芽吹「薬師氏典膳は何者かって?ただの幼馴染よ」   作:ቻンቻンቺቻቺቻ

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遺憾の意……ヨシ!

 

──先日、結界の外に埋めてもらった種を、回収してほしいのです。

 

 亜耶を助けるためにはどうすればいいのか。それを一晩中相談しあった翌日に私達は新たな任務を与えられた。

 神樹の種は神樹の恵みの結晶。霊山で儀式をする計画を凍結させたのならば結界の外に陣地を作る理由は無く、神樹の恵みである種を神樹に返して神樹の力を少しでも無駄にしないようにしなければならないらしい。

 

 命懸けで種を植えに行って負傷までしていたのに、それら全てが無駄だったのだろうか。

 ここ最近は腹立たしい事ばかりな気がする。

 

 行き場の無い腹立たしさに溜め息を吐き捨てていたとしても、熱気を増した灼熱の大地や名の通りに星の数程にいる星屑は容赦をしてくれる訳ではない。犠牲無く帰還するために私達は迅速に種を回収しなければならない。

 今までの訓練と任務の経験を最大限生かし、時折迫り来る星屑を蹴散らしつつ私達は前回の任務で種を植えたら時よりも幾らか背丈を伸ばした草が繁っている場所に辿り着いた。

 

「やっと着いたぁ……」

 

「何へばってんだ、護衛対象の国土がいなかった分前回よりも全然楽勝だったじゃねぇか。いや、この増した熱気の分はちょっとやりにくかったけどよ」

 

「わ、いつの間にかシズク様になってる!」

 

「様を付けるな鬱陶しい。今回はほぼ最初から俺だったぞ」

 

「え……それじゃあ今まで普通に団体行動できてたってこと? シズク様なのに?」

 

「俺をなんだと思ってるんだ? つーか、様付けをやめろ」

 

 周囲の警戒ついでにじゃれ合う首輪付きの猛獣と喋りたがりな小鳥の声を耳にしつつ、緑色に茂る大地の中心で慎重に神樹の種を探す。

 最初にこの地に植えた時は灼熱を放つ大地に落とすように植えていた事からある程度は頑丈なのは解っているが、それでも防人システムの後押しがあるパワーでは傷付けたり潰してしまうかもしれないので急いでいても慎重にならざるを得ない。

 

「なかなか見付かりませんわね」

 

「この辺りのはずなんですが」

 

 四つ這いになって生い茂る草を掻き分けて種を探すも中々見付からず、傍で周囲の警戒をしていた弥勒がそれに焦れたのか私と同じように神樹の種を探し始める。

 

「もしかしたら、緑地が熱気で焼けたせいで歪に形が変わってしまって、中心だと思ってたここが実は中心ではないなんて事があるかもしれませんわね」

 

「……そうだとしたら種を探すあてが無くなりますね、人海戦術でひたすら草を掻き分けるしかなくなりますよ」

 

 弥勒の言葉に二人で眉をしかめながらも念入りに草を掻き分ける。念のために一度探した場所ももう一度丁寧に探すが見付かる気配が無い。

 

「チッ、雑魚が何匹か寄って来やがったか。楠と弥勒はそのまま探してろ、俺達で対応する」

 

「助かるわ」

 

「わ、私も種探しがいーな~……」

 

「盾を欠かしてどう身を守れってんだ、護盾隊を守る銃剣隊を守るのがテメーの役割だろうが」

 

「ふえぇぇ」

 

 数匹の星屑が接近してきたものの、お喋りしつつもしっかりと周囲の警戒を続けていたシズクと雀がすぐさまそれを感知。滞りない連携が防人番号二番の指揮により発揮されて危なげなく迎撃される。とても頼もしいかぎりだ。

 しかし、神樹の種を探す私達は一向に成果を上げられずにいた。

 

「こんなに探したのに見付からないって事は、やっぱり歪に焼けて中心がずれてるのかもしれませんですわね」

 

「人海戦術に切り替えましょう。……第一班から第四班までは種の探索! その他は周辺への警戒!」

 

 指示の声を張り上げるとすぐさま周囲を警戒していた隊員達が了解の意を示し、指示通りの動きに移る。想定外の事態にもこうして戸惑いなく対応できるのは訓練の賜物だろう。

 私と弥勒も徹底的に探したこの場からすこし離れた位置に移動して再度四つ這いで念入りに草を掻き分け始める。

 

