは出来ると思うよ。幸い、彼女達の技術も日に日に上がっているから、レベルの点では問題ないね」

 

 

 それなら確かにバンドが出来る。パスパレの皆なら気兼ねなく接せて、ストレス無くバンドに取り組めるだろう。

 だが、佐渡さんが言うようにエキストラで出演する為、正規のメンバーとして活動する事は出来ない。バンドをする事が出来るという事が一番の利点だ。

 

 

「そして二つ目が、一楓君と千聖ちゃんの二人組ユニットで活動してもらう案。

 この場合だと、一楓君がボーカルを担当する事になるね。ラジカルのような本格的なバンドとは少し離れるけど、二人が組む事で姉弟ユニットという評判がつく。更に二人は世に名が知れてるし、人気が出るのは早いと思うよ。

 ‥‥‥以上が私の案。理解して貰えたかな」

 

「‥‥‥大体は分かりました」

 

 

 佐渡さんから伝えられた二つの案。どちらも利点が有り、尚且つ欠点もある。正しく一長一短だ。

 ソロで活動するか悩んでいた所にプラスで追加された材料。それをどうするかが非常に悩ましい。

 

 

 だが、強いて言うなら二つ目の案は了承し難かった。別に千聖姉さんとユニットを組む事が嫌と言うわけではない。

 ただ、もしユニットを組んだとして、千聖姉さんは二つのグループを掛け持ちになる。更に女優の仕事もあって、千聖姉さんの負担は大きくなる事だろう。

 あまり千聖姉さんに負担をかけさせたくないが故に、二つ目の案は拒否したい。

 

 そうすると、残るは一つ目の案だが、此方も懸念が残る。五人で活動していたパスパレに突然参加する事に対する申し訳なさがあった。

 千聖姉さん達は快く受け入れてくれるかもしれない。でも、パスパレを好いているファンの人達からして、ガールズバンドという括りに男が入るのはそう簡単に飲み込めないだろう。

 

 これを考えると、暫くはバンドを諦めるしかない。

 バンドが出来ないと言っても、いつかはメンバーが集まる筈。そう期待して、今はソロで活動する事を受け入れるしかないのだ。

 

 

「‥‥‥さて、今の事も頭に入れて、一楓君の考えを聞かせてくれるかな」

 

 

 一度僕は深呼吸をし、言葉を発する準備を行う。

 頭の中で結論をまとめ、それをいよいよ口にする。

 

 

「ソロで活動していく事に特に意見はありません。ただ、バンドに関しては提案を頂いた上で申し訳ないですが、メンバーが集まるまで参加しない方向でお願いします」

 

 

 ふむ、と僕の言葉に相槌を打ちながら佐渡さんは話を聞き入れる。

 その表情は柔らかく、まるで僕の意見を否定する気などさらさらないようだった。

 

 

「了解したよ。先程言った通り、一楓君の意向に私達は協力させてもらうから、助けが必要な時はいつでも言って欲しい。それが私達の仕事でもあるからね」

 

「ありがとうございます」

 

 

 とても親切に対応してくれる佐渡さんにお礼を言い、僕は頭を下げる。

 そんな僕に気にしないでと言葉をかけながら、佐渡さんは微笑みを浮かべていた。

 

 

「‥‥‥実は、もう一つ確認しておきたい事があるんだ」

 

 

 突如、その微笑みは真剣な表情へと変わる。空気が変わるような感覚に再度重い雰囲気を漂わせた。

 

 

「一楓君は、ラジカルの事を公表するつもりでいるかな」

 

 

 その言葉にどんな意味が含まれているのか、今の僕は分からなかった。

 故に、佐渡さんの問いかけに自分自身が考えていたそのままえの答えを伝える。

 

 

「はい、僕はそのつもりでいましたが‥‥‥何か問題でも?」

 

「うん‥‥‥その事に関してなのだけど、一楓君はラジカルで顔を隠していただろう?それが明るみになるって事は、勿論今後の活動に響いてくると思うんだ。

 幸い、ラジカルとして活動していた時は役者としての顔は知られずにいたけど、それをこれからも隠していくのは難しい。そこらへんは理解しているかな」

 

 

 すいません。完全にノーマークでした。

 なんて口に出来る筈もなく、僕は心中で呟いた。

 

 

 そういや全然考えてなかったなぁ〜‥‥‥。

 でもまあ、今思えばマスクと帽子は顔を隠したいと言う自分自身の考えもあったけど、メンバーからそっちの方が似合ってて雰囲気があるって言われたからつけてたようなもんなんだよね。

 

 何なら、僕がラジカルのホワイトだって複数の人達に言っちゃいましたし。今更気にすることでもないかな。

 

 

「え、ええ。勿論理解しています‥‥‥」

 

 

 若干顔を引き攣らせながらも、僕は嘘がバレないように笑みを作って言葉を返す。さっきの重い空気はどこへやら、自分の無計画さがある意味空気の緩和剤になったようだった。

 すいませんホント。無計画な自分を叩きたいです。

 

 

「そう、それなら良かった。じゃあ、これで復帰の件に関して重要なお話も終わりだよ」

 

 

 あ、終わりなんですね。正直最後ので気が緩んでしまったというか。まあ、僕が原因ですけども。

 

 

「役者のお仕事も追々連絡するね。実は既に何件か来てるんだ」

 

「そ、そうなんですか」

 

「うん、期待していてね。それじゃ、今日は改めてありがとう。それと佐々木、一楓君のマネージャー宜しく頼むよ」

 

 

 うん?僕のマネージャー?

 

 佐渡さんの言葉に反応して、僕は後ろに立っていた佐々木さんへの方へ振り返る。

 佐々木さんの表情はバツが悪そうに視線を泳がせていた。

 

 

「あれ、言ってなかったのか?じゃあ、紹介しよう。此方は君のマネージャーを務めてもらう佐々木だ。てっきり知っていると思ったのだけどね」

 

「す、すいません。佐渡さんが来る前にお伝えするつもりだったのですが、その‥‥‥機会を逃してしまって‥‥‥」

 

 

 確かに佐渡さんが来たのも突然だったし、僕が先に話を振っちゃったからタイミングがなかったのも納得だ。

 

 

「そうだったんですね。では、改めてよろしくお願いします。佐々木さん」

 

 

 笑顔を浮かべ、僕は佐々木さんに左手を差し出す。

 

 

「は、はい!此方こそよろしくお願いします!」

 

 

 差し出した手を受け取り、僕達は互いに握手を交わした。

 何となく、佐々木さんとはこれからも長い付き合いになる気がする。

 

 僕はその気持ちを心に留めて、微笑みと一緒にこれからの生活に思いを巡らせるのだった。

 

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