「すごくどうでもいい事言っていい?」

 

「隙あらば口を開くなお前……。まぁ、聞くけどよ」

 

 そこかしこで草を掻き分ける擦れた音が立つ中、少し離れた場所で種を探していた雀とシズクのお喋りが耳に届く。

 二人は口を動かしていても任務に対しての集中が疎かにはならないのは解っているので咎める事はしない。

 父の仕事仲間にも作業場にラジオや音楽プレイヤーを持ち込んで何かしらを聞き流しながら仕事をした方が集中できる人がいたし、二人にとっては、いや、たぶん雀にとっては適度に口を動かしていた方が過度に怖がるような思考をしなくなる分集中できるのかもしれない。

 

「四つ這いになってる弥勒さんって、なんかエッチだよね」

 

「なっ!?」

 

 前置き通りにどうでもよさそうな口調で語った雀。

 直後に弥勒が四つ這いだった身体を起こしてお喋り雀へと体ごと振り返る。

 

「あー、それなんとなくわかるかもしれねーわ」

 

「お二人とも、いきなり何を言いやがってますの!」

 

 心底どうでもよさそうに相槌を打つシズク。

 弥勒がいつもの上品な気がする言葉使いを微妙に崩壊させながら吠えた。

 

「いや、だってほら、隣で同じ体勢だったメブは『押忍!』って感じだったのに弥勒さんはなんか、こう……エッチじゃん」

 

「肉付きがなぁ……。見た目だけならお嬢様だからな」

 

「肉! 見た目だけ!?」

 

「うるさいですよ、口を動かしてる暇があるなら手を動かしてください」

 

 度が過ぎない程度にお喋りするだけなら注意する気は無いが、手を止めているのならば注意せざるを得ないので口やかましく荒ぶる弥勒を諌める。すると、さも遺憾だと言わんばかりの声色でまたも弥勒が荒ぶり始める。

 

「ですが! 弥勒家の者として見た目だけ呼ばわりされて黙ってはいられませんわ!」

 

「お喋りするのは過度でない限り止めませんが手は動かして下さい、今優先するべきは弥勒さんがエッチかどうかじゃなくて種を確保してからの迅速な帰還です」

 

「ぐぅ、確かに優先すべきはそれですわね……」

 

 納得はしてないが理解はしているのだろう、ぐうの音を漏らしつつも草を掻き分けての種の探索を再開する弥勒。しかし、体勢は先程と違って四つ這いではなくこじんまりとしゃがむ体勢。

 

「エッチなのはともかく、プロポーション良いのは素直に羨ましいなぁ」

 

「羨ましいってんなら例のアイツみたいに薬師氏が推奨してる健康的な生活ってのをしてみりゃいいんじゃねぇのか。アイツもここ最近で弥勒並みになってるしな」

 

「あー、すごいよね。弥勒さんは派手でなんかエッチって感じだけど、あっちはしっとりとお上品にエッチな感じでキレイだよね」

 

「好き勝手言ってくれやがりますわね……」

 

 すぐに大人しくなった弥勒をよそにお喋りを続ける二人。ちらりと視線を向けても種の探索が疎かになってる様子は無いので放っておく。

 私はエッチではありませんわ。と、弥勒が不服そうに呟きながらも種の探索を続けていた。

 

「言葉こそはからかうような物ですが、遠回しに綺麗だと褒められてるだけなのに何がそんなに気に喰わないんですか?」

 

「その遠回しな表現が余りにも遠回し過ぎですわ……!」

 

 恥ずかしがるような、歯噛みするような、怒っているようにも照れているようにも見える弥勒に対し、純粋に疑問に思った事を問うと正も負も入り交じったままの表情での返答。

 エッチ。その単語が弥勒にとって少しばかり受け入れがたい言葉だったらしい。

 見た目だけお嬢様呼ばわりされていたのは受け流せるのだろうか。

 

「まぁ、よくよく考えれば今現在弥勒家が没落しているのは事実ですもの、これに反論の余地は有りませんが私が復興させればすぐに返上できる汚名ですわよ」

 

 ふんす。と、鼻息荒くいずれ見返す意思を示す弥勒。どこまでもポジティブなこのメンタルはやはり素直に凄いと思う。

 

「……それに、あんな話題でも今はあのお二人に口を動かさせておく方が都合が良いかもしれませんもの、あのお喋りを叱り付けて中断させるのはよろしくありませんわ」

 

「え?」

 

 鼻息荒く意思を示したかと思えばすぐに声を絞ってそっと私だけに聞こえるように告げた弥勒。その意図がまるで解らず、私は小さく戸惑いの声を返すしかできなかった。

 

「いつも以上にいつも通りなお二人のお喋りは皆にとって良い影響を与えてるようですもの」

 

「……えぇと?」

 

 いつも以上にいつも通り。言われてみれば確かにその通りだ。

 雀は口やかましい程にお喋りな質ではあるが任務中に口を開く時は弱音ばかりのはず。それなのに、今のお喋りでは心底どうでもいいと言えるような他愛ない事しか口にしていない、ゴールドタワーでなんとなくのお喋りをしているかのようだ。そんな雀に合わせるシズクも任務中とは思えないほどに日常の中にいるかのような堂々とした雰囲気をしている。

 しかし、それが何故させておくべきお喋りなのかが私には解らなかった。

 

「国土さんの件で皆が不安や苛立ちを覚えてる中でこの命懸けの任務ですもの、皆さんはここまでの道のりで既に精神的な疲労をしていたようですわね。隊列が乱れるという程ではありませんでしたが、それでも浮き足立っている雰囲気がありましたわ」

 

「え……!? そう、なんですか……?」

 

「よろしくない状況の中でも一欠片の笑いが有れば多少は気が晴れるし、どっしりと構える者がいればそれを頼りにして心を楽にできるものですもの。今のあのお二人の振る舞いはまさしくそれですわね」

 

 当たり前の事を語るように私がまるで気付いてなかった事を語る弥勒。それに対して驚きながらも戸惑うしかなかったが、もう状態は安定しているので心配は無用だとも語られる。

 

「……全然気付いていませんでした」

 

「隊列の最前に立って進み続けていたのだから当然ですことよ。私も隊列の中で行動していたから気付けただけですもの」

 

 隊員達の気がそぞろな状態ならば何か小さなきっかけで大きく隊列が乱れる事態になっていたかもしれない。個々が強くはない私達防人がそうなってしまえば集団という強みを著しく喪失して星屑にさえも苦戦する事になってしまう。そうなれば、任務の達成どころか犠牲の無い帰還さえも難しい。

 見逃したままでいるには危うい事を見逃していたという失態に対し、胸中で深く自省する。

 

「そう深刻な顔をするような事ではありませんわ。むしろ、芽吹さんは些事を気にして隊列をしきりに見回す事は避けるべきです」

 

「え……?」

 

 一連の会話に困惑と驚きをしてばかりだ。

 胸中に湧いた感情のままについ弥勒の顔を見て、たまに見る大人びた表情の弥勒にまっすぐな視線を返される。

 

「一番先に立って強くまっすぐに前へと進む、芽吹さんという防人の隊長はそれでいいのです。貴女が人の上に立って駒を動かすボスではなく、人を率いて進むリーダーであるからこそ皆がその背中に続くのです」

 

 つまり、どういう事なのだろうか。

 この大人びた顔の弥勒と相対した時、自らが幼いと感じてしまう私には難しい言葉だった。

 

「犠牲ゼロ。それを成し遂げ続けるためには芽吹さんは堂々と突き進む強い姿であればいい。その姿があれば所詮は少し訓練を受けただけの女子中学生の私達はその背中を道標に生き足掻けるという事ですわ」

 

 没落すれども名家の末裔。人を率いる、上に立つ、そういった人間がどう振る舞うべきかは学んでいる。組織に平均される心の動きも勿論。と、当然の事のように語った弥勒が言葉を続ける。

 

「そう難しい顔をする事でもありませんわ、芽吹さんは今まで通りであればいいのです。些事は今のシズクさんや雀さんのように誰かが必ずフォローに入って勝手に解決されますもの」

 

「フォロー……? 雀とシズクが?」

 

「シズクさんはあれでも険しい雰囲気に鋭敏のようですので真っ先に違和感を感じていたみたいですわね。例の如く直感的におちゃらけるべきだと判断してそうな雀さんに合わせて会話を弾ませようとしてるように見えますわよ」

 

 いつも以上にいつも通りな二人の会話は隊全体へのフォローであり、私が隊を問題なく率い続けるためのフォローでもあったという事らしい。

 知らず知らずの内に私は助けられ、支えられていたのだろう。もしかしたら、私が気付いてなかっただけで今までもそうだったのかもしれない。

 

「怖がりな雀さん自身もお喋りしてる時は気が紛れてる様子ですし、あのままにしておくのが誰にとっても好都合という事ですわ」

 

「そう、なんですか……。勉強になります、ありがとうございました」

 

「ふふふ、わたくし自身もこうやってお喋りする事で落ち着きの無かった気を落ち着かせていただけですわ。さぁ、はやく神樹の種を見つけて皆で帰還いたしましょう」

 

 自分も落ち着くため。そう言いつつもやはりどこか余裕のある大人びた微笑みを一度浮かべた弥勒が私と合わせていた視線を手元に戻して草を掻き分け始め、その様子に私もいつの間にか種の探索から集中が逸れていた事に気付く。

 そして、弥勒との会話をする前はあんなにも様々な事に腹を立てていたのに、会話を終えてから少しだけ心が凪いでいるのにも気付いた。

 

 なるほど、私も皆と同じように心をを乱していたらしい。先程までの状態よりも今の方が任務に集中できるだろう。

 もしかしたら、弥勒はそれもわかっていて気が紛れるように話掛けてくれていたのだろうか。真偽の程は解らないが、どちらにせよ弥勒のおかげでコンディションを好転させる事ができたのは事実だ。

 戦術や戦闘、成績という意味ではなくもっと別の所にある何か、上手い表現が見当たらないがしいて言うならば人間という意味で私はまだ弥勒には敵わないと思った。

 思ったが、口には出さない。口に出してしまえば弥勒の大人びた雰囲気が消しとんで鬱陶しい調子の乗り方をする気がしたからだ。

 

「それにしても健康的な生活かぁ……。でも、見たいテレビ番組とか夜遅いのばかりだし、オヤツのミカンも気付いたら何個も食べちゃったりしちゃうしなぁ……」

 

「録画して後で見るなりついつい食べ過ぎないように買い置きしないとかやりようはあるだろ」

 

 精神が乱れていたと自覚したからにはもっと落ち着く必要があるかもしれない。弥勒や他の隊員達と同じように種を探しつつもお喋り雀とそれに付き合う首輪付きの猛獣の話を聞き流して適度に気を抜くようにしてみる。

 

「それに、やっぱり個人差はあるだろうから健康的な生活ってやつで私もそうなれるとも限らないし」

 

「やらない言い訳ばかりだな。でも個人差か……栄養管理ガチガチで早寝早起きしつつ鍛練ばかりで運動不足は有り得ない楠が『押忍!』って感じの肉付きってことは個人差はあるんだろうな」

 

 『押忍!』な肉付きとはいったいなんなのだろうか。

 

「例の人も元からかなりキレイなプロポーションだったし、現状がこれな私がやっても大して意味無さそう」

 

「元がダメダメなら逆にめちゃくちゃ伸び代あるって事も有り得るんじゃねーの? やらずに諦めたらなんにもならねー……いや、まて、元が良ければの理屈で言うなら弥勒が薬師氏流健康生活をしちまったら……?」

 

「え? ……ヒエッ!」

 

 シズクの言葉に一度理解が遅れたような声を漏らした雀が一呼吸の間を置いてひきつった短い悲鳴を漏らす。同時に周囲のそこかしこで気配がざわめき、複数の視線が動いて弥勒に集まるのを感じた。

 

「え、え……? なんですの?」

 

 弥勒も注目された事に気付いたのか困惑しつつ周囲を見回す。しかし、誰もが何も言わない沈黙だけがここにあった。

 

「ダイナマイト弥勒……」

 

 沈黙を穿つ雀の震える呟き。

 おののくように声を詰まらせながらもシズクが続く。

 

「も、もしかしたら俺達はとんでもねえモンスターの誕生を目撃できるのかもしれねーな」

 

「でもそれって大丈夫なのかな? ぷくーっと膨らんだ結果、パーンと破裂したりしない?」

 

「なるほどな、ダイナマイトモンスター弥勒」

 

「よくわからないですがお二人にからかわれているのは解りましたわ。そこにお直りなさい、弥勒式デコピンでお仕置きしてさしあげますわ」

 

 種の探索を止めて立ち上がった弥勒がジャブを放つような手首のスナップに曲げた中指を親指から弾く動作を合わせて素振りする。弥勒の動きから察するに弥勒式デコピンとは指先のみを命中させるパンチのようなデコピンなのだろう、狙った場所に当てれるのならばとても痛そうだ。

 

「い、痛そう! 防人パワーでそんな事されたら頭がパーンってなっちゃうよ!」

 

「なるほどな、ダイナマイトヘッド雀か」

 

「さぁ、覚悟なさりなさい!」

 

 ぎゃー! たすけて! とは雀の悲鳴。

 逃げろ! ダイナマイトにダイナマイトされるぞ! とはシズクの楽しそうな笑い声。

 お待ちなさい! とは逃げた二人を追いかけ始めた弥勒の声。

 

 笑いがあるのは良い事なのだろう、良くはない状況でも堂々としているのも良い事なのだろう。しかし、これはたぶん駄目だ。任務を疎かにして鬼ごっこを始めるのは論外のはずだ。

 

「ハァ……あっ」

 

 さすがにこれは注意しなければと溜め息混じりに口を開こうとしたと同時に神樹の種を見つけて意識が三人から手元へと戻る。ほんの一瞬だけ俊巡した後に種の確保が優先だと判断し、仮面の神官から持たされていた専用の容器に神樹の種を収納する。そして、今度こそ注意しつつ帰還の指揮を執ろうと立ち上がって顔を上げた。

 

 ぎゃー! 助けてメブー! とは雀の切迫した悲鳴。

 さすがにこれは相手してらんねぇ! 逃げようぜ! とはシズクの焦燥がよく解る大声。

 飛んで火に入る夏の虫、手柄にしてさしあげますわ。弥勒式ヘッドショットでパーンですわよ! とは立ち止まって射撃姿勢になる弥勒の無駄に自信満々な声。直後に、アイツらの何処に頭があるってんだ! と、叫んだシズクに首根っこを捕まれて引き摺られながらこちらへと向かってくる。

 

 そんな三人の向こう、神樹の種を回収した事により植物が消えて灼熱の大地となった背景に浮かぶ三体の大型バーテックス。どうやってかあの巨体で周囲の警戒をしていた防人達の監視網をくぐり抜けてかなりの接近をしていたようだ。

 

「総員撤退! 殿に第一班を配置する撤退陣形!! 種の回収は今終わったわ、四国に帰還する事を最優先に行動しなさい!!」

 

 全ての隊員達からの力強い応答。気の弛みがあった直後ではあったが、皆はしっかりと意識の切り替えができているようだ。

 

「第一班って……私達じゃん! 考え直してよメブぅぅ!!」

 

 この雀の悲鳴は直感的に他の最善を見付けた故の拒否反応ではなく、ただの泣き言なので気にしなくて良いだろう。他に最善があるなら雀は既に行動を起こしているはずだ。

 

「泣き言叫べる元気があるなら余裕だろ、頼りにするからな!」

 

「あ゛あ゛あ゛! これ絶対酷使されるやつだぁぁぁ!」

 

「殿こそ戦の華! すべてをこの弥勒の手柄にしてさしあげますわ!」

 

 今回の任務、ここからが正念場だ。

 犠牲ゼロ。今回もこれを果たすために隊列の最後尾に立った。




 
 
 
 
 
 
 
防人Aちゃん(しっとりとエッチ。わかる)

防人Bちゃん「遺憾」

Aちゃん「…………」

Bちゃん「誠に遺憾」

Aちゃん「…………あっ、種見つかったみたい」

Bちゃん「誠に遺憾なお気持ちです」

Aちゃん「げ、バーテックス! ムスッとしてないで逃げるよ!」

Bちゃん「私がエッチだとしても推し同士の絡みになんら影響が無いから無価値、無駄。推し同士の絡みでエッチになれよ」

Aちゃん(不機嫌な理由そっち?エッチって言われたからじゃなくて?)

Bちゃん「まぁ~じでもっと濃厚に絡んで、こっちは飢えてるの」

Aちゃん「変な事言ってないで逃げるよ!」

Bちゃん「至極まっとうな怒りですよこれは。なにせオタクっていうのは基本的に自分の肉体でドキドキするような生き物ではなく──」

Aちゃん「バカみたいな事言ってないで逃げるよ!」



